土地にとって、接続する道路が広い事は良い事です。
・・・というのが不動産業に関わらず、土地に携わる業界の人間の共通認識です。
各自治体も、道路交通の便を良くする事を『街づくり』の一貫と考えており、
札幌も毎年の予算で道路の拡張事業を実施しています。
道路をどうやって広くするのか?
結論から言うと、道路脇の土地を道路にしてしまう訳です。
自治体として道路脇の私有地を①買い取る場合もあれば、②買い取らない場合もあります。
『①買い取る場合』というのは『都市計画法』に基づく『都市計画事業』として決定された『都市計画道路』であって、市が積極的に用地の買取を行ないます。
周辺では地域説明会などが開催され○○年後までに拡幅完了、といったロードマップがしっかりと設定された拡幅です。
当然、そのために自治体に与えられた予算や権限も大きなものとなっています。
一方の『②買い取らない場合』は『市道計画』に基づく拡幅といいます。
これが、非常に厄介な取扱いでして、拡幅計画があるのに積極的な買取はなく、消極的に拡幅をしてゆく、という、一見よく分からんプロセスを踏んでゆきます。
予算も権限も期限もなく、ただただ既成事実的に拡幅をしてゆく、と言っても過言ではありません。
【『②買い取らない場合』の道路拡幅手順】
自治体が私有地を道路区域として認定する→
→道路として認定された部分には新たに建物を建てる許可が下りない→
→今ある建物を壊したあと、道路に認定された部分は道路の一部に→
→自治体は買い取らず、『私有地のままの市道』になる→
→『私有地』を『市有地』にしたければ寄付して下さい→寄付
・・・こうしてざっくり書くと何か悪質な罠のような手段で、道路にされてしまうのです。
でも、それが法律なのです。最終的には諦めるほかありません。
法的な考え方でいうところの『公共の福祉による私権の制限』というやつです。
かなり乱暴な書き方をしましたが、市道の拡幅計画は事前に法的に適切な手段を取って行われている訳ですから、批難出来る筋合いのことではありません。
新規の道路拡幅の際には、計画発表や事前説明会を行いますし、既に計画がある場合、不動産売買の際、業者が告知します。
ただ、遠隔地にいたりして情報が入ってこないと、知らないうちに『私有地のままの市道』になってしまったケースが過去に多々あるようです。
『私有地のままの市道』というのはどういう状態かというと、登記上の所有権があるだけで、あとは使用することも出来ないし、道路として札幌市の判断で舗装や配管等がされる、持っている意味がほとんどない土地になるという事です。
また、このような敷地は財産価値がありませんから、固定資産税や相続税の対象外となる場合が殆どです。
これを札幌市の用語で『未処理用地』と言い、道路台帳図にもその土地が明記されています。
道路台帳を取得する際にも、『未処理用地』は緑色で表示されています。
オレンジ色は『使用承諾地』と言い、民有地であるものの札幌市に対して道路としての使用を許可している土地です。
まぁ、寄付するしないは自由ですから『私有地のままの市道』を所有し続けることも出来ますが、私有地だからといって何か利用価値があるわけでもありません。
市が買い取らない場合は、既にある建物が存在し続ける限り、道には出来ませんから、
頑張って建物を長持ちさせるようにする、という抵抗策もないではありません。
どうにかゴネて買い取らせる、という手段を考える方もいるかもしれませんが、『買い取らない』という前提で計画されている道路の拡幅は、優先度が高くありません。
自治体としては建物が朽ち果てるのを待っている、という状態の部分が少なくないのです。
ですから、実際はゴネようが、建物を補修しようが、あまり意味がないというのが現実です。
さて、前置きが長くなりました。
今回は『道路の拡幅について知りたいとき』です。
道路の拡幅については、複数の窓口がありますが、順を追って説明します。
①まずは、市役所2階 道路確認担当課に行きましょう。
(写真は市役所2階の案内図です。-平成25年現在)
『A-2 公道(と特殊な私道)の詳細が知りたい時』と同様の手順で、拡幅があるかどうか知りたい道路を窓口の係員に伝えると、通常は『道路拡幅の予定があります』or『整備完了しています』と言われます。
言われなかった場合には『拡幅の予定はありますか?』と聞いてみましょう。
『整備完了』と言われた場合には、拡幅の予定はありません。めでたしめでたしです。
②拡幅の予定があると伝えられた場合には、一応、次に行く窓口を確認して下さい。
窓口は2種類ありますが、隣同士なので、間違っても大丈夫です。
窓口は市役所5階の交通計画課か地域計画課です。
『①買い取る場合』は交通計画課、『②買い取らない場合』は地域計画課ですが、正直、一般の方が気にしてもあまり意味がありません。
こちらの窓口では、将来どの程度の幅になる予定なのか、現在の幅からどの程度広がるか、教えて貰えます。
③もし、具体的な拡幅予定の図面を持ち帰りたい場合には、『A-6 市道・道道の詳細を知りたいとき』で紹介した通り、市役所6階 道路認定課で『道路台帳図』のコピーを取得することが出来ます。
『②買い取らない場合』=市道計画の拡幅の場合には、拡幅予定の幅が、道路台帳図に書いてあります。
一方で、『①買い取る場合』=都市計画道路の場合には、通常の台帳図に拡幅後の幅は記載されません。
『都市計画道路』の場合、②の窓口で都市計画道路の予定図を閲覧させてもらうことが出来ます。(まー、見づらい図なのですが。)
写しの交付を受ける為には、市役所2階 行政情報課で依頼することでコピーを取得することが出来ます。
コピー代は1枚10円ですが、まー不動産のプロ以外はあまり使わない図面ですね。
④現在拡幅事業を実行している場合で、拡幅の進行状況や今後の予定を知りたい場合、市役所8階 道路課で、確認をすることができます。
『拡幅予定がある』と決まっていても、工事は20年、30年先の話だったなんて話も、よくあります。
すこし手順が複雑ですが、市道の拡幅についてはこのように調べて行きます。
<私道の場合>
位置指定道路でない私道については正式な幅員が決まっていないので、将来の予定等については所有者に確認する必要があります。
通常、私道を拡幅するなんていう計画は、聞いたことありませんけどね。
また、位置指定道路について拡幅をすることも、一般的にはあまり例がありませんが、
どうしても気になるようであれば、通常の私道と同様に、所有者に確認してください。
また、既にある位置指定道路を自身で所有していて、拡幅をしたい場合の方法は、『C-3 道路の位置指定を受けたいとき』と『C-4 位置指定道路を変更・廃止したいとき』で紹介します。
当記事は2013年10月01日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。