C-8 『位置指定道路』と『隅切』の奇妙なお話


『隅切』という言葉をご存じでしょうか?
こんなんです。

道路と道路の接続部をナナメに切っているものです。
これがある事で、見晴しがよくなり、車両の通行の安全性が高まります。
公道と公道の交差点には多くの場合、隅切がありますが、
広い道路と狭い道路の交差点などでは、一部隅切がない場合もあります。

位置指定道路』の場合でも公共の通行に利用される前提がありますから、
道路の指定を受ける為には、2mの隅切を設ける必要があります。
制度の初期に申請された位置指定道路には、隅切がないものもあります。
その場合であっても、市道として寄附をするためには、新たに隅切を設ける必要があります。

位置指定道路だからといって、寄附をすればそのまま市道になる訳ではない。
…というのは注意が必要な部分ですね。
現に『道』になっている部分と新たに『隅切』になる部分の所有者が違う場合には、
容易に『隅切』の部分の土地を寄付してもらうことは難しいかもしれません。

さて、それでは私が経験した、案件のうち『隅切』に関する奇妙な事例をご紹介しましょう。
地主のAさんが所有する土地は、市道①と私道②に挟まれた角地にあり、隅切はありません。

さて、Aさんはこの土地を分譲するにあたって、道路の位置指定を受けたい。
赤い部分がAさんが位置指定道路にしたい部分です。
前半でお話した通り、位置指定道路の指定を受ける為には、隅切が必要です。
…と、いう訳で、
…と、こんな風になると思うでしょう?
しかし、位置指定を受けるにあたって、札幌市からはこのような条件が出されたようです。
市道①と市道②の間の隅切がない部分に新しい隅切を指定するように求められたのです。
結果、赤い部分が一体の位置指定道路として指定されたのです。
位置指定を受けた部分については『道』ですから建物を建てられません。
更に、この飛び地の部分、登記上は緑色の土地と同一の土地という事になっているのです。

例えば将来、緑色の土地を売買しようとする場合に、角の隅切部分が位置指定道路になっていることが分かっていなければ、
建物を建てられない『道』の部分について、差額分の損害賠償請求を受ける可能性があります。

このように、由来の古い不動産ほど、訳のわからない取扱いがされている事があります。

古い物件に限らず、不動産を処分する際は、綿密に調査をし、慎重に書面を作成できる専門家に依頼する事が、最良のリスクヘッジと言えるかと思います。

当記事は2013年12月16日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-7 位置指定道路と『札幌市建築基準法施行条例に基づく接道義務』


建築基準法に従って合法に建物を建築するためには、
建築基準法上の道路に2mに接している必要があります。
これを俗に『接道義務』といい、土地の価値の重要なファクターの一つです。

前回:C-6 位置指定道路と『筆界』『分筆』『地型』で扱った道路で、
実際に、建物を建てようとした場合、どんな問題があるのか考えてみましょう。

土地Aに建物を建てるためには?
こういった接道形態を『路地状地』といったりします。
路地状地では例え道路との接面が2m以上でも、
路地部分の長さによって建築出来る建物の大きさが制限されます。

逆に考えると、道路との接面が2m未満なら建築不可能
接面が6m以上であれば、路地状敷地でも通常と同規模の建物が建築可能という事です。
接道状況がナナメになっていたり、間で細くくびれている場合、長さは狭い部分で認識します。

とはいえ、路地部分は通路用のスペースになってしまう訳ですから、
除雪も自己負担、建物までの配管埋設費用も自己負担、税金関係も自己負担です。
余分な費用がかかってしまうので、路地状地の市場価格は、
一般的な『整形地』より、何割か安く設定されている事が殆どです。(明確な決まりはありません)

土地Eに建物を建てるためには?
この例では、道路との接面が2m以上か未満かが重要です。

接面が2m以上であれば、若干特殊な接道形態でも、通常と同様に取り扱われます。
(接道義務以外の項目での制限も通常通りありますから、何でもOKという訳ではありません。)

土地Dに建物を建てるためには?
さて、問題となってくるのは土地Dへの建築です。
土地Dは、1つの土地の一部分が位置指定道路の範囲に認定されています。
公道の場合でも、位置指定道路の場合でもこのようなケースが多々あります。

道路となっている部分は、建物の建築が出来ないほか、
道路以外の部分に建物を建築する場合の建物規模の計算の根拠になる面積には加えられません。
いわゆる『建蔽率』・『容積率』がメジャーな言葉ですが、
ざっくり言うと建築できる建物の面積は、敷地の面積を基に計算されるのですが、
道になっている部分は、私有地であっても、建物の敷地として扱われないのです。

私有地ですから、道になっている部分の維持管理は原則自己負担となりますし、
使い道がない訳ですから、持っているだけ損な気分かもしれません。

新規に土地を購入する場合には、一部が道になっている土地について、
どのような価格設定になっているか、注意が必要です。

一見割安に見えても、実際は割高かもしれませんよ。

まぁ、位置指定道路になっている部分は一般的に固定資産税も安くなるので、
そのような取扱いがされていない場合には、各市税事務所に確認してみましょう。
もしかしたら毎年の固定資産税が安くなるかもしれません。

土地Bに建物を建てるためには?
さて、最後に土地Bですが、建築基準法上の道路と面していません。
接道義務を満たさない訳ですから、土地B単体では、原則、建築許可は下りません。

土地Bの上に建築物を建てようとする場合には、
その建築物の敷地を土地C&土地Bとするか、土地A&土地Bとする必要があります。
(もちろん、隣接する他の土地も加えても構いません。)
その場合には、隣地と合算され、通常通り建物の建築が可能となります。

しかしたとえば、これらの土地の所有者がそれぞれ別々だった場合、
土地Bの所有者が土地Bの処分を考えるとき、やはり単体では売却不能です。

そういったケースでは、土地Aか土地Cの所有者に話を持ち込むのが王道ですね。
大抵、近隣の市場価格より大幅に買い叩かれますが、
まぁ、そもそも市場に出した場合に価格が付かないので、やむを得ないと言わざるを得ません。

稀に、近隣市場価格並で売れるようなウラワザ的ケースもありますが、
殆どがそういったケースには該当しません。

⑤おわりに
このように、敷地と道路の関係と建築の可否は、ケースにより様々な対処が必要ですので、
自分で対処する場合には市役所などでじっくりと話を聞き、
業者に依頼する場合には、きちんとした知識を持った業者へ依頼しましょう。

当記事は2014年03月11日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-6 位置指定道路と『筆界』『分筆』『地型』


『道の範囲を調べるのに法務局行ってどうするんすか!』 
・・・と、当社の建物管理担当のスタッフに何度か注意しているのですが、
どーも法務局に登録されている内容がすべてと考えているようで、困っています。

今日は実務上の実例(当然、そのままではありません)を挙げて、
位置指定道路の奇妙な取扱いについてご紹介しましょう。
札幌市内に実際にある位置指定道路の実例です。

ここまで何度も書いている通り、法務局はその土地がどのように使われているか調べるための役所ではありません。
法務局はその『申請された』権利関係『申請された』不動産の内容を調べるための役所です。
それが『真実の』権利関係や『真実の』不動産の内容なのかを保証するものではありません。
まして、その土地のどこからどこまでが道路なのか、という話は完全に管轄外です。

例えばこんな『公図(地図に準ずる図面)』があります。
 ◇A-3 道の所有者を知りたいとき
 ◇B-3 地図・地図に準ずる図面の見方
さて、どこからどこまでが『道』の範囲でしょうか?
黒線が土地と土地との境界線、細い土地の脇にいくつもの土地が隣接しています。
ちなみにC’別の土地です。

普通、第一印象としてこのようなイメージを抱くのではないでしょうか。
細長い土地Gを『道』と考えるのが、まぁ健康的な考え方です。
しかし、例に挙げるという事は、実際の道の範囲は違う訳です。

札幌市役所の道路確認担当課でその周辺の道路状況を確認しましょう。
 ◇A-2 公道(と特殊な私道)の詳細が知りたいとき

市役所の調査の結果、実際の位置指定道路の範囲は下記の通りと判明しました。
法務局に登記されてる境界線と全然違うじゃん!!Σ(゚Д゚,,)

ええと、C’に関しては道の部分だけ、分離していた訳ですが、
については、『一体の土地の一部だけが位置指定されている』という、
世にも奇妙な取扱いがなされているのです。

