E-9 『よく分からない土地』の所在を知りたい!

よくわからない土地を相続してしまう事は、一般家庭でも割とよくある事のようです。
バブルの時期に買ってしまったものや、お爺さんの代以前から何故か持っている山、などがありがちでしょうか。
山というほどではなくても、ちょっとした土地の所在が不明という事はよくあります。

よくわからない土地を相続してしまうと、ある程度のリスクが発生しますが、よくわからない賃貸住宅(アパート等)を相続してしまった時よりは、ずっと低リスクです。
(賃貸住宅の場合、敷金の金額や契約書の内容について確認しなければなりませんし、入居者がありもしない約束をしていたと言い張って来る場合もあります。)
分譲マンションを相続してしまった場合も、毎月の管理費・修繕積立金がかかりますから割と面倒です。

固定資産税がかかるような土地であれば、毎年の負担も馬鹿にならないでしょうが、
『よくわからない土地』というのは、大抵、山奥か地の果てにあるものです。(偏見)
山奥や地の果てにある土地には、多くの場合、固定資産税がかかりませんから、比較的気楽です。

それでも、不法投棄や不法占有、土壌汚染があった場合には、土地所有者に負担がかかってきますし、
将来的に永遠に税金がかからないままでいるという保証もありません。

本格的に寝かせておいて放置を決め込む!というのも一つの方法ですが、
所有者が2代、3代変わっていくと、相続によってネズミ算式に共有者が増えていって、最終的には対応が不可能になります。
せめて土地の所在くらいは分かっておこうかな、という方の為に、一般の方でも可能な範囲で調べ方を紹介します。

そもそも固定資産税が課されていない場合には恐らく『地番』すら分かりませんので、
その自治体の税務課や市税事務所に名寄せしてもらう必要があります。
(自治体すら分からないのであれば、もうお手上げです。)

固定資産税の課税台帳や古い権利証があれば、『地番』が分かります。
地番さえ分かれば、いきなり法務局に行って調べる事も可能です。
さて、全く手がかりがなく、『そういう土地があるらしい』という情報だけがある場合・・・
例えば『札幌市南区のどこかの山奥に、土地を持っているらしい』
そして『出来る限り費用をかけずに、その土地の概要を知りたい』
・・・そんな時はこれから紹介する方法のように調べていきましょう。

①税務課・市税事務所に聞いてみる。
固定資産の課税台帳が届かない場合(=非課税の場合)には、管轄の窓口に行きます。
市税の管轄は『A-16 私道の課税について知りたい① 固定資産税・都市計画税』で紹介しています。

納税者の住所氏名を伝えます。転居があった場合には転居前の住所も、相続があった場合には、亡くなった方の住所氏名も伝えましょう。
多少時間はかかるかもしれませんが、その自治体での課税があれば名寄せが可能です。
亡くなった方の課税記録を知るには、本人の身分証明書と亡くなった方の『戸籍』等で、本人との関係性が証明されていることが必要になります。
例えば、父親の名義になっている土地の場合には、父親の戸籍に、自分の名前が子として記載されていて、自分自身が間違いなくその本人であることを示すために、身分証明書などを提示します。
『戸籍』は亡くなった方の本籍地で取得する事が出来ますが、直接の親子関係ではない場合などは、複数人分取得する必要がある場合があります。
専門家に依頼したい場合には司法書士あたりが通常でしょうか。
また、課税の内容や正確な金額を知るには、手数料を払って証明書を取得する必要があります。
 固定資産の課税台帳がある場合には、それを持参して管轄の窓口に行けばおおまかな地形図が出てくる場合があります。
納税者本人であっても、通常、地形図をもらう事は出来ません。
また、郊外の土地の場合は法務局の登記記録をもとに課税している場合が殆どで、法務局の情報以上のものではありません。
航空写真をもとにした地形図などを見せてもらえるようなら、手書きで写しを取らせてもらいましょう。

こうして、よくわからない土地の『地番』を知る事が出来ます。

②法務局から洗い出してみる。
その土地が所在している管轄の法務局に行きましょう。
(法務局の管轄は『A-3 道の所有者を知りたいとき』で紹介しています。)
まずは出番となるのが毎度おなじみ『ブルーマップ』です。
山林や原野であってもブルーマップには律儀に地番が載っています。
B-3 地図・地図に準ずる図面の見方
(ブルーマップの具体的な見方は
B-1 ブルーマップの見方で紹介しています。)

山の中でもビッチリと『地番』が記載されています。流石ゼンリンさん!
(ただし、記載されている地番はあくまで目安であり、誤っている可能性があります。)
ちまちまと青い文字を探して、そこからおおよその位置を割り出しましょう。
ブルーマップでは小さい土地や、道となっている部分は、地番が省略されている場合もあります。
どうしてもお探しの地番が見つからない時は、次のステップに進みましょう。

次に『地図に準ずる図面』『地積測量図』を取得し、土地の形を確認します。
(それぞれ『B-3 地図・地図に準ずる図面の見方』『B-4 地積測量図の見方』参照して下さい)

③航空写真を見てみる。
最後に、Googleなどの航空写真サービスを使って、現地の状況を確認しましょう。
あほか!と思うかもしれませんが、実際、市役所は航空写真で土地の現況を確認しているんです。

Googleマップの航空写真


意外かもしれませんが、たとえ山の中であっても、過去に人が使っていたり、車の出入りがあった土地というのは数十年以上経ってもその痕跡が残っている事が多いのです。
また、登記上の境界(筆界)も、自然の地形に従っている事が多くあります。
ですから、航空写真から川や獣道を見つけ、地図に準ずる図面と照らし合わせてゆくと、驚くほど地形と筆界が一致することがあります。

