札幌の不動産屋、ドローン活用を語る① ドローンの必要性

さて、今回から何度かに渡ってシリーズ記事『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』と題して、不動産業におけるドローン活用について、語ってみましょう。
ドローンというと、数年前から急激に安価・高性能になったこともあり、テレビなどでもよく取り上げられるようになったように感じます。

ただ、ドローンの運用や規制についてあれこれと書かれた記事はあるものの、それを具体的に特定の業界でどのように活用するのか、というノウハウを示した記事は、さほど見当たりません。

まぁ、そういう記事はアクセス目当てで検索にヒットする普遍的で当たり障りのない内容が多いというのが一つの要因。
また、ドローンに関する法規制はまだまだ明確化されておらず、グレーゾーンが多いという事情があります。
誤った法解釈で『こうするべき』と迂闊に示してしまうと、それが誤っている事が分かった場合に、ネット上での炎上のみならず、場合によっては刑事事件となる恐れもあるからでしょう。
 
ですから、今回のシリーズでは一応このような前置きを置いた上で、可能な限り突っ込んだ具体的な内容を記事としてまとめられればと思います。
 
【注意】
ドローンの利用については航空法を始め地域により様々な法規制があります。
本稿の内容はそれを網羅していることを保証しません。
などを参照の上、自己責任にてドローンを運用下さい。

ドローンの必要性

第1回の今回は、不動産業界におけるドローンの必要性についてお話します。
私が不動産業に携わる中で考える、特に札幌近郊の不動産環境におけるドローンの必要性・有用性について述べてゆきましょう。

①高所作業の高コスト化

不動産業において、『建物の管理』というのは一つの課題です。
業界外の方にはあまりピンとこなかもしれませんが、不動産業界には『管理会社』という、分譲マンションや賃貸マンションを管理する会社が存在します。
分譲の場合と賃貸の場合でかなり性質の異なる管理会社ですが、どちらにせよ建物の不備や不具合を監視する必要があります。

昨今、不動産管理会社の大きな課題として高所作業の高コスト化が挙げられます。

管理会社、工事業者問わず、最近、高所作業に関する費用が非常に大きくなっています。

・・・と、言うのも『屋根に昇れない』という人、かなり多いんですよね。
建物の維持管理に関するトラブルで、大きなウェイトを占めるのが屋根・外壁の問題で、こまめに点検をしなければ、雨漏りが発生する事になります。
正直に言ってしまえば、私が経営する管理会社でも、屋上点検の際に誤って滑落して労災事故が発生したこともあります。
(もちろん、労災を使って治療をしてもらい、治療中の配置換え等のケアも行ないましたが、とはいえ、本人の痛みや不便を考えるとそれでOKという話ではありません。)
私自身、不動産業に就いた当時は体力がないながら屋根の上へも昇っていましたが、現在は経営者として怪我をしては社の運営に関わりますので、高所作業は控えています。

就業人口の高齢化や若い方で高所恐怖症の方が多くなっている事、また、昇れる昇れないという以前に『わざわざ昇りたくない』という仕事に対するモチベーションの問題もあるでしょう。
今後、職人の高齢化や働き方改革だのが進んでゆくにつれ、高所作業にかかるコストは年々増加してゆくことが見込まれます。
 
そういう意味では『高所作業が出来る人になる』というのも一つの『稼ぐ方法』な訳ですが、今の教育体制の基ではなかなか、そういう職業の人口というのは増えてゆかないのでしょうね。
 
②建物の老朽化・樹木の伸長などの調査

前述しましたが、建物の維持管理に関するトラブルでは屋根と外壁に関するものが大きなウェイトを占めています。
札幌ではオリンピックから50年を経過する事もあり、古い建物が増加しており、Googleマップの航空写真を見ているだけでも、屋根が赤サビで真っ赤になった家が多く見受けられます。

屋根の錆は雨漏りの原因となりますし、それが躯体を弱らせ、シロアリの発生などにもつながりかねません。
剪定が行き届かず、枝木が張り出している築古戸建も多くなっています。

本来は屋根に昇るなどして点検するべきですが高所作業が高コストする中では、そう何度も高所作業をする訳にもいきません。
本格的な修繕は当然、屋根に昇るにしても初動点検、定期点検は可能な限りドローンで代替することが望ましいと言えるでしょう。
 
③建物からの眺望のシミュレーション
これは私の業態ではまったく出番がないのですが新築マンションの眺望を示すにあたって、ドローンで同高度から撮影した動画・静止画を使うという手法は、既に各デベロッパーが実施しています。
広告上、『ドローンで同高度から撮影したものです』等の注釈は必要ですが、眺望をウリにする場合には、イメージが付きやすい資料となるでしょう。

戸建の場合には、10~15m程度ですからあまり使い道はないかもしれませんが、ハウスメーカーなどが分譲する新築分譲団地では利用されるかもしれません。

④積雪時の調査
これは北国特有の問題ですが、ドローンの活躍による積雪時の調査にも期待しています。
人が利用していない土地・建物は当然除雪されていません。
札幌近郊では1~3月は1mを超える雪が積もりますから、立ち入っていく事も難しいような状況になってしまいます。

建物を取引するのであれば玄関までは除雪して、建物内を確認しますが、その場合でも建物の裏手の庭などにはなかなか手が回りません。
それ以上に、土地のみの取引や解体予定の建物など、わざわざ除雪をするコストを掛けられる案件ではない、という場合もあります。
勿論、雪のない状態を知っていることがベストではありますが、急ぎの取引などでそうはいかない場合に、ドローンでの調査は有用であると考えます。

 
⑤原野・山林の調査

これは不動産業者全体が、という事情ではなく、あくまでも私の業態での話ですが、原野・山林の調査においてもドローンは有用性を発揮します。

広大な、 或いは道路と接続していない山林や原野について、業務の依頼を受けた際に、数千~数万坪の山林の中を分け入っていくことは多大な危険を伴います。
積雪時は勿論危険ですが、冬でなくともヒグマが出ることもあれば、に滑落する危険性もあります。
また、航空写真だけでは全体の起伏や樹木の状況などを把握しきれませんから、
そういった土地の調査手段としてドローンは有用です。
 
とにかくドローンは有用だ!・・・けど・・・

このように、不動産業界においてドローンの必要性は非常に高いのですが、その一方で法律を順守してドローンを活用するのは非常に困難なのです。

前述の通り、ドローンの運用には航空法をはじめ様々な法規制があります。
これまでドローンの必要性を①~⑤の項目で紹介しましたが、合法的な運用では、原則的に建物の点検や市街地の撮影には利用することは出来ず、原野・山林の調査しか出来ないのです。

次回はドローンの活用を困難にしている各種の規制について、紹介してゆきましょう。

 
シリーズ『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』