つまり、土地の境界線と道路の境界線はまったく関係がない!
という事なんです。ホントですよ?(´・ω・)

しかし、これってあまりにも分かりづらいですよね。

・・・と、言うわけで、新しく位置指定道路を作ろうとする場合には、
きちんとその道路の境界線に合わせて土地の境界線を作らなければならなくなりました。
土地を2つかそれ以上に分けて境界線を作る事を『分筆』と言います。

という訳で、例えば今回の例のような土地に、
今回の例のような位置指定道路を新しく作ろうとした場合には、
このように分筆をして、道の境界線と土地の境界線を一致させて申請しなければなりません。
しかし、既に指定を受けて存在している位置指定道路については、その所有者に分筆をする義務が出来る訳でもなく、そのままの状態になっています。
その為にこのような入り組んだ状態になっているのです。

位置指定道路の実態をつかむのに、法務局をアテにしてはなりません。

位置指定道路だけではなく公道でも『公道供用』『セットバック』といって、
民有地の一部分が公道になっている事だってあるので、
道路の範囲と、その土地の権利の所有者は必ずしも符号しないという事ですね。

結論としては、道の範囲は法務局ではなく市役所で聞け!という事なのです。

当記事は2014年03月06日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-5 位置指定道路を市道にしてほしいとき


位置指定道路』は『公道』と『私道』の中間的な取扱いで、
『最もトラブルが多い種類の道路』と言っても過言ではありません。

札幌市には古くからの位置指定道路が数多くあり、
除雪関係の問題を始めとした各種トラブルも後を絶ちません。

勿論、位置指定道路は現在も新しいものが認定され続けていますが、
最近の位置指定道路は、きちんと測量・分筆してあったり、ある特定の人間しか通行しないものだったり、利害関係者に持ち分を配分していたりと、それなりに気配りされていますから、初期の位置指定道路よりは、ずっと扱いやすいものになっています。

しかし、既存の道路はなくなりはしない訳で、位置指定道路はどんどん増えてゆきます。

『位置指定道路』はあくまで私道ですから、舗装・配管・除雪その維持管理については土地所有者の責任となります。
ただ、具体的にどのような管理をするべきか、定められている訳ではありませんから、アスファルト舗装が剥がれて砂利道になっていたり、除雪がなく冬の間通行出来なかったり、位置指定道路の管理状況は、お世辞にも行き届いているとは言えないというのが現実です。

そうであれば、いっその事、市道として管理してほしいという周辺住民の意見をよく耳にします。
札幌市への相談件数もかなりの数に上るようで、わざわざQ&Aにそのための専用のページが用意されています。

 私道を市道として認定してほしい
  http://www.4894.city.sapporo.jp/cgi-bin/isDetail2.asp?sURL=file://FAQ/Daily/1199.xml

この方法では、幅や状況について各区の『土木センター』に相談したうえで、
主に3つの基準を満たすものを市道に認定すると提示しています。
8m以上の道路幅(既に家屋が建ち並んでおり拡幅が難しい場合は4m以上)があること
建築基準法上の道路となっており、沿線に住宅が建てられ、生活道路として利用されていること
道路用地は市に寄附すること

以上のように位置指定道路を市道にする簡単な基準が書かれていますが、
より詳細なガイドラインとして市道認定のガイドブック 私道から市道へが存在します。

こちらのパンフレットは、認定のための基準のほか具体的な数値基準、認定の流れが解説されています。
無論、事例はケースバイケースなので最終的には『市の窓口に相談して下さい』という形式ですが、
図解付きでよくまとまっており、概ね分かりやすい資料と言えるのではないでしょうか。

特に、私道が札幌市道として認定されるまでの手順を示すチャートについては、よくできています。

詳細はパンフレットを見てもらうとして、いくつか重要な点を抜粋して紹介しましょう。

◇『位置指定道路』の無償での『寄付』が必須
市道認定は現在『位置指定道路』である土地を、札幌市に寄付することが必要となります。
つまり、大前提として所有者が寄付してもよい『位置指定道路』でなければ『公道』にしてもらう事は出来ないという事です。
他人の位置指定道路を所有者の承諾なしに市道にすることは出来ませんし、
位置指定道路ではない単なる通路の寄付は受け付けられない
という事ですね。

市道認定の為の申請をするのは、所有者本人でなくとも可能ですが、
所有者が分からない場合には、寄付が成り立ちませんから、どうにもなりません。

つまり、既に亡くなった方が所有者である場合には、その相続人全員から印鑑証明書の提出を受けて寄付を受け付けるか、遺産分割協議書(印鑑証明書付き)によって相続登記をする必要がなります。

また、倒産・解散などで存在しなくなった法人が所有者であった場合は最悪です。
理論上は清算人破産管財人を見つけて来たり、選任したりして法人財産の処分をすることになりますが、裁判所に申し立てたところで受け付けられるという話を聞いたことはありません。

この他、個人が単に転居をしているようなケースであっても、所在が分からないことも多くあり、それが原因で認定手続が進まないこともあるようです。

自治体とはいえ、土地の所有者を完全に把握できる訳ではないのです。
(特に、納税の対象とならない私道の場合には、それが顕著です。)

◇市道認定されても維持管理は最低限
おそらく、市道として認定してほしいという方の一番の要望は、
『市の費用で除雪をしてほしい』というところがあると思うのですが、
現在市道でないような幅員の狭い土地については、幹線道路並の水準の除雪を期待することは難しいかと思います。
除雪が入るのは幅員8m以上の通り抜け道路です。
私は、幅員が8mを超える位置指定道路というのは、あまり見た記憶がありません。
詳しくは『A-14 除排雪の取り扱いを知りたいとき』を確認して下さい。

では、市道になって何の意味もないかと言えばそうではなく、上下水道やガスの配管工事の為の『掘削許可』を個人ではなく市からもらう事が出来るようになります。
除草、砂利の整備、アスファルト舗装などの維持管理についても、ある程度は期待出来るでしょう。

特に使い道がなく、特に固定資産税が課税されているような位置指定道路をお持ちの方は、
いっその事、札幌市に寄付をして認定道路にしてもらうのも一つの方法かと思います。
プラスにはならなくとも、マイナスではないのですから。

◇市道認定の為には、大変な時間がかかる
共有となっている位置指定道路に関しては所有者探しだけでも一苦労なのですが、
仮に所有者が全員判明していたとしても、所有者全員の承諾を得た上で、
測量による境界の確定や分筆をした後、札幌市に対して土地を寄付します。

なんと、寄付したからといって自動的に市道になる訳ではありません。
札幌市議会で市道認定の決議が必要となり、その後、市道となったことが告示されます。

申請してから市道認定まで、平均的には2~3年を要するとのことですから、大変なものです。

勿論、各段階で止まってしまってそれ以上先に進めない、という事例もたくさん目にしています。

◇位置指定道路と市道認定では、役所の部署が違う
位置指定道路に関する手続きは『札幌市都市局建築指導部』の扱い、
位置指定道路を市道にする手続きは『札幌市建設局道路認定課』の取り扱いで、
『局』から管轄が違うので、全然一元化されていないのです。

札幌市のHPには『道路関係の担当部局一覧』というコンテンツがありますが、
管轄が『課』からしか書かれていないので、パッと見、その辺の事情はハッキリと分かりません。

位置指定道路は位置指定道路として、市道は市道として、同じ市役所でも部署によって判断が異なる事があります。

縦割り行政と言われない為には、きちんと部局間での連携をして、
道路に関する包括的なガイドラインを作っていく必要があるのではないでしょうか。

当記事は2013年09月23日および2013年12月11日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-4 位置指定道路を変更・廃止したいとき


今回は既に存在している『位置指定道路』を取りやめたい・変更したいというお話。
そんな時は、位置指定道路の廃止・変更の手続きを取っていかなければなりません。

しかし、位置指定道路は建物を建築出来るようにするために指定を受けるものですから、簡単にやめたり・変えたり出来るのであれば、建築基準法の意味がなくなってしまいます。
例えば、位置指定道路の所有者の意思だけで取りやめが出来るとしたら、分譲された土地の所有者達は、現在の建物を解体した後、新しい建物を建てることが出来なくなってしまいます。
ですから、位置指定道路の廃止・変更には厳しい制限が課されているのです。
位置指定道路になった時点で、その土地は準公的なものであって、自由に処分が出来るものではなくなった、という事ですね。