ただし、土地同士の正確な境界については『分かりません』どころか『ありません』というのが妥当なくらいで、多くの場合では取得した当初から境界の設定や測量などしていないはずです。
境界を特定するには膨大な測量費用が発生しますし、隣の土地も同じような状況になっているでしょうから、隣の土地との境界を決めるために、別の家の相続人を把握しなければならないという地獄のような状況が待っています。

④所在を知ってどうするの?
活用の予定がなければ出来れば手放してしまいたい、低価値の不動産ですが、
自治体にとって寄附を受け付ける事は税収は減る、管理コストはかかるで良い事なしですから、
なかなか寄附を受け付けてもらえません。
これを手放すには、地元の物好きな不動産屋や隣地を所有している人ににタダ同然で売るなどの方法があります。
詳しくは『E-5 市街化調整区域にある土地を売却したいとき』や『E-6 市街化調整区域の土地を捨てたい!』で解説しています。
それ以外は・・・まぁ、裏ワザ的な方法になってしまうのでしょうね。
まぁ、差し当たって不都合がなければ、無理に手放さなくてもよいかもしれません。

・・・こんな記事では『結局はっきりとしたことは分からんし、対策も取れないのじゃないか!』と言われてしまいそうですね。
はっきりとした事を調べるためには、土地家屋調査士など測量の専門家へ測量を依頼する必要が出てきます。
正直、都心の価格の高い不動産を測量してもらうより、ずっと費用がかかる割に、得るものは少ないです。
今回は『出来る限り費用をかけずに、その土地の概要を知りたい』をコンセプトに、最低限の情報収集方法を紹介しました。

しかし、知ると知らないとでは大違い。
放っておいて駐車場資材置き場にされる程度ならまだよいのですが、ガラ捨て場になっていたり、廃車置場になっていたり、不法投棄されていたり、といったこともよくあります。
どんなに使わない土地でも年に1度くらいは見に行っておくのがよいと思いますよ。

他にも、色々な調査方法やテクニックがあるのですが、その辺は企業秘密にさせておいて下さい。

当記事は2013年10月10日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

E-8 市街化調整区域と『私道』

繰り返しになりますが、『市街化調整区域』とは際限ない開発を抑制する為に、その名の通り、市街化を調整する区域です。
市街化調整区域では、一部の例外を除き、原則的に建物を建築する事ができません。
『一部の例外』とは『E-4 市街化調整区域と『地区計画』』で紹介した地区計画が代表的です。

目的としては乱開発を防ぎ、自然環境を守るというお題目もありますが、道路整備や上下水道などのインフラや行政サービスを最小限に絞る、という目的もあります。
建物が密集しているのも問題ですが、あまりバラバラに建ってしまうと、さまざまな行政サービスの費用がベラボーにかかってしまいますから、自治体としては、ある程度まとまった区域に住んでいてもらった方が効率的なのです。

市街化調整区域は札幌のどの区にもあり、山奥や郊外の過疎地の地区が指定されています。
既に住宅街や商店街になっている地区は、一般に『市街化区域』に指定されます。
最初に書いた通り、『市街化調整区域』では、札幌市から建物建築の許可が下りません。
プレハブ小屋などが建築されている場合もありますが、それらの大半は建築基準法違反の建物です。
実質的に『建物が建てられない土地』ですから、市場価値はとても低くなります。

建物が建てられないとはいっても、取引が禁止されている訳ではありません。
不動産流通の世界では、建物を建てない前提の土地『資材置き場用地』とか『作業場用地』『家庭菜園用地』として売られています。
最近では『太陽光発電用地』なんていうのも、ちらほら出てきています。

そんな事情がある『市街化調整区域』、実は
公道がとっても少ないのです。

道路整備や上下水道配管を整備・維持する費用もばかになりませんから、通行の為の、昔からある最低限の公道だけが残り、新たに整備されることはまずありません。

とはいえ、そこに土地を所有する人は、自分の土地に行くための『道』が必要です。
ですから、『市街化調整区域』には『私道』がとても多いのです。
これらの『私道』は、一般的には民有地で、民間の個人や法人が所有するものです。
公道ではありませんから、当然、冬の除雪も自前、砂利やアスファルトでの道路整備も自前です。

そして、大原則では『私道』を通行するには、その私道の所有者の許可が必要です。

しかし、郊外の過疎地ですから、実際には誰彼構わず自動車で通行しているのが実情です。

法律上、建物が建築出来ない土地にプレハブ小屋が建っていたりと、『市街化調整区域』は、人の目が少ない事もあって、無法地帯になってしまっている面があります。

ただし、建物の建築も、私道の通行も、あくまでも慣習で咎められていないだけです。

市街化調整区域に建物を建築すると、札幌市から取り壊し命令を受ける事がありますし、私道についても、看板や柵などで通行禁止にされてしまう恐れがあります。

滅多にある事ではありませんが、可能性はゼロではありません。
『市街化調整区域』の土地建物を購入・売却・貸借しようとする場合には、リスクがあるという事を覚悟しておきましょう。
私は、実際に建築基準法違反の取壊し命令や通行禁止の事例を目にしています。
宅建業者は取引の際の『重要事項説明書』で、こういった事を説明する義務がありますが、

