札幌の不動産屋、ドローン活用を語る③ 運用機材の紹介

さて、ブログの更新を2ヶ月止めていたのにこのシリーズでは矢継ぎ早に更新しております。
複数の会社の経営者として、この人手不足の折、それなりに多忙に過ごしておりますが『今が旬という話題があると寝る間を惜しんで夜中から明け方にかけてベッドの中でも半覚醒(うたた寝)状態で記事を書いてしまいます。

過去2回で『ドローンの合法的運用は困難を極める』と結論付けておいて何故『今が旬』なのかというお話は、記事の最後で紹介しますね。

【注意】
ドローンの利用については航空法を始め地域により様々な法規制があります。
本稿の内容はそれを網羅していることを保証しません。
などを参照の上、自己責任にてドローンを運用下さい。
 
Mavic2 Zoom(DJI)
中国の有力ドローンメーカーDJI製の中上位クラスのドローン『Mavic2』はProZoomの2機種が発売されています。

いずれも本体性能は同一ですが、異なるのはカメラの性能です。
Proより高画質なカメラを搭載したモデルで本体価格は19万円台です。

Zoomはカメラ性能ではProに劣るものの光学ズーム機能を搭載したモデルで本体価格は16万円台です。

なかなかにご立派な本体価格で、初めて価格を訊ねられる方には驚かれる方も多いのですが、業務用軽自動車の5分の1以下(家庭用軽自動車だと10分の1以下ですね)ですし、PCと同程度の価格と考えれば、そう大きな金額でもないでしょう。
上位機種で『プロ用』と銘打って同じDJIから発売されているPhantom420万円程度とそう変わりない価格ですが、Mavic2は折り畳みが可能な為、携行性に優れています。

まぁ、更に本格的なプロ用のM200シリーズV2という機種はその3倍超の価格ですし上を見れば青天井なのですが・・・


※写真のアスファルト舗装部分は道路敷地内ではなく、私有地内です。

1つのバッテリーでカタログスペック上30分程度の飛行が可能ですが低電圧になるとアラートが出る設定(アラートが出る電池残量は任意に設定可能)があるので、実感としては離着陸をスムースに行っても20分程度の飛行時間という感覚です。

合法的にドローンを飛行させられる郊外地まで行って、20分飛ばして終わりというのも世知辛い話ですし、業務として利用するという観点からも、予備バッテリーはどうしても必要になってきます。

予備バッテリーは今日現在の価格で1つ16,500円もしますから、予備のプロペラなど各種アクセサリ類も併せれば20万円を下らない総額となります。
アクセサリ類をセット販売する『Mavic 2 Fly More Kit』という商品も販売されています。

カメラ設置部分(ジンバル)の可動でカメラ角度の調整が可能なので、ドローンの水平方向の撮影の他、真下の角度まで柔軟に画角を設定することが出来ます。

操作は専用の送信機(コントローラー)とスマートフォンを接続して操作します。
各方向のセンサーによる衝突・接触防止機能もあり、飛行の安定性は素晴らしいものですが、強風や電波干渉、鳥や電線との接触、或いはスマートフォンの不調で制御不能に陥る可能性もあります。

本体重量だけで900g程度と1kg近くありますから、人体は勿論、建物の屋根や自動車に当たるような事があれば、大事故につながりかねません。
最初の1年に限り三井住友海上が引受する賠償責任保険が無料で付いて来ますが、インターネット上で手続きをしなければなりませんので、忘れずに手続きをしましょう。(2年目以降は有料での更新。)
 
散々書いている通り、航空法の制限により、国土交通省の許可がなければ合法的に飛ばせる場所は相当の郊外地に限られます。

しかしながら、非常に素晴らしい性能で、実際の原野・山林調査で活躍していますので、不動産業界におけるドローンの運用検証という意味においても非常に有意義な買い物であったと満足しています。

 
Tello(Ryze Tech)
私は最初のドローンがMavic2 Zoomだったのですが、何せ市街地で飛ばせないものですから、フラストレーションが溜まります。
そこで導入したのが航空法の規制の対象外となるトイドローン、Ryze TechTelloです。
従来の飛行高度は10mまでだったそうですが、ファームウェアのアップデートで高度30mまで飛べるとのこと。

価格は1万円+α(販売店でばらつきがあります)と非常に求めやすい価格になっています。
 
バッテリー1つあたりの飛行時間は13分本体重量は80gと非常に軽く、その辺のプラモデルよりも軽い、という感覚です。
バッテリーの価格は購入個数によって異なりますが、概ね2,000円程度とこちらも手頃です。
 