位置指定道路の廃止・変更のためにはその土地の所有者だけでなく、その道に接する土地の所有者などの承諾書が必要となります。
(隣接する土地の所有者すべて、という訳ではありませんが、かなり広い範囲での承諾書が必要になります。)
さらに、その承諾書を貰うべき人が亡くなっている場合には、法定相続人(多くの場合、配偶者と子・孫・曾孫)全員の承諾が必要になります。

その位置指定道路だけに面する建物がある場合には、事実上、位置指定道路の廃止はかなり難しいと言えるでしょう。

位置指定道路の周辺すべてが更地で単独所有となっている場合には廃止も可能でしょうが、
そもそも『住宅を分譲する為の道路』である位置指定道路の周辺が、更地であるというのはあまり考えられない、というのが現実です。

また、単なる廃止ではなく、変更の場合には、土地の測量・分筆が再度必要になってきますから、やはり土地家屋調査士に一任するのが通常です。

札幌市道路位置指定申請審査基準 第15条3項では位置指定道路を変更または廃止する場合に必要な承諾書について定めていますので、引用してみます。

(札幌市道路位置指定申請審査基準第15条3項)
(3)承諾書
ア 承諾書を要する者は以下に掲げるものとする。
①変更により、新たに道路敷地になる土地又はその土地にある建築物若しくは工作物の全部事項証明書「甲区」「乙区」欄の全権利者
②既存道路への腹付けによる幅員変更にあっては、腹付け部分の敷地の土地の全部事項証明書「甲区」「乙区」欄の全権利者
③変更又は廃止により、道路敷地外になる土地(一部廃止又は全廃止を含む)
 又はその土地にある建築物若しくは工作物の全部事項証明書「甲区」欄の全権利者
④廃止にあって、すみ切のみ(路線の廃止を伴わない)の場合は、その土地の全部事項証明書「甲区」欄の全権利者
⑤廃止により接道義務違反は生じないが、既存建築物の主たる玄関(正面玄関)
 及び車庫が指定道路に面している等、現に使用されている場合(図-6、例示2~4の建築物)には、 建築物の全部事項証明書「甲区」欄の全権利者
⑥ ①~④の権利者が死亡している場合は法定相続人全員
⑦ ①~④の権利者である会社が倒産・閉鎖している場合は、代表清算人等

イ 承諾書の内容は以下に掲げるものとする。
 ① 承諾書は(様式-1)とする。
 ② 承諾書の押印は実印を使用し印鑑登録証明書を添付する。

とにかく沢山の関係者に実印を押して貰わければならない、という事です。

「甲区」の権利者とは通常、不動産の所有者ですが、「乙区」の権利者というのは、抵当権者・・・つまり住宅ローンの借入先である金融機関などが多いのです。
と、言うことはもしローンの残債が残っていた場合には、金融機関からも実印と印鑑証明書を貰わなければならない訳で、これはもう実務上ほぼ不可能であると言えるでしょう。

位置指定道路の所有者にとっては不利な取扱いですが、位置指定道路に面した土地が、
その廃止によって建築基準法違反の状態にならないよう保護されているという意味もあります。

そもそも論として、位置指定道路の所有者は宅地の造成・分譲で十分な利益を得ている訳ですから、そのメリットと引き換えの不自由さと考えれば、やむを得ないでしょう。

このブログでは位置指定道路について、除雪の問題など書いていますが、その存続についてはとりあえず楽観視してもよいかと思います。

当記事は2013年09月18日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-3 道路の位置指定を受けたいとき


位置指定道路』は、通常では建物が建てられない土地に建物を建てられるようにする目的で指定されるものです。

つまり、こういう土地をこういう風にすることが目的である訳です。

実はこういう事をして良いのは、原則的には不動産業者だけ、と決まっています。
業務としての不動産取引を規制する法律に『宅地建物取引業法』があります。
その中で、不動産業・・・正しくは宅地建物取引業の定義について記載されています。

(宅地建物取引業法第2条2項)
宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。

そして、宅地建物取引業法第3条によって『宅地建物取引業を営もうとする者は(中略)免許を受けなければならない。と定められています。

ですから、まとまった土地を商売として造成・分譲してよいのは宅地建物取引業者だけなのです。
『商売として』と強調したのは、どっからどこまでが商売なのよ、という話があって、先祖伝来の土地を何区画かに区分して売却したからといって、それがイコール『業』なのか、という問題があるからです。

とはいえ、位置指定道路の制度はやはり通常は免許を持った宅地建物取引業者が利用するものです。
また、実務的には位置指定道路の測量と分筆(区画割り)が必要になりますので、宅建業者も『土地家屋調査士』に依頼しなければ、指定を受ける事は出来ません。

基本的に、個人の方が独力で道路の位置指定を受ける事はありませんので、細かい取扱いを一つ一つ紹介するのではなく、位置指定道路の指定を受ける際の留意点を簡単に3つ箇条書きにします。

実務作業は土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。

位置指定道路は、幅や奥行、舗装の状況など、一定の基準を満たしている必要があります。

指定を受けるためには、道路となる土地の所有者全員の承諾書と印鑑証明書などを提出する必要があります。

 道路の位置の指定(指定道路)について/札幌市
  http://www.city.sapporo.jp/toshi/k-shido/douro/shitei/douro-shitei.html

パンフレット付きで、詳細な取扱いが記載されています。
ここでは参考として、位置指定道路の形状に関する基準を見てゆきましょう。

・・・と、まぁ、昔の位置指定道路は他の部分と区分されていなかったり、例外的な取扱いが多かったものですが、現在においては、基準に従って正確に分筆され、形状等も制限に沿ったものしか認められません。

そして、一度位置指定道路の指定を受け、周辺に建物が建ってしまうと、その指定を廃止することはかなり難しくなります。
また、道になってしまった部分は、売却するにあたっても、価格はほぼゼロとなります。
(場合によっては、実態的な価値がマイナスとなる場合もあります。)
土地家屋調査士などへ相談した場合にも同様の注意を受けるかとは思いますが、
特にその後も位置指定道路を所有し続けようとする場合には、くれぐれも慎重に検討して下さい。

C-2 位置指定道路の始まりと必要性 ~戦後の事情と現代の事情~


昭和20年の敗戦に伴い、日本ではありとあらゆる制度が変わりました。

それは、GHQが戦前の制度が前大戦の引き金になったと考えた為です。
財閥制度、戸長・長子相続といった『家』制度、小作制度・・・
またそれ以外にも、アメリカが共産主義に対抗する為の防波堤として、より統治しやすく、資本主義的な制度を取り入れました。

昭和21年『自作農創設特別措置法』を始めとしたGHQの農地改革
昭和22年『過度経済力集中排除法』によるGHQの財閥解体ののち、
昭和25年『市街地建築物法』は『建築基準法』に変わります。

これが、日本の街並みが現在のようになった契機であるとも言えますし、
一方で国家の弱体化を招いたという人もいます。

戦後の札幌では、かつて開拓者や小作人だった人々が、
『自作農創設特別措置法』『過度経済力集中排除法』などによって、
国策企業や不在地主・大地主が所有する土地を譲り受けました。

昭和30年ごろになって、札幌の宅地化がより進んでいくと、
大きな土地を持った方々は、住宅地としての分譲を考えます。
例えば、このような大きな土地…農地や原野があった場合、どのように建物が建てられるでしょうか。
前回紹介したように『建築基準法では、建物を建てる土地は、道路に面している必要があると定められました。
これを建築基準法上の『接道義務といい、『市街地建築物法』における『建築線』制度から現代まで、100年生きている大原則です。
つまり、『接道義務』を守ろうとすると、このように道に面している部分にしか建物が建てられないという状況になります。
元々が農地や原野だった大きな一面の土地は分譲に向かないのです。

大きな土地にドン!と大きな建物を建てるという方法もなくはありませんが、
昭和30年~40年ごろでは、やはり一般的ではなく、木造戸建での分譲が主な処分方法でした。

このままでは大きな土地の奥の部分は建物が建てられず、利用価値がないという状況に陥ります。
つまり、GHQが望むところの土地の分散所有が達成されないという事です。
そこで活躍するのが、建築基準法第42条1項5号に定められた『位置指定道路』です。