お客さんを安心させるためなのか、宅建業者の担当者が、
『実際、建物取壊し命令なんて絶対にありませんよ』だとか
『囲繞地通行権があるので、自動車で通行しても全然問題ありませんだとか、
書面の外で無責任な事を言う場合もままあるようです。

同業者として恥ずかしい限りですが『とりあえず成約させて、仲介手数料が貰えればそれでいい』という不動産業者は、とても多いのです。
特に営業成績だけを気にするような営業マンの場合には要注意ですね。

市街化調整区域に限った事ではありませんが私道については、その所有者の所在や、私道の範囲法的性質について慎重に調査・告知する必要があります。
無責任に大丈夫だと言うのではなく、法律に則ってどういう事になるのか、ということを誠実に説明する必要があります。
また、私道の所有者がどこの誰でいつどのように取得したのかによって、その私道の性質は大きく変わって来ます。
例えば、私道の所有者が明治から登記されていないのであれば、現代になって権利を主張してくる、という可能性は非常に低い一方で、私道の使用許可を得る必要があるような局面では、対応が難しくなります。

この辺りをきちんと調査・告知出来る不動産業者でなければ、特に難易度の高い市街化調整区域の土地の取引を任せるには値しないと言っていいでしょう。

不動産の取引は信頼できるプロからしっかりと説明を受け、進めていきましょう。

当記事は2013年11月10日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

E-7 市街化調整区域と『昭和の世界観』

『市街化調整区域』について定期的に紹介しているために、『市街化調整区域』の処分に困った皆様がよくご覧になっているこのブログですが、そもそも皆さんが『市街化調整区域』を何故持っているのかというと、大きくは下記のいずれかの理由によるものでしょう。

◇先代や先々代などの親族が過去に購入したものを相続した
◇法人が過去に事業として買ったものが残り続けている

だって、自分で買ったものなら覚悟か諦めがあるでしょうから。

E-6 市街化調整区域の土地を捨てたい!』で紹介したように、不動産の所有権を放棄するというのは実はとっても面倒な事だったりする訳で、そうすると『何でこんなものを買ったんだ!』という恨み節も出てくる訳です。

…と、言う訳で、過去の人々が市街化調整区域の購入に至った背景を紹介しましょう。
特に札幌市内において分散して保有されている市街化調整区域は、昭和30年代から昭和40年代にかけて分譲されたものが大半を占めます。

後になってみれば、いわゆる『原野商法』そのものなのですが、昭和50年代以降、バブルの頃の原野商法とはまた毛色が違い、単純に詐欺と断ずる事が出来ない側面もあります。

どんな風に分譲がなされたかと言うと、当時の広告媒体は新聞広告が主だったようです。
新聞や交通機関の吊広告を見て、分譲業者の営業マンに会うと、

と、こんな風な公図と地積測量図を見せられて、

『こン辺もそんうち道路が通って街ンなって値上がりすっべ』
とか何とか言っちゃって、財テク的に買ってしまったケースもありますし、
『今はサいるけど、老後は札幌サ引っ越すべ』
というように、市外にお住まいの方が老後の為に購入したというケースもあります。
この場合、現地を見たことがないケースも多々あったようです。

どちらにせよ、それらの分譲地は当時から原野だった訳で、市街化による値上がり期待があったことだけは間違いありません。

現に原野や田畑であった土地が市街化されて財産を築いた方も多くいる以上、正直、売り手に悪意があったのか否かは当人でなければ分かりませんし、当時の時代性を考えると、何が正しかったのかという事は、断言出来ません。

特に昭和30年代の取引については、都市計画法制定の以前ですから、分譲を行った側も騙そうという意識はあまりなかったのではないかと思います。

しかし、そういう場合であっても、位置指定道路は申請されている場合が多いので、位置指定道路の申請や整地を行なっておらず、ただ分筆だけして分譲したものについては、個人的には若干意図的にやったんじゃぁないかなーという感想もなくはありません。
勿論、平地ではなく山林や急斜面の土地を長方形に区画している場合には、時期がどうだろうが詐欺でしかないのですが。

また、札幌周辺では昭和43年施行の都市計画法に基づき、昭和45年には線引きが実施されていますから、その前後に取引がされたものについては、犯意のある『原野商法』か、購入者が安易に『市街化出来る』と思い込んでいたケースです。

ここで購入者の責任をとやかく言うつもりはないのですが、インターネットの登場までは地方と都市、プロとアマの情報格差は凄まじいものがありました。

都市計画法に関する周知の徹底にはかなりの時間がかかった背景がありますし、議員に言えば市街化区域に出来る』というような与太話は未だに耳にします。
ですから、ある程度の割合において、購入者の勘違いというケースもあるのではと思います。

さて、犯意ある『原野商法』によって、まったくの原野を購入した場合であっても実際に財テクが功を奏して、大きな財産となった例も、ないではありません。

手稲区の住宅地は、元々畑だったものを画像のように区割りして販売したものがあります。
清田区などは、元々畑でも、羊ヶ丘通りや国道36号線の関係で、そのような例があったらしいという例を耳にしたことがあります。

結局のところ、昭和の土地がらみの財テクは運による部分が強かったと言えるのかもしれません。

 ※ 画像は本文の内容とはあまり関係ありません。

当記事は2014年07月04日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

E-6 市街化調整区域の土地を捨てたい!

