A-3 道の所有者を知りたいとき


道路や空き地について、『所有者を知りたい』という調査依頼を受けることは、不動産業者にとっては日常茶飯事です。

『道』についてのトラブルは、責任者(=所有者)に文句を言いたいというのが人情ですからね。
身の回りの道(土地)の所有者を知りたい時には法務局に行く事をお薦めします。
(インターネット経由でも請求可能ですが、事前にソフトウェアのインストールなどが必要です。)

どの法務局に行くか?という事ですが、その地域を管轄する法務局へ行く事をお薦めします。
原則的に、全国どこの法務局でも全国各地の登記情報を取得出来るのですが、
その道の『地番』がわからないと、所有者を調べる事が出来ません。
『地番』とは『住所』とは異なる、法務局での土地の登録番号です。
管轄法務局では『地番図』『ブルーマップ』が閲覧できるので、『地番』を調べる事が出来ます。

札幌市内の法務局の管轄と地図はこのようになっています。

<札幌法務局の管轄>
本局    管轄:中央区

南出張所  管轄:豊平区、南区、清田区

北出張所  管轄:北区、東区、石狩市


西出張所  管轄:西区、手稲区


白石出張所 管轄:白石区、厚別区、北広島市


法務局に行く時の持ち物としては、印紙代(現金)と、住宅地図のコピーなどを用意しましょう。
身分証明書などは必要ありません。

①地番を調べる
いわゆる住所(住居表示)と登記で使う地番は多くの場合、異なります。
管轄法務局であれば『ブルーマップ』を確認して、大体の位置を特定しましょう。
具体的な見方は『B-1 ブルーマップの見方』で紹介しています。


【ブルーマップ】

【地番図】

法務局では、管轄地域の『ブルーマップ』『地番図』が写真のように置いてあります。
(ブルーマップについては札幌市すべてのブルーマップがそろっている事が多いようです。)
もし置いてある場所が分からない場合には、窓口に聞いてみましょう。

ブルーマップでは一般に道の地番が書かれていませんので、地番図と照らし合わせて、道の地番を確認します。
『地番図』『道』とだけ書かれていて『地番』がないものは、『赤道』『赤線』という国有地です。
『赤道』の場合には、無条件に国有地になりますので、以下の手順は不要になります。、

②書類を請求する
 先ほど調べた地番について、このように請求します。
これは『中央区大通西2丁目10番1』の土地の登記の内容を確認する場合の申請書です。
(書き方についても、分からなければ窓口で教えてもらうことが出来ます。)

『共同担保目録』など、チェック欄があるので、一応チェックしておきましょう。
(『共同担保目録』というのは『一緒に借金のカタになっている物リスト』です。)
道の所有者について調べる限り、あまり気にする必要はありません。

 印紙の貼付覧がありますが、貼らずに窓口に提出しましょう。
(少なくとも私は札幌市内の各出張所で、印紙を貼らずに提出して注意されたことはありません。)

③印紙は窓口に指示された通りに買う
申請には印紙が必要になりますが、事前に買っておく必要はありません。
札幌市内のどの法務局にも、印紙売り場がありますし、請求してから必要な印紙代が変更になったり、法改正で手数料が変更になる場合も多いので、窓口で金額を指示されてから、その指示通りの収入印紙を買いましょう。
(登記印紙は平成23年に廃止され、収入印紙に一本化されています。
以前買った登記印紙をお持ちの方は、引き続き使用することが出来ます。)

④書類を確認する
窓口の指示通りに印紙を貼った申請書を提出すると、全部事項証明書(謄本)を手渡されます。
実際の全部事項証明書はこんな感じです。(緑色の複製防止用紙に印字されています。)

面積や地目、所有者などが記載されていますが、今回見るのは『甲区(権利に関する事項)』です。
全部事項証明書の内容については『B-2 全部事項証明書(謄本)の見方』で取り上げます。
 この部分に登記上の所有者の住所氏名が記載されています。

