E-9 『よく分からない土地』の所在を知りたい!

よくわからない土地を相続してしまう事は、一般家庭でも割とよくある事のようです。
バブルの時期に買ってしまったものや、お爺さんの代以前から何故か持っている山、などがありがちでしょうか。
山というほどではなくても、ちょっとした土地の所在が不明という事はよくあります。

よくわからない土地を相続してしまうと、ある程度のリスクが発生しますが、よくわからない賃貸住宅(アパート等)を相続してしまった時よりは、ずっと低リスクです。
(賃貸住宅の場合、敷金の金額や契約書の内容について確認しなければなりませんし、入居者がありもしない約束をしていたと言い張って来る場合もあります。)
分譲マンションを相続してしまった場合も、毎月の管理費・修繕積立金がかかりますから割と面倒です。

固定資産税がかかるような土地であれば、毎年の負担も馬鹿にならないでしょうが、
『よくわからない土地』というのは、大抵、山奥か地の果てにあるものです。(偏見)
山奥や地の果てにある土地には、多くの場合、固定資産税がかかりませんから、比較的気楽です。

それでも、不法投棄や不法占有、土壌汚染があった場合には、土地所有者に負担がかかってきますし、
将来的に永遠に税金がかからないままでいるという保証もありません。

本格的に寝かせておいて放置を決め込む!というのも一つの方法ですが、
所有者が2代、3代変わっていくと、相続によってネズミ算式に共有者が増えていって、最終的には対応が不可能になります。
せめて土地の所在くらいは分かっておこうかな、という方の為に、一般の方でも可能な範囲で調べ方を紹介します。

そもそも固定資産税が課されていない場合には恐らく『地番』すら分かりませんので、
その自治体の税務課や市税事務所に名寄せしてもらう必要があります。
(自治体すら分からないのであれば、もうお手上げです。)

固定資産税の課税台帳や古い権利証があれば、『地番』が分かります。
地番さえ分かれば、いきなり法務局に行って調べる事も可能です。
さて、全く手がかりがなく、『そういう土地があるらしい』という情報だけがある場合・・・
例えば『札幌市南区のどこかの山奥に、土地を持っているらしい』
そして『出来る限り費用をかけずに、その土地の概要を知りたい』
・・・そんな時はこれから紹介する方法のように調べていきましょう。

①税務課・市税事務所に聞いてみる。
固定資産の課税台帳が届かない場合(=非課税の場合)には、管轄の窓口に行きます。
市税の管轄は『A-16 私道の課税について知りたい① 固定資産税・都市計画税』で紹介しています。

納税者の住所氏名を伝えます。転居があった場合には転居前の住所も、相続があった場合には、亡くなった方の住所氏名も伝えましょう。
多少時間はかかるかもしれませんが、その自治体での課税があれば名寄せが可能です。
亡くなった方の課税記録を知るには、本人の身分証明書と亡くなった方の『戸籍』等で、本人との関係性が証明されていることが必要になります。
例えば、父親の名義になっている土地の場合には、父親の戸籍に、自分の名前が子として記載されていて、自分自身が間違いなくその本人であることを示すために、身分証明書などを提示します。
『戸籍』は亡くなった方の本籍地で取得する事が出来ますが、直接の親子関係ではない場合などは、複数人分取得する必要がある場合があります。
専門家に依頼したい場合には司法書士あたりが通常でしょうか。
また、課税の内容や正確な金額を知るには、手数料を払って証明書を取得する必要があります。
 固定資産の課税台帳がある場合には、それを持参して管轄の窓口に行けばおおまかな地形図が出てくる場合があります。
納税者本人であっても、通常、地形図をもらう事は出来ません。
また、郊外の土地の場合は法務局の登記記録をもとに課税している場合が殆どで、法務局の情報以上のものではありません。
航空写真をもとにした地形図などを見せてもらえるようなら、手書きで写しを取らせてもらいましょう。