『市街化調整区域の土地を売りたい』をテーマにして一連の記事を書いてきましたが、やっぱり処分が難しい土地が多い訳です。

まー、だからこそ敢えて分類していこうという趣旨な訳ですが、どうしても、どうにもならない場合には『土地を捨てる』という選択肢が頭に浮かぶはずです。
管理費、修繕積立金がかかる分譲マンションについても同様ですね。
老朽化した分譲マンションやバブルの頃建築されたリゾートマンションが安値で売りに出ている、なんて話題も多く聞きます。

自分自身が買ったものであればまだ諦めが付きますが、親族が昔勝手に買ったものの後始末をする、というのは心情的に大きな負担となります。
売りに出そうにも難しい・・・不動産を捨てるにはどうすればいいんでしょうか?

・・・あ、相続登記しなければいいんだ。

・・・という事にはなりません。
不動産登記法における登記義務と民法における相続発生による所有権移転は、
別問題ですから、相続登記をしなくとも、民法上の所有権は移転してしまいます。

民法第167条2項で『債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。』と定める通り、所有権には消滅時効がない訳で、どんなに放っておいても、どんなに手続きや納税をしなくとも、所有権はなくなりません。
(他人に時効取得された場合や他者に差し押さえ後、競売された場合は、所有権が移転します。
また、債権は民法167条で10年の消滅時効が定められています。)

また、民法239条2項では『所有者のない不動産は国庫に帰属する』とされていますが、国は寄附や放棄に応じてくれず、所有権移転登記を受けてくれませんから、自分が『放棄した』と意思表示をしたとしても、まったくの無意味なのです。

とはいえ、固定資産の課税や自治体からの各種通知は、通常、登記された内容に従って郵送で送達されますし、あくまで聞いた話ですが、市役所のレベルではそれ以上に所有者を調べはしないようです。
(恐らく、同じ自治体に居住している等で住民票等から相続人の所在が明らかな場合は対応も違うでしょうが…)

あとは例えば父Aと母B、子Cがいて、複数の財産があるような場合、父Aが所有する土地を一旦母Bが相続して、母Bが亡くなった際に相続放棄してしまう、という手法もそこそこ有名です。
その場合、その土地は最終的には国有地になりますが、相続人全員が相続放棄をするのって、結構手続きが面倒臭いんですよね。
何より、他の財産がある場合には、『相続放棄』は使えません。
わざわざそこまでして捨てる必要があるのかというと、疑問です。

一番合法的かつ合理的な方法として『欲しい人に捨て値で売る』というのもあります。
近隣で土地を使用しているような方に売り払ってしまう。
ただし、安易に贈与してはいけません。
大抵の場合、所有権移転を登記する為に、費用が発生するからです。
また、贈与の場合には、受け取る人に贈与税も掛かってしまいます。

その土地の所有者として登記されている内容が、現在の自分の氏名住所であれば問題ありませんが、もし異なる場合には『相続登記』『住所変更登記』が必要です。
自分自身で必要書類を集めて申請するのであれば実費は数千円ですが、プロである司法書士に依頼すると数万円の費用が必要になります。
まぁ、それも廃物処分費用と捉えて、タダであげてしまうというのもアリです。

買取り出来る物件は限られていますが、『捨て値でも良い』と割り切っていただけるのであれば、当方でもこちらの問い合わせフォームから具体的に地番を記載の上、ご連絡頂ければ対応致します。
ご自身で『相続登記』や『住所変更登記』を行なうコツなどをお知らせして、支出を最小限にするお手伝いをしています。

『捨て値で売る』・・・これが一番平和裏な方法なのですが、そこまでして手放したい土地というのは、はたして欲しいという人がいるのか、という問題も出てきてしまいますよね。

中学校の歴史の授業でも習う通り、フランス革命以後、『私有財産の保護』つまり『財産権の保障』は市民の権利として重要な位置を占めますが、日本では特に明治以後、さらに戦後GHQの政策により土地の所有権は強く保護されており、分化し過ぎた土地の権利は、ある意味『田分け』的状況に陥っていて、整理する事が不可能なところまでいってしまいました。

イギリスをはじめとした各国では、土地はあくまで国家のもので、各所有者はその利用権を一時的に借りているという考え方のようですが、今更、日本でその考え方に沿った改革を行うことは困難でしょう。
永久的所有権から限定的利用権に切り替えようという学者さんは多いですが、民主主義をとる限り、これを改めるというのは現実的ではないように思います。

遠くない未来、戦争や大恐慌があれば国家による強制収用なんてことになるかもしれませんね。
或いは国家という体制が破綻した場合には、そんなことになってしまうかもしれません。

当記事は2014年05月27日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

E-5 市街化調整区域にある土地を売却したいとき

市街化調整区域についての検索サイトの順位が少しずつ上がってきました。
まぁキーワード単体ではまだまだですが、何かしら引っかかってくるでしょう。

さて、市街化調整区域の土地は多くの人にとっては不要なものです。
『断捨離』ではありませんが、処分したいとお考えの方も多いようです。
それが何十万円にでもなれば、儲けモノという発想も合理的です。
しかしまぁ、これがなかなか難しいもので、『いくらでもいいから売りたい』で売れないのが不動産。

マンションなどは典型的で、毎月管理費と修繕積立金がかかりますから、タダでも引き取り手がいないマンションが多くあります。
中古建物の場合でも、固定資産税や将来の解体費用の負担がありますから、タダでも収支がマイナスになる事も少なくはありません。

