調19 札幌アートヴィレッジ地区 夏の様子と平成27年度の価格

当記事は2015年05月15日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

平成27年4月12日の札幌市長選挙を受け、平成27年5月2日には、新市長 秋元 克広氏が就任しました。
3期12年を務めた上田 文雄前市長の副市長でもあった新市長ですから、今後の札幌市の行政は上田市政を発展させたものになる、と言われています。

さて、今後の市政には除雪問題や地下鉄延伸の有無、市電の再延伸を始め、
都市計画上、不動産流通上にもさまざまな影響が出てくると思われますが、
今回はいくつもある懸案事項のうち、非常に注目度が低いもの…
『札幌アートヴィレッジ地区』を再び取り上げてゆきましょう。

過去の記事はこちら
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区

前篇では都市計画上の歴史、後篇では各区画の具体的経緯を紹介しましたが、一言で言ってしまえば、鳴かず飛ばずの産業団地ですね。

平成2年からずっと札幌市が分譲・賃貸を行なっていますが、
芸術の森にちなんで、利用は芸術関係の業種に限定されているため、
現在運営されているのは『芸森スタジオ』だけという体たらくなのです。

かつては地場のゲームメーカー、ハドソンの中央研究所がありましたが、
ハドソンの子会社化とブランド消滅に伴って閉鎖され、現在は転売先を探しているところです。

アートヴィレッジには未利用区画が2区画ありますが、この価格は年度ごとに改定されます。
  札幌市 札幌アートヴィレッジ:分譲・賃貸区画
   http://www.city.sapporo.jp/keizai/biz_info/danchi/art-kukaku.html

さて、もう25年も売れ残っている団地、どのような値動きをしているのでしょうか。
前年対比でみてゆきましょう。(具体的な価格は札幌市のホームページをご参照下さい)

 第1区画  分譲価格:前年比 3.3%↑    賃貸価格:16.9%↓
 第2区画  分譲価格:前年比11.6%↑    賃貸価格: 6.9%↓

Σ(゚Д゚,,)札幌市サンよ、ホントに売る気あんのか?

20年以上売れ残っている土地の分譲価格が今更値上がりするなんて馬鹿げているでしょう。

この値上がりの原因はどこにあるのでしょうか?
札幌市に限らず、自治体が不動産…特に土地の取引をする場合、
まずもって価格の根拠として重要視されるのが『公示地価』ですから、
もしかしたら公示地価が大幅に上昇した影響なのかもしれません。

札幌市の場合は、公示地価が区ごとに分かりやすくまとめられていますから、
その資料『土地価格地図』を見てみましょう。 
  札幌市 土地価格地図
   http://www.city.sapporo.jp/keikaku/chika/chika.html

・・・え?札幌市の地価って全体でも0.9%しか上昇してないし、
南区に至っては0.2%のマイナスなんですけど!(;´∀`)
ちなみに平成26年は全市で1.3%の上昇、南区は±0%(変動なし)。
更に、芸術の森に一番近い地点の地価も、横這いか下落で、上昇はしていません。

つまり、アートヴィレッジの分譲価格上昇の根拠は公示地価ではない、という事です。
賃料は値下がりしているものの、前回説明した通り、アートヴィレッジ地区は、芸術事業用の建物を建設することが念頭に置かれていますから、基本的に、賃貸での利用というのはあまり考えられていないのです。

・・・っていうか、あの山奥に建物も建てずに何をやるんだって話がありますからね。

ここまで来ると札幌市にアートヴィレッジを売りたくない事情があるのでは?と勘ぐってしまいます。
造成費と維持費がかかっている状態で売却してしまうと、赤字が計上されるので、会計上の資産として残しておいて『含み損』のままにしておこう、という腹積もりなのでしょうか。
もしそうだとしたら、官僚主義・民主主義両面の悪しき側面と言わざるを得ません。

今後も道路整備や未利用地の草刈などに市の予算が使われる事になりそうです。

・・・と、このように、札幌アートヴィレッジは山奥にあるものの、
税金を使って綺麗に造成され、今も分譲地として良好な状態を保っています。

繰り返しますが、ネックとなるのはあまりに厳しすぎる用途制限なのです。

ぶっちゃけ、もう失敗してしまった事は灯を見るより明らかなのですから、
失敗は失敗として受け止めた上で、塩漬けにするのではなく、
きちんと『損切り』出来るように、都市計画を改める事が必要なのではないでしょうか?

そうでなくては、これから20年後も、30年後も、
この山奥の産業団地に累積的な赤字が計上されていくことになってしまいます。

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