損保協会の地震保険CMが生理的にどうも受け付けない件

先日、東日本大震災から12年を迎えましたね。
ワタクシの人生にとってこの震災、東京から札幌に戻る契機になった事件でもある訳で、
色々と地震については思うところもあり、日本人である以上は避けて通れないものと考えています。
これまでに、不動産のプロとして過去に地震について何度も言及してきたことがあります。

よって、別にアンチ地震保険であるとか、札幌は地震の問題はないとか考えている訳ではないのですが、
損害保険の同業者団体である一般社団法人日本損害保険協会の地震保険のCMがどうにも気持ち悪くて受け付けない、というお話をします。

ちなみに、私自身、損害保険募集人資格を有して損害保険募集業務を行なっているのですが、
検索履歴なども関係してか、Youtube広告にかなりしつこくこのCMが表示され、うんざりしています。
また、論理的に問題のある広告ですので、その点についても言及します。

シリーズ『胆振東部地震』

 ◇胆振東部地震で被災した札幌市内の不動産の流通について
 ◇清田区里塚で生じた大きな液状化被害と『防災カルト』の蠱惑
 ◇『液状化、里塚』の現実を見よう、夢想は不要だ
 ◇デマで市域の5.3%を貶めた札幌市民の敵、池上彰氏をどうしてくれようか。
 ◇胆振東部地震から9ヶ月、『液状化、里塚』はどうなった?
 ◇胆振東部地震から1年、里塚の大規模被害は『液状化』が原因ではなかった?!

その他の地震関連記事

 ◇札幌の地盤について 地盤沈下と液状化の目安
 ◇札幌市と地震  過去と将来の液状化現象

知ってるつもりで知らない地震のこと!油断できない大地震篇(北海道版)短尺版

この広告は、地震保険の付帯率が低い地域を対象とした広告で、
おそらくYoutubeにおいては視聴者の居住エリアを対象にリスティングされている広告です。
元サッカー選手の内田篤人氏と慶応義塾大学大学院の纐纈一起(こうけつかずき)氏が出演しています。
それぞれ北海道、東京都、佐賀県、長崎県、沖縄県の5都道県のバージョンが用意されています。

北海道以外のバージョンも確認していますが、北海道編・短尺版が特にキモチワルイ。
それでは、北海道編・短尺版を文字起こししてゆきましょう。

【内田】知ってるつもりで知らない地震のこと 北海道編
    ・・・さて、北海道は地震リスクがそれほど高くないんですが・・・

【纐纈】いいえ、北海道の地質を考えると、決して安全とは言えません。
    北海道は歴史を振り返ってみても大きな地震によって何度か被害を受けているんです。

テロップ:平成30年 北海道胆振東部地震

【纐纈】この地震では火力発電所が被害を受けて全道停電となったことも記憶している方がいらっしゃると思います。
    それと北海道の千島海溝沿いで大きな地震があると言われているんです。

【内田】北海道だって、油断できませんね。
    実際に被害に遭った場合、どういうことが考えられますか?

【纐纈】やはり建物の修繕費や家財の買い替え、当面の生活費など経済的な負担が大きいことです。

【内田】・・・なるほど、それは厳しいですね。

【纐纈】地震保険の加入はかなり重要だと思います。

【内田】いつ来てもおかしくない大地震に備えて・・・
    さぁ、守りを固めよう!・・・地震保険。

このCM、オリコンによってメイキングも公開されているのですが、
5つの都道県ごとに長尺・短尺があり、収録時間の兼ね合いもあってか、
ツギハギで編集されたコラージュのような動画となっています。
オリコンニュースによるCMメイキング動画です。

こちらを見ると分かるのですが、まさにシーンごとのツギハギで作られていて、
私が感じる北海道編・短尺版の気持ち悪さというのは、
このツギハギ編集のまずさによるものであることが分かりました。

別に内田篤人氏や纐纈一起氏を批判するものではないのですが、
まー、学者という形で出演するなら、纐纈氏に関しては、
この編集のマズさに一言あってもよかったんじゃないの、という気はしなくもありません。

・・・で、何が問題なのかと言いますと、既に文字起こしの部分で強調しているのですが、
この地震では火力発電所が被害を受けて全道停電となったというのが北海道における地震被害の例示なのに、
それに対応する策として地震保険の加入はかなり重要と示すのはオカシイでしょう、と。

だって、地震保険は別に停電の被害を補償してくれませんからね。
建物や家財の被害については勿論、保証の対象になる訳ですが、
じゃあ、停電被害が一番大きかった胆振東部地震を例に出すのは論理破綻ではありませんか?

例に挙げられた胆振東部地震では山崩れや農業用の施設の被害が目立ちました。
ただ、そもそも震保険は居住用建物のみが対象で、土地や事業用等の非居住用建物は対象外なんですよね。
つまり、山崩れや地割れが起きようが、畜舎や倉庫が壊れようが、地震保険は下りない訳です。

また、札幌市内においては居住用建物の被害を認められた建物でも多くが
地震保険の付保金額の5~10%のみ認定される『一部損』でした。
ですから、胆振東部地震ほどの規模の地震で、どれだけ地震保険が下りたのか、という視点は重要でしょう。

こういったミスリードを沢山孕んだままできちんとしたリスク説明をせず、
ただ地震保険に加入した方がいい、と説明するのは、明らかにアンフェアであり、
一般社団法人とはいえ、公的な活動を行なっている同業者団体として、問題がある広告であると考えます。

もちろん、『札幌市第3次地震想定』として胆振東部地震より更に大きな地震も想定されていますし、
地震保険自体が無価値なものだとも思いません。
しかしながら、有用なものであってもその販売方法に問題があるのなら、
それは決して肯定されるべきではないでしょう。

長尺版だと短尺版よりは多少マシなのですが、それでもやはり論理としてどうなのかと感じる部分はあります。

特に、地震保険は保険料負担が大きく、経済的な負担が大きな保険であり、
何より、国家の政策として加入を主導している保険であります。
やみくもに不安を煽って、補償内容も十分に告知せずに募集するのでは、
それは官民共犯での詐欺になってしまうでしょう。

地震保険を啓蒙するのであれば、その正しい知識や実態を示すべきではないでしょうか。
少なくとも『この前、2日も停電あったやろ?地震こわいやろ?保険入っと
き?』のような雑な話はやめにしませんかねぇ・・・?

プラス、賃貸オーナー(大家さん)は地震保険に入る必要ないんじゃないの?とも考えているのですが、いつかそんなお話をするかもしれません。

不動産投資は『盆栽のようなもの』と考えて下さい

こちらのブログでは大変ご無沙汰しております。
ここ2年ほど他の不動産業者さんのプロモーションの一環として、
札幌市以外の自治体の歴史についての記事をまとめており、
その件については機会があれば、何でヨソの不動産屋さんのプロモーションをしているのか、その辺りの事情を紹介したいと思いますが、今回は別のお話。

昨今はFIREなんて言葉がもてはやされて、世の中の投資熱は高まるばかりです。

既に不動産投資をしている大家さん、地主さんも、
相続対策や資産形成の為に、リーマンショックのような暴落があれば是非購入したい、
『いい物件があれば是非ご紹介下さい』という声掛けは沢山頂きます。
まー、投資用不動産はじわじわ上昇を続けているんで、数年前のような価格では到底購入出来ないんですけどね。

また、新たに不動産投資を始めたいという方も沢山いて、
不動産投資をどのように始めればよいか、というご相談もよく頂きます。
そんな時に私が言うのは『投資不動産は盆栽のようなものと考えて下さい』です。
その意味については後ほど説明します。

実は不動産会社を経営する私は、個人名義の不動産を持った事がありません。
多分、今後もしかしたら自宅を買う事もあるかもしれませんが、
将来においても不動産投資を個人で行なう事はまずないでしょう。

まー、不動産投資は個人名義でなく不動産屋として法人でやってしまいます。
それは以下で説明する不動産投資における特徴によるものとも言えます。

いわゆる『会社役員』という立場になって5年が経過しますが、
当初は雇われ社長で薄給で働いていたのでサラリーマン以下の労働環境で、
3年目から一応それなりの報酬を頂けるようになりましたが、
雇われ社長からオーナー社長になる為の自社株の購入に多額の費用が必要で、
昨年まで預金残高が300万円程度でした、マジで。

世の中、それよりも預金残高が少ない方が沢山いるのも承知していますし、
自由気ままに働いていてそれならまだいいんですが、
従業員の雇用を維持して、誰よりも長時間労働してそれですから、
事業承継対策の出来ていない法人を引き継ぐのは人生ハードモードです。

・・・で、今年になって一段落ついてようやく少しだけ経済的、時間的余裕が出て来ました。
まぁ、個人と法人の両方それぞれに数千万の借金がある訳ですが。
(後日注:法人の運転資金以外は記事時点から1年ちょっとでほぼ完済しました。)

兎も角、少しだけ余裕が出て来たので、株式投資を始めてみました。
お客様から『最近景気はどうですか』と経済ニュースを尋ねられる事もありますし、
不動産投資と並行して株式投資をしている大家さん、地主さんも多いものですから、
一つの勉強として、株式投資を実践してみる必要を感じていたのもあります。

長期投資として流行りの外国株(米国・全世界)投資信託をしているのと、
短期投資でスマホゲーム感覚で上場株式のスイングトレードをしています。
(スイングトレード:短~中期で売買を繰り返し利幅を狙う投資方法。)
2月末に口座を開設してから8月末の6ヶ月間で、
信用取引を一切せずに確定利益と含み益、それぞれ100万円を超えて来たので、
まぁ、株式投資について自分なりにそれなりの知識と経験が得られたという事で、
株式投資と不動産投資をそれなりに比較出来るのかな、と思っています。
まぁ、含み益は所詮含み益で、原則は確定利益がすべてなワケですが、
今の相場が良いとはいえ、月に十万円以上は利益確定出来ているので、
まぁ、素人なりに自分の場所で考えす示す程度はしてもよいのかな、と。

よくあるヤツですが不動産投資と株式投資の特徴を単純化した比較表を作ってみました。

ここで言う『上場株式投資』は、上場株式の配当と売買の収益を目的としたものです。
不動産投資にせよ、株式投資にせよ、リスクや利回りは商品次第なので今回は比較に加えませんでした。

それでは、各項目の比較について記してゆきましょう。

①流動性
上場株式は市場があり、いつでも売ったり買ったり出来る流動性の高さがウリです。
流動性の低い上場株式もありますが、価格を問わなければ成約しない事は非常に稀です。
一方の不動産には市場はあるものの、買手とマッチングするまで時間はかかりますし、
売主と買主と買主がマッチングした後も条件の擦り合わせが必須となり、
また、融資を受けて購入するには金融機関の審査に時間を要します。

不動産は売るときにも買うときにも時間がかかる=流動性が低いのは一つの問題点です。

②維持費
手数料が割高な投資信託などを除いて、通常の上場株式であれば、
ネット証券では口座維持手数料などもかかりませんから維持費はありません。
一方の不動産投資では固定資産税、火災保険料、維持修繕費、管理会社への管理料など、維持費はまずかかるものと考えておいて間違いないでしょう。
固定資産税のかからない土地もあるにはありますが、投資の対象となることはまずありません。

③売買費用
上場株式を売買しようとすると手数料がかかりますが、ネット証券ではある枠内であれば無料という事もあります。
手数料競争により大手ネット証券の売買手数料は0.1%以下の水準になっています。
不動産売買において、仮に仲介業者を挟まなかったとしても最低でも名義変更の為に登録免許税はどうしてもかかります。

通常は仲介業者に依頼しますし、購入時には司法書士費用、不動産取得税などがかかります。
売却時には仲介手数料、場合によって測量費や司法書士費用がかかります。
不動産業者の私が言うのもナンですが、3%程度の仲介手数料は株式と比べれば高額であると言えるでしょう。
ただ、不動産取引の調査・折衝・書類作成には細心の注意が必要であり、その為にプロを雇う為の手数料としては妥当と考えています。
ただし、知識も技術もなく取引に介在して手数料を取っていく仲介業者に払う手数料は無駄でしかありませんが。

④価格決定
『ぜんぜんわからない。俺たちは雰囲気で株をやっている』というネットミームがあり、
株価は理詰めで考えられるものではなく、理不尽に乱高下する事もありますが、
何だかんだ、上場株式は『市場参加者全体で決められた価格』で動いています。

しかし、不動産取引では、売主と買主のただ2者が合意した価格が取引価格となります。
(上場株式取引でも、ごくミクロ的に見ればそれは当てはまるのですが・・・)

公示価格や固定資産評価額といった公的価格はあくまでも目安であって、
売主や買主の個別の事情や交渉によって例え同じ不動産でも価格は変動します。
不動産の価格決定は極めて主観的、個別的、定性的に行われていると言えるでしょう。

⑤価格変動
不動産は上場株式と比較して、価格の変動がゆるやかで、変動幅も小さいと言えます。
リーマンショックやバブル崩壊などの経済的クラッシュがあった場合でも、
価格変動幅は株式よりも小さく、その影響の出方も遅い傾向があります。
一方で、好況期でもじりじりと上昇するので株式のようにドカンと上がる事はあまりありません。

⑥取引単価
最低取得価格が高額な株式を値嵩株といって、任天堂やファーストリテイリング(ユニクロ)が有名ですが、
それでもせいぜい500~900万円台で1000万円を超えることはあまりありません。
(まー、米国株などでは最低取得単価がもっと高額なものもありますが。)

1000万円で購入できる投資用不動産はごく限られていますので、
不動産投資は一つの取引単位が大きい投資であると言えるでしょう。

よって、不動産では分散投資も難しいという事になります。

⑦所得税
不動産投資で得られる賃料は、『総合課税』といって累進課税の対象となります。
その年の所得に応じて非課税から最大45%の税率で課税される方式です。

これに対し『分離課税』ではその年の所得に関係なく、固定された税率で課税されます。
株式の場合には配当を受け取った場合でも売却益が出た場合でも、所得税は15%(復興所得税がプラス0.315%)で済みます。
不動産の賃料ではなく、売却益の場合には、『分離課税』で15%(復興所得税も同様)ですが、
前述の通り不動産の売買には多額のコストがかかるので頻繁に売買する事は出来ません。
また、商売として頻繁に売買をするには宅建業免許が必要になります。

株式の収入について『分離課税』ではなく『総合課税』を選択する事も出来ますが、
これは所得税率が概ね15%相当より低い方には有利になります。

原則的に、不動産所得は『総合課税』、株式に関する所得は『分離課税』と覚えてよいでしょう。
借金返済の為にある程度の役員報酬を受け取らなければならない私の立場では、
総合課税では税率面で非常に厳しいものになってしまう為、私には不動産投資は出来ません。

一部では株式に関する所得の増税も叫ばれていますから、これもいつどうなるか分かりませんが・・・

⑧住民税
住民税は固定税率ですが不動産所得は10%、株式に関する所得は5%になっています。
これも色々と計算方法の問題などがありますが、倍違うというと、かなりの違いですよね。