ただ、土地の場合であれば、固定資産税さえかからない土地なら、本当に数万円の手取りになってもよい、という覚悟が本当にあれば、処分をする事自体は需要のない築古マンションよりはまだ可能性があると言えます。
ただし、往々にして『いくらでもいい』というのは言葉の綾で、本心ではないですからね、なかなか上手くいかないものです。
(固定資産税の取り扱いについては『A-16 私道の課税について知りたい① 固定資産税・都市計画税』で紹介しました。)

さて、それでも処分の可能性を知りたいという方、多くいらっしゃいます。
しかも、インターネットを使って、自分で調べたい、という方が多いのが現代的ですね。
だって不動産屋に相談するの気まずいし、逆に営業にあったら面倒だし、『E-2 不動産業者は市街化調整区域を扱いたくない』という記事もあったし・・・

そういうニーズに応えたいと思います。
私も暇な時、時間をたっぷり頂いて、という事であれば全く問題ないのですが、繁忙期、結論を急いでいるお客様に市街化調整区域を持ち込まれると、正直、笑顔で対応する自信がありません。
(繁忙期が過ぎるまでお待ち頂ければ、それでいいんですけどね。)

市街化調整区域の土地について、『売れる/売れない」の『クラス分け』『場合分け』の目安として『市街化調整区域の土地 処分難易度ランキング』を策定しました。

私の私見による場合分けですが、まぁ、誰も文句は言わんでしょう。
だって市街化調整区域だし。

これにプラスして、旧ブログでは、自分の所有する土地の市場的な位置を診断する為に、簡単なYES/NO形式で、調査方法も併せて紹介する『市街化調整区域の土地の処分のためのフローチャート』を紹介していました。

しかし、実はこれが欠陥品で、重要な項目が漏れていたのです。
いやはや、ブログを移転して改めて思うのですが、当時不動産歴1年程度でかなり知識が不足していた、というのが実感出来ます。
取引件数を重ねた今となっては、かつてのコンテンツは面映ゆい部分もあります。

そのうち、増補改訂を加えた『市街化調整区域の土地の処分のためのフローチャート』を公開出来れば・・・と考えています。

当記事は2014年03月31日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

E-4 市街化調整区域と『地区計画』

市街化調整区域は『原則建物を建てる事が出来ない土地』だ。
・・・何度も繰り返しそのように書いてきました。

市街化調整区域では農業漁業用の施設や学校などの公共施設、特別な事情が認められた工場など、特別に認められた種類以外の建物は建築出来ませんから、農家以外の一般の方が住宅を建てる場合などは、もってのほかです。

しかし、例外措置として、一般の住宅を建築出来る市街化調整区域もあるのです。
それが『地区計画』によって建築可能と定められた地区です。

『地区計画』は都市計画法 第12条に詳しく定められたもので、自治体が都市計画において別途規定する事ができるものとされています。

ざっくり言えば自治体は都市計画とは別に『こんな町づくりをしろ』と決められる、という事です。
市街化調整区域の場合は『市街化調整区域だけど、もう住宅街化してるから、特別に建物建ててもいいよ』というものが大半です。
また、『これから市街化区域にする予定だから、先行して建物を建ててもいいよ』というパターンもあります。
もちろん、地区計画の定められた市街化調整区域であれば住宅を建てられるかというとそうではなく、
『決定番号:調19 札幌アートヴィレッジ地区』などは、芸術の森近辺の地区計画について定めたものですが、一般住宅を建築出来る訳ではありません。
地区計画の内容によっては一般住宅の建築も可能、ということです。

従来、市街化調整区域の建築に関しては『既存宅地確認制度』というものがありまして、これは昭和45年以前から宅地であった事を自治体が確認した土地については、市街化調整区域内であっても、例外的に建築物を新築することが出来る、というものです。
不動産業者としても役所としても、調査が面倒で、詐欺の温床ともなっていた制度です。
これが平成13年に廃止になったことに伴って、
市街化調整区域に建物が建築可能となる地区計画が定められた、という事情があります。

市街化区域内にも勿論地区計画はあり、建物の形状等に細かな制限が加わっている事があります。

さて、具体的には、札幌にはどのような地区計画があるのでしょうか。
平成29年11月現在、札幌市が決定している地区計画の件数を紹介しましょう。
通常の地区計画 122件
市街化調整区域の地区計画 18件
再開発等促進区を定める地区計画 14件
その他緩和型の地区計画 3件
防災街区整備地区計画 1件
合計150件もの地区計画が現在有効なものとして決定されているのです。

平成26年3月から3年半で通常の地区計画は8件も増えました。
(それ以外の地区計画に増減はありません。)

市街化調整区域の地区計画18件の内訳は下記の通り。

現役の不動産営業マンである私も有名ドコロしか覚えていませんが、地区計画の該当地区については『札幌市 都市計画情報提供サービス』
調べることができますので、150件すべてを抑えていなくとも、簡単に調べられます。
有名どころとしては前述のアートヴィレッジのほか、厚別区のテクノパークや、
札幌ファクトリー周辺、札幌駅、桑園駅、苗穂駅や創成川の再開発関係の地区計画があります。

それにしても、『わざわざ地区計画で市街化調整区域に建物を建築できるようにするのではなく、その地区を市街化区域にしてしまえばいいんじゃないの?という考えもあるかと思います。

これには複数の理由があるようですが、大きな理由は以下の2つです。
第一に、地区計画の場合は、非常に狭いエリアでの指定が可能で、かつ、市町村によって弾力的な運用を図る事が可能な分、都市計画よりも小回りが利くということ。

第二に、地区計画については、住民の申し出による計画策定が可能ですから、
札幌市としては積極的に市街化したくなくとも、住民(やそこに地盤を持つ議員)の働きかけによって、市街化調整区域でも建物が建築可能という内容の地区計画が策定できること。