こうして、よくわからない土地の『地番』を知る事が出来ます。

②法務局から洗い出してみる。
その土地が所在している管轄の法務局に行きましょう。
(法務局の管轄は『A-3 道の所有者を知りたいとき』で紹介しています。)
まずは出番となるのが毎度おなじみ『ブルーマップ』です。
山林や原野であってもブルーマップには律儀に地番が載っています。
B-3 地図・地図に準ずる図面の見方
(ブルーマップの具体的な見方は
B-1 ブルーマップの見方で紹介しています。)

山の中でもビッチリと『地番』が記載されています。流石ゼンリンさん!
(ただし、記載されている地番はあくまで目安であり、誤っている可能性があります。)
ちまちまと青い文字を探して、そこからおおよその位置を割り出しましょう。
ブルーマップでは小さい土地や、道となっている部分は、地番が省略されている場合もあります。
どうしてもお探しの地番が見つからない時は、次のステップに進みましょう。

次に『地図に準ずる図面』『地積測量図』を取得し、土地の形を確認します。
(それぞれ『B-3 地図・地図に準ずる図面の見方』『B-4 地積測量図の見方』参照して下さい)

③航空写真を見てみる。
最後に、Googleなどの航空写真サービスを使って、現地の状況を確認しましょう。
あほか!と思うかもしれませんが、実際、市役所は航空写真で土地の現況を確認しているんです。

Googleマップの航空写真


意外かもしれませんが、たとえ山の中であっても、過去に人が使っていたり、車の出入りがあった土地というのは数十年以上経ってもその痕跡が残っている事が多いのです。
また、登記上の境界(筆界)も、自然の地形に従っている事が多くあります。
ですから、航空写真から川や獣道を見つけ、地図に準ずる図面と照らし合わせてゆくと、驚くほど地形と筆界が一致することがあります。

ただし、土地同士の正確な境界については『分かりません』どころか『ありません』というのが妥当なくらいで、多くの場合では取得した当初から境界の設定や測量などしていないはずです。
境界を特定するには膨大な測量費用が発生しますし、隣の土地も同じような状況になっているでしょうから、隣の土地との境界を決めるために、別の家の相続人を把握しなければならないという地獄のような状況が待っています。

④所在を知ってどうするの?
活用の予定がなければ出来れば手放してしまいたい、低価値の不動産ですが、
自治体にとって寄附を受け付ける事は税収は減る、管理コストはかかるで良い事なしですから、
なかなか寄附を受け付けてもらえません。
これを手放すには、地元の物好きな不動産屋や隣地を所有している人ににタダ同然で売るなどの方法があります。
詳しくは『E-5 市街化調整区域にある土地を売却したいとき』や『E-6 市街化調整区域の土地を捨てたい!』で解説しています。
それ以外は・・・まぁ、裏ワザ的な方法になってしまうのでしょうね。
まぁ、差し当たって不都合がなければ、無理に手放さなくてもよいかもしれません。

・・・こんな記事では『結局はっきりとしたことは分からんし、対策も取れないのじゃないか!』と言われてしまいそうですね。
はっきりとした事を調べるためには、土地家屋調査士など測量の専門家へ測量を依頼する必要が出てきます。
正直、都心の価格の高い不動産を測量してもらうより、ずっと費用がかかる割に、得るものは少ないです。
今回は『出来る限り費用をかけずに、その土地の概要を知りたい』をコンセプトに、最低限の情報収集方法を紹介しました。

しかし、知ると知らないとでは大違い。
放っておいて駐車場資材置き場にされる程度ならまだよいのですが、ガラ捨て場になっていたり、廃車置場になっていたり、不法投棄されていたり、といったこともよくあります。
どんなに使わない土地でも年に1度くらいは見に行っておくのがよいと思いますよ。

他にも、色々な調査方法やテクニックがあるのですが、その辺は企業秘密にさせておいて下さい。

当記事は2013年10月10日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

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