(建築基準法第42条1項5号)
 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの

前回『告示建築線』は位置指定道路の前身である、と紹介しましたが、
『告示建築線』は行政官庁が指定するものであり、
『位置指定道路』は特定行政庁から指定を受けるものです。
しかし、建築基準法では、市街地建造物法と異なり、その主体はあくまでも『道を築造しようとする者』です。

これは、建築基準法によって、民間の主導で道路を築造し、分譲することが出来るようになったという事です。

つまり、農地改革、財閥解体、建築基準法の合わせ技によって、土地の分散所有を実現したです。

こうして、位置指定道路に面する部分には、建物を建てる事が出来るようになります。
このように、位置指定道路があることによって土地の有効利用が出来るようになりました。

そして宅地造成・分譲のブームが起こり、低所得者であっても住宅ローンで家を買えるようになりました。
『持ち家』『マイホーム』に対する信仰が生まれたのもこの頃だと言われています。

『建築基準法』の他、『(旧)宅地造成法』や長期低金利融資の住宅ローンを扱った『住宅金融公庫』などの各制度で、国は全面的にマイホームの取得を支援してゆきます。
『持ち家』があれば、家具家電も必要になりますし、様々なサービスも循環しますから、『家』が日本国の内需を支える原動力であった、とも言えます。

昭和30年~40年ごろまではそれでよかったのです。

しかし、これが、後々厄介なことになってきています。
何度も書いていますが、位置指定道路はあくまで私有地

位置指定道路の土地を持っている場合は・・・
 ・通り抜け出来ない位置指定道路には固定資産税がかかる。
 ・一度、位置指定道路にしてしまうと、なかなか処分出来ない。
 ・位置指定道路を所有していることに、メリットが殆どない。

一方、位置指定道路に面する建物の敷地を持っている場合は・・・
 ・配管を掘る場合、『私道掘削許可』を所有者に貰わなければならない。
 ・原則、除雪が入らない上、舗装費用も札幌市の負担はない。
 ・そのような不便があるので、財産価値が低い

・・・他にも諸々の細かい点はありますが、概ねこんなところでしょうか。
そして、位置指定道路を設定した、過去の地主さんがいなくなり、
その子供や孫の代になると所有者が分散し、その位置指定道路は完全に手が付けられなくなるのです。

戦後のマイホームブーム、続々と分譲された造成宅地の問題は位置指定道路だけではありません。
市街のスプロール(虫食い)化によって『都市計画法』が施行されたのは『E-1 市街化調整区域とは何か』で解説した通りですし、それだけでは問題が解決せず、既存の住宅地に『地区計画』を設定したのは『E-4 市街化調整区域と『地区計画』』で紹介しました。

他にも郊外に造成された新興住宅地の問題や分譲マンションの問題など『不動産神話』の爪痕は深いものがあるのです。

私は『不動産神話』の爪痕を解決してゆくことが、これからの不動産従事者の役割であると考えており、シリーズ『位置指定道路』がその為の一助になることを、願っています。

当記事は2013年12月09日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-1 位置指定道路の前身『告示建築線』とは?


さて、シリーズ『位置指定道路』の記事を初めてゆくにあたって、
過去記事の再録をしてゆく前に一つ、新規記事を書きたいと思います。

そも、『位置指定道路』というものを認識するにあたっては、
建築基準法における2つの大前提を抑えておかなければなりません。

『接道義務』
 建物の敷地は『建築基準法上の道路』に接している必要がある。

『建築基準法上の道路』
 『接道義務』を満たすための道路は、国道、都道府県道、市町村道といった、公道は勿論のこと、それ以外の一定の『私道』も認められる。

『建築基準法上の道路』については、建築基準法第42条に定めがあり、いくつかの種類はありますが、公道以外で最もメジャーなものが、建築基準法第42条1項5号に定める『位置指定道路』です。

建築基準法における『位置指定道路』の定めについては、
次回以降、その必要性や経緯についても解説してゆきますが、
今回はその前身ともいえる制度である『建築線』について紹介してゆきます。

建築基準法は建物の建築に関する法律でありますが、
戦後、昭和25年に定められた法律です。

それでは、それ以前には、建物の建築に関する法律はなかったのでしょうか?

勿論そんな訳はなく、それ以前には『市街地建築物法』(大正8年4月法律第37号)が施行されていました。

そこでは建物の建築について、このように定められています。

第七條 道路敷地ノ境界線ヲ以テ建築線トス 但シ特別ノ事由アルトキハ行政官廳ハ別ニ建築線ヲ指定スルコトヲ得

第八條 建築物ノ敷地ハ建築線ニ接セシムルコトヲ要ス 但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス

第九條 建築物ハ建築線ヨリ突出セシムルコトヲ得ス
    但シ建築線カ道路幅ノ境界線ヨリ後退シテ指定セラレタルモノナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ 建築物ノ前面突出部又ハ基礎ハ道路幅ノ境界線ヲ超エサル範囲内ニ於テ建築線ヨリ之ヲ突出セシムルコトヲ得

(口語訳)
第7条 道路敷地の境界線を建築線とする。ただし、特別の事情があるときは行政官庁は別に建築線を指定することができる。

第8条 建築物の敷地は建築線に接するようにする必要がある。ただし、特別の事情がある場合で行政官庁の許可を受けたときはこの限りではない。

第9条 建築物を建築線から突出させることはできない。
    ただし、建築線が道路の境界線から後退して指定されているときは、
    建築物の前面突出部または基礎を、道路の境界線を超えない範囲で建築線から突出させることができる。

 

つまり、第7条で原則的には道路となっている敷地の境界線が『建築線』である、と定めており、
また、第8条では建物の敷地は『建築線』に接するようにしなければならないとしています。
そして、第9条で建物は『建築線』≒道路敷地に原則はみ出してはならないとされています。

これが現在の建築基準法で言う所の『接道義務』の原点である訳ですね。
また、『建築基準法上の道路』≒『建築線』ということが出来ます。

第7条の特例として行政官庁が”道路ではない場所に”『建築線』を指定する事が出来る、とされています。
これが『告示建築線』と呼ばれるもので、行政官庁が告示して、指定する建築線です。

行政官庁が全く道路のないところに指定することも少なくなかったそうで、
特に東京や大阪では、現存する建築線が大きな問題になることも多いようです。

札幌市でも昭和2年5月に指定された現在の『位置指定道路第1号』を始め、
市内の中心部に複数の建築線が指定され、その一部が現存しています。
(現存しないものは、公道になったものや、廃止になったものがありますが、詳細は不明です。)

北10条西1丁目にある位置指定道路第1号の昭和2年における告示建築線図面です。

そして戦後、『市街地建築物法』が『建築基準法』に切り替わるにあたって、
建築基準法施行時の附則第5項では以下のように定められたのです。

(この法律施行前に指定された建築線)
5 市街地建築物法第7条但書の規定によつて指定された建築線で、その間の距離が4メートル以上のものは、
  その建築線の位置にこの法律第42条第1項第5号の規定による道路の位置の指定があつたものとみなす。

『第七条但書の規定』とは、建築線のうち道路敷地の境界ではないもの、つまり『告示建築線』です。
そして、『この法律第42条第1項第5号の規定』とは前述の通り、位置指定道路の規定です。

つまり、『告示建築線』のうち、幅が4m以上のものは位置指定道路の指定があったものとみなす、という事です。

では、4m未満の『告示建築線』はどうなのか、と言えば建築基準法第42条2項にこのような定めがあります。

2 この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離2メートル(前項の規定により指定された区域内においては、3メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、2メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。
  ただし、当該道がその中心線からの水平距離2メートル未満でがけ地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離4メートルの線をその道路の境界線とみなす。

条文番号から『2項道路』という呼び名が一般的ですね。
これは『告示建築線』に限らず、昭和25年当時に存在した4m以未満の道について、
新規に建物を建てようとする場合には(原則)幅4mを確保すれば、その建築を認める、という規定です。
道路幅を確保するために建物を後退させること『セットバック』と言います。

このようにして道路を広げてゆき、防災や通行の確保、採光の改善などを図ってゆく訳です。

これは北7条東13~14丁目にある『苗穂工場裏通線』幅3.64m。
『公道』であり、かつ『2項道路』という特殊なものです。
おそらく、元々は『告示建築線』であったのではなかろうかと思っています。

この規定では『この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる』との前提がありますが、更にそれでは、昭和25年当時に建築物が立ち並んでいなかった『告示建築線』はどうなのでしょうか?