…とはいえ、何もない原野にそういった地区計画を設定する事は出来ません。
地区計画の策定のためには『すでに良好な居住環境が形成されている区域』である必要があり、先ほども解説したように『既存宅地確認制度』の代替措置にという性格から、昭和40年代から引き続き古い住宅群が林立している区域が原則となります。
 ※ ただし、『穴抜き市街化調整区域』と呼ばれる例外もあります。

また、地区計画で建物が建築可能とされた場合でも、永遠にその地区計画が変わらないという保証はどこにもありません。
(とはいえ、既得権は保護されるものですから、あまり変な事にもならないとは思いますが。)
ですから、不動産流通の現場では、市街化調整区域の土地でも、地区計画で建築が可能なら、そこそこの評価額で査定されますが、市街化区域内の土地ほどの安心感はない、というのが正直なところです。
概ね郊外にある関係もありますが、だいたい相場の2割減・3割減という感覚です。
安価に買い求める事が出来ますから、割り切って購入されるのであればオススメです。

最後に、地区計画でどういった制限があるのか、具体的な内容の調べ方をご紹介しましょう。

前述の通り、地区計画のエリアに該当するかどうかは、『札幌市 都市計画情報提供サービス』で、簡単に検索できると書きましたが、それで分かるのは『どの地区に該当するか』まで。
『地区計画』でどのような内容なのかは、個々に調べる必要があります。

『地区計画』の名前と決定番号が分かったら、『札幌市 地区計画決定状況一覧』から、該当する地区名を探し、『計画書』『計画図』を参照しましょう。
市街化調整区域の地区計画には『解説書』があるものもあります。

実際に建物を建てようという場合や、土地を買おうという場合には、宅建取引士や建築士の説明を受けるほか、市役所の窓口でも確認しておきましょう。

市役所の担当窓口は市役所本庁舎5階 都市計画課です。
窓口ではインターネットで配布している『計画書』『計画図』『解説書』を配布しています。

別件の不動産調査で市役所に行ったので、市街化調整区域の都市計画資料、全部もらってきちゃいました。

18件分ですが結構なボリュームですね、これ、全150件分は流石にもらえないなぁ…

旧ブログでは各地区計画の区域を実際18か所、現地を実際に回り、紹介してゆきました。
これがなかなかに好評を博し、定期的に追って紹介する地域もありました。
こちらでも記事を移転し、近いうちに公開をしてゆく予定です。

当記事は2014年03月25日および2014年03月27日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

E-3 市街化調整区域と『農地』

『農地の売買は難しい』とはよく聞く話です。

・・・ええと、よく聞く話ですよね?

個人的には不動産業界にいる前から知っていた話ですが、法律分野や経営分野の業界にどっぷり漬かってきたせいか、何が一般常識で、何がそうでないのか、いまいち分かっていない自分がいます。

でも、テレビゲームをやる方であれば『桃太郎電鉄』シリーズで農地物件が売買出来ないことは有名ですよね。
とにかく『農地の売買は難しい』のです。

具体的には、農地は原則的に、許可なく売買してはなりません。
許可なく売買をした場合には、その取引は『無効』という取り扱いになります。
(仮に売買をしたとしても、その『効』力は発生し『無』い、という事です。)
売買するにあたっては、原則として、買主が農業従事者である個人または法人である必要があります。
ですから、農地の買い手は非常に限られている、という事ですね。

また、農地以外の用途に許可なく転用する事も禁止されています。

で、この許可を受けるための手続を代行できる国家資格者が、ケースによって多岐に渡るというのも面倒なところです。
一般的には司法書士土地家屋調査士に依頼すればOK。
(両方に依頼する必要がある場合でも、連携の必要があるので、依頼した片方の先生がもう一方の先生を手配してくれるのが通常です。
 どちらかというと司法書士の先生に依頼する方が多いのかな?)

建物を建築する場合や商売をしようという場合などによっては、建築士、弁護士、行政書士などに依頼することもあります。
宅地建物取引士という資格では、農地に関する手続きを代行することは出来ません。
(もちろん、実務上の知識はありますし、専門家を紹介する事も出来ますが、
 国家資格なしに実際の手続きを代行し報酬を得ると、法により処罰されます。)

この場合『農地』か否かは登記簿に書いてある内容ではなく『現況』で判断します。
具体的には、札幌市農業委員会が農地と言ったら農地、それ以外と言ったらそれ以外、なのです。

それでは、札幌市農業委員会で、具体的に『農地』の『現況』について確認する方法を紹介します。


その農地の地図(出来ればブルーマップ)や写真を持参して
市役所本庁舎15階農業委員会の窓口へ行きましょう。

事前予約等は特に必要ありません。

窓口の人にこのように声を掛けます。
「ごめんください、農地の確認をお願いします。」
「地番はわかりますか?」
「○○区○○町××番地×です。(持参した地図を手渡して)この場所です。」
「地図をお預かりしますね。」
職員が市役所のデスクで航空写真のシステム画面から当該地を検索します。
「この土地は札幌市では今のところ農地として認識していませんね。
ただし、本当に農地に該当しないかどうかは、実際に職員が現地を見て判断します。
または
「この土地は札幌市で農地として認識していますね。売買や転用には許可が必要です。」