⑨インカムゲイン
不動産を賃貸して賃料を得る場合、ほとんどの場合は毎月払です。
一方で株式の場合のインカムゲインは年に1度か2度の配当月に発生します。
配当月は3月と9月に集中していますが、無配当の株もあります。

まぁ、デイトレードやスイングトレードをしていれば、配当月以外でも利益(キャピタルゲイン)をコンスタントに生むことは可能ですが、それは不確実な利益であって、損失を生じさせる可能性もあります。

また、毎月分配金が出る投資信託は大抵、手数料が高額なので要注意です。
不動産投資の利点として毎月定収入があるというのはありがたいですよね。
(まぁ、不動産投資には維持費がかかると言って投信手数料を否定するのも矛盾しているかもしれませんが)

⑩経費算入
株式はほぼタダで保有できるのに不動産には保有にも売買にもお金がかかる、という指摘を先にしましたが、
そういった費用は税金計算上、経費として差し引く事が出来ます。

固定資産税等の税金、業者に支払うお金、火災保険料、修繕費など、
建物の維持管理に要する費用もそうですが、
税理士の顧問料、弁護士への相談料、不動産に関する打合せ費用、
情報収集の為のセミナー参加費やら書籍代なども経費になり得るでしょう。
ただ、プライベートに関する支出とされてしまう事もあり、
厳密にやって行こうとすると不動産所得の経費ってそう多くないんですよね。

まー、セミナーとかオンラインサロンとかで、人間関係を作るのが好きな人もいますが、それが楽しければそれにお金を使うというのもアリなのかもしれません。
色々ある『大家会』とかはそういったニーズを拾った商売であると言えます。

『大家会』などのトンチキな集団にお金を払うのは惜しい、という方でも、
例えばどこかの飲食店に不動産のプロを読んでレク(レクチャー)を受けたい、という事であれば、
私もよくお呼ばれして資料を準備の上、食事兼レクをする事はあります。

⑪レバレッジ
『不動産投資は融資を受けやすい』とよく言われています。
不動産には銀行の担保評価がありますから、不動産を担保にする事で借入が可能です。

スルガ銀行の不正融資の問題もあり、最近は新たに不動産投資を始めようとしても融資はまず受けられません。
北海道では、ずさんな不動産融資で北海道拓殖銀行が破綻したという過去も影響しています。

そういった意味で、株式はどうかと考えると、信用取引がまさにレバレッジであり、
空売りは証券会社から株を借りて貸株料を、信用買いは金利を支払う訳で、概ね一桁%の費用がかかります。
信用取引では保証金さえあれば、不動産融資のような面倒な審査はありません。
そういった意味では、上場株式の方がレバレッジを掛けやすいと言えるでしょう。

ただ、そのレバレッジの掛けやすさと株式の価格変動リスク故に、
想定外の価格変動が生じた場合には、保証金が不足して『強制決済』されてしまうのが、信用取引の一番恐ろしいところですね。
信用取引は所詮借金という事です。

不動産融資の場合にも、月々の返済が出来なければ不動産が競売に掛けられる事はあるかもしれませんが、仮に不動産が半値になったとしても、返済さえ出来ていれば競売に係ることはまず考えられません。
(同様に株が半値になっても保証金を増額し続ければ強制決済はされない、と言えなくもないかもしれませんが。)

私の場合、個人・法人それぞれに数千万円ずつ借入金がありますが、
事業運営の為の借入金で、不動産を購入する為の借入金はありません。
株式投資においても、信用取引は将来的にもする予定はありません。

お金は払うより貰う方が好きですから。
 
【不動産投資にしかないメリット】
こうして項目を並べて比較してみると、不動産投資なんてやりたくなくなりますね。
まー、私は正直、昨今の不動産価格の上昇による利回りの低下や出回っている物件の品質低下により、
シロート投資家さんは現在の相場で不動産投資なんてしない方がいいと思っています。
そうでなくとも、10年位前の相場でも、かなり勉強していないと厳しいと思います。
リーマンショック直後位の相場で、なんとかシロートさんでもやっていけるのかな、と。

ただ、不動産投資特有のメリットというのも2つだけあって、これについて着目してゆきましょう。

①相続税はダンゼン安い
株式を始めとした有価証券と不動産を比較した場合、不動産の相続税はダンゼン安いんです。
前項①流動性の通り、上場有価証券は流動性が高い分、現金化が容易という事で、現金とほぼ同様の時価課税がされます。
一方で、不動産はどんなに価値があってもすぐに現金化が出来ない事もありますし、
政策的に国民の不動産の購入を促進してゆくという考え方もあり、
不動産の相続税評価額は流通価格の概ね20~60%程度となります。
まー、前項②③④のような価格体系で、維持費もかかりますから、
そこのバランス感覚なのですが、兎に角、相続税は安いのです。

ですから、高齢の資産家の方は株式よりも不動産で運用した方が有利に働きます。
税理士さんなどが『相続対策』として不動産の購入や建物の新築を薦める事もあります。
そうして、投資用不動産市況が支えられている側面もありますね。

また、平成29年にはタワマン税制改正があったように、タワマン節税という手法もありました。
これは、タワマンの相続評価額が流通価格よりも非常に安くなる評価方法である為、
上記の20%すら下回って時価1憶のタワマンが1千万で評価されて節税される、というような現象から改正されたものです。

②個別性によって介在・調整出来る事項が圧倒的に多い
前項②維持費、④価格決定、⑩経費算入など、不動産投資には何かと不確実性が伴います。
不動産はどんなに条件が近くとも、同じものは一つとしてありません。
上場株式は市場の状況に合わせた価格と手数料で売買するほかありません。
一方で不動産は、売買価格も維持費も自分で決めることが可能です。

管理は管理会社に委託しようが、自主管理をしようが、自由です。
古い建物をボロボロのまま使おうが、フルリノベーションしようが、自由です。
借主の需要は大きく異なりますが安く貸すのも高く貸すのも、自由です。
経費をどの程度使うか、セミナーに行こうが本を買おうが、自由です。

売主さんに嫌われるようなムチャな価格交渉をしてみるのも、自由です。

不動産投資は、とにかく自由なのです。
その自由が誰にとっても良い結果をもたらすとは限りませんが、
少なくとも私は不動産投資の自由さによって、それなりの収益を上げさせて頂いています。

【不動産投資は盆栽のようなもの】
相続税を考えなければ、『不動産投資のメリットとはその個別性・主観性以外にない』と言って過言ではありません。

まったく同じ不動産でも、その背景で取引価格は半値にも倍にもなります。
まったく同じ不動産でも、賃料はその時の巡り合わせで大きく変わります。
まったく同じ不動産でも、管理も修繕も募集も自分でやれば、維持費は抑えられます。
(まー、私の立場ではよっぽど暇でなければ自主管理はお薦めしませんが。)

株式投資などをされている方から『良い不動産とは?』と聞かれる事があります。
私は、不動産投資に必勝法はないと考えています。

じゃー、株式投資に必勝法はあるのかよ、という話ですが、
必勝法に限りなく近い理論は存在すると考えています。
だからこそ、(実践できるかは置いておいて)FIREとか持て囃されている訳で。

盆栽って、何百万も何億もする事がありますが、私には価値は分かりません。
それでも盆栽の売買でとんでもなく利益が生まれる事がありますし、
盆栽を貸し出すことで多額の賃料収入が発生することもあるようです。

枝木を切ったり、肥料を与えたり、鉢を変えたり、色々な努力があるでしょう。
借り手や買い手と交渉することで、賃料や売価は色々と工夫出来るでしょう。

盆栽と不動産投資は『努力』と『工夫』がすべてなんです。

『努力』と『工夫』なんて、定量的な理論を求める人にとっては、
バカバカしい感情論・理想論にしか聞こえないでしょう。
好きだと感じた不動産は買えば良いし、嫌いな不動産は買わなければ良い。

そんなもんなんです。
確実性も客観性もないという不動産特有の事情を好ましく感じるか否か、という事です。
それを好ましく感じられない方は、上場株式か外国投信でも買って下さい。

それで不動産投資以上に稼げると思いますし、不動産投資でも株式投資でも稼げないなら、それはただの無能であって、投資に向いていません。
大人しく、今流行っているドルコスト平均法での積立投資をしておいた方が良いでしょう。

もっと極論すれば、どんな投資も『安く買って、高く売る』以外の原理はありません。
どのように(維持費も含め)安く仕入れて、(経費も含め)高額で売却するか、
そこに努力と工夫をどれほど出来るのかという事なんですわ。

そういう意味で、現在のような高額で不動産投資を始めることは薦めません。
よっぽど好きで、どうしても買いたい物件があれば『盆栽』と同じでそれは止めません。
どれだけ知識を付けて、努力して、工夫をしていけるか、不動産投資はそれだけです。

不動産投資は盆栽みたいなモンだと捉えて、時に気楽に、時に深刻に向き合って下さい。

札幌の不動産屋、ドローン活用を語る③ 運用機材の紹介

さて、ブログの更新を2ヶ月止めていたのにこのシリーズでは矢継ぎ早に更新しております。
複数の会社の経営者として、この人手不足の折、それなりに多忙に過ごしておりますが『今が旬という話題があると寝る間を惜しんで夜中から明け方にかけてベッドの中でも半覚醒(うたた寝)状態で記事を書いてしまいます。

過去2回で『ドローンの合法的運用は困難を極める』と結論付けておいて何故『今が旬』なのかというお話は、記事の最後で紹介しますね。

【注意】
ドローンの利用については航空法を始め地域により様々な法規制があります。
本稿の内容はそれを網羅していることを保証しません。
などを参照の上、自己責任にてドローンを運用下さい。
 
Mavic2 Zoom(DJI)
中国の有力ドローンメーカーDJI製の中上位クラスのドローン『Mavic2』はProZoomの2機種が発売されています。

いずれも本体性能は同一ですが、異なるのはカメラの性能です。
Proより高画質なカメラを搭載したモデルで本体価格は19万円台です。

Zoomはカメラ性能ではProに劣るものの光学ズーム機能を搭載したモデルで本体価格は16万円台です。

なかなかにご立派な本体価格で、初めて価格を訊ねられる方には驚かれる方も多いのですが、業務用軽自動車の5分の1以下(家庭用軽自動車だと10分の1以下ですね)ですし、PCと同程度の価格と考えれば、そう大きな金額でもないでしょう。
上位機種で『プロ用』と銘打って同じDJIから発売されているPhantom420万円程度とそう変わりない価格ですが、Mavic2は折り畳みが可能な為、携行性に優れています。

まぁ、更に本格的なプロ用のM200シリーズV2という機種はその3倍超の価格ですし上を見れば青天井なのですが・・・


※写真のアスファルト舗装部分は道路敷地内ではなく、私有地内です。

1つのバッテリーでカタログスペック上30分程度の飛行が可能ですが低電圧になるとアラートが出る設定(アラートが出る電池残量は任意に設定可能)があるので、実感としては離着陸をスムースに行っても20分程度の飛行時間という感覚です。

合法的にドローンを飛行させられる郊外地まで行って、20分飛ばして終わりというのも世知辛い話ですし、業務として利用するという観点からも、予備バッテリーはどうしても必要になってきます。

予備バッテリーは今日現在の価格で1つ16,500円もしますから、予備のプロペラなど各種アクセサリ類も併せれば20万円を下らない総額となります。
アクセサリ類をセット販売する『Mavic 2 Fly More Kit』という商品も販売されています。

カメラ設置部分(ジンバル)の可動でカメラ角度の調整が可能なので、ドローンの水平方向の撮影の他、真下の角度まで柔軟に画角を設定することが出来ます。

操作は専用の送信機(コントローラー)とスマートフォンを接続して操作します。
各方向のセンサーによる衝突・接触防止機能もあり、飛行の安定性は素晴らしいものですが、強風や電波干渉、鳥や電線との接触、或いはスマートフォンの不調で制御不能に陥る可能性もあります。

本体重量だけで900g程度と1kg近くありますから、人体は勿論、建物の屋根や自動車に当たるような事があれば、大事故につながりかねません。
最初の1年に限り三井住友海上が引受する賠償責任保険が無料で付いて来ますが、インターネット上で手続きをしなければなりませんので、忘れずに手続きをしましょう。(2年目以降は有料での更新。)
 
散々書いている通り、航空法の制限により、国土交通省の許可がなければ合法的に飛ばせる場所は相当の郊外地に限られます。

しかしながら、非常に素晴らしい性能で、実際の原野・山林調査で活躍していますので、不動産業界におけるドローンの運用検証という意味においても非常に有意義な買い物であったと満足しています。

 
Tello(Ryze Tech)
私は最初のドローンがMavic2 Zoomだったのですが、何せ市街地で飛ばせないものですから、フラストレーションが溜まります。
そこで導入したのが航空法の規制の対象外となるトイドローン、Ryze TechTelloです。
従来の飛行高度は10mまでだったそうですが、ファームウェアのアップデートで高度30mまで飛べるとのこと。

価格は1万円+α(販売店でばらつきがあります)と非常に求めやすい価格になっています。
 
バッテリー1つあたりの飛行時間は13分本体重量は80gと非常に軽く、その辺のプラモデルよりも軽い、という感覚です。
バッテリーの価格は購入個数によって異なりますが、概ね2,000円程度とこちらも手頃です。
 
カメラ角度の調整は出来ませんからドローンの水平方向の撮影しか出来ず、また、ドローンが前後左右に移動している際にはカメラも併せて傾きます
スマートフォン単体での操作が可能ですが、省コスト、省機能ですから衝突防止機能やGPS機能は搭載されていません。
また、本体重量が軽く、プロペラの出力も控えめなので風に煽られやすいのは物理的にやむを得ない点でしょう。

いくら軽いとは言っても建物の近くで飛ばすのは少し怖いなというのが正直な感想です。
とはいえ、Mavic2の予備バッテリー1個よりもTello本体の方が安いので、性能にとやかく言うのはお門違いでしょう。

この軽さとコストパフォーマンスを実現するためには、やむを得ないでしょうね。 
一番の長所は航空法の規制がほぼ除外されることです。
オモチャとしては非常に有用で、ドローン操作の入門用にも非常に良いと思いますが、飛行時間や安定性を考えると、不動産業務で常用するのは少し難しい状況です。
ただ、接触防止センサーが付いていないのと軽量で接触しても建物に傷が付く恐れがないので、室内や建物のスキマなどで飛ばす分には、十分有用であると言えるでしょう。
 