カメラ角度の調整は出来ませんからドローンの水平方向の撮影しか出来ず、また、ドローンが前後左右に移動している際にはカメラも併せて傾きます
スマートフォン単体での操作が可能ですが、省コスト、省機能ですから衝突防止機能やGPS機能は搭載されていません。
また、本体重量が軽く、プロペラの出力も控えめなので風に煽られやすいのは物理的にやむを得ない点でしょう。

いくら軽いとは言っても建物の近くで飛ばすのは少し怖いなというのが正直な感想です。
とはいえ、Mavic2の予備バッテリー1個よりもTello本体の方が安いので、性能にとやかく言うのはお門違いでしょう。

この軽さとコストパフォーマンスを実現するためには、やむを得ないでしょうね。 
一番の長所は航空法の規制がほぼ除外されることです。
オモチャとしては非常に有用で、ドローン操作の入門用にも非常に良いと思いますが、飛行時間や安定性を考えると、不動産業務で常用するのは少し難しい状況です。
ただ、接触防止センサーが付いていないのと軽量で接触しても建物に傷が付く恐れがないので、室内や建物のスキマなどで飛ばす分には、十分有用であると言えるでしょう。
 
で、結局?
Mavic2 ZoomTelloもまさに帯に短し襷に長しという状態で、市街地で建物検査や物件調査といった不動産業務に利用するには難のある状況です。

ハッキリと言ってしまえば、

市街地で合法的に飛ばせる場所なんてねぇよ!Σ(゚Д゚;
市街地で業務に使えるドローンなんてねぇよ!Σ(゚Д゚;
という状況であると言えるでしょう。
では、国土交通省の許可を得られればそれでいいか、というとそうではないんです。
国土交通省の許可にあたっては100時間の飛行経験を要する中で、不動産業と同じ管轄である国土交通省に対して虚偽申請をする訳にはゆきません。
Mavic2 Zoomの飛行時間を30分とした場合、200回以上のバッテリー交換が必要になります。
私は条件を満たしていますが、不動産業として複数の人員で事業を営むにあたっては、全員に100時間超の研修を課す訳にもいきません。

ドローンは不動産業に有用であって、利活用をするべきだ、というシリーズ記事にも関わらず、愚痴しか言っていない訳ですが、今回、事情が変わってきました。
 
Mavic Miniの登場
今回、ドローンに関する話題が『今が旬』であると判断して連続して記事を書いて来た、ある事情があります。
それは令和元年11月14日発売予定のDJI製Mavic Miniの登場です。

なんと、わざわざ日本の航空法の対象外とするためバッテリー容量を削って本体重量を199gにしたというピーキーな機体です。
海外版はバッテリー容量があり、飛行時間30分で249g、一方で日本版はバッテリー容量を削った分、飛行時間18分3分の2以下に削られてしまっていますが、これまでに述べて来た通り、航空法の規制を受けないというのは不動産業への活用にとって、非常に有用であると言えるでしょう。

価格は発売日現在で46,200円とまずまず手頃です。

不動産業に利活用するドローンとしてはMavic Miniが最有力候補であると考えています。
勿論、私は既に予約済みで、率直に言って到着を心待ちにしています。

性能的にはコスト的な部分で飛行時間やカメラ性能については納得していますが衝突・接触防止機能が搭載されていない点が運用にどのような影響を及ぼすか少し気になります。
とはいえ、海外版の評価などを鑑みるに十分に有用であるものと期待しています。

次回は、実際に到着したMavic Miniが到着次第、開封してレビューしてみたいと考えています。

・・

・・・

・・・と、発売前日までに3記事を間に合わせた訳ですが、注文殺到で追加バッテリー付き商品の発売が延期されるという噂が・・・(;´Д`)オレノスイミンジカン
特にお知らせのメール等は来ていませんが現に、発売前日の段階で商品の発送が未定になっているという・・・
まぁ、待望の200g未満の製品という事で、日本中のドローン愛好家が待ちに待った製品という事なのでしょう。

仕事で忙しかったのと寝ぼけまなこで記事を書いていたせいか、ネット上の情報に気付くのが遅くなってしまいました。

・・・いや、不覚ですよ。ホントにね・・・(; ・`д・´)

札幌の不動産屋、ドローン活用を語る② ドローンへの規制

さて、シリーズ『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』前回は不動産業においてドローンの有用性は非常に高い一方で、法規制によって運用は困難を極めることを説明しました。
第2回の今回はドローンに課せられる規制を紹介します。
ハッキリ言ってドローンの法規制に関してはごくごくありきたりの記事ですが、不動産業に活用する前提で述べてゆきましょう。

