アントニオ猪木が『この道を行けばどうなるものか』と引用したように、『道』というのは本来的にどこかに行けてナンボのものなのです。
進んだ先が行き止まりになる道は、不動産の世界でも、少し格が落ちる訳です。
行き止まりになる道路を、法律上・税務上は『通り抜け出来ない道路』などと言います。
不動産業では俗に『ドン突き』と言ったりするようです。
元々は古い関西弁で突き当たりの事を『ドン突き』と言う事から、
関西資本の業者が使い始めた言葉でしょうか。
さて、『通り抜け出来ない道路』については、
それに面する土地についても、若干評価が落ちるというのが定説です。
(勿論、奥まった土地で静かなのが良い、というニーズも一定数ありますが。)
位置指定道路の場合には、『通り抜け出来ない』状況にする為には、
①幅が4~6mの場合、道の総延長が35mを超える場合には『自動車転回広場』の設置が義務付けられています。
②幅が6m以上の場合には、総延長がどこまで長くとも、『自動車転回広場』の設置は不要です。
さて、そうして指定された位置指定道路ですが、これを札幌市に寄付して市道としたい場合に、一つ、意外な伏兵が登場します。
それが『門前土地使用承諾書』です。
具体的に言うと、①の例の4~6mの幅で『自動車転回広場』がない場合には、
『道』の所有者が札幌市に寄付する意向があったとしても、
周辺の土地所有者から『門前土地使用承諾書』に署名押印をもらう必要があります。
これ、C-5 位置指定道路を市道にしてほしいときで紹介したパンフレット、
『市道認定のガイドブック 私道から市道へ』では、よく読まないと分かりません。
特に重要な部分を引用してみましょう。
行止り道路の場合、用地幅員は6m以上確保されることが条件です。(中略)関係者(道路に隣接する土地の所有者及びその使用者のこと。)全員から門前空間地(土地のうち道路用地に面している玄関前空間や前庭などの一部のこと。)の使用承諾が得られている場合は、最低用地幅員が4mまで緩和されます。
この承諾書、具体的にはこんな内容の承諾になります。
『この道は狭い道だから、自動車が迷い込んだ場合に、切り返しするために、
自分の所有する土地の一部(門前土地)を通過することを予め了承するよ。』
・・・う~ん、位置指定道路になっている時点で既にそのような自動車の侵入は多々あるでしょうから、市道にするにあたってわざわざそのような承諾書が必要になるというのは、市の事なかれ主義というか、お役所の自己防衛本能の強さというか・・・
札幌市が申請を受けた位置指定道路については、
あくまで私有地なのでそこまでは関知しないけれど、
公有地になったら市の責任になるので事前にハッキリさせておけ、と。
そのあたりをハッキリさせるにあたっての承諾書の取得も、
『道』の所有者が責任を持って行え、という事のようです。
とはいえ、分譲当時と現在では土地の所有者も移り変わっている可能性もありますから、改めてそういった書面を取り付けておく方が、トラブルを回避できるのは間違いないでしょう。
この『門前土地使用承諾書』がすべて揃わないと、原則寄付は受け入れられません。
道路に面する土地の所有者も、『位置指定道路に面する土地』から『公道に面する土地』に変わる訳で、不動産の処分価値としては、グンと上がる訳ですが、世の中には数字上の価値がどうだというより、兎に角、そういったことに協力をしたくない人というのも一定数いるもので、位置指定道路に面する土地の所有者のなかに、そういう人がいれば、計画は頓挫してしまいます。
それに、土地の所有者が皆さんそこに住んでいればよいのですが、
別の人に賃貸していたり、相続によって名義人の所在が不明となっていたりすれば、かなりの手間がかかる事が予想されます。
(要件では、『所有者』と『使用者』の承諾が必要とされています。)
札幌市の側としても、条件の良い位置指定道路については市道に組み込みたいようですが、あまり条件の芳しくない『ドン付き』のようなものについては、さほど積極的協力は望めません。
『門前土地使用承諾書』は位置指定道路を市道にする大きな障壁のうちの一つと言えるでしょう。
当記事は2014年03月18日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。