で、結局?
Mavic2 ZoomTelloもまさに帯に短し襷に長しという状態で、市街地で建物検査や物件調査といった不動産業務に利用するには難のある状況です。

ハッキリと言ってしまえば、

市街地で合法的に飛ばせる場所なんてねぇよ!Σ(゚Д゚;
市街地で業務に使えるドローンなんてねぇよ!Σ(゚Д゚;
という状況であると言えるでしょう。
では、国土交通省の許可を得られればそれでいいか、というとそうではないんです。
国土交通省の許可にあたっては100時間の飛行経験を要する中で、不動産業と同じ管轄である国土交通省に対して虚偽申請をする訳にはゆきません。
Mavic2 Zoomの飛行時間を30分とした場合、200回以上のバッテリー交換が必要になります。
私は条件を満たしていますが、不動産業として複数の人員で事業を営むにあたっては、全員に100時間超の研修を課す訳にもいきません。

ドローンは不動産業に有用であって、利活用をするべきだ、というシリーズ記事にも関わらず、愚痴しか言っていない訳ですが、今回、事情が変わってきました。
 
Mavic Miniの登場
今回、ドローンに関する話題が『今が旬』であると判断して連続して記事を書いて来た、ある事情があります。
それは令和元年11月14日発売予定のDJI製Mavic Miniの登場です。

なんと、わざわざ日本の航空法の対象外とするためバッテリー容量を削って本体重量を199gにしたというピーキーな機体です。
海外版はバッテリー容量があり、飛行時間30分で249g、一方で日本版はバッテリー容量を削った分、飛行時間18分3分の2以下に削られてしまっていますが、これまでに述べて来た通り、航空法の規制を受けないというのは不動産業への活用にとって、非常に有用であると言えるでしょう。

価格は発売日現在で46,200円とまずまず手頃です。

不動産業に利活用するドローンとしてはMavic Miniが最有力候補であると考えています。
勿論、私は既に予約済みで、率直に言って到着を心待ちにしています。

性能的にはコスト的な部分で飛行時間やカメラ性能については納得していますが衝突・接触防止機能が搭載されていない点が運用にどのような影響を及ぼすか少し気になります。
とはいえ、海外版の評価などを鑑みるに十分に有用であるものと期待しています。

次回は、実際に到着したMavic Miniが到着次第、開封してレビューしてみたいと考えています。

・・

・・・

・・・と、発売前日までに3記事を間に合わせた訳ですが、注文殺到で追加バッテリー付き商品の発売が延期されるという噂が・・・(;´Д`)オレノスイミンジカン
特にお知らせのメール等は来ていませんが現に、発売前日の段階で商品の発送が未定になっているという・・・
まぁ、待望の200g未満の製品という事で、日本中のドローン愛好家が待ちに待った製品という事なのでしょう。

仕事で忙しかったのと寝ぼけまなこで記事を書いていたせいか、ネット上の情報に気付くのが遅くなってしまいました。

・・・いや、不覚ですよ。ホントにね・・・(; ・`д・´)

札幌の不動産屋、ドローン活用を語る② ドローンへの規制

さて、シリーズ『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』前回は不動産業においてドローンの有用性は非常に高い一方で、法規制によって運用は困難を極めることを説明しました。
第2回の今回はドローンに課せられる規制を紹介します。
ハッキリ言ってドローンの法規制に関してはごくごくありきたりの記事ですが、不動産業に活用する前提で述べてゆきましょう。

シリーズ『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』
【注意】
ドローンの利用については航空法を始め地域により様々な法規制があります。
本稿の内容はそれを網羅していることを保証しません。
などを参照の上、自己責任にてドローンを運用下さい。
 
飛行可能なエリア

ドローンに関する記事で頻出のこの画像、国土交通省の資料に添付されるものです。
空港等の周辺の上空の空域(A)150m以上の高さの空域(B)人口密集地区の上空(C)
『安全性を確保し許可を受けた場合のみ飛行可能』・・・つまり、原則飛行禁止です。

『許可』というのは国土交通省によるもので、要件として100時間以上の飛行経験が必要とされていますから、初心者のうちはまず無理、と考えておきましょう。

『許可』なく飛行が可能なのは(A)、(B)、(C)以外の空域で、これはつまり『空港の周辺および人口集中地区ではなく、150m未満の空域』という事になります。

空港等の周辺の上空の空域(A)
札幌市内では丘珠空港の周辺が該当しますが、どのサイトも空港周辺の飛行は『原則禁止』というだけで具体論が出てこない。
トラブルになる可能性があるので具体的な記載がないのはやむを得ないのかもしれませんが、『周辺』ってどこまで?という話は重要だと思います。
まず、札幌地図情報サービスで調べられる『航空進行区域』はかなり低い高度まで飛行が制限されていますから、全面的な飛行禁止区域と捉えた方が安全でしょう。
具体的には、丘珠空港の周辺1km程度と、北西方向には屯田、拓北、百合が原周辺、南東方向には伏古、東苗穂周辺がこれにあたります。

また、空港から4km圏内『水平表面』に指定され、高度45m以上の飛行は禁止です。
丘珠空港で言えば、北24条駅、新琴似駅、拓北駅、モエレ沼公園なども含むかなり広い範囲です。
逆に言えば、高度45m未満で、かつ、人口集中地区(C)でなければ、飛行可能という事になります。

更に複雑なものとして『円錐表面』という考え方があり、『水平表面』から5.25Kmの範囲内で1/50の勾配で段階的に飛行可能高度が上がってゆきます。
つまり、空港から9.25km圏内では、150mの高度の飛行は出来ず、現実に当てはめるとかなりファジーな計算方式によって制限が課されるという事です。

まぁ、安全策として空港から10km圏内は航空進行区域と人口密集地区を除けば45mまでの高度制限、と考えておけばよいかと思います。
10kmというと石狩市役所、石狩太美駅、江別西IC、JR厚別駅、豊平区役所、円山駅、札幌西ICを含む、とんでもなく広い範囲ですから、これは留意しておくべきでしょうね。

150m以上の高さの空域(B)
これは標高ではなく、地表からの距離です。
ですから、ドローンは高度表示がされるものを購入しなければ航空法違反になる可能性があります。
日本の量販店で購入できるものはともかく、インターネット通販などで購入する際には注意が必要です。

人口密集地区の上空(C)

人口が集中した市街地の上空は危険ですから、許可のない飛行は禁止されています。
指定状況は国土地理院のサイト地理院地図から参照出来ますが、操作方法に不慣れな方は下記のリンクを利用することをお勧めします。
 ◇国土地理院 人口集中地区(DID) 平成27年
  https://www.gsi.go.jp/chizujoho/h27did.html

人口密集地区(DID)とは、総務省統計局5年に1度、国勢調査を元に発表するものです。

一見かなり広い範囲で飛行が可能なように見えますが、不動産屋の立場で言わせてもらうと、不動産流通市場がある区域とほぼ被ってしまっています。
ここでもドローン規制の壁が立ちはだかります。

ここまで紹介した(A)~(C)の原則飛行禁止区域以外を探して飛行しなければならない訳ですが、この他、道路や鉄道の上空飛行禁止が看板などで明示されている施設なども飛行禁止とされています。
他に河川の場合には河川管理者、公園の場合には公園管理者の許可を得ることがガイドライン上は示されています。
(ガイドラインに記載はありませんが、港湾の場合は港湾管理者の許可が必要でしょう。)
札幌市の場合、市立/道立/国立問わず公園敷地内でのドローンの使用は原則禁止されています。

いや、まぁ、ここまで読んで頂ければよく分かると思うのですが、
市内で合法的に飛ばせる場所なんかほとんどねーよッ!Σ(゚Д゚;
という状態で、ドローンの飛行には厳しい制限が課されている訳ですね。

 
操作や作業における制限
この他にも現在10種類の作業や操作に関する制限事項が明示されています。
令和元年9月18日の改正で、①~④が新たに加わりました。

①アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと
 まぁ、論外ですが飛行可能なエリアまで行くのに、自動車を使うでしょうから、航空法以前の問題ですね。

②飛行前確認を行うこと
 まぁ、そりゃそうだよね、というお話。
 あとは中上位機種のドローンの場合には、自己診断機能も付いているので、より安全性が高いと言えるでしょう。

③航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること
 空港周辺以外でもヘリコプターや他のドローンなどが飛行している可能性があります。
 飛行音が聞こえた場合には、自分のドローンの高度を落とし、近くに戻すなどするべきです。

④他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと
 法規制というものがここまでファジーな記載でいいのか、という話です。
 リーフレットなどでは『危険な飛行禁止』と記載されており、人を追い回すような絵が併記されています。
 ただ、規制する側として柔軟に(悪く言えば恣意的に)運用出来るようこのような記載になっているのでしょう。
 ドローンはかなりの騒音を発生させますから、騒音問題なども念頭に置かれているのではないでしょうか。

 また、他人のプライバシーに対する配慮についても求められているものと思われます。

⑤日中(日出から日没まで)に飛行させること
 北海道では、冬期間かなり日照時間が短くなってしまいますから、注意が必要です。
 客観的な根拠を求めるのであれば『日の出日の入り』という検索ワードで、地域ごとの日昇・日没時間を調べることが出来ます。

⑥目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
 これはかなり注意が必要です。
 中上位ランクのドローンの飛行性能は非常に優れており、あっという間に上昇し、見た目上は豆粒よりも小さくなってしまいます。
 また、コントローラ(送信機)の液晶画面でカメラの画像が常時見られますので、注意がそちらに行きがちとなります。
 しかし、『直接肉眼による目視』と限定されているので、カメラ越しでの確認はNGです。
 人口密集地区外の山林の場合でも、目視外の山の向こう側に飛ばすのは許されません。
 時たまメディアで取り上げられているVRゴーグルの使用も航空法に照らせば200g以上のドローンであれば国土交通大臣の許可が必要という事になります。

⑦人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること
 これも非常に厳しい規制です。
 水平・垂直ともに30mという規制ですから縦横斜め30mの距離を保持しなければなりません。
 不動産業で考えた場合、一辺30mの正方形の土地は約270坪で、かなり広い土地ですが、これは片側で30mと考えると前後左右の余裕を見れば1090坪と、とんでもなく広い土地が必要になります。
 (札幌市の標準的な価格帯の住宅は50~80坪程度)
 そう考えると人口密集地区以外の郊外の住宅地であっても、30mの距離は保持出来ない事も多いでしょう。
 ただ、『人または物件』と規定されている為、他人の土地が近くにあっても更地であればOKという事になります。

⑧祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
 これは当たり前とも言えますが、学校行事やライブ会場、民間スポーツクラブのイベントなど、公的でない集まりにも適用されるという点には注意が必要です。
 不動産業での活用という意味では、あまり気にする必要はありませんね。

⑨爆発物など危険物を輸送しないこと
⑩無人航空機から物を投下しないこと

 論外です。ドローンテロが流行っていますから、誤解されるようなことも避けるべきでしょう。

このように、ドローン規制では当たり前・常識的といえる規制と非常に厳しい規制とが混在しています。
 特に、目視外飛行と30m規制については、注意が必要ですから覚えておきましょう。

 
規制の対象となるドローン
以上のようにドローンの飛行に関しては、航空法上、『無人航空機』という扱いで、非常に厳しい規制が課されています。
特に市街地の飛行に関しては、国土交通大臣の許可を得ない限りほぼ不可能と言っていいでしょう。
前回紹介した不動産業で想定されるドローンの使途として、現状では原野・山林の調査にしか使えないといったのはこういった事情だったのです。

一方で、ドローンのうち重量が200gに満たないものは、『模型航空機』という扱いになり、航空法の規制の大半を受けないことになります。

200gに満たないドローンが航空法で受ける規制は航空法第99条の2のみで、空港周辺や一定の高度以上の飛行についてのみ国土交通省の許可が必要とされています。
ただし、公園や河川などの管理者のいる施設の飛行には管理者の許可が必要となりますし、公道上での離発着も出来ませんので、それだけは注意が必要です。
この規制を念頭に置いた上で、ドローンをどのように利活用していくのか、というのが重要な課題です。
次回は実際に運用しているドローンの機種について、紹介してゆきます。

札幌の不動産屋、ドローン活用を語る① ドローンの必要性

さて、今回から何度かに渡ってシリーズ記事『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』と題して、不動産業におけるドローン活用について、語ってみましょう。
ドローンというと、数年前から急激に安価・高性能になったこともあり、テレビなどでもよく取り上げられるようになったように感じます。

ただ、ドローンの運用や規制についてあれこれと書かれた記事はあるものの、それを具体的に特定の業界でどのように活用するのか、というノウハウを示した記事は、さほど見当たりません。

まぁ、そういう記事はアクセス目当てで検索にヒットする普遍的で当たり障りのない内容が多いというのが一つの要因。
また、ドローンに関する法規制はまだまだ明確化されておらず、グレーゾーンが多いという事情があります。
誤った法解釈で『こうするべき』と迂闊に示してしまうと、それが誤っている事が分かった場合に、ネット上での炎上のみならず、場合によっては刑事事件となる恐れもあるからでしょう。
 
ですから、今回のシリーズでは一応このような前置きを置いた上で、可能な限り突っ込んだ具体的な内容を記事としてまとめられればと思います。
 
【注意】
ドローンの利用については航空法を始め地域により様々な法規制があります。
本稿の内容はそれを網羅していることを保証しません。
などを参照の上、自己責任にてドローンを運用下さい。

ドローンの必要性

第1回の今回は、不動産業界におけるドローンの必要性についてお話します。
私が不動産業に携わる中で考える、特に札幌近郊の不動産環境におけるドローンの必要性・有用性について述べてゆきましょう。

①高所作業の高コスト化

不動産業において、『建物の管理』というのは一つの課題です。
業界外の方にはあまりピンとこなかもしれませんが、不動産業界には『管理会社』という、分譲マンションや賃貸マンションを管理する会社が存在します。
分譲の場合と賃貸の場合でかなり性質の異なる管理会社ですが、どちらにせよ建物の不備や不具合を監視する必要があります。

昨今、不動産管理会社の大きな課題として高所作業の高コスト化が挙げられます。

管理会社、工事業者問わず、最近、高所作業に関する費用が非常に大きくなっています。

・・・と、言うのも『屋根に昇れない』という人、かなり多いんですよね。
建物の維持管理に関するトラブルで、大きなウェイトを占めるのが屋根・外壁の問題で、こまめに点検をしなければ、雨漏りが発生する事になります。
正直に言ってしまえば、私が経営する管理会社でも、屋上点検の際に誤って滑落して労災事故が発生したこともあります。
(もちろん、労災を使って治療をしてもらい、治療中の配置換え等のケアも行ないましたが、とはいえ、本人の痛みや不便を考えるとそれでOKという話ではありません。)
私自身、不動産業に就いた当時は体力がないながら屋根の上へも昇っていましたが、現在は経営者として怪我をしては社の運営に関わりますので、高所作業は控えています。

就業人口の高齢化や若い方で高所恐怖症の方が多くなっている事、また、昇れる昇れないという以前に『わざわざ昇りたくない』という仕事に対するモチベーションの問題もあるでしょう。
今後、職人の高齢化や働き方改革だのが進んでゆくにつれ、高所作業にかかるコストは年々増加してゆくことが見込まれます。
 
