道路や空き地について、『所有者を知りたい』という調査依頼を受けることは、不動産業者にとっては日常茶飯事です。
『道』についてのトラブルは、責任者(=所有者)に文句を言いたいというのが人情ですからね。
身の回りの道(土地)の所有者を知りたい時には法務局に行く事をお薦めします。
(インターネット経由でも請求可能ですが、事前にソフトウェアのインストールなどが必要です。)
どの法務局に行くか?という事ですが、その地域を管轄する法務局へ行く事をお薦めします。
原則的に、全国どこの法務局でも全国各地の登記情報を取得出来るのですが、
その道の『地番』がわからないと、所有者を調べる事が出来ません。
『地番』とは『住所』とは異なる、法務局での土地の登録番号です。
管轄法務局では『地番図』『ブルーマップ』が閲覧できるので、『地番』を調べる事が出来ます。
札幌市内の法務局の管轄と地図はこのようになっています。
<札幌法務局の管轄>
本局 管轄:中央区
南出張所 管轄:豊平区、南区、清田区
北出張所 管轄:北区、東区、石狩市
西出張所 管轄:西区、手稲区
白石出張所 管轄:白石区、厚別区、北広島市
法務局に行く時の持ち物としては、印紙代(現金)と、住宅地図のコピーなどを用意しましょう。
身分証明書などは必要ありません。
①地番を調べる
いわゆる住所(住居表示)と登記で使う地番は多くの場合、異なります。
管轄法務局であれば『ブルーマップ』を確認して、大体の位置を特定しましょう。
具体的な見方は『B-1 ブルーマップの見方』で紹介しています。
【ブルーマップ】
【地番図】
法務局では、管轄地域の『ブルーマップ』と『地番図』が写真のように置いてあります。
(ブルーマップについては札幌市すべてのブルーマップがそろっている事が多いようです。)
もし置いてある場所が分からない場合には、窓口に聞いてみましょう。
ブルーマップでは一般に道の地番が書かれていませんので、地番図と照らし合わせて、道の地番を確認します。
『地番図』に『道』とだけ書かれていて『地番』がないものは、『赤道』『赤線』という国有地です。
『赤道』の場合には、無条件に国有地になりますので、以下の手順は不要になります。、
②書類を請求する
先ほど調べた地番について、このように請求します。
これは『中央区大通西2丁目10番1』の土地の登記の内容を確認する場合の申請書です。
(書き方についても、分からなければ窓口で教えてもらうことが出来ます。)
『共同担保目録』など、チェック欄があるので、一応チェックしておきましょう。
(『共同担保目録』というのは『一緒に借金のカタになっている物リスト』です。)
道の所有者について調べる限り、あまり気にする必要はありません。
印紙の貼付覧がありますが、貼らずに窓口に提出しましょう。
(少なくとも私は札幌市内の各出張所で、印紙を貼らずに提出して注意されたことはありません。)
③印紙は窓口に指示された通りに買う
申請には印紙が必要になりますが、事前に買っておく必要はありません。
札幌市内のどの法務局にも、印紙売り場がありますし、請求してから必要な印紙代が変更になったり、法改正で手数料が変更になる場合も多いので、窓口で金額を指示されてから、その指示通りの収入印紙を買いましょう。
(登記印紙は平成23年に廃止され、収入印紙に一本化されています。
以前買った登記印紙をお持ちの方は、引き続き使用することが出来ます。)
④書類を確認する
窓口の指示通りに印紙を貼った申請書を提出すると、全部事項証明書(謄本)を手渡されます。
実際の全部事項証明書はこんな感じです。(緑色の複製防止用紙に印字されています。)
面積や地目、所有者などが記載されていますが、今回見るのは『甲区(権利に関する事項)』です。
全部事項証明書の内容については『B-2 全部事項証明書(謄本)の見方』で取り上げます。
この部分に登記上の所有者の住所氏名が記載されています。
公道であれば『札幌市』『北海道』『財務省』『国土交通省』などが多いでしょう。
道が登記された当時の名称で記載されていますから、『大蔵省』『建設省』などになっている場合も多々あります。
『位置指定道路』の場合、『私道』の場合には、 個人の住所氏名が記載されます。
例えば『北海道札幌市中央区北1条西2丁目1番1号 札幌 太郎』といった塩梅です。
この住所は登記した当時の住所氏名であって、現在の住所氏名とは限りません。
むしろ、転居などの住所変更は反映されていない事の方が多いようです。
また、当の登記名義人が既に亡くなっていて、所有者自体が変更となっている場合も多々あります。
(結婚・離婚などで登記名義人の姓が変わっている場合もあります。)
⑤所有者を知ってどうするか?
所有者が国や都道府県、市町村であっても、それがイコール公道という事にはなりません。
登記上の地目が『公衆用道路』であっても同様で、『公道』でない『公衆用道路』は多く存在しています。
認定道路かを確認しなければなりませんし、道の管理者を特定しなければなりません。
道について、法務局で色々と問い合わせをして、たらい回しにあっている方をよく見かけますが、法務局はあくまでも登記された内容だけを知る事が出来る窓口です。
(すでに名称が変わった、『大蔵省』『建設省』などが登場するのもそのためです。)
このように、道について登記から分かる情報は、実はそんなに多くなかったりします。
⑥もし間違ってしまったら…
もしも違う場所の登記を間違って受け取ってしまった場合には、その日のうちであれば手数料の返還を受けられる事が大半ですので、窓口に相談してみましょう。
翌日以降は手数料の返還を受けられませんので、必ずその場で内容を確認し、わからない部分は係員さんに確認しましょう。
当記事は2013年08月26日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。