答えは簡単、建築基準法上の道路としては認められないのです。

しかし、『現に建築物が立ち並んでいる』のかどうか、という判定は、自治体が行わなければなりません。
自治体と土地所有者の争いが発生したという事例も少なくないようです。
また、戦後間もない昭和25年時点の状況で『現に』ですから、空襲などで焼け落ちた市街は、対象外という事です。
物の資料によると、戦災の激しかった名古屋では、ほとんど告示建築線が残っていないそうです。

そういった種々の問題を孕みつつも、『告示建築線』は今も街並みの中に潜んでいるのです。

次回以降、『位置指定道路』の取扱いについて紹介していきましょう。

B-8 上水道台帳の見方

A-11 上水道の配管状況を知りたいとき』で取得した『上水道台帳』の見方を紹介していきましょう。

上水道の台帳図は、都市ガスや下水道と異なり、道路内配管の太さが数字で書かれていません。
また、情報量も多く、配管の材質や宅地内での供給設備なども記載されていますから、市役所の記載内容を読み取る前に、個別に読み方を紹介してゆきましょう。

なお、このコンテンツは札幌市水道局の上水道台帳の見方を解説したもので、
他の自治体では、異なる様式の記号・略称となる場合がありますのでご注意下さい。

<配管の種類>

旧ブログのアクセス解析には『DTP』『DKP』に関する検索が多くありました。
これは配管の種類に関する表示で、材質や形状についての記載です。
アルファベットの”D”は『ダグタイル鋳鉄管』を指し、
『DTP』はダグタイル鋳鉄管T形、『DKP』はダグタイル鋳鉄管K形を意味します。
他ではダ『ク』タイルという表記の方が多いのですが、札幌市ではこの表記です。

ダグタイル鋳鉄管の見た目はこんな感じです。

DTPであるとかDKPであるとかは、継手の形状などで決まるようですね。

ダグタイル鋳鉄管は水道本管や引き込み管などに広く利用されています。
鉄管の形状は主に接続部分の形状で、配管の太さや圧力で使い分けられています。

一覧表を見て分かる通り、ダグタイル鋳鉄管以外には、
コンクリート配管、鋳鉄管、鉄管、銅管、鉛管などがありますが、
古くなって劣化した配管から、徐々にダグタイル鋳鉄管に置き換えられています。
(配管の劣化・サビによる赤水・ピンホールや、鉛の漏出が懸念される為。)

ダグタイル鋳鉄管の他に広く利用されているものには、
『Pe』つまりポリエチレン管があり、
戸建住宅だけでなくそれなりの規模の集合住宅や施設の引込管に使われています。
ほかに『VP』…塩化ビニール管などもありますが、
札幌ではあまり見かけず、他の自治体で使われているような気がします。

配管の材質・形状に関する専門的解説は、他のサイトをご参照下さい。

<配管の口径(太さ)>

札幌市の上水道台帳では、道路内の配管口径について、数字での記載はありません。
表のような奇妙な記号で配管の太さを表現しています。

通常、大きな幹線道路ほど太い配管が通っており、住宅地の生活道路に関しては多くが100mm(=10cm)配管になっており、部分的に50mm配管となっている、というようなイメージです。

たった10cmの配管で何十軒もの住宅の使用する水を供給していると考えると、水道管にどれほどの水圧がかかっているか、技術の凄まじさに感嘆せざるを得ません。

写真はΦ2928(直径2.9m)の上水道配管です。
このクラスの配管はかなり大きな幹線道路の道路内で使われています。
市役所の北側、国道12号線の下の配管は300mmですから、国道でもこの10分の1の太さだ、という事です。

この太さの配管に水が満たされていて、かなり強い水圧が掛かっているというのは、ちょっと私の想像力では、どのような状態になっているのか想像出来ません。

<設備記号>

これはあまり利用する機会もなく、一般の方が知っておくべき事柄でもありませんが、上水道台帳の設備記号についても、引用して紹介しておきます。

特に話題になりやすい項目として、建物への水道の供給方法で『直結直圧方式』、『受水槽方式』、『直結加圧方式』といったものがあります。
『直結直圧方式』は、水道管の圧力で建物へ水を供給する方式です。
戸建てや中低層のアパートでは一般的ですが大きな建物には使えません。

『受水槽方式』は、一旦屋上などに汲み上げた水を重力で建物に供給する方式で、近年は『不潔』だと、あまり評判がよくありませんが東日本震災で水が止まった時には貯まった水をしばらくの間利用することが出来た為、重宝されました。

『直結加圧方式』ブースターポンプ(VP)という機械で、大きな建物でも受水槽を使わずに水を供給します。
その他にも細かく色々な方式がありますが、建物固有の事情になりますから、説明は省略します。

<札幌市役所本庁舎の上水道台帳>
さて、一通りの説明が済みましたから、札幌市役所の上水道台帳に戻りましょう。

敷地内の引込については、小さく数字で書かれていますから、拡大図を見てみましょう。


凡例と照らし合わせると北側の国道12号線の道路内配管の口径は300mmです。
そこから敷地内に引き込まれ、DKP(100)を通って、DTP(75)[M]と続いていきます。
DKPとDTPという事は、配管の材質は『ダクタイル鋳鉄管』ですが、途中でK型管とT型管を切り替えているという事です。

括弧書きは引込み管の太さ、これがあまり細いと大きな建物への水道供給は出来ません。
配管の太さも100mmから、途中で75mmと細くなっていますね。

配管が太ければ太いほど、大きな水圧が掛かっており、高層階への供給が可能です。
戸建の場合20mm以上大規模な建物は100mm以上が目安と言われています。
水圧不足を補うためには、受水槽やブースターポンプの設置が必要となります。

古い戸建では13mmの引込管も多いですが、水の使用量によって不便が生じる場合があります。

[M]は、メーターの事で、右下の『受』は受水槽方式数字『187280』はメーターの番号です。
札幌市役所は19階建の建物ですから、受水槽方式で水圧をカバーしている訳ですね。

つまり、この『上水道台帳』から分かることは以下の通りです。
市役所の北側には300mmの上水道配管が通っており、市役所には100→75mmの引込管がある。
引込管から供給された水は、受水槽方式で市役所内に供給されている。

下水道は市役所の北側を通らず、西・東・南に通っていましたが、
上水道は逆に、市役所の北・南を通っていますが、西・東には通っていません。
道路内配管や敷地との接続方向は、インフラによって違うのです。

<その他の記載>
その他、『予定栓』、『未工事』、『散水栓』、『水飲み場』などの記載がある場合もあります。
『予定栓』は、メーターを接続する事が出来る、引き込み管です。
新規に宅地造成されたような地域では、予め引き込み管まで設置している場合があります。
『未工事』は、過去に建っていた建物の水道メーターが撤去されていない状態です。
『散水栓』『水飲み場』は言葉通りの意味ですね、公園などにあります。

上水道の道路内配管は比較的簡単な調査項目ですが、敷地内の配管・メーターの取り扱いについては様々な規定があります。
また、上水道の手続・工事は、札幌市の指定業者しか行うことが出来ません。

水道メーターや加入料に関しては、知識のない不動産業者が担当すると数十万円単位を平気で損をしてしまいますから、水道メーターの取扱いについては、技量の確かな不動産業者か、市の水道工事指定業者に相談した方がよいでしょう。

当記事は2013年10月18日および2014年12月15日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

B-7 下水道台帳の見方


今回は、『A-10 下水道の配管状況を知りたいとき』で取得した『下水道台帳』の見方を紹介します。
まず、最初に触れておきたいのが『合流式』『分流式』の違いです。
両者の違いは『汚水』『雨水』を合わせて流すか、分けて流すか、という事です。 

『汚水』…トイレ、風呂、台所等から出た生活排水
『雨水』…雨水、雪解け水、屋根の雨どいから落ちた水など

分流式では、雨水はそのまま川へ流しますが、合流式では処理施設まで流れます。
札幌市では市内中心部はほとんどが合流式、郊外などの比較的新しい配管は、分流式であることが多いようです。
市のHPによると、その割合は処理区域面積の60%が合流式、残り40%が分流式との事ですが、人口のカバー率でいえば、合流式の方がもっと多いはずです。