そういう意味では『高所作業が出来る人になる』というのも一つの『稼ぐ方法』な訳ですが、今の教育体制の基ではなかなか、そういう職業の人口というのは増えてゆかないのでしょうね。
 
②建物の老朽化・樹木の伸長などの調査

前述しましたが、建物の維持管理に関するトラブルでは屋根と外壁に関するものが大きなウェイトを占めています。
札幌ではオリンピックから50年を経過する事もあり、古い建物が増加しており、Googleマップの航空写真を見ているだけでも、屋根が赤サビで真っ赤になった家が多く見受けられます。

屋根の錆は雨漏りの原因となりますし、それが躯体を弱らせ、シロアリの発生などにもつながりかねません。
剪定が行き届かず、枝木が張り出している築古戸建も多くなっています。

本来は屋根に昇るなどして点検するべきですが高所作業が高コストする中では、そう何度も高所作業をする訳にもいきません。
本格的な修繕は当然、屋根に昇るにしても初動点検、定期点検は可能な限りドローンで代替することが望ましいと言えるでしょう。
 
③建物からの眺望のシミュレーション
これは私の業態ではまったく出番がないのですが新築マンションの眺望を示すにあたって、ドローンで同高度から撮影した動画・静止画を使うという手法は、既に各デベロッパーが実施しています。
広告上、『ドローンで同高度から撮影したものです』等の注釈は必要ですが、眺望をウリにする場合には、イメージが付きやすい資料となるでしょう。

戸建の場合には、10~15m程度ですからあまり使い道はないかもしれませんが、ハウスメーカーなどが分譲する新築分譲団地では利用されるかもしれません。

④積雪時の調査
これは北国特有の問題ですが、ドローンの活躍による積雪時の調査にも期待しています。
人が利用していない土地・建物は当然除雪されていません。
札幌近郊では1~3月は1mを超える雪が積もりますから、立ち入っていく事も難しいような状況になってしまいます。

建物を取引するのであれば玄関までは除雪して、建物内を確認しますが、その場合でも建物の裏手の庭などにはなかなか手が回りません。
それ以上に、土地のみの取引や解体予定の建物など、わざわざ除雪をするコストを掛けられる案件ではない、という場合もあります。
勿論、雪のない状態を知っていることがベストではありますが、急ぎの取引などでそうはいかない場合に、ドローンでの調査は有用であると考えます。

 
⑤原野・山林の調査

これは不動産業者全体が、という事情ではなく、あくまでも私の業態での話ですが、原野・山林の調査においてもドローンは有用性を発揮します。

広大な、 或いは道路と接続していない山林や原野について、業務の依頼を受けた際に、数千~数万坪の山林の中を分け入っていくことは多大な危険を伴います。
積雪時は勿論危険ですが、冬でなくともヒグマが出ることもあれば、に滑落する危険性もあります。
また、航空写真だけでは全体の起伏や樹木の状況などを把握しきれませんから、
そういった土地の調査手段としてドローンは有用です。
 
とにかくドローンは有用だ!・・・けど・・・

このように、不動産業界においてドローンの必要性は非常に高いのですが、その一方で法律を順守してドローンを活用するのは非常に困難なのです。

前述の通り、ドローンの運用には航空法をはじめ様々な法規制があります。
これまでドローンの必要性を①~⑤の項目で紹介しましたが、合法的な運用では、原則的に建物の点検や市街地の撮影には利用することは出来ず、原野・山林の調査しか出来ないのです。

次回はドローンの活用を困難にしている各種の規制について、紹介してゆきましょう。

 
シリーズ『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』

事故物件公示サイト『大島てる』への削除依頼の方法とは?

不思議な話、最近また『大島てる』に関する問い合わせや相談が増えています。
◇ 大島てる
 http://www.oshimaland.co.jp/

私はテレビを見ない人で、彼のSNSもフォローしていないので、大島学氏の活動について詳しくないのですが、メディア露出が増えて来たのでしょうか。

この記事を公開する平成31年3月には、官報掲載の破産者情報を地図に落とし込んだ『破産者マップ』なるサイトが公開され、大きな話題を呼ぶとともにわずか数日で閉鎖されました。
この『破産者マップ』についても『大島てる』との類似が指摘されたり、大島学氏がコメントを出していたりします。

◇ 破産者マップについて事故物件サイト大島てるが緊急コメント「私が運営しなかった最大の理由」とは!? 弁護士見解も
 https://tocana.jp/2019/03/post_88663_entry.html

まぁ、こういう事を契機に検索ニーズが高まって、このブログにたどり着く人が多少増えたという事なのでしょう。

私はSEOをあまりやる気がないという話は記事中でも度々触れていますが、最近、やる気のないSEOの為にデータを見ていた処、Googleの『検索パフォーマンス』で『大島てる 削除依頼』『大島てる 削除』検索順位1.1のスコア。
念のためBingでも検索しましたが、広告とYahoo!知恵袋に次ぐ3位。

え、マジで?Σ(゚Д゚;というのが正直な感想。

『いやいやいや、大島てるのサイトには削除依頼の方法が公開されているはずですし、弁護士でも何でもない私には何も出来ませんよ?』というのが本音です。
別に私は『大島てる』の相手をして儲かる訳でもありませんし。

というか、検索上位に表示される記事『事故物件扱いされた物件についての『大島てる』氏とのやりとりを公開します』も、削除依頼の方法をまとめたものではありません。

大島学氏は色々なインタビュー記事で事実であればどんな圧力があっても削除しないが、事実無根の書き込みがあればきちんと対応するという趣旨のことを語っていますし、私も『大島てる』に誤った情報があれば、最近はその都度メールして削除してもらっています。
(インタビュー内容はあくまで趣旨であって原文は実際のインタビュー記事を参照してください。)

ですから、『大島てる』の誤情報は『手順さえしっかりとしていれば、簡単に削除してもらえるもの』という認識を持ってしまっていました。

しかし、よくよく調べてみた処、このブログの検索順位が上がってしまった理由が分かりました。
現在、『大島てる』への有効な連絡手段が公開されていないんですね。

『大島てる』で公開されている『お仕事依頼』のリンクでは『削除依頼はここでは受け付けておりません』とはっきり書かれています。
また、『大島てる』と『ファンキー中村』は中の島地区の凋落を嗤うかで紹介した通り、投稿へのコメントでの反論はまったくの無駄です。

コメントは地図上では表示されませんし、『怪談』という悪質なデマに対する正当な指摘であっても半年近く放置されます。


まぁ、『大島てる』への投稿やコメントの数を考えれば、いちいちチェックも対応もされないという事は、悲しい事ですが現実です。

そして、削除依頼のフォームなども無ければ、『大島てる』への連絡先の記載もありません。

少なくとも、高額で成約したマンションを『大島てる』に事故物件扱いされるの巻の元記事を掲載した平成27年当時はメールアドレスも公開していたし、削除依頼についての注意書きも掲載していたと記憶しています。


掲載場所は『大島てるオフィシャルブログ』でした。
今回、改めてオフィシャルブログの記事を『削除』というワードで検索しましたが、当時掲載していたメールアドレスや削除依頼の手順などは、見当たりませんでした。

ちなみに、私が知っているメールアドレスをウェブ検索しても、掲載されているサイトは殆どありませんでした。

これでは、『削除依頼を受け付ける』と公言しておきながら実際に削除依頼をしたい人にその方法は示されていない。
その一方で、事故物件の投稿はデマであってもサイトから『事故物件の新規投稿』でわずか3クリックで完了してしまう。

これはあまりに不公正なバランスであると言うほかありません。

しかも、大島学氏はそれを糧として講演活動やメディアやイベントへの出演で報酬を得ている訳ですから、責任は当然に発生しているというべきでしょう。

バランスを考えれば、削除も同じくらい簡単に出来るようにするか、新規投稿に裏付け資料の添付を要請するなど複雑化するなどしなければ、とてもフェアとは言えません。

しかし、私は弁護士でも何でもない、ただの地方都市の不動産屋ですから、『大島てる 削除』『大島てる 削除依頼』と検索して来る方に対しては何もして差し上げられません・・・と、思っていました。

私が削除依頼を代行する事も出来ませんし、デマ情報に関するカウンターサイトを運営するという事もありません。

しかし、今回の件でよくよく考えてみたところ、一つ、削除依頼をしたい人に対してお知らせ出来ることがあることが分かりました。
問題は『削除依頼をする先が公開されておらず、分からない』事です。

実は、『大島てる』は『株式会社大島てる』という法人によって運営されています。
あ、国税庁が法人番号と住所を公開しているぞ(; ・`д・´)

◇ 株式会社大島てるの情報|国税庁法人番号公表サイト
 https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/henkorireki-johoto.html?selHouzinNo=4010701015837

ちなみに、業務妨害罪とか言われて私の氏名や顔写真を公表されても困るので言っておきますが、この住所はWikipediaにも掲載されていますし、『大島てる』のサイトに掲載されている判決文にも記載されていますから、公知の事実ですし、当の大島氏らが公開している情報ですので悪しからず。

ただ、たとえ住所を公開して、顔出しをしていたとしても、『ここに削除依頼を郵送して下さい』という案内がなく、申請書式も公開していないのでは、普通郵便でそのような依頼をしたところでどこまで対応されるのか、未知数であるというのが正直なところ。
内容証明郵便とは言わずとも、書留くらいは付けておきたいところですね。
(現状でも膨大な郵送物が届いているでしょうから、それでも対応してもらえるのかは未知数ですが。)

また、仮に郵送での削除依頼が方法として有効であっても、『事実』であるものはどんなに困っていても削除してもらうことは出来ませんから、以下のようなことは記載しなければならないと思われます。
・差出人はどのような立場の人間なのか
・どのような理由で事実無根であると主張するのか
・削除を希望する物件の住所や『大島てる』でのアドレスなど

ただ、郵送にしろメールにしろ、『削除依頼』と『新規投稿』の労力のバランスがアンフェア過ぎて横行するデマを抑止する自浄作用がないのが『大島てる』の一番の問題なのです。

件の『破産者マップ』では、削除依頼の為に身分証明書などの個人情報を収集しており、ゆすり・たかりを疑われていましたが、一方でこういった削除依頼の方法をオープンにしていないようでは、『削除の代償に金銭を要求している』というような口さがない噂を立てられているのも、止むを得ないのではないでしょうか。

削除もワンクリックで簡単に出来るようにする、というのは一例ですが、以前も主張した通り、地図上からも反論・追記を含むコメントが表示出来るようにする等しなければ、ただの『件数稼ぎ』に終始していると見られて、コンテンツとしての信頼性がどんどん損なわれてゆくのではないでしょうか。

既に十分に知名度は上がっていますし、書籍執筆やメディア露出などで稼いでもおられるのでしょうから、大島学氏にはもう少し『公正さ』『フェアさ』に目を向けて貰えることを期待しつつ、本稿を終えたいと思います。

いずれ、『事故物件』の実務上の取扱いと裁判例について紹介したいと考えています。
それまでに炎上させられて私がネットから退場している可能性もありますが。

【関連記事】
◇ 高額で成約したマンションを『大島てる』に事故物件扱いされるの巻
◇ 事故物件扱いされた物件についての『大島てる』氏とのやりとりを公開します
◇ 『大島てる』と『ファンキー中村』は中の島地区の凋落を嗤うか
◇ 事故物件公示サイト『大島てる』への削除依頼の方法とは?

『大島てる』と『ファンキー中村』は中の島地区の凋落を嗤うか

当記事は2016年3月18日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

『事実は小説より奇なり』というのは人間の性質を非常によく表した言葉だと感じます。

人間は創作よりも事実を重んじるものです。
勿論、退屈で平凡な事実よりも、ドラマチックな創作の方が良い、という向きもありますが、
ドラマチックでセンセーショナルな事実であれば、それは創作に勝るでしょう。
『ノンフィクション』という言葉の魔力は非常に強力で、
それが故に『リアリティショー』『モキュメンタリー』といったジャンルも登場しました。

※ リアリティショー
   台本のないリアルな出演者の反応をウリにした番組。
   『電波少年』や『あいのり』、『テラスハウス』あたりですね。
  モキュメンタリー
   モック・ドキュメンタリーの略。ドキュメンタリー風の創作作品。
   『ブレアウィッチプロジェクト』が一番有名ですね。

ドラマやアニメの舞台(ロケ地)になった場所を訪れる『聖地巡礼』という行為も、
現実との繋がりを求めているという側面があると言えるでしょう。

また一方で、『隠されている事を知りたい』『舞台裏を見たい』という欲求も、
人間としてはごくごく当たり前の精神現象でありますが、
インターネット時代になって、テレビや新聞で扱われなかった情報が重宝がられたり、
逆にインターネットの誤った風説を真に受けてしまう人も多くいるようです。
まぁ、ネット以前から『陰謀論』は盛んにもてはやされていた訳で、
インターネットではそういった傾向が増幅されやすい、という事です。

特に『怪談』の分野では、その両面の心理的働きが非常に強い事は、
『ホントにあった怖い話』や『ホントは怖い○○○○』などのタイトルが、
非常に頻繁に使われている事からも、よくわかるでしょう。
(例:ホントは怖いグリム童話、ホントは怖いサザエさん、などなど)

人間は『知られざる真実』が大好きな生き物です。

さて、そんな人間心理を巧みに掴むコンテンツが『大島てる』です。
『大島てる』は事件や事故などで人が亡くなった建物をGoogleマップ上で表示するという、
『事故物件公示サイト』として不動産関係者だけではなく、
一般の方や怪談マニア、事故物件マニアまで広く注目されているコンテンツです。

 大島てる CAVEAT EMPTOR: 事故物件公示サイト
  http://www.oshimaland.co.jp/

私自身、不動産調査の一環として、『大島てる』を閲覧する事がありますが、
誰もが匿名で事故物件を追加・編集できるシステムの都合上、
その信憑性はWikipediaや2ちゃんねる程度のものでしかない
、と、
以前、本館の記事で紹介したところ、非常に大きな反響があり、
終いには『大島てる』管理人本人を名乗る方からのコメントなども寄せられました。
(まぁ、ご本人へメールで連絡していた内容とコメントの内容に齟齬があったので、
 コメントの方は『騙り』であったと判断していますが…本当の処は分かりません。)

 ◇ 『高額で成約したマンションを『大島てる』に事故物件扱いされるの巻』

話は変わりますが、不動産の価格ってどのように決まっているか、ご存知でしょうか?
不動産の俗語『一物四価』が大ウソってホント?』では、
不動産鑑定士が国や自治体に示す『鑑定価格』と、『実勢価格(時価)』が、
入れ子構造・相互干渉的に影響しあって決まってゆく、と紹介しましたが、
その『実勢価格』はどのように決まるかと言えば、
資本主義の原理で、需要があるものは高値になり、需要のないものは安値となります。

