C-5 位置指定道路を市道にしてほしいとき


位置指定道路』は『公道』と『私道』の中間的な取扱いで、
『最もトラブルが多い種類の道路』と言っても過言ではありません。

札幌市には古くからの位置指定道路が数多くあり、
除雪関係の問題を始めとした各種トラブルも後を絶ちません。

勿論、位置指定道路は現在も新しいものが認定され続けていますが、
最近の位置指定道路は、きちんと測量・分筆してあったり、ある特定の人間しか通行しないものだったり、利害関係者に持ち分を配分していたりと、それなりに気配りされていますから、初期の位置指定道路よりは、ずっと扱いやすいものになっています。

しかし、既存の道路はなくなりはしない訳で、位置指定道路はどんどん増えてゆきます。

『位置指定道路』はあくまで私道ですから、舗装・配管・除雪その維持管理については土地所有者の責任となります。
ただ、具体的にどのような管理をするべきか、定められている訳ではありませんから、アスファルト舗装が剥がれて砂利道になっていたり、除雪がなく冬の間通行出来なかったり、位置指定道路の管理状況は、お世辞にも行き届いているとは言えないというのが現実です。

そうであれば、いっその事、市道として管理してほしいという周辺住民の意見をよく耳にします。
札幌市への相談件数もかなりの数に上るようで、わざわざQ&Aにそのための専用のページが用意されています。

 私道を市道として認定してほしい
  http://www.4894.city.sapporo.jp/cgi-bin/isDetail2.asp?sURL=file://FAQ/Daily/1199.xml

この方法では、幅や状況について各区の『土木センター』に相談したうえで、
主に3つの基準を満たすものを市道に認定すると提示しています。
8m以上の道路幅(既に家屋が建ち並んでおり拡幅が難しい場合は4m以上)があること
建築基準法上の道路となっており、沿線に住宅が建てられ、生活道路として利用されていること
道路用地は市に寄附すること

以上のように位置指定道路を市道にする簡単な基準が書かれていますが、
より詳細なガイドラインとして市道認定のガイドブック 私道から市道へが存在します。

こちらのパンフレットは、認定のための基準のほか具体的な数値基準、認定の流れが解説されています。
無論、事例はケースバイケースなので最終的には『市の窓口に相談して下さい』という形式ですが、
図解付きでよくまとまっており、概ね分かりやすい資料と言えるのではないでしょうか。

特に、私道が札幌市道として認定されるまでの手順を示すチャートについては、よくできています。

詳細はパンフレットを見てもらうとして、いくつか重要な点を抜粋して紹介しましょう。

◇『位置指定道路』の無償での『寄付』が必須
市道認定は現在『位置指定道路』である土地を、札幌市に寄付することが必要となります。
つまり、大前提として所有者が寄付してもよい『位置指定道路』でなければ『公道』にしてもらう事は出来ないという事です。
他人の位置指定道路を所有者の承諾なしに市道にすることは出来ませんし、
位置指定道路ではない単なる通路の寄付は受け付けられない
という事ですね。

市道認定の為の申請をするのは、所有者本人でなくとも可能ですが、
所有者が分からない場合には、寄付が成り立ちませんから、どうにもなりません。

つまり、既に亡くなった方が所有者である場合には、その相続人全員から印鑑証明書の提出を受けて寄付を受け付けるか、遺産分割協議書(印鑑証明書付き)によって相続登記をする必要がなります。

また、倒産・解散などで存在しなくなった法人が所有者であった場合は最悪です。
理論上は清算人破産管財人を見つけて来たり、選任したりして法人財産の処分をすることになりますが、裁判所に申し立てたところで受け付けられるという話を聞いたことはありません。

この他、個人が単に転居をしているようなケースであっても、所在が分からないことも多くあり、それが原因で認定手続が進まないこともあるようです。

自治体とはいえ、土地の所有者を完全に把握できる訳ではないのです。
(特に、納税の対象とならない私道の場合には、それが顕著です。)

◇市道認定されても維持管理は最低限
おそらく、市道として認定してほしいという方の一番の要望は、
『市の費用で除雪をしてほしい』というところがあると思うのですが、
現在市道でないような幅員の狭い土地については、幹線道路並の水準の除雪を期待することは難しいかと思います。
除雪が入るのは幅員8m以上の通り抜け道路です。
私は、幅員が8mを超える位置指定道路というのは、あまり見た記憶がありません。
詳しくは『A-14 除排雪の取り扱いを知りたいとき』を確認して下さい。

では、市道になって何の意味もないかと言えばそうではなく、上下水道やガスの配管工事の為の『掘削許可』を個人ではなく市からもらう事が出来るようになります。
除草、砂利の整備、アスファルト舗装などの維持管理についても、ある程度は期待出来るでしょう。

特に使い道がなく、特に固定資産税が課税されているような位置指定道路をお持ちの方は、
いっその事、札幌市に寄付をして認定道路にしてもらうのも一つの方法かと思います。
プラスにはならなくとも、マイナスではないのですから。

◇市道認定の為には、大変な時間がかかる
共有となっている位置指定道路に関しては所有者探しだけでも一苦労なのですが、
仮に所有者が全員判明していたとしても、所有者全員の承諾を得た上で、
測量による境界の確定や分筆をした後、札幌市に対して土地を寄付します。

なんと、寄付したからといって自動的に市道になる訳ではありません。
札幌市議会で市道認定の決議が必要となり、その後、市道となったことが告示されます。

申請してから市道認定まで、平均的には2~3年を要するとのことですから、大変なものです。

勿論、各段階で止まってしまってそれ以上先に進めない、という事例もたくさん目にしています。

◇位置指定道路と市道認定では、役所の部署が違う
位置指定道路に関する手続きは『札幌市都市局建築指導部』の扱い、
位置指定道路を市道にする手続きは『札幌市建設局道路認定課』の取り扱いで、
『局』から管轄が違うので、全然一元化されていないのです。

札幌市のHPには『道路関係の担当部局一覧』というコンテンツがありますが、
管轄が『課』からしか書かれていないので、パッと見、その辺の事情はハッキリと分かりません。

位置指定道路は位置指定道路として、市道は市道として、同じ市役所でも部署によって判断が異なる事があります。

縦割り行政と言われない為には、きちんと部局間での連携をして、
道路に関する包括的なガイドラインを作っていく必要があるのではないでしょうか。

当記事は2013年09月23日および2013年12月11日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。