画像をクリックするとフルサイズの画像がダウンロードされます。

札幌市の『下水道台帳』は『合流式』はピンクの線、『分流式』赤(汚水)青(雨水)の線で表されます。
上にある市役所の下水道台帳はピンク色ですから、周辺の配管は『合流式』と分かります。
そして、ガス管などは通っている北側道路(国道12号線・北1条通)には下水管は通っていないんですね。
見づらいと思いますが、西側にある下水道が60~70cm(600~700mm)、東側が80cm(800mm)です。

そして下水管と敷地との接続は通常『公共枡(ます)』で行われています。

『札下』と書いてあるものですね。札幌市下水道の略で、市の所有物です。

下水道台帳ではで表されますが、市役所の敷地に『公共枡』はないようです。

代わりに市役所の東側に小さくあるのがのマーク『私設枡』です。
『10』と書かれていますから道路へ接続する配管は10㎝(100㎜)ですね。
公共枡は札幌市の持ち物ですが、私設枡は民間の持ち物、故障があった場合、自己負担となります。
…札幌市の持つ土地にある枡が『私設枡』の扱いだなんて妙な話ですが、
古い建物に関しては実際の権利関係と資料の不整合はよくある話です。

台帳図の内容をまとめると、以下のようになります。
札幌市役所には、生活排水と雨水が一緒に流れる西側600~700㎜と東側800㎜の下水管があり、敷地からは10㎝(100㎜)の『私設枡』で東側の下水管と接続されている。
(本当は南側・大通にも下水管30cmの下水管が通っていますが用紙に入りきりませんでした)

ちなみに、『大雨でトイレやお風呂が逆流!』というのは、殆どが合流式での事故です。
近年は、大雨が増えてきていますから、下水の逆流等の問題が大きくなっていくのかもしれません。
だからといって、すぐに分流化することは札幌市の算的には難しいかと思いますが、
最低限の覚悟として、『この地域は合流式なんだな』という認識を持っておく必要はあるかと思います。

当記事は2013年10月14日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

B-6 都市ガス導管図の見方


さて、『A-9 都市ガスの配管状況を知りたいとき』で北海道ガスにお願いした、『都市ガス供給照会依頼書』と『道路内導管図』が戻ってきました。

『道路内導管図』はこのようになっています。

『都市ガス供給照会依頼書』には、こちらから送った依頼書に、回答の担当者名などが書かれてきます。

『道路内配管図』の見方では、図面よりも一番上の枠の内容がすべてと言って良いかもしれません。

 前面道路→あり・西150mm・北250mm
引込み管→あり・150mm
対象地区のガス種→13A

『前面道路』欄では、道路内の配管の有無と太さが記載されています。
『引込み管』というのは、道路から敷地内へ接続する配管があるかどうか、その配管の太さの事です。
どちらの道路の配管から引込んでいるのかは、図面を見ましょう。図面では北側から引込んでいますね。

『対象地区のガス種』の13Aというのは、天然ガスの規格です。
ガスは成分によって種類が定められていて、コンロなどの機材もガスの種類に合わせなければなりません。
(プロパンガス用のコンロは都市ガスで使うと事故の元になりますし、逆も同様です。)

図面の内容を読み解いてまとめると、
市役所の回りには西に150mmと北に250mmの道路内配管があって、
市役所には北側から150mmの配管で13Aというガスが供給されているよ。
という意味なのです。
配管の太さや引き込み位置については、北ガスや設備業者さんの領分になります。

さて、札幌市役所は都市ガスが使える事が分かりましたが、
その他、イレギュラーなケースも見ていきましょう。

①道路内に都市ガス配管があっても、引込み管がない場合
 前面道路→あり・西100mm
引込み管なし
対象地区のガス種→13A

・・・という回答が返ってきた場合には、敷地へのガスの供給がないという事です。
道路内に配管があっても、この『敷地への引き込み』がない場合は、すぐに利用する事は出来ません。
自費負担で敷地への都市ガス配管の引き込み工事が必要になります。
既に建物が建っている場合は、建物のガス設備をプロパン用から都市ガス用に変更しなければなりません。

新しい建物でも、オール電化住宅の場合には、都市ガスの引き込みはありません。
見た目だけに騙されてはいけない例ですね。

②その近辺に都市ガス配管がない場合
道路内に都市ガス配管がないエリアの場合には、返信のファックスに配管図面がついてきません。
『都市ガス供給照会依頼書』に、このような文言がスタンプされて返ってきます。
ガス導管図のない地域となります。
ご照会場所の付近に都市ガス管はありません。

これが返ってきたらそのエリアでは都市ガスの供給はまだまだ先・・・とあきらめるしかないでしょう。

③道路内には都市ガス配管はないが、近隣に配管がある場合
都市ガスの供給エリアではあるのだけれど、その道路の中に配管がない場合には、一番最初の画像の左側にある文書にチェックがされた図面が返信されてきます。
ガスの引込が可能ですが、本管延長工事(有料)が必要です
つまり、自分の土地の目の前の道路までの引込費用を負担してね、という事です。
・・・とはいえ、道路を掘って管を埋めるというのは、ベラボーに費用がかかります。
分譲業者が行う大規模な開発でもない限り、個人レベルでやる事ではありません。
よっぽどの事がない限り、すぐには都市ガスは通らないと考えてよいでしょう。
北ガスは徐々に供給エリアを広げていますから、そのうち通ってくれるのを祈りましょう。
まぁ、もし道路に配管が通っても①の状態になるだけの場合もありますが・・・
(造成工事などで、敷地までの引込費用を負担してもらえる事もあります。)

・・・だいたいこんなところでしょうか。
インフラの供給工事については、技術的な問題があるので、出来る・出来ないをすっぱり言えない場合があります。
例えば①のケースで前面道路の幅が20mくらいあって、自分の土地の側ではなく、
道を挟んで向かい側の歩道の中にしか都市ガス配管がない場合には、
道路を20mも掘って引き込み工事を行わなければならないので、
道路管理者の許可を取ったり、どの程度費用負担するか決めたりと、大変です。

都市ガスの有無は土地建物の価格に、比較的ダイレクトに影響する要因ですから、入念に調査しましょう。

当記事は2013年10月11日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

B-5 道路台帳図の見方


さて、今回は『A-6 市道・道道の詳細を知りたいとき』で取得した、『道路台帳図』の見方を例によって『大通』を例にして紹介します。

早速ですが、取得した道路台帳図を見てゆきましょう。


うーん、見づらい!
(クリックすると大きな画像が見られますが、それでも見づらいです。)
角度や縮尺の調整でもう少し見やすいように出力することも出来るのですが、まずはありのままの状態でお見せした方が分かりやすいでしょう。

まずは道路台帳図の性質を知るために枠外に書かれている注意から紹介してゆきましょう。

<注意>
1.この図は札幌市管理の道路台帳図の一部分を複写したもので、道路法上の道路区域を表示してあります。
2.道路区域線は、土地所有権の境界線ではありません。(官民・民民を含む)3.現地の道路区域位置とは必ずしも一致しません。
4.道路区域及び幅員・延長以外の記載事項は参考です。法的根拠を有するものではありません。
使用する場合は個々にご確認の上使用してください。
5.この図に関するお問合せは、電話ではお受けできませんので、窓口まで直接お越しください。
(所在 札幌市中央区北1条西2丁目 札幌市役所6階 道路認定課)

つまり、図面は道路の認定幅員を示すもので、実際の幅(現況幅員)や建物や舗装、植栽の状況や登記の内容との整合性は保証しない、と言っています。
また、所有権や登記上の境界線は必ずしも一致していないことも明記されています。
所有者や、登記上の形や面積を知りたい場合には、法務局で登記を調べましょう。
A-8 道路の拡幅について知りたいとき』で紹介したように『市道』として認定されていても、所有権が個人にある『私有地』の場合もあるのです。