つまり、『誰も欲しくない不動産の価値は、どんどん下がってゆく』訳ですね。

『不動産を欲しい・欲しくない』と判断をするのは買い手ですが、
不動産を購入する時のファクターって、どんなものでしょうか?
もちろん、価格もあるでしょう、交通の便が良いであるとか、
病院や学校が近いというのも要因でしょうし、治安の良し悪しも重要でしょう。

しかし、表面に見える便利さだけがファクターではありません。
高級住宅街のイメージの強い大田区田園調布は正直めちゃくちゃ不便ですし、
札幌の住宅街でも高値の付く『山鼻』地区は地下鉄駅まで徒歩20~30分かかりますが、地下鉄駅から徒歩5分の土地の大半よりもずっと地価が高いのです。

このように実勢価格は『なんとなく良さそうなイメージ』で形成されている部分も大きいのです。

この商売をやっていると『いくら便利でも、○区や○○区はイヤだよ』と言う方もいますし、一方で中心部までかなり距離があり地下鉄からも遠い『明日風』『東雁来』を、新興住宅地(ニュータウン)であるという理由で購入される方も多いですが、これはまさに合理的・数値的利便性ではなくイメージで不動産を選んでいるという好例でしょう。

一方で札幌市内の『なんとなく悪そうなイメージ』を持たれている地域として、
私が非常に注目をしているのが『中の島』地区です。

中の島は札幌市豊平区、地下鉄南北線の中の島駅周辺の地区です。
札幌の地名の由来ともなった河川、豊平川の東側に面するこの地域は、
市内中心部にほど近く、かつ、戦後まで市街化されずに農地のまま残っていた為、
昭和40年代と早いうちからマンション開発が進んだ地区です。
海のない街である札幌市にとっては、豊平川沿いは今でいう東京の湾岸エリアのような扱いで、オーシャンビューならぬリバーサイドの景観がウリになりました。
また現在でも『豊平川の花火が見える』というキャッチコピーには人気があります。

しかし、そのように利便性の高い地域だったからこそと言えますが、
地元の人間…特に現在50~60歳程度の方の口からは、
暴力団関係の事件が起こったであるとか、治安が悪いという評判をたまに耳にします。
歓楽街のすすきのに近い事からも、すすきので働く方が中の島を住まいにしているという話も聞き、
正直に言って、そういった職業の方が多い、という事は事実のようです。

他にも、以下のような要因から、中の島の評価は若干下がり気味である事は否めません。
1.中の島のメインストリート『中の島通』の東側に『豊平川通』、西側に『平岸通』が整備された事で、昭和後期から人の流れが大きく変わり、中の島が素通りされてしまう事が多くなった。

2.中の島の中心に位置する北海道工業大学が北海道科学大学に名称変更し、本部が手稲区前田に移ってしまった事で『落ち目』の印象、将来性への不安を与えてしまった。
  ※ ただし、本部は移りましたが中の島キャンパスは当面の間、移転の予定はないとの事です。

3.隣接する『平岸』や『澄川』は6条を超す大規模な地名なのに対して、『中の島』は2条までしかない小規模な地名である為、地域としての存在感が薄い。

しかし、個人的主観ですが、中の島はそんなに悪い街ではありません。
事実関係が明確でないので『暴力団はいない』とは言えませんが、
『反社会的勢力排除条項』などの普及により、今現在で治安が悪い、という話はそう聞きません。

そんな中の島地区ですが、不動産業に従事する者として今後を不安に思うのが、先述した『大島てる』という大きなコンテンツの存在です。

人間は『知られざる真実』(に見えるもの)を好みますから、
大島てるというノンフィクションの草の根サイトの影響力は想像を絶するものがあります。

『大島てる』は日本中どころか世界規模のコンテンツですから、
中の島の事故物件だけが取り上げられている訳ではありません。

しかし、私の知る限り『中の島』だけは少し事情が異なるのです。
それが『ファンキー中村』氏の怪談にまつわる投稿の存在です。

ファンキー中村氏とは何者なのか?公式サイトのプロフィールを引用してみましょう。
http://funky-nakamura.com/profile/index.htmlより引用)

 ファンキー中村 プロフィール
 ファンキー中村(小林克也氏より名づけられる)
 北海道岩見沢市生まれ。出生後すぐに東京へ移住する。
 その後、返還翌年の沖縄県那覇市へ移住するが小学校4年の2学期に母の体調不良により故郷北海道に戻る。
 15歳で渡米、ここで出会ったアメリカ車の魅力に強く惹かれ、
 その知識により帰国後は20年近く雑誌にてライター活動をする。
 某ディスコにてDance Music系のRemixerを歴任、
 公式ドラッグレースのメインMCを務めるなど多岐に渡り、活動の幅を広げる。
 本人自ら体験した怪談(実話怪談)を語るという分野の先駆者であり、怪談クリエーターとして現在は活躍中。
 (以下略。強調・下線は筆者による。)

この、『本人自ら体験した怪談(実話怪談)』の中に、札幌に居住中のエピソードが多くあるのです。
特に中の島の分譲マンション、中古マンションに関するエピソードは、
そのうち4つがマンション名を特定された上で『事故物件』として『大島てる』に登録されています。

YouTubeにはそのうち3つの動画が投稿されていますから、その内容も併せて見てみましょう。

ちなみに大島てるやYouTubeへ投稿したのは誰かは、分かりませんが、
大島てるへはいずれも平成24年9月23日に投稿されていることから、同一人物による投稿と思われます。

<ファミール中の島>
 怪談のタイトル『事故物件』
 YouTube  http://www.youtube.com/watch?v=5wR5F9xaxww
 大島てる http://www.oshimaland.co.jp/?p=sx7kh5je

<第2佐々木マンション>
 怪談のタイトル『におい』
 YouTube  http://www.youtube.com/watch?v=ADas9Cd9zO8
      http://www.youtube.com/watch?v=OZT7Fl8Vq6g
 大島てる http://www.oshimaland.co.jp/?p=8mbwbw6s

<カトレアハイツ札幌>
 怪談のタイトル『屋上の女』
 YouTube  動画は投稿されていないようです。
 大島てる http://www.oshimaland.co.jp/?p=ckvjiru8

<京王もなみマンション>
 怪談のタイトル『呼ぶ女』
 YouTube  http://www.youtube.com/watch?v=th2YzLpveOM
 大島てる http://www.oshimaland.co.jp/?p=t9s73z23

動画内の情報では物件を特定するには至りませんが、
動画で『これはインターネットだから言わない方がいいかな』など、
意図的に所在をボカしているような言い回しをしている事から、
ファンキー中村氏が定期的に開催している怪談ライブなどでは、
実際に建物名まで言及してエピソードを語っている可能性もあります。

前述したように、中の島に関してマイナスイメージを持つ方は確かにいますし、
開発から40年も経っていれば、そりゃー事件や事故が実際に起こった事だってあるのかもしれません。
しかし、怪談を根拠として私有財産が『事故物件』として取り扱われている事には、大きな問題があります。

まぁ、ファンキー中村氏はあくまで実話だというテイで怪談をしている訳ですが、
もし実話であるとしたって『心霊現象が起こる』というのは、事故物件と扱えるものではないでしょう。

私の周りのマンション購入希望者や不動産関係者からも、
『中の島って事故物件が多いんでしょう?』と聞かれる事があります。

大島てるを見たという方もいれば人から噂を聞いたという方もいますが、
風説というのはそういうもので、少なからず大島てるの影響があるとは言えるでしょう。

先の話に戻りますが、これが『なんとなく悪そうなイメージ』であって、
中の島の不動産価値を下げる要因となりうるものであると言えると私は考えます。
特に、昭和に建設されたマンションに関して、イメージへの悪影響は計り知れません。

これら4件の投稿が平成26年9月23日にされて以来、
どれだけの人がこの風説に触れ、中の島地区に悪印象を持ったでしょうか。
そこで、私は各投稿に対してコメントで異議を唱える事にしました。

4つの投稿に対するコメントでの指摘の要点は下記の2つ。
1.怪談を根拠に特定のマンションを『事故物件』扱いするのには問題がある。
2.動画がYouTubeにある3件については、動画内で所在が特定出来ない。

、<ファミール中の島>


<第2佐々木マンション>

<カトレアハイツ札幌>

<京王もなみマンション>

しかし、平成27年10月29日に投稿してから現在に至るまで約5か月、これら4つの投稿が修正・削除されるような気配はまったくありません。

別に、私は『大島てる』管理人の大島学氏やファンキー中村氏が主導して、
中の島地区を貶めているとは考えていませんし、
そんな証拠がどこにもない以上、そんな事実もどこにもありません。

しかしまぁ、中の島にお住まいの方、特に同じマンションを所有の方は、
明確な因果関係を立証する事は出来ないものの、
こういった投稿が『大島てる』にある事で、資産価値に良い影響を与える事はない訳です。

『大島てる』管理人大島学氏の運営スタンスは高度に一貫しています。
事故が事実であれば、関係者の心情に配慮するのではなく公共の福祉として公開する。
事実ではない投稿でも、コメント等での指摘がない限り、そのまま公開する。

…2ちゃんねるの元管理人のひろゆき氏にも通じるような、
インターネット上の大コンテンツを育てられる方に特有の意思の強さですが、
この件に関してはコメントで指摘があってから約5ヶ月が経っているのに、投稿は掲載されたまま。
しかも、コメントは地図から直接確認する事は出来ず、別ページを開かねばなりません。

これでは自浄作用を期待したり閲覧者の正常な判断を仰ぐ事は出来ないのではないでしょうか。

そして、一つの事実として『大島学』氏と『ファンキー中村』氏は、
複数度に渡ってコラボイベントを開催している
、という事も付け加えておきましょう。

ちなみに平成28年3月26日に開催されるイベントの告知を引用しましょう。

 事故物件とゆうれい噺
  稀代の怪談クリエーターファンキー中村の実話怪談と、
  事故物件検索サイト管理人の大島てるとの一騎打ち!
  現実に存在する”忌地”と、それらに巻き起こる”怪異”とが成す双璧!
  何をお持ち帰り頂くかは、あ・な・た・し・だ・い・・・

なーんだ、本人がコラボイベントに『実話』って書いてるんですから、きっと実話なんですね。
大島学氏も、このキャッチコピーのイベントに主役格として出演するという事は、ファンキー中村氏の話が実話である事を積極的に追認はしているかは兎も角、ある程度の理解をもってコラボレーションしているのでしょう。

ちなみに2ちゃんねるには、ファンキー中村氏の会談が実話か否かを検証するスレッドがあります。
 ファンキー中村の実話怪談を検証するスレ
  http://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1375874452/

もっとも、別に怪談が実話かどうかなんていう事は、本筋ではないのです。
最初に述べたように、これがあたかも『知られざる真実』であるかのように、
インターネット上に風説が広がってしまうことによって、
中の島地区にとって良くない影響が出ているのではないか、という事を懸念して已みません。

繰り返しになりますが、この記事は何らかの事実関係を断定するものではありません。
くれぐれも邪推しないで下さいね。判明している事実は、下記の事項だけです。
1.投稿者は不明だが、『大島てる』に『ファンキー中村』氏の怪談を根拠とした投稿が掲載されており、投稿へのコメントで指摘があっても半年近く掲載され続けている。
2.投稿者は不明だが、YouTubeに『ファンキー中村』氏の怪談が投稿されている。
3.『大島てる』管理人の大島学氏とファンキー中村氏は、複数回に渡りコラボレーションイベントを開催している。

それ以外の事は一市民の私には知り得ませんし、知るつもりもありません。
ただただそれだけの事ですが、
迷惑を被っている中の島の住民の皆様には、心からお見舞いを申し上げます。

<H27.03.19追記>
 この記事の公開から数時間後、当日の午前中には今回紹介した4つの投稿はすべて削除されました。
 前回と異なり、大島てると名乗る方からのご連絡等はありませんので、
 おそらくは前回のコメントの方は『騙り』だったのでは…と考えています。

 それはそれとして、この記事をどうするのか?というお話ですが、そのままにしておきます。

 と、言いますのは、根本的に『自由な投稿に比して自浄作用が非常に弱い』という問題があり、
 もし、削除依頼を出した所で『削除して終わり』という対応がされるだけで、それ以上の対応が無い事で、
 ユーザーによる虚偽・欺罔など不適切な投稿がなされ続けている、という現状について、
 一般の認知を得なければ、今回のように一つの地域の不動産価値が、
 二年半に渡って毀損され続けるという異常事態が今後もまかり通る事になります。

 勿論、ユーザーが自由に投稿したものについて全ての責任を管理人が負うというのはナンセンスですが、
 ここまでの大コンテンツになり、テレビへの出演や有料イベントの開催をしているにも関わらず、
 自浄作用を高める措置もせずに『指摘されたら削除してお終い』というのでは、
 無責任な風説で資産価値を下落させられた不動産所有者の方と比して、あまりにアンフェアでしょう。

 勿論、私的なコンテンツに対して、あれこれと横から口を挟む正当な権利など、私にはありません。
 ですから、せめて私は私的なコンテンツとして、ユーザーのリテラシーを高める為、
 啓蒙活動としての当該記事を維持してゆこうと考え、この記事を軌道修正をしない事を決めました。

 インターネットは自由な情報発信の場ではありますが、
 この20年であまりに裾野が広がった事もあり、ある種の無法地帯に陥っていると言えるでしょう。
 利用者それぞれがメディア・リテラシーを持って、情報を適切に扱えるようになる未来が実現する事を望みます。

<H30.2.15追記>
 とかなんとか言ってから、もう2年近くが経ちますが、
 大島てる氏はファンキー中村氏とのコラボをしなくなってしまったようです。
 辞めてしまった、というのは語弊があると考えこういう書き方をしますが、
 2016年は一緒に全国を回っていたのに、不思議だなーと思います。
 ◇ 『大島てる ファンキー中村』Google検索
 ◇ 『大島てる ファンキー中村』Bing検索

 まー、客の入りだとか分け前の問題だとか、
 色々な事情があるでしょうから、根拠のない邪推はやめましょう。

 とりあえず元記事を書いて削除された4つのマンションについては、
 本日現在において、誤った情報が復活していない事に安堵していますが、
 誤った情報、いい加減な情報は未だ溢れており、
 これが自浄作用のある仕組みに改められる様子はありません。

 昨年末には大島てる氏に対して殺害予告をした人物に対して、
 警察に通報するほか、自身でも住民票を取得したり自宅を確認するなどして、
 自首を促していたようで、かなりナイーヴに対応しているようです。

 ◇事故物件サイト「大島てる」管理人を殺害予告した犯人逮捕!!
   http://tocana.jp/2017/11/post_15073_entry.html

 勿論、違法行為であるのか否かという事が大前提ではありますが、
 逮捕から数ヶ月経っても犯人の氏名や生年月日を晒し続けているのを見るに、
 人に言うのは好きだけれども、人に言われるのは大嫌い、という性格なのでしょう。

 前回のような例もありますし、私も住民票を取られたりとか、
 手紙が送られたりとか炎上を誘導されるようなことがあるのかもしれませんね。

【関連記事】
◇ 高額で成約したマンションを『大島てる』に事故物件扱いされるの巻
◇ 事故物件扱いされた物件についての『大島てる』氏とのやりとりを公開します
◇ 『大島てる』と『ファンキー中村』は中の島地区の凋落を嗤うか
◇ 事故物件公示サイト『大島てる』への削除依頼の方法とは?