…と、いった具合です。職員の回答は原則2パターンしかありません。
農業委員会に『農地』だと判断された場合で、その土地の転用や売買を行いたいときは、司法書士や土地家屋調査士に相談しましょう。
お付き合いのある不動産業者がいる場合には、その業者に紹介してもらってもいいかもしれません。

なお、『現況』が農地でない土地の登記簿の地目が農地となっている場合、登記簿の地目変更のための証明書を農業委員会で発行してもらう事が出来ますので、覚えておきましょう。
発行してもらった証明書をもとに法務局で登記簿地目の変更手続きを行います。

たとえばこの土地は、市街化区域内にあり、地目は農地ですが、
札幌市農業委員会には現況『農地』ではないと認識されていた土地です。
このような土地の場合は、地目さえ変更すれば、通常通りの取引が可能です。

ちなみに、現況も地目も農地ではない場合ですが、その場合には完全に農業委員会の管轄外で、通常通りの扱いとなります。

さて、次は農地と認識されている土地の転用について、です。
農地が転用出来るか否か『市街化区域』『市街化調整区域』かで大きく異なります。
市街化区域内の農地であれば原則転用可能で、売買もそう面倒なく可能です。
市街化調整区域内の農地については、正直、かなり難しいと言わざるを得ません。

上記が市街化調整区域内にある農地を転用する際の許可基準です。
見て分かる通り、『原則として不許可』が大半ですね。
特に『農業振興地域』と呼ばれる地域に指定されている場合には、まず転用は不可能です。

例外として市街地内の農地、『第3種農地』の場合には原則許可、
将来市街地になる『第2種農地』の場合には、公益性の高い事業の場合等に許可される、という事です。
まー、調整区域内で農地指定されている段階で、現在市街地だったり将来市街地になるという可能性は、非常に薄いのですが。

そもそも論として、農地の転用が許可されたところで、どーせ市街化調整区域なので、原則建物は建たないのです。
市街化調整区域で建物の建築が許可されるのは、公益性の高い建物やその立地でなければ難しい事業の為の建物に限られていますから、そもそも農地だからどうだ、という話ではない事の方が多いんですよね。
とはいえ、許可されなければ売却は出来ませんから、本当に市街化調整区域の農地というものは難儀なものです。

当記事は2014年03月21日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

E-2 不動産業者は市街化調整区域を扱いたくない

一般に正規の不動産業者は、市街化調整区域に関わりたがりません。
正直私自身も、ビジネスとしてはさほど大っぴらには積極的に関わっていません。
他の業者の方もお付き合いのある方からの依頼でやむを得ず引き受けている、という場合が多いようです。

その理由はシンプルで2つしかありません。
①売上が非常に低い
②経費と手間は通常と同様かそれ以上にかかる
つまり、利益率が非常に低い。ぶっちゃけて言うと、儲からない

①売上が非常に低い
俗に『3%+6万円』なんて言いますが、不動産売買仲介の手数料は、売買価格に比例して制限されます。

根拠は
昭和45年建設省告示第1552号『宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額』というもので、400万円以上の取引については3%+6万円(+消費税)という、速算式が用いられます。

フツーの人が持っている100坪単位の市街化調整区域の場合、大抵は100万~300万円程度の取引額になりますから、4~5%の仲介手数料になる訳です。

倍額まで手数料の制限が緩和される『代理』という契約形態であれば、8~10%の手数料を頂くことは理論的には可能ですが、ただでさえ少ない売主さんの実入りを更に減らすというのも気が引けます。

100万円の取引して5万円もらえるならいいじゃん!…というのも考え方ですが…
不動産仲介は、売上が上がればいいのですが、売れないまま契約期間が終了して、媒介契約が解約となってしまうと、通常、それまでの経費が回収出来ないのです。

ただでさえ売却の難しい市街化調整区域、いつ解約されるかわからないのに、経費と手間をかけて販売活動を行うのは、ハイリスク・ローリターンと言わざるを得ません。

②経費と手間は通常と同様かそれ以上にかかる
そして不動産仲介の経費というのは、土地だけの場合、大きくは変わりません。
売買価格で手数料が上がるのは交渉の成功報酬や損害賠償リスクによるものです。

具体的な経費と手間を列挙してみましょう。
・登記関係やその他の書類を収集するための費用は、通常と同一です。
・当然、広告や販売活動にかかる費用や手間も、通常と同一。
・過去の使用履歴がわからず土壌汚染や地中埋設物のリスクが高い。
・道路や河川の公共測量が入っていない地区が多く、ひどい場合、どこからどこまでが公道かも不明瞭。
_私有地同士の境界など、分からないのが当たり前。
・多くが郊外にあり、現地まで行くのが手間。
_更にヤブを掻き分けて山中や原野を歩かなければならないことも。
・売れるまでの期間が長いのでランニングコストがかかる。

うーん、性格悪い言い方ですが、率直に言って、市街化調整区域って、大規模な土地でもなければ全然儲からないんですよね。
というか、例え話ではなく本当に、人件費を除いた純粋な原価すら回収できないケースが大半。
まして、売主さんとの従来のお付き合いがなければ、いつ仲介が解約になるか分かりません。

ここまでざっくばらんに書いたのは、『不動産業者』を名乗る詐欺がとっても多いという事があるからです。
通常の不動産業者は、上記のような理由で原則的にあまり積極的に市街化調整区域に関わりたがりません。
(もちろん、例外もあるにはあるのですが・・・)
『市街化調整区域と詐欺的行為』については、また別に記事を設けます。