さて、それでは図面を拡大して、見てゆきましょうか。


(これもクリックすると大きな画像が見られます。)
今回は全体像から徐々に拡大してゆく、という方法をとりたいと思います。
道路に沿って、番号とともに名称が書いてある部分(赤い下線部分)は『道路番号』と『路線名』です。
実は大通は『10-0001 大通南線』と『10-0002 大通北線』の2つの道路からなっていることが分かります。
しかも、『10-0002 大通北線』には、大通公園の敷地が含まれています。
つまり、大通公園は道路法上の道路敷地なのです。

では、いわゆる『公園』ではないのか、というとそうではありません。
いわゆる『公園』の法的根拠は『都市公園法』とそれに関連する政令によりますが、大通公園は札幌市が告示する『特殊公園』に該当する為、いわゆる『公園』でもあり、道路法上の『道路』でもあるという、重複的な立ち位置にある、と言えます。

道路番号のハイフン前の最初の2桁(10-)は札幌市が管理する『区番号』で、中央区は『10』です。

次に、赤い○を付した部分、道路に対して直角に線が引かれている隣に数字が書かれているのがその部分の道路『認定幅員です。
前の画像では細かい数字までは読み取れませんから、図面中央下部を拡大してみましょう。

ここまでは市役所手前の北側を見てきましたが、北側の道路区域には大通公園が含まれていて、大変大きくなっているので、今回は例外的に南側(丸井今井の北側の道路)を見てみましょう。

太線で○を付けた部分には『20.00』と書かれていますね。
ここから、この部分の『認定幅員』は20.00mであることが分かります。

その両脇に、細線で○を付けた2ヶ所には『10.00』と書かれています。
これは『道路中心線』から道路境界までの幅員で、道路の片側の幅員を示します。
10.00mが2つで20.00mの認定幅員である、という事です。
単に道路幅員の半分の数値が書かれている訳ではありません。
例えば、7.27mの道路であれば、半分の3.635mとなるのか、と言えばそうではなく、3.64mと3.63mとなっています。
道路幅員は小数点2位(センチメートル)までの記載となっていますから、どちらかが1cm多い表記となる訳です。

また、都市計画の設定や、道路の拡幅は『道路中心線』を基準に行われますから、道路の左右で拡幅計画が異なる場合も出てきます。
全体の幅員は勿論のこと、片側の幅員についても確認をしておきましょう。

そして、道路幅員の確認が終わったら、同じ道路に確認した幅員以外の数字の記載がないか、確認しましょう。
大通は道路幅員が一定ですが、太くなったり・細くなったりしている道路の場合には、当然、その箇所によって認定幅員が変わって来ます。
道の幅が狭い部分と広い部分で変化している場合には、正確な認定幅員を算出することは出来ません。
その場合には例えば『10.21m~11.43m』といったような幅のある表記になります。

平面図の他に、タッチパネル端末では、『断面図』や『告示図』『標高図』などを閲覧できる場合があります。
『告示図』や『標高図』は特殊な図面で一部の道路にしか存在していませんが、『断面図』についてはすべての道路に用意されていますから、内容を紹介してゆきましょう。

断面図では、車道・歩道での幅員の内訳や舗装の材質と厚さをみる事が出来ます。

画像の丸井今井正面道路の幅員は20mですが、うち6mが歩道、12mが車道、2mが(大通公園側)歩道という内訳がわかります。
下に記載してあるのは舗装の厚さと、舗装を構成する材料、ロードヒーティングの有無などです。
ざっくり言えば舗装は厚ければ厚いほど耐久性があり、薄ければ剥がれて砂利が露出してしまう危険性が高くなります。
一般に幹線道路については舗装が厚く、住宅地の入り組んだ道路などでは舗装が薄いと言われています。

予算の関係上、舗装のランク付けがされています。
大通は交通量も多い札幌の象徴的道路ですから『高級舗装』で施工されています。

さて、ここまで道路台帳が読めれば、まぁ宅建士の最低水準程度には達していると言えるでしょう。
(まー、その最低基準を満たさない宅建士も世の中には沢山いる訳ですが。)

更に詳細な内容については、道路認定課の窓口で聞くように書かれていますが、実際には各道路センターや市役所7階の管理測量課に回されてしまう事が多々あります。
また、役所との交渉についてはある程度のコツが必要になってくる局面もありますから、専門家に依頼するのも一つの手段かと思います。

当記事は2013年09月08日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

B-4 地積測量図の見方


今回は『全部事項証明書』、『地図に準ずる図面』に続いて、第三の法務局資あ料『地積測量図』を見てゆきます。

用語解説でも紹介していますが、『地積測量図』は『全部事項証明書』に記載される面積の根拠となる図面です。

つまり、地積測量図は土地がその形・その大きさになった際に作成されます。
多くの場合、『分筆』または『合筆』を行った場合に作成されたものが殆どです。
『分筆』というのは一つの土地を複数に切り分ける作業(法的行為)です。
『合筆』というのは、複数の土地を一つの土地に統合する作業(法的行為)です。
登記された不動産の単位『筆』と言い、それを分けたり・合わせたりするから『分筆』『合筆』と言うのです。
他にも、登記されている面積を変更する『地積更正登記』などで作成された地積測量図もあります。

地積測量図については最新のものが取得出来るほか、過去の変遷を追ってゆくことも可能です。

今回も例に出すのは大通り北側・市役所前面の道路『中央区大通西2丁目10番1』の最新の地積測量図です。


画像をクリックするを大きなサイズでご覧いただけます。
さて、まずは画像右下にある法務局の受付印を見ましょう。

『札幌法務局 処理 37.3.12 第   号』と書かれています。
昭和37年3月12日に分筆の受付をしましたよ、という意味です。
『第  号』という部分については、本来は受付番号が記入されるのですが、
記入漏れなのか、当時の札幌市の処理で記入不要なのか、ちょっとわかりません。
1つの土地について複数の地積測量図がある場合には、この日付と受付番号が一番新しいものが有効な図面です。
平成の世になっても、昭和37年のものが最新の図面だというのですから、すごい話ですね。

このように、まずは日付を確認するようにしましょう。

次に、図面上には地積測量図には申請した人(申請人)、測量し図面を作成した人(作成者)が書かれています。
右下に記載の申請者は札幌オリンピックを誘致した札幌市の『原田 与作』市長です。
左下に記載の作成者は『札幌市技師 ○○○○』と書かれています。(公人でない為、指名は削除しています。)
過去の地積測量図には技師とか測量士といった肩書で作成者が記載されていることがあります。
現在は法改正によって、土地家屋調査士だけが、登記に使う図面を作成出来ることになっています。
この図面を作成した人、登記を申請した人を見ることで、どのような権利関係にあったのか、類推することが出来ます。

ここから図面の内容に移ります。
右下の市長の名前の下に『尺貫法による表示』とある通り、昭和41年までの図面はm単位で記載されていない事が多いです。
有名な話ですが、昭和26年に施行された計量法によってメートル法の使用が義務付けられたものの一向に普及せず、昭和41年以降、かなり強権的に移行させた経緯があります。
詳細な換算法については『尺貫法』で検索して下さい。

この土地は『B-2 全部事項証明書(謄本)の見方』で調べたように、
『昭和37年3月12日に10番という土地を10番1、10番2、10番3の3つに分けたよ』という土地で、今回紹介した地積測量図は、まさに昭和37年に分筆した際の記録なのです。
長方形だった『10番』の土地が『据置地 10-1』『10-2』『10-3』に分けられています。
それぞれの辺の長さが記載され、下の部分で面積が計算されています。
計算式はだいたい小学生レベルの加減乗除で『10-2』3畝10歩『10-3』4畝19歩となっています。
そして『据置地 10-1』は元の『10番』の面積から『10-2』『10-3』の面積を差し引いて
4反4畝という面積で計算されています。
1反≒300坪≒991.74㎡、1畝はその1/10ですから、現在登記簿に書かれている面積
『4363㎡』4.4畝×991.74㎡という換算式で計算されている事がわかります。

ここで一連の計算を見て分かると思うのですが現在の登記簿上の面積である4363㎡『4反4畝』の根拠となったのは『10番』の頃の面積からの差し引きで、昭和37年の段階で、『据置地 10-1』についての測量を行っていないのです。
これを『据置計算』といい、確かに作業は楽なのですが、誤差が大きくなってしまうので、現在では原則的に、分筆する前の土地『10番』と分筆後の土地それぞれを測量して面積を計算することになっています。