事故物件扱いされた物件についての『大島てる』氏とのやりとりを公開します


この記事は2018年2月13日に新規に書き下ろしたものです。

前回『高額で成約したマンションを『大島てる』に事故物件扱いされるの巻』の最後は、このような締めくくりをしました。

平成27年8月30日追記
『大島てる』氏からの当記事へのコメントでの申し出により、
先方へメールにて物件情報を送信したところ、該当する投稿は削除されました。

削除されるまでにコメントで『大島てる』を名乗る方とやりとりしましたが、
メールとコメントで矛盾する部分が多くあり、
実際に本人だったのか否か、また複数の運営者がいるのか等、
私には判然としない部分が多かったように思われます。

当時非公開だったメールでのやりとりを含め、次の記事に掲載予定です。

当時はこの件について、あまり突っ込んで記載はしていませんでしたが、元の記事を書いて2年半、物件が成約してからかなり経ちますから、この際、『大島てる』氏とのやりとりを直接送ったメールも含め公開し、この件についての私の見解を記述したいと思います。

ブログへのコメントについては従来公開していたもので、私からのメールへの返信はなく、私のメールのみの掲載ですので、文章の使用許諾や著作権云々という問題にはならないものと判断しています。

文書については原文ママですが、着色や下線・強調は私によるものです。

= = = 以下、引用部分 = = =

大島てる 
 大島てるです。

 誤報を削除させて頂きたいと思います。
 物件はどちらでしょうか?

細丼 善太郎 【この道なぁに?in札幌】 
 >大島てる様
 いつも貴サイトを利用させて頂き、ありがとうございます。

 また、誤報の削除の申し出についてもありがたく存じますが、
 本文中でも触れている通り、ここで物件名を明記する事は、
 投稿型コンテンツにありがちな編集合戦を誘発させる可能性があり、
 売主買主双方のお客様にご迷惑となる可能性がわずかでもある以上、控えさせて頂きたく存じます。

 貴サイトへの削除依頼が憚られたのも上記の理由によります。

 メールなどの非公開性が保たれた方法で、削除をお願いしたいのですが、如何でしょうか。

 

大島てる 
 >細丼 善太郎 【この道なぁに?in札幌】さん
 では,公開できる範囲内でヒントをお願いします。

 7月13日付ブログ記事の内容も参考にさせて頂いた上で物件の特定を試みてみます。

大島てる 
 弊サイト中に
  『平成○○年○月頃  事故のあった部屋を格安で売り出していた』
 との記述は見当たりません。

細丼 善太郎 【この道なぁに?in札幌】 
 >『大島てる』様
 先に述べた通り、本件についてはコメント欄で物件名を明示する事はございません。

 >弊サイト中に
 >『平成○○年○月頃  事故のあった部屋を格安で売り出していた』
 >との記述は見当たりません。
 当然、検索してすぐに引っかかるようでは、物件名を秘匿しても無意味ですから、
 貴サイトへの書き込みの内容についても主旨はそのままに言い回しを変更しています。

 現状では、貴方様が大島てる様ご本人であるのか、
 私には特定出来ない状況でございますので、
 貴社のメールアドレス宛に、物件を特定の上、
 当ブログのURLを明記し、メールをお送り致しました。
 ご参照の上、ご対応頂けますようお願い申し上げます。

 今後とも何卒宜しくお願い致します。

【このコメントの直前に後述するメールを送信しています。】

大島てる 
 >細丼 善太郎 【この道なぁに?in札幌】さん
 「変更」ということはそのような書き込みはそもそもないということでしょうか?

大島てる 
 >細丼 善太郎 【この道なぁに?in札幌】さん
 存在しない書き込みの訂正は致しかねます。

細丼 善太郎 【この道なぁに?in札幌】 
 >大島てるさん
 いいえ、ございます。
 『言い回しを変更』と言うのは、
 まったく同じ文言で検出されないよう、
 同義語で置き換えたという意味でご理解下さい。

 貴サイトの該当物件のURLについては、
 info@oshimaland.co.jpへ明示した上でお送り致しましたので、
 そちらをご参照の上ご対応下さいませ。

 実際にご確認頂ければ、
 『言い回しを変更』という表現についてもご納得頂けるものと存じます。

細丼 善太郎 【この道なぁに?in札幌】 
 >大島てる様
 該当物件の記事を削除頂き、ありがとうございました。

 また、本件に関しては、数日に渡り返信が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。

 当ブログは不動産実務に関する実体験を開示することで、
 不動産取引を検討する方や同業者の生きた資料とすべく執筆しておりますが、
 なにぶん個別の事象に関してはすべてを開示する訳にもゆかず、
 物件名を明示して回答する事が出来なかった件についてもお詫び致します。

 もし、大島てる様さえよろしければ、当記事でのコメントのやりとり並びに、
 私から先般お送りしたメールをまとめて、どのような経緯があったか、
 一つの記事としてブログで公開させて頂ければと存じます。
 もし了承を頂けるのであれば、再度コメント頂ければ幸いでございます。
 コメント頂けない場合には、了承がなかったものとして、記事には致しません。

 どちらにせよ今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

= = = 以上、引用部分 = = =

・・・と、ここで『大島てる』を名乗る人物との交信は途絶えます。
このやりとりで私は『コメントがなかった場合には記事にはしない』と書いています。
Σ(゚Д゚;約束破ってんじゃん!

これには理由があります。
今回記事にしたのは、このやりとりと矛盾するメールの内容や、この1年半後、『『大島てる』と『ファンキー中村』は中の島地区の凋落を嗤うか』の経緯から、私とやり取りをした『大島てる』氏はなりすましだったと判断した為です。

というか、『記事にしない』というのは私の一方的な宣言であって、大島てる氏からの意思表示があって何か約束をした訳ではありませんからね。

まず、やりとりの途中で私から送ったメールを見てみましょう。

= = = 以下、引用部分 = = =

弊ブログへのコメントについてのご確認 2015年8月30日 20:06
 株式会社大島てる 代表取締役 大島 学様

 いつも貴サイトを利用させて頂き、ありがとうございます。

 突然メールを差し上げる事をお許し下さい。
 私は札幌市で不動産業を営む傍ら個人ブログを運営している者です

 先月、貴サイトへの投稿内容について触れた記事をブログに掲載したところ、
 『大島てる』様を名乗る方から、ブログで触れた物件はどの物件なのか、
 削除をするために教えて欲しいという旨の書き込みを頂きました。

 私と致しましては、事実関係無根の事とはいえ、
 インターネット上で物件名を明示する事で、
 お客様にご迷惑をお掛けする可能性がある以上は、
 お答えできませんと回答したにも関わらず、
 『大島てる』を名乗る方からは繰り返しコメントを頂いております。

 該当記事
  http://ameblo.jp/sapporo-michi/entry-12049224538.html

 ご本人であるのか特定出来ない状況でこのようなメールをお送りするのは非常に恐縮ですが、
 もし、弊ブログにコメント頂いている『大島てる』様がご本人であった場合には、
 ブログにて触れた物件は下記の物件となりますので、記事の削除を頂ければと存じます。http://www.oshimaland.co.jp/?p=sjgo85r3

 もし、弊ブログへのコメントがなりすましであって、
 本メールにお心当たりがないという事であれば、
 大変申し訳ございませんが、本メールについては無視頂ければと存じます。

 突然の不躾なメール、大変失礼致しました。
 今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

 細丼 善太郎

= = = 以上、引用部分 = = =

(元記事のURLは現在リンク切れとなっています。)

・・・これは次回の記事とも絡んでくる内容なのですが、
このメールをして、コメントでもメールを送った旨を明示しているのに、
その2時間後も執拗な・・・というか、ある種感情的なコメントをされています。
『「変更」ということはそのような書き込みはそもそもないということでしょうか?』
『存在しない書き込みの訂正は致しかねます。』

どうもしっくり来ない、というのが正直なところです。
また、大島てる氏本人も8月30日以前の27日時点で、
私の記事を『大島てる』名義のTwitterとFacebookでシェアしています。

この記事に関する大島てる氏のフォロワーの人々の感想は非常に好意的でした。

大島てる氏によるこのシェアの仕方やコメントの様子を見るに、
もしかして炎上させようとしたのかな?と思わなくもないですし、
『大島てる』氏は複数人いて、統制が取れていないのかな?とも思うのですが、
それを主張する根拠はどこにもありませんし、邪推をするのは止しましょう。

(炎上させようとしたのかな、とは今も少し思っています。
 と、言うのは、次の記事『中の島』の時にはシェアされず、
 何のコメントもなしに即座に該当の物件が削除されて終わった為です。
 自身に関する記事を必ずシェアする方針であれば、そのようにはしないはずです。)

まー、このようにして自分の中で釈然としないなーという想いがあり、
総合的に判断をして、コメントの『大島てる』氏に対して一方的に宣言した、
『記事にしない』という前提を破って今回の記事をまとめる事にしました。

もし、これらすべての『大島てる』氏が同一人物だったとしたら、
てんでバラバラで一貫しないこれらの対応について公開する事を『大島てる』氏は嫌がるかもしれません。

しかし、ご本人が『他人(ひと)の嫌がる事をやる』事を次世代の創業者へのメッセージとして送っているそうなので、まー、たぶん大丈夫でしょう。

 大島てる氏「私を訴えてくる大家の方が幽霊より怖い」 – ライブドアニュース
  http://news.livedoor.com/article/detail/13615795/

次回は、このやりとりの1年後に書いた記事、
『大島てる』と『ファンキー中村』は中の島地区の凋落を嗤うか』を再録します。

【関連記事】
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◇ 事故物件扱いされた物件についての『大島てる』氏とのやりとりを公開します
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◇ 事故物件公示サイト『大島てる』への削除依頼の方法とは?

高額で成約したマンションを『大島てる』に事故物件扱いされるの巻


当記事は2015年7月13日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

不動産業者の仕事は、取引が終わったからといって完全に終わる訳ではありません。

買主側に付いた場合は、当然その不動産と長く関わって行くことになります。
買主様がお住まいになったり、事務所にしたり、賃貸アパートなら管理受託したり…
お客様との付き合いが続く限り、その不動産とも付き合ってゆくことになります。
最終的には、その不動産を手放す時も、売却を依頼して頂けるなら、
大変光栄なことで、不動産屋冥利に尽きるというものです。

売主側に付いた場合、一旦その不動産とは直接関係が無くなるとはいえ、のちのちのトラブル発生を予見しておく必要があります。
とはいえ、買主側にも業者がいる場合には、こちらから積極的に接触は取りません。
土地を売却した後は、無事に建物が建ってゆくかを見守ります。
建物を売却した場合には、その後問題なく、居住・運営・賃貸しているか、定期的に確認します。

買主側にも売主側にも立つ、『両手』取引の場合には、この両面があるので責任も重大です。

・・・と、毎度毎度前置きが長いですね。

『大島てる』というウェブサイトがあります。
事故物件の情報を広く募っているサイトで、Googleマップから事件事故の情報を閲覧する事が出来ます。

事故物件公示サイト: 大島てる CAVEAT EMPTOR
 http://www.oshimaland.co.jp/

誰でも簡単に投稿出来る為、Wikipediaや2ちゃんねるのようなもの、と言えば分かりやすいでしょうか。
事件事故の情報というのは不動産取引上、不動産屋としては知っておかなければならない事項ですから、
不動産を売買する場合には、出来るだけ見ておくようにしています。

勤め先で管理しているアパートで火災があり、不幸にも入居者が亡くなってしまった事がありましたが、
火災が起こったのが明け方で、朝9時頃にはもう事故情報が登録されていました。
新聞やニュースに掲載された情報に関しては、ほぼ確実に反映されると考えて良いようです。

しかし、事故物件の情報を気軽に投稿出来るという事から、たとえ情報が真実であっても、
不動産価値の下落に繋がる為、掲載して欲しくないという批判もあります
し、
何より、誰でも投稿出来るため、デマやいい加減な情報が多いのも事実です。

既にタイトルに結論は書いてしまっているんですが、
先日、『大島てる』を閲覧していた処、過去に取引したマンションが掲載されていました。

  『平成○○年○月頃  事故のあった部屋を格安で売り出していた』
   ※ 物件が特定出来ないように、細かな言い回しについては若干変更しています。

えっ…もしかして当時、情報を見落としていた…?おかしいなー…
と、よく日時を見てみると、どうやら私が売った部屋の事を言っているらしいのです。

(改めて当時の流通履歴を見直しましたが、その時期に他に売りに出た部屋はありませんでした。)

その物件は、付き合いの古いお客様が所有していたマンションで、
私がこの職業に就いて初めて売却したマンション、かつ、初めて『両手』で成約した物件でした。
(それまでに中古マンション以外の土地や建物の取引経験はありました。)
かなり独特な販売戦略が見事に『当たった』、非常に思い出深い物件の一つです。

では、本当に事故物件だったのかと言えば当然、事実無根です。

まず、前の所有者が貸していた入居者の方は確かにお亡くなりになっていたのですが、
ご病気で病院に入院してでの事ですから、事故物件ではありません。
(通常、事故物件というのは『建物内で』、『自殺、他殺、事故死』されたものを指します。)

また、『格安』というのも大きな誤りで、かなり高額での成約でした。

具体的には当時のの直近の成約実績より2~3割も高額で成約しています。
(これはかなり大々的なリフォームを実施した関係もあります。)
これを機に建築当初からの成約履歴を確認していたのですが、当時築25年のマンションでしたが、成約価格は築10年の頃と同水準でしたから、如何に高額で成約したかが分かって頂けるでしょう。
恐らく、同じマンションの住人が広告を見て相場も分からずに『安い、事故物件に違いない!』と、『大島てる』に投稿したものと思われますが、非常にタチが悪いですね。
『大島てる』は、誤情報で事実確認が出来た場合には削除に応じる事もありますが、ある種の炎上商法で、ないものをないと証明する『悪魔の証明』をわざわざしてゆくのも、火に油を注ぐ行為になりかねないと考え、現在のところ、静観しています。
(時期だけで、号室が明示されていない為、無いものを無いと示しづらい、という面も…)

また賃貸物件の募集広告『告知事項あり』と記載されていたことを根拠に、
『大島てる』への登録を行なっている方もいるようですが、
『告知事項あり』は必ずしも事件事故による心理的瑕疵物件に限られた記載ではありません。

 

『大島てる』は、非常に意義があるサイトだと考えていますが、
このように、利用する際には、インターネットリテラシーが必要になりますね。

一般の方が不動産の購入をする際に参考にすることも多々あるとは思いますが、
せいぜいWikipediaや2ちゃんねる程度の信憑性、と考えておきましょう。
(まー、Wikipediaの信憑性についてもかなり誤解している方も多いようですが…)

平成27年8月30日追記
『大島てる』氏からの当記事へのコメントでの申し出により、
先方へメールにて物件情報を送信したところ、該当する投稿は削除されました。

削除されるまでにコメントで『大島てる』を名乗る方とやりとりしましたが、
メールとコメントで矛盾する部分が多くあり、
実際に本人だったのか否か、また複数の運営者がいるのか等、
私には判然としない部分が多かったように思われます。

当時非公開だったメールでのやりとりを含め、次の記事に掲載しています。

【関連記事】
◇ 高額で成約したマンションを『大島てる』に事故物件扱いされるの巻
◇ 事故物件扱いされた物件についての『大島てる』氏とのやりとりを公開します
◇ 『大島てる』と『ファンキー中村』は中の島地区の凋落を嗤うか
◇ 事故物件公示サイト『大島てる』への削除依頼の方法とは?