 公道であれば『札幌市』『北海道』『財務省』『国土交通省』などが多いでしょう。
道が登記された当時の名称で記載されていますから、『大蔵省』『建設省』などになっている場合も多々あります。

 『位置指定道路』の場合、『私道』の場合には、 個人の住所氏名が記載されます
例えば『北海道札幌市中央区北1条西2丁目1番1号 札幌 太郎』といった塩梅です。

 この住所は登記した当時の住所氏名であって、現在の住所氏名とは限りません。
むしろ、転居などの住所変更は反映されていない事の方が多いようです。
また、当の登記名義人が既に亡くなっていて、所有者自体が変更となっている場合も多々あります。
(結婚・離婚などで登記名義人の姓が変わっている場合もあります。)

⑤所有者を知ってどうするか?
 所有者が国や都道府県、市町村であっても、それがイコール公道という事にはなりません。
 登記上の地目が『公衆用道路』であっても同様で、『公道』でない『公衆用道路』は多く存在しています。
 認定道路かを確認しなければなりませんし、道の管理者を特定しなければなりません。

 道について、法務局で色々と問い合わせをして、たらい回しにあっている方をよく見かけますが、法務局はあくまでも登記された内容だけを知る事が出来る窓口です。
 (すでに名称が変わった、『大蔵省』『建設省』などが登場するのもそのためです。)

このように、道について登記から分かる情報は、実はそんなに多くなかったりします。

⑥もし間違ってしまったら…
 もしも違う場所の登記を間違って受け取ってしまった場合には、その日のうちであれば手数料の返還を受けられる事が大半ですので、窓口に相談してみましょう。
 翌日以降は手数料の返還を受けられませんので、必ずその場で内容を確認し、わからない部分は係員さんに確認しましょう。

当記事は2013年08月26日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

A-2 公道(と特殊な私道)の詳細が知りたいとき


さて、前回『A-1 道が公道か私道か知りたいとき』で、その道が公道であるのか、市道であるのかを知ることが出来ました。

では、その市道がどのようなものなのか、詳細を調べる方法を紹介します。
用語解説のページでも紹介していますが、道路法第28条の規定によって、公道ではその管理者が必ず『道路台帳図』を作成する事になっています。

『道路台帳図』を取得する為には、その『道』がどんな『道』なのか、まず確認する必要があります。
『国道』以外の道については、札幌市役所に確認に行きましょう。


市役所の窓口と、問い合わせの具体的な内容を例示してみました。
調査に行った人の言葉を緑、窓口の対応例を紫で表記しています。

①市役所2階 道路確認担当課(011-211-2864)
「道路の確認をお願いします」
(道について知りたい旨を伝えれば、目的は分かってもらえると思います。)
「どうぞ」
「住所は中央区大通西2丁目です」
(条丁目を言うと、ディスプレイに地図を表示してもらえます)
「このあたりですか?」
「はい、(指をさして)この道です」
「分かりました。この道は…」

A『道道、市道』道路番号10-2・大通北線です。幅○m、事業計画はありません。』
B『国道』『これは国道なので、北海道開発局の管轄になります。』
C『特殊な私道』『〇〇〇〇道路第〇〇〇〇号ですね。図面は必要ですか?
D『その他』『これは公道ではありませんね。位置指定もされていません。』

…という風に答えてもらえます。(後半部は返答の一例です。)

②-A 道道、市道の場合→市役所6階 道路認定課(011-211-2457)
道道、市道といった公道だった場合には、市役所6階に行きましょう。
以前は職員に依頼してブループリントの台帳を持ってきてもらい、それをコピーするという形式でしたが、平成28年1月18日からタッチパネル端末を自分で調査して調べる形式に改められました。

道路台帳図の取得方法については別記事『A-6 市道・道道の詳細を知りたいとき』で紹介しています。

タッチパネル端末ではこのような図面を取得する事が出来ます。
うーん、ちょっと見づらいですかね。
角度は1°ずつ、縮尺は500分の1と1000分の1を選択出来ますが、建物の形などは記載されておらず、見づらさは否定できません。