地積測量図は新しいものになるにつれ信頼性が増してゆきますが、古いものについては殆どアテにならないものと受け取って下さい。
登記全般に言える事ですが、地積測量図に書いてある内容が真実であると、公的に証明されている訳ではありません。

私は賭けてもいいのですが、この土地を現在測量すると、かなり大きな面積の誤差が発生します。
そのくらい、登記されている面積と実際の面積との相違は、不動産業者にとってはありきたりな事なのです。

その他の地積測量図では、いろいろなメモが記入されています。
『地図に記入済み』とか『住所変更』とか『○年○月○日 合筆済』とか…
更には作成した調査士のメモや法務局が後で付け足したイレギュラーな書き込みもあり、注意が必要です。

地積測量図については時代によって様式も代わり、特に古いものについてはかなり自由に作ってあるので、かなりの注意を持って利用するのがよいでしょう。

当記事は2013年09月03日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

 

B-3 地図・地図に準ずる図面の見方


『地図』または地図に準ずる図面では、土地のだいたいの形と、地番、隣接関係を調べることが出来ます。
『地図』とだけ言うと紛らわしいですから、『地図に準ずる図面』という呼称にまとめます。

『地図に準ずる図面』って何よ?という疑問については用語集を参照。

早速、図面を見てゆきましょう。

これだけではイメージが掴めないでしょうから、Googleマップと照らし合わせてみましょうか。

『10-1』が今回調べている、大通の北側部分です。
その北側が『10-3』札幌市役所の入り口付近、さらに北側『10-7』は市役所庁舎と駐車場部分です。

西側にある『9』と『10-2』は札幌大通郵便局(NTT東日本ビル)です。
東西には『道』と書かれていますね。
(『道』と書いてある部分については『A-12 登記がない・地番がない土地ついて知りたいとき』で紹介しています。)

実際の住宅地図やブルーマップと、地図に準ずる図面を照らし合わせて、所在を調べます。
1つ(=1筆といいます)の土地に複数の建物が建っていたり、1つの建物が2筆以上の土地にまたがって建築されている事も多々ありますので、注意が必要です。

そして、地図を準ずる図面を見る上での最大の注意点ですが、『9番』(郵便局)『1-7』(市役所)の線の上に記載されている『● ● ●』です。

これは『字界(あざかい)』といって住所の切れ目を表記するものです。

具体的には郵便局は『大通西2丁目』なのですが、お隣の市役所は『北1条西2丁目』なのです。
同じ区画で隣同士なのに、字(住所の区切り)が異なる事があるのです。不思議ですよね。

『字界』についてもはっきりとした決まりはなく、ケースバイケースというのが現状のようです。
区画整理を実施したせいで、4丁目のはずの区画の土地が登記記録では5丁目になっている『飛び地』があったりと、
整理したのか散らかしたのか訳がわからないような事例も結構あるのです。
このような場合、『B-1 ブルーマップの見方』でも書いていますが、ブルーマップや地番図では微妙な『字界』が間違って表記されている事があります。

公務員の皆さまにはその辺、きちんと考慮して業務を執行してもらいたいものですが、一度役所が決めた事については、現状に合わせて変更する事は難しいようです。
国の機関である法務局と、札幌市とで見解が異なる事もあり、公式な書類で住所が二重になっている例もあります。

住所の境界である『字』については、近年でも、割と曖昧な取り扱いが多いような印象を受けます。
毎度毎度で申し訳ないのですが、トラブルになった場合には個別に協議する以外の方法がないのです。
詳細な調査や問題解決の為の業務についてはプロにご依頼下さい。

当記事は2013年08月30日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

B-2 全部事項証明書(謄本)の見方


さて、『A-3 道の所有者を知りたいとき』で取得した書類の中身をもうちょっと詳しく見てみましょう。

大通の北側部分『札幌市中央区大通西二丁目10番1』の全部事項証明書の内容を一部写したものです。

全部の内容について網羅的な説明はやっていくとキリがありませんので、他のサイトを見て頂くとして、ここでは最低限の謄本の読み方と『道』を調べる為に必要な部分を解説していきます。

<表題部(土地の表示)>…上から1つ目の枠
①地番
そもそもこれが分からなければ全部事項証明書を取る事が出来ませんので、取得した時点では判明していると思いますが、この書類には 『10番』と『10番1』の2つの地番が記載されています。
左下の部分に『*下線のあるものは抹消事項であることを示す。』とある通り、
下線のある『10番』は現在無効な地番で、有効な地番は『10番1』ということです。

②地目
地目とは、その土地の用途を登記する項目です。
不動産登記法で定められた23種の地目のうちのどれかが記載される事になっています。
公道の場合は『公衆用道路』、私道の場合には『公衆用道路』『雑種地』『原野』『宅地』などが多いでしょう。
この例では、郵便局敷地になっていますね。
これは、この土地が道路になる前、札幌郵便局・電報局の敷地だったことに由来します。

古い登記には現行のルールが適用されず、修正しなくても罰則など殆どありませんので、昔のまま放置されている場合が多いです。
しかも、『郵便局用地』は不動産登記法に定められている23種類の地目に該当しない、レアな地目です。

札幌で一番有名な公道がイレギュラーの塊だったりする事からも分かるとおり、登記されている内容がアテにならない事はとても多いのです。

また『公衆用道路』という地目でも、『公道』ではない事も多々あります。
公道』か否かは、登記ではなく、各役所で確認しましょう。

③地積
これも下線があるものが、無効な内容。下線のないものが有効な内容ですから、
4363㎡が現在の登記上の面積ということになります。
宅地・鉱泉地の場合は1/100㎡未満で切捨、それ以外の場合は1㎡未満を切捨します。
この例では4363.○○○…というところを、1㎡未満で切捨しているのです。

また、この面積の計算は登記を行った時点で測量した結果に基づくもので、
現在の面積と一致している保証はどこにもありません。
最近登記を行った土地であれば信頼性は高いですが、古いものでは尺貫法からの換算なので、まったくアテになりません。
B-4 地積測量図の見方』で触れますが、4363㎡の換算前の数字は『4反4畝』です。
・・・単位からしてアテにならなそうな気配がひしひしと伝わってきませんか?

原因及びその日付
この項目には登記をした内容と、その日付が記録されています。
不動産の売買や相続、差押のほか、複数に分けたり(分筆)、1つにまとめたり(合筆)といった記録が書かれています。
この例に書いてある『①③10番1ないし3に分筆』というのは、
『昭和37年3月12日に10番という土地を10番1、10番2、10番3の3つに分けたよ』という意味です。
『ないし』は『…から…まで』という意味で、『いずれか』という意味ではありません。

その下の欄の『昭和63年法務省令第37号附則第2条第2項の規定により移記』というのは、
紙媒体の登記記録をコンピュータの記録に移し替えました、という意味で、通常は気にする必要はありません。

<権利部(甲区)>…上から2つ目の枠
こちらは、シンプルで『昭和33年に札幌市が所有者として登記されました。』という意味です。
『移記』についても表題部の取り扱いと同じです。
『順位1番の登記を移記』と書かれていますが、この番号によっては、
昔の権利関係を知る為に紙媒体の頃の登記簿を調べなければならない場合があります。
一般の方が現在の登記内容を知りたいだけであれば、気にする必要はありません。

2つめの枠の下に『登記記録の乙区に記載されている事項はない。』と書かれている通り、
3つ目の枠『権利部(乙区)』という記載がある場合があります。
『道』の調査の場合にはあまり出てきませんが、私道の場合には、稀にみられます。
内容としては『借金のカタになっている』『担保不動産である』という記載です。
機会があれば解説しますが、今回は省略します。
私道については借金のカタになっている事、割とありますが、その解決策については機会があれば・・・

最後に、最終段落の文章がとっても大事です。
『これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である。』
つまり、『この書類の内容は登記にある内容と全く同じですよ』、と保証しているのです。
現実の権利関係と全く同じですよ、とは保証していません。

登記記録と、所有者や面積、借金のカタになっているかという現状については、法務局は関知していません
ので、ご注意下さい。

さらに、インターネットの『登記情報提供サービス』で取得する登記データには、この一文がありません。
電子データについては登記内容の保証もしませんよ、という事なので、公的な手続は電子データで行えない事が殆どです。

登記の役割や効力はどんなものなのか、感覚として理解して、有効に活用しましょう!

当記事は2013年08月29日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。