マンション管理適正化法は、中古マンションの流通をまったく適正化していない!

関連記事
 ◇中古マンション売買における『重要事項に係る調査報告書』とその実務上の問題点
 ◇プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻①
 ◇プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻②
 ◇プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻③

さて、中古マンションの流通の重要な役割を担う『重要事項に係る調査報告書』は、
通常マンションの管理会社に属する管理業務主任者が作成しますが、
現状ではその内容に問題があるケースが多い、というお話を展開してきました。

今回は管理会社と管理業務主任者の問題を制度的な観点から見てゆきましょう。

マンションの管理会社と管理業務主任者の法的な根拠は、
平成13年施行の『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』によります。
この、略称『マンション管理適正化法』の根底には、

マンションの管理組合を管理会社から保護しよう、という理念があります。
具体的には、マンション管理組合との契約の際には重要事項説明を行う事や、
修繕積立金などを始めとする財産の管理や会計処理について定められています。

一方で、マンションを新たに買おうとする消費者の保護までは考えられていません
例えば、国土交通省では違反行為について監督処分の基準を公開していますが、
この中でマンション管理組合との契約の際に管理業務主任者が作成・説明する『重要事項説明書』に、誤りがあった場合には業務停止処分が定められていますが、『重要事項に係る調査報告書』の記載に誤りがあった場合の罰則については、定められていないようです。
一部、第79条『書類の閲覧』による罰則に該当するかもしれませんが、
それにしたって業務停止処分ではなく、指示処分ですから、扱いが非常に軽いことがわかります。
  http://www.kanrikyo.or.jp/format/pdf/tsuutatsu/2011shobunkijun.pdf

また、ここまでにも何度か例に出して来ましたが、
取引対象となる部屋を含めた各室内の状況についての確認に対して、
あくまで共用部のみの管理を受託しているのであって、

専有部(各室内)を管理しているのではないから、その質問に対して回答する必要がない、というのは一つの考え方でありますが、
多くの管理会社はこれを業務の省力化のための方便にしているフシがあります。
 
マンションを購入するお客様は利害関係者ですから、
詳細な情報は示せないまでも管理会社が過去に問題を知り得ているか否か』程度は、購入者に対して開示する義務があると思うのです。
 
例えば土地の売買の場合宅建主任者がこんな事情を買主様に知らせずに仲介した場合には、宅建業者には重要事項説明義務違反として責任を負わされるケースがあります。
 ・暴言や威嚇を伴うご近所トラブルを知りつつ、それを買主に知らせなかった。
 ・近隣に反社会的勢力(暴力団等)の事務所があるのを知りつつ、それを買主に知らせなかった。
 ・過去に殺人事件事故があったことを知りつつ、それを買主に知らせなかった。
 
また、以上の例では『知りつつ、知らせなかった』ケースを取り上げていますが、
『知らなかったので、知らせなかった』場合でも『調べて知っているべきだった』と判断される場合があります。
(例えば、プロが少し注意して調べれば明らかに分かる、というような場合。)
 
一方で『ちょっとやそっと調べても分からない』ような情報については、
宅建主任者が知らなかったことに対する責任を追及される事は、少ないと言えるでしょう。
 
これに倣って言えば、管理業務主任者についても、
取引対象となる部屋に影響するような周辺環境や事件事故の履歴は、当然に明らかにすべきでしょう。
 
宅地建物取引主任者に比べると、管理業務主任者の方がはるかに新しい資格ですから、
まだ十分に制度が醸成されていない、といえるかもしれませんが、
管理業務主任者が作成した『重要事項に係る調査報告書』をもとに
宅建主任者が『重要事項説明書』を作成することを鑑みれば、
そういった怠慢がマンションを中古で購入する方へ与える被害は甚大なものです。
 
もちろん、マンション管理会社の顧客は各マンションの管理組合である訳ですから、
まだ所有者ではない購入希望者を何もかも最優先する事は出来ないにしろ、
購入希望者が安心して購入できるようにする環境づくりをする事で
結果的に将来の管理組合の構成員を大事にし、そのマンションの流通価値を高める事にもなるのです。
『マンション管理適正化法』ですから、流通に主眼を置かないのも分かりますが、
現状の管理会社のマンション流通に対する在り様は、あまりにもずさんに過ぎます。
国交省は『重要事項に係る調査報告書』の重要性を考慮し、もっと制度化を進めてゆくべきだと思います。

当記事は2015年3月31日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻③

さて、前回、前々回、に続き『重要事項に係る調査報告書』の誤記載に騙されてしまったお話。
  ◇中古マンション売買における『重要事項に係る調査報告書』とその実務上の問題点
 ◇プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻①
 ◇プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻②

事例の二つ目は、『建物の不具合』についての問題。

 
売却を受託したマンションの一室を内覧させて頂いた際に、
室内を注意深く観察していると『ある不具合』があるのでは?と感じたので、
売主様に『こんな不具合ありませんでしたか?』と確認すると、
『よく分からない』『特に気付かなかった』という回答。
…判定が難しい不具合のため、住んでいるだけでは分からない事も多いのです。
 
私自身も、確たる証拠がある訳ではないので、まずは不具合の可能性を認識して、
その日の段階ではまだ荷物も搬出出来ていなかったので、そこまでとしました。
 
後日、管理会社に『重要事項に係る調査報告書』を請求するにあたって、
私は、『事件事故の履歴』『近隣トラブル』『暴力団の入居』などと併せて、
その部屋を含め、同一のマンションの共用部や他の部屋で過去に『ある不具合』の記録がないかと確認しました。
 
すると、先方から返って来た『重要事項に係る調査報告書』への記載は、こんな塩梅。
その部屋の不具合については所有者(売主)から報告を受けていないため、不明です』
うーん、怪しい。
と、言うのは私が確認したのはその部屋の事だけではなく、
マンションの共用部や他の部屋についても確認しているのに、
その点についての言及が一切ない、というのは他の箇所に不具合があるのでは?と考えたのです。
 
他にも不明点や不備箇所があったため先方の管理業務主任者に、
『その部屋の事は分かりました。他の部屋では不具合はないんですね?と確認すると、
向こうは『管理会社として、他のお部屋でそういう事があったとは聞いていません』との事。
とっても胡散臭いのですが、相手がそう言い張っていて、証拠がない以上、どうしようもありません。
 
そして後日、売主様が荷物を搬出した後、鍵を預かって数日かけてじっくり確認してみると…
やはり『ある不具合』が発生していることが判明しました。
 
その不具合の解消のために色々と管理会社へ働きかけたり、
今後の対応について検討するために様々な調査を重ねてゆくうち、
他の部屋にも『ある不具合』についての苦情が出ている事が判明しました。
しかも、その苦情について、先方の管理業務主任者が対応していたとの事。
 
つまり、『他のお部屋でそういう事があったとは聞いていません』というのは真っ赤なウソだったのです。
 
こちらは私も薄々感じていたので、『騙された』という訳ではないかもしれませんが、非常に悪質な不具合隠しの虚偽記載ではあると言えます。
 
今回のケースの場合、原因は以下の3点。
 ①管理会社へ口頭での確認もしつこく行ったが、管理会社が虚偽を答えた。
 ②売主も『ある不具合』を認識していなかった。
 ③『ある不具合』は即座・明瞭に判明する種類の不具合ではなかった。
 
ここまで来ると、もう現地を検査する以外に見破る術はありません。
 
このマンションとこの管理会社についてはこの問題以外にも、
色々と手を焼かされて大変苦労しましたが、無事に成約して数年が経ちますがトラブルにもなっていません。
後日、管理会社にはオトシマエを取って貰うべく、行政官庁に報告をしてお灸を据えてもらいました。
ただ、故意ではない事という主張が認められてしまい、また、我々不動産仲介業者は当事者ではないという理由から行政処分には至りませんでした。
このように、マンションの管理業というものは行政的な縛りが非常に緩く、大手業者もいい加減な事をやって開き直っている、非常に危険な業界です。

元記事を書いた2015年3月の翌月4月には、大手管理会社『北海道ベニ-エステート』の社員による1.8億円もの着服が発覚しましたが、これは氷山の一角にすぎません。
(ちなみに同社は2年後の2017年4月に『三菱地所コミュニティ株式会社』に合併されています。)

実質的な法規制がない『重要事項に係る調査報告書』については、かなりいい加減な処理がされており、仮に誤りがあったとしても管理会社は開き直り、責任を負わない事が大半です。

消費者としては、これを回避することは、非常に困難です。
宅地建物取引士はこのような実情を強く認識した上で、消費者保護のために、
きちんとした裏付け調査を行ってゆく必要がありますが、
今回取り上げた事例のように宅建士が努力をしてもどうにもならない部分が多すぎますから、まず第一に、国による法規制が最も重要であると考えます。

当記事は2015年3月30日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻②


さて、前回に続き『重要事項に係る調査報告書』の誤記載に騙されてしまったお話。

まず一例目は、購入したマンションの修繕積立金が、購入後数ヶ月と経たずに値上げされてしまった、というケース。

しかも、その値上げの案内には『平成○○年の理事会で決議の通り値上げします』と、購入前から値上げが確定していたことが記載されています。
 
買主様は以前から値上げが決まっていたのにそれを知らずに買ってしまった訳で、これが調査不足によるものであれば、宅建業法に定める重要事項調査義務に違反します。
 
それでは、経緯を追ってゆきましょう。
 
このマンションは宅建業者が以前の居住者から買い取り、転売していたものです。
 
修繕積立金は、だいたい5年刻みで上昇してゆくため、
 お客様と一緒に内覧をした際、売主業者に『修繕積立金の値上げ予定はありますか?』と確認しました。
 売主業者の社員は『私は担当者ではないのでわからないが、手元の資料には値上げの予定は書かれていない』との回答。
 
買主様が物件を気に入ったので、買付申込書を売主業者へ送付しました。
 
売主業者の担当者と話し、値上げの予定がない旨の記載がある重要事項説明書を送ってもらいました。
 また、売主業者が管理会社から取得していた重要事項に係る調査報告書』も併せて受け取りました。
 
管理会社に電話し、『重要事項に係る調査報告書』を作成した管理業務主任者に、
 『修繕積立金や管理費の値上げ予定はありませんか?』と確認したところ、
 先方からは『将来どうなるかは分かりませんが、現在確定している値上げ予定はありませんと回答。
 
⑥取引条件の折衝、重要事項説明書のチェックが済んだので、契約を結ぶ事としました。
 後日、無事売買代金の全額を支払い、マンションは買主様の名義へ変更されました。
 
⑦購入後しばらくして、買主さんの元へ冒頭の修繕積立金の値上げ案内が届きました。
 
 
さて、どうしたものでしょう。
私としては、まずは買主様から値上げの案内を頂いた上で、事実関係を確認する事にします。
売主業者にも調査義務と告知義務がありますが、売主業者は管理会社へ問合せをした結果、重要事項説明書に『値上げの予定はありません』と記載したはずです。
私も管理会社の管理業務主任者からそのように聞いていましたから、まずは管理会社へ連絡をすることにしました。
 
『マンションについて売買前(⑤)に問い合わせた者ですが、
  値上げの予定について確認させて頂いたのを覚えていらっしゃいますか?』
 先方は、覚えているとの事。向こうの声の調子は変わりません。
 『将来はどうなるか分からないが、あの時点で確定した値上げ予定はないとお聞きしましたが、間違いありませんか?』
 間違いないという。向こうの声の調子は変わりません。
 『買主様のところに値上げをするという案内が来ているのですが。しかも平成○○年の段階で決議されている事だとか』
 少しの沈黙の後、管理業務主任者はこのようにまくしたてます。
 『あっ!…あーあー、はい。うちが管理を受託する前に決まっていた値上げですね。
  受託する時に聞いてなくて、今回急に理事会から値上げするという連絡を受けて驚いているんですよ。
  うちが管理を受託する前の事ですし、うちは知らなかったことなので、非はありませんよ。』
 …それならそうと、なんで最初の段階でしらばっくれたんでしょ。
 
 
・・・こういうケース、非常に困ります。
売主業者も『値上げの予定はない』と重説に書いてきているし、
管理会社も『値上げの予定はない』と言ってきている以上、
私としてその情報の裏付けを取るためには、
住民を捕まえて『値上げの予定がありますか?』と聞くしかない訳ですが、
あいにくそのマンションはオートロック式で、それをするには玄関で待っているしかありません。
当然それはかなり迷惑な行為ですし、下手をすれば買主様に迷惑をお掛けする事になりかねません。
 
マンションの管理組合が管理会社に窓口を任せている以上、理事長などに直接コンタクトを取るのも、本来禁じ手なのです。
 
今回のトラブルの原因は大きく以下の3点。
 ①管理会社が管理を受託する際、それまでに決まっていたことをきちんと確認していなかった。
  また、値上げの予定やスケジュールについては、担当者として常に確認・協議しておくべき内容。
 ②売主がずっとそこに住んでいた人ではなく、不動産業者の転売だった。
 ③オートロック式のマンションで、他の住民と直接コミュニケーションを取る事が困難だった。
 
せめて売主がずっとそこに住んでいた方であれば、売主から値上げの情報が入って来たかもしれません。
とはいえ、売主業者に対して『管理会社だけでなく元々の所有者に対し調査をするべきだろう』と言うのも、ちょっと酷な話です。
 
今回のケースでは管理組合にも多少の非があるのかもしれませんが
基本的に問題の大部分は管理会社のいい加減な情報管理によるものです

しかもこれ、札幌では最大手クラスの管理会社のミスですからね。

管理会社として、修繕積立金の計画については受託時に確認する義務がありますし、直近数ヶ月において値上げの予定があるものをミスしていたというのは、もう話になりません。
 
当方として責任を追及しましたが、『重要事項調査報告書の作成は管理組合からの管理委託契約に含まれていない内容だから、誤った記載をしても責任は負わない』などと開き直られてしまいました。