『調整屋』と呼ばれるような、市街化調整区域を専門に仲介や転売を行う業者も、いるにはいるのですが、100坪程度の土地で動くという話は、あまり聞きません。

例外として挙げるとすれば・・・
・公道に面した大規模な土地で、それなりの取引総額になる。
・『地区計画』により建物の建築が例外的に認められた地域である。

こういった場合ならば、不動産業者も引き受けてくれると思うのですが、一般的にな100坪程度の土地で、公道に面していないものについては、不動産業者としても結構シンドイ思いをしながら媒介活動をしているのです。

そういった事をご了承頂いた上で、安価ではありますが、市街化調整区域の土地を引き取らせて頂く場合もあります。
買取については、可能である物件と不可能である物件、価格が付く物件とそうでないものがありますから、もし希望される方は具体的な地番を記載した上でこちらの問い合わせフォームにてご連絡頂ければ対応致します。

そこで、市街化調整区域について、例外に該当するのか否か、つまりは処分の可能性があるのか、可能な限り自分で調べられるようにする、というのがこの一連のコンテンツの目的であったりもします。

ダメならダメで、何故ダメなのか、知っておいた方が諦めもつくというものでしょう?

次回以降に続きます。

当記事は2014年03月19日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

E-1 市街化調整区域とは何か

『市街化調整区域』は『都市計画法』により『原則、建物が建てられない土地』です。

・・・『市街化調整区域』については結構知名度があるので、もう少し詳しく紹介してみましょうか。

昭和43年に施行された『都市計画法』により、日本全土には『都市計画区域』『非線引区域』が区分され、都市計画区域はさらに『市街化区域』『市街化調整区域』に分けられてゆきます。
札幌市周辺では、昭和45年『市街化区域』『市街化調整区域』が設定されています。

そもそも論として、何故このような区分があるのでしょうか?

戦後、昭和21年『自作農創設特別措置法』による農地解放によって、大地主から小作人たちに土地が振り分けられ、その土地が次々と宅地造成されて宅地化してゆきました。
高度経済成長もあって、あまりに急速に宅地化が進むものですから、昭和30~40年代にはそこらじゅうに新興住宅地が広がってゆきます。
札幌市でも、畑の中や山の中にポツンと住宅地が出来ている場所がありますよね。
(これらの孤立した住宅地のその後については、シリーズで個別に紹介してゆきます。)
こういった、野放図な開発によって、市街が収束せずにバラバラになってしまうと、インフラの維持にも多額の予算が必要になりますし、何より、供給過剰によって不動産の価値が下落してしまいます。
これを都市計画用語でスプロール(虫食い)化と言います。

スプロール化を防止するには、『宅地開発が出来る地域』とそれ以外を区分する必要があったという訳です。
また、より踏み込んだ内容として、その中で更に『住宅地』『商業地』『工業地』といった区分を設けることで、市街形成を合理化する必要もありました。

つまり、それが『都市計画法』施行の目的であった、という事です。

札幌市の最新のデータでは、市域に占める面積割合は、非線引区域は49.34%、市街化区域は22.31%、市街化調整区域は28.34%です。

非線引き区域は都市計画区域より広く、市街化調整区域は市街化区域より広いのです。
一般の建物が建てられる住宅地が4分の1にも満たないというのは意外かもしれませんね。
まぁ、非線引き区域はその殆どが南西部の国有林という事なので、
いわゆる一般のイメージでの『札幌市』のエリアからはちょっとずれるかもしれません。

とはいえ、都市計画区域の過半数を市街化調整区域が占めている訳です。
・・・たぶん、取引額では数パーセントにも満たないと思いますけれど。

市街化調整区域では、都市計画法により、原則、開発による市街化をしてはいけません。。
都市計画法 第7条3項『市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。』

『市街化』とは、建物の建築や樹木の伐採などもそうですが、自治体が行うべき道路や上下水などの配管の整備も、現状以上に拡充はしない扱いになっています。
ですから、法律に違反してどうにか住もうと思っても様々な障壁がつきまといます。

市街化調整区域の土地は通常『家庭菜園用』とか『資材置き場用』として売られていますが、
上水道が通ってなかったら野菜の水撒きもできませんし、
資材や車両をちょっと洗おうかとか、休憩に水道水を飲もうかという事も出来ない訳です。
下水道が通っていなければ水洗トイレも使えず、仮設トイレを使わなければなりません。
(もちろん、上下水道完備・電気使用可能な市街化調整区域も一定数あります。)

例外的措置として、『市街化調整区域で認められる建築行為』というのもあるのですが、
フツーの人が持っているフツーの市街化調整区域については、原則、建物の建築は不可能であると考えておいてください。
認められる建築行為の例としては農業漁業用の施設、学校・福祉施設等の公共性の高い施設、採石場や工場などでどうしても市街化調整区域に建築する必要がある施設などなどです。
フツーの人がフツーに持っている市街化調整区域については該当しませんが、フツーの人の先祖がドカッと大量に持っている市街化調整区域については、
工場などの用地としての処分を考えることも可能
です。

許可を得ない場合にはプレハブやコンテナ、物置などの設置も違法とされており、札幌市から撤去を命じられる場合もありますから、注意しましょう。

…自己責任において設置される方は多数いますが、私はお勧めしません。

フツーの人が持っているのは通常100坪程度でしょうから、車や重機、資材を置いておくとか、広いスペースが必要な作業場としては、有用です。
1000坪であるとか、それ以上の規模があるなら、養鶏場だとか、キノコ農園だとか、工場だとか、ちょっとだけ夢も広がりますね。

当記事は2014年03月15日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。