6階の窓口で職員に依頼をすると、平成28年1月以前に利用していた古い様式の道路台帳図の写しの交付を受ける事が出来ます。

こちらは、建物や道路内の電柱、排水口などが記載されており、非常に分かりやすい図です。
ただし、あくまでも旧式の図面ですから、最新の状況は反映されておらず、道路の内容や幅、周辺の状況は現実と異なっている可能性があります。

新様式も旧様式も代金は1枚20円。
また、「現在の道路幅と将来の道路計画での道路幅が違う」事もあります。
基本的には2階で道路の確認をした際に、道路を広げる予定がある場合には、教えてもらえます。
くれぐれも図面の数字だけ見て内容を早合点しないようにしましょう。

道路の境界点がどこにあるのか、拡幅計画の詳細を知りたい場合の方法は、また別途記事を用意します。
大通を例とした具体的な資料の見方は『B-5 道路台帳図の見方』で解説します。

②-B 国道の場合
国道の場合には、札幌市の管轄ではなく、北海道開発局の管轄になります。
最初から国道と分かっている場合(が殆どだと思います。)には、わざわざ市役所に行く必要はありません。
国道の場合の問い合わせ窓口、問い合わせ方法は『A-7 国道の詳細を知りたいとき』で紹介します。

②-C 位置指定道路の場合
お調べの道が『位置指定道路』等の特殊な私道だった場合は、
2階の同じ窓口で『位置指定図』をもらう事が出来ます。
図面は1件の申請につき何枚でも300円。大体は2枚で済むので、若干お高いですね。
この図面では『位置指定道路の範囲』『位置指定を申請した人』『位置指定された時期』などが分かります。

こちらも以前は手書きの古い図面が大半を占めていましたが、平成25年から札幌市が調査・再作成した図面に次々と置き換えられていっています。

・・・と、まぁ結構見栄えの良い、しっかりとした図面が用意されています。

昔のブログでは、『位置指定図なんて全然アテになりません』というような事を書いていたのですが、5年も経たないうちに状況が大きく変わってしまいました。
ちなみに、全然アテにならない昔の図面というのはこんな感じです。

ほら、アテにならないでしょう?

次々と新しい位置指定図に置き換えられていますが、権利関係が複雑な物など、まだすべてが置き換えられた訳ではないようです。
このような図が出て来た場合には、不動産業者や土地家屋調査士に調査を依頼した方がよいでしょう。

②-D その他
一般の方が『道』と認識している土地が、市役所2階で登録されていない事があります。
『私道』や『河川区域』である事が考えられます。
『法43条ただし書の空地』などという、呪文のような言葉を言われる場合も…
特例的に建物が建てられる取扱もありますがとりあえず『公道』ではありません。

法務局で所有者を調べて、所有者が『札幌市』であれば『市有地』です。
市役所14階の管財課で、どの部署が所有している土地なのかを調べてもらえます。
各部署へ出向いて、その土地の管理状況について教えてもらう必要があります。
 『北海道』『国』の場合でも、市が管理している事が多くあります。
とりあえず市役所で聞いてみるのもよいでしょう。
ちょっと無責任でしょうか。公道でない公有地の管理についてはケースバイケースで、はっきり言えない部分があるのです。

道路の所有者については『A-3 道の所有者を知りたいとき』、公道の管理者については『A-4 公道の管理者を知りたいとき』で紹介しています。

法務局で所有者を調べて、所有者が個人や会社の名前であれば『私有地』です。
通行地役権』『囲繞地通行権』などで通行する事が出来る場合もありますが
できれば利用・通行しない方が懸命だと思います。
私道の場合の取り扱いは『A-5 私道の管理者を知りたいとき』で紹介しています。

当記事は2013年08月31日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。