 ⑧の段階で非を認めて平謝りするならともかく、『ウチには責任はない』などと開き直るのが、大手管理会社のやる事なのです。

この件については、監督官庁である国土交通省も含めて徹底的に責任を追及したかったのですが、買主様とご相談の結果、事情が許さずに最終的には泣き寝入りとなってしまいました。

当方からは買主様にわずかばかりのお詫びを致しましたが、十分な対応であったとは言えず、未だに後悔しています。

 

当記事は2015年3月29日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻①


ワタクシ、まんまと騙されてしまいました。
具体的にどのように騙されたのかと言えば、分譲マンションの管理会社が発行する『重要事項に係る調査報告書』の内容の誤りを見抜けなかったのです。

『重要事項に係る調査報告書』とは?
『重要事項に係る調査報告書』については過去にこんな記事を書きました。
 ◇中古マンション売買における『重要事項に係る調査報告書』とその実務上の問題点

具体的にどんなものかという事を過去の記事から抜粋しましょう。

 平成13年公布の「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づき、分譲マンションの管理会社は国土交通省への登録が必要となりました。
 また、利害関係者からマンションに関する重要な事項について照会を受けた時は、『重要事項に係る調査報告書』を発行することとなっています。

 『重要な事項』は具体的にはこのような項目になります。
 ・管理費・修繕積立金の金額と全戸分の積立総額、その住戸の滞納額
 ・バルコニーやトランクルームの専用使用権の内容
 ・駐車場等の使用権の内容、承継の可否
 ・耐震診断調査、アスベスト使用調査の記録の有無

 宅建主任者が作成し説明する『重要事項説明書』とは別のものですが、
 作成するためには『調査報告書』は必ず参照するべきもの
で、
 中古マンションの取引に於いて両者は不可分の存在ということが出来ます。
 (宅建業法第35条第1項第6号及び宅建業法施行規則第16条の2)

分譲マンションの管理を行なう為には国土交通省の免許を受ける必要があり、
免許を受ける為には国家資格『管理業務主任者』を置かなければなりません。

『重要事項に係る調査報告書』についても、管理業務主任者が作成する事が多いようですが、不動産取引における『重要事項説明書』と同様に『重要事項に係る調査報告書』ヒジョーに内容がいい加減な事が多い書類です。

一般的にA4~A3用紙一枚で済む非常に簡素な様式なのに、
誤記載がない調査報告書って実は少数派なのでは?という気がするくらいです。
あくまで私の経験上の印象ですが、問題がないケースは40%程度という気がします。

ですから、『重要事項に係る調査報告書』を資料にして、
『重要事項説明書』を作成する宅地建物取引士にとっては、
どのようにして誤記載やミス、ウソを見抜くか、という事が一つの腕の見せ所になります。

過去の記事では、誤記載を見抜く為には、このような事が必要と書いています。
  ◇費用がかかっても調査報告書は最低でも2度取得する
  ◇書面を受け取っただけで終わらず、管理会社の担当者に内容を確認する
  ◇調査報告書の内容について入居者や管理人などから裏付けを取る

当然、プロを自認する私としては、上記のような確認を必ず心がけています。
しかし今回、誠に遺憾ながら、マンション管理会社に2度も騙されてしまったのです。
(それぞれ別のマンションで1度ずつ騙されてしまいました。)

具体的にどのように騙されたのか、お恥ずかしい限りですが、
次回以降、それぞれのケースを紹介してゆきましょう。

当記事は2015年3月28日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

中古マンション売買における『重要事項に係る調査報告書』とその実務上の問題点


最近、立て続けに中古マンション関係の仕事を頂いており、
先日も中古マンションの取引が2日連続でありました。

そんな事もあり、今日は中古マンション流通上の大きな問題点
『重要事項に係る調査報告書』について紹介したいと思います。

Ⅰ.『重要事項に係る調査報告書』とは?
 平成13年公布の「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づき、
 分譲マンションの管理会社は国土交通省への登録が必要となりました。
 また、利害関係者からマンションに関する重要な事項について照会を受けた時は、
 『重要事項に係る調査報告書』を発行することとなっています。
 また、併せて『管理規約』『分譲時のパンフレット』なども発行してくれます。

 『重要な事項』は具体的にはこのような項目になります。
 ・管理費・修繕積立金の金額と全戸分の積立総額、その住戸の滞納額
 ・バルコニーやトランクルームの専用使用権の内容
 ・駐車場等の使用権の内容、承継の可否
 ・耐震診断調査、アスベスト使用調査の記録の有無

 宅建主任者が作成し説明する『重要事項説明書』とは別のものですが、
 作成するためには『調査報告書』は必ず参照するべきもので、
 中古マンションの取引に於いて両者は不可分の存在ということが出来ます。
 (宅建業法第35条第1項第6号及び宅建業法施行規則第16条の2)

Ⅱ.管理会社の問題点
(1)発行費用が高額である
 宅建業者が不動産調査にかける費用で高額なものの2大巨頭です。 
 もう一つは登記関係の書類(全部事項証明書、図面証明書)です。

 具体的に、ライオンズマンションを管理する大京アステージの料金体系を見てみましょう。
 (平成26年8月現在)
  ・重要事項調査報告書の発行→2,160円
  ・重要事項調査報告書発行→4,320円
  ・その他関係資料(写)の提供→重要事項調査報告書とセット
 …とまぁ、だいたい税別5000~7000円くらいかかるのが標準的です。
 高額な管理会社では資料一式で一万円以上かかる事があります。
 たまーに、無料で発行してくれる稀有な管理会社もあるのですが…

 高額と言っても数千~数万円ぽっちの話なのですが、
 詳細は後述しますが、この数千円の出費を惜しむ宅建業者が大変多いのです。

 そもそも、我々宅建業者にしても、お客様から仲介手数料を頂く訳で、
 それを重要事項説明書や売買契約書の作成費用と考えた場合には、
 20~30ページの書類で何十万、何百万と頂いている訳です。
 (書類の作成だけではなく、物件調査、条件交渉、段取りなども重要な業務ですが。)

 きちんとした調査に基づく書面であれば、決して高額とは言えないと思います。

(2)内容がいい加減である場合が多い
 前段できちんとした調査に基づく書面であれば、決して高額とも言えないと書きましたが、
 つまりはきちんとした調査に基づく書面ではない場合が多いのです。

 例えば近隣とのトラブルや事件事故の履歴については、
 買主さんとしては一番気になる部分なのではないでしょうか?

 このような事を管理会社に照会した場合、きちんと対応してくれる会社も多いのですが、
 『個人情報保護の観点から回答は差し控えさせていただきます』などと、
 訳の分からない逃げ口上を記載してくるろくでもない管理会社も多くいます。
 そのような場合には、高圧的に出るのではなく、穏便に答えを出させる方法があります。
 そういった手法を持っている、しっかりとした宅建業者に依頼するのがよいでしょう。

 また、管理会社の雛形にない項目については、別料金を取られることがあります。
 『事件事故の履歴』『近隣トラブル』『暴力団の入居』などは、通常雛形にない項目です。

 雛形にない項目の確認については、こちらの確認をスルーする管理会社さえいます。
 特にマンション管理を主業務としていない管理会社などは、ひどいものです。
 
 このほかにも、駐車場契約の内容が異なっていたり、
 トランクルームがないのに書面では『ある』とされていたり、

 こんなもんに何千円も払ってるのか?と言いたくなる事が多々あります。

Ⅲ.宅建業者の問題点
◇取引直前に1度しか取得しない業者が多い
 宅建業者の仲介業務は通常、3ヶ月以上の契約を結ぶ事は出来ません。
 法律上期間の制限がないとされる『一般媒介』についても、
 実務上の指針では3ヶ月以内の契約期間とすべきとされています。

 いざ数十万円の手数料が入ると決まれば数千円の発行費用など屁でもないのですが、
 3か月後に契約が更新されなかった場合には調査費用は業者の持ち出しです。

 ですから、物件を紹介する為に色々な宅建業者に連絡をしますが、
 私:『登記関係の書類と、重要事項に係る調査報告書を送って頂けますか』
 相手:『いえ、まだ取得していなくて…』
 というパターンが大半で、取引直前まで取得しない業者が殆どのようです。

 最初に1度取得して、取引直前には取得しない業者もいるのですが、
 これは直前の滞納状況などが把握出来ないので、なお悪いですね。

 確かな調査を行う為には、販売開始時と取引直前の最低2回は取得すべきでしょう。

 ある会社で出会ったベテランの不動産営業マンは、
 『わざわざ報告書取らなくても担当者に確認すればいいでしょ』と言っていましたが、
 有料の書面でも間違うのに、口頭で聞いた無料の内容が信用できるとは、到底思えません。

Ⅳ.改善案
 宅建業者の私が言うのも欺瞞のようですが、
 現状を制度的に解決しようとすると管理会社に対しての法令制限が必要でしょう。
  ◇記載するべき事項を国土交通省が細かく指定する
  ◇初回の発行から1年以内の再発行については料金を徴収しない
  ◇追加の確認事項について、別料金徴収の禁止
  ◇書面のみではなく面談での説明を義務付けする
 …うーん、これを実現すると、発行手数料がもっと上がるかもしれません。
 ただ、2度の発行や追加事項の調査についてケチる宅建業者は減るでしょう。
 まぁ、私以外からこのような声が上がっていない事からも、実現はしないでしょう。

 現状のまま状況を解決しようとすると、宅建業者の努力と負担が必要です。
  ◇費用がかかっても調査報告書は最低でも2度取得する
  ◇書面を受け取っただけで終わらず、管理会社の担当者に内容を確認する
  ◇調査報告書の内容について入居者や管理人などから裏付けを取る

 …結構、負担になる事なのですが、仲介手数料を頂いて調査をするのですから、
 費用や時間がかかっても、きちんと調査をするのが物の道理でしょう。

 テキトーな調査でもきちんとした調査でも仲介料が変わらないのであれば、
 きちんとした調査を行う宅建業者が駆逐されてしまいます。

 これは、そもそもが仲介料の上限が法令で定められているのがオカシイという話でもあるのです。

V.消費者に出来る事
 『重要事項に係る調査報告書を見せて頂けますか?』と聞いてみましょう。
 売却を依頼する場合でも、購入を依頼する場合でも、同様です。

 売主側の業者であれば最初の段階から取得していれば、
 きちんとした調査を行っている業者であるという事が出来るでしょう。

 買主側に付く場合には色々な物件を紹介する訳ですから、
 紹介する物件すべてについて報告書を取得する訳にはいきません。
 それでも、購入する物件が確定して、買付申込書やローンの手続きが進んで、
 契約より前の段階で見せてもらえなければ、
 『ちょっとその業者信用できないんじゃーないの?』という事になります。

長々と書いてしまいましたが、実務上の現状の問題提起と改善案、
宅建業者や消費者がそれぞれに出来る事をまとめていますので、一度じっくり読んでみて下さいな。

当記事は2014年8月12日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

REINSに掲載されていない物件があるってホント?


さて、前回『REINS(レインズ)って何なの?』では、
REINSがある事で売主・買主ともに開かれた市場での取引が出来る、と説明しました。

それでは、すべての中古マンションがREINSに登録されているかと言えば、そうではありません。
REINSに登録されていない物件というのもあります。
この仕事をしているとお客様からこんな依頼を受けることがあります。
『他社さんのHPに掲載されてる物件、仲介してもらえませんか?』
そう言われて調べてみると、確かに他社のHPに掲載されているのにREINSへの登録がない。

そんな物件はこのような事情から登録がされていないのです。
 ① 業者が売主で、登録の義務がない物件
 ② 一般媒介契約なので、登録の義務がない物件
 ③ 登録義務はあるけど、約1週間の登録期限まで登録しない物件
 ④ 登録期限を過ぎているけれど、違反して登録をしていない物件
 ⑤ そもそも存在しない物件=『おとり物件』

①~③は合法ですが、④と⑤は違法行為です。
(まぁ、正直③は売主さんへの背信行為で極めてセコい行為だと思っていますが。)

REINSへの登録というのは、売主がその業者だけに売却を任せる事と引き換えに、
他の業者からも広く買主を募集する義務を業者が負う
という側面がありますから、
業者が売主である①や、他の業者にも依頼出来る一般媒介の②は、義務とはなりません。
(義務ではありませんが、任意でREINSへ登録することはよくあります。)

③は、前述した約1週間の期限までに自社で買主を見つけて、
売主からも買主からも手数料を受ける『両手』とするための手法です。
一応違法行為ではありませんから、大手業者でも横行している手口です。

④は、これも『両手』を目的に、REINSへの登録をしていない場合ですが、こちらは違法です。
売主から『REINSに登録しないで欲しい』と言われた場合には、一般媒介を結ばなければなりません。
というか、一般の方はREINSを閲覧出来ませんから、
売主さんは登録してもらっていないことを知らないことの方が多いでしょう。

⑤は非常に悪質で、存在しない売り物件を広告してしまう、というパターン。
これを不動産業界の俗語で『おとり物件』と言います。
(まったく実態がないケースから、既に成約しているものを延々と掲載しているケースなど様々です。)
SUUMOやathomeなどの一般向けサイトを見ていると非常に好条件な物件なのに、
物件の外観写真や間取りしか掲載されておらず、内装の写真がない事が多いです。
酷いケースでは間取の画像すら掲載されていない事もあります。
いや、もっと酷いのは内装の写真もあるのにおとり物件、というケースでしょうか。

土地や一戸建てであれば、一目瞭然ですからおとり物件もやりづらいのですが、
マンションであれば号室さえ伏せておけば、
インターネットなどを経由して間取図や面積、管理費などを調べる事が出来ますから、
本当に売りに出ているか否かを第三者が判断するのは難しいものなのです。

何故こんな事をするのかと言えば、購入見込み客を捕まえるため、という目的があります。
客:『HPに掲載されている○○マンションのお部屋なんですけど…』
業者:『あ~、つい先日契約してしまったんですよー。
    今、マンションは非常に人気があって、すぐに売れて行ってしまうんです。』
客:『そうなんですかー』
業者:『お客様のご希望条件を聞かせて頂ければ、次から優先的にお知らせしますよ』

なーんて話になるんだそうです。
正直、そんな風にして購入希望者を集めても上手く行く気がしないのですが、
事実として、『あからさまにおとり物件だな』という物件に出会う事はちょくちょくありますから、
集客の手法として、もしかしたら有用なのかもしれません。(やろうとは思いませんが)

以上、REINSに掲載されない物件の5種類を紹介しました。
合法なケースにせよ、違法なケースにせよ、あえてREINSに掲載しないという事は、
買主側に業者が付いてほしくない、という意思の表れでもあります。

そのような物件をあえて購入しようという時は、買主側の業者を立てられなくとも、
契約条件や物件の内容など、ある程度身構えて取引に臨んだ方がよいでしょう。

当記事は2015年7月11日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。