シリーズ『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』
【注意】
ドローンの利用については航空法を始め地域により様々な法規制があります。
本稿の内容はそれを網羅していることを保証しません。
などを参照の上、自己責任にてドローンを運用下さい。
 
飛行可能なエリア

ドローンに関する記事で頻出のこの画像、国土交通省の資料に添付されるものです。
空港等の周辺の上空の空域(A)150m以上の高さの空域(B)人口密集地区の上空(C)
『安全性を確保し許可を受けた場合のみ飛行可能』・・・つまり、原則飛行禁止です。

『許可』というのは国土交通省によるもので、要件として100時間以上の飛行経験が必要とされていますから、初心者のうちはまず無理、と考えておきましょう。

『許可』なく飛行が可能なのは(A)、(B)、(C)以外の空域で、これはつまり『空港の周辺および人口集中地区ではなく、150m未満の空域』という事になります。

空港等の周辺の上空の空域(A)
札幌市内では丘珠空港の周辺が該当しますが、どのサイトも空港周辺の飛行は『原則禁止』というだけで具体論が出てこない。
トラブルになる可能性があるので具体的な記載がないのはやむを得ないのかもしれませんが、『周辺』ってどこまで?という話は重要だと思います。
まず、札幌地図情報サービスで調べられる『航空進行区域』はかなり低い高度まで飛行が制限されていますから、全面的な飛行禁止区域と捉えた方が安全でしょう。
具体的には、丘珠空港の周辺1km程度と、北西方向には屯田、拓北、百合が原周辺、南東方向には伏古、東苗穂周辺がこれにあたります。

また、空港から4km圏内『水平表面』に指定され、高度45m以上の飛行は禁止です。
丘珠空港で言えば、北24条駅、新琴似駅、拓北駅、モエレ沼公園なども含むかなり広い範囲です。
逆に言えば、高度45m未満で、かつ、人口集中地区(C)でなければ、飛行可能という事になります。

更に複雑なものとして『円錐表面』という考え方があり、『水平表面』から5.25Kmの範囲内で1/50の勾配で段階的に飛行可能高度が上がってゆきます。
つまり、空港から9.25km圏内では、150mの高度の飛行は出来ず、現実に当てはめるとかなりファジーな計算方式によって制限が課されるという事です。

まぁ、安全策として空港から10km圏内は航空進行区域と人口密集地区を除けば45mまでの高度制限、と考えておけばよいかと思います。
10kmというと石狩市役所、石狩太美駅、江別西IC、JR厚別駅、豊平区役所、円山駅、札幌西ICを含む、とんでもなく広い範囲ですから、これは留意しておくべきでしょうね。

150m以上の高さの空域(B)
これは標高ではなく、地表からの距離です。
ですから、ドローンは高度表示がされるものを購入しなければ航空法違反になる可能性があります。
日本の量販店で購入できるものはともかく、インターネット通販などで購入する際には注意が必要です。

人口密集地区の上空(C)

人口が集中した市街地の上空は危険ですから、許可のない飛行は禁止されています。
指定状況は国土地理院のサイト地理院地図から参照出来ますが、操作方法に不慣れな方は下記のリンクを利用することをお勧めします。
 ◇国土地理院 人口集中地区(DID) 平成27年
  https://www.gsi.go.jp/chizujoho/h27did.html

人口密集地区(DID)とは、総務省統計局5年に1度、国勢調査を元に発表するものです。

一見かなり広い範囲で飛行が可能なように見えますが、不動産屋の立場で言わせてもらうと、不動産流通市場がある区域とほぼ被ってしまっています。
ここでもドローン規制の壁が立ちはだかります。

ここまで紹介した(A)~(C)の原則飛行禁止区域以外を探して飛行しなければならない訳ですが、この他、道路や鉄道の上空飛行禁止が看板などで明示されている施設なども飛行禁止とされています。
他に河川の場合には河川管理者、公園の場合には公園管理者の許可を得ることがガイドライン上は示されています。
(ガイドラインに記載はありませんが、港湾の場合は港湾管理者の許可が必要でしょう。)
札幌市の場合、市立/道立/国立問わず公園敷地内でのドローンの使用は原則禁止されています。

いや、まぁ、ここまで読んで頂ければよく分かると思うのですが、
市内で合法的に飛ばせる場所なんかほとんどねーよッ!Σ(゚Д゚;
という状態で、ドローンの飛行には厳しい制限が課されている訳ですね。

 
操作や作業における制限
この他にも現在10種類の作業や操作に関する制限事項が明示されています。
令和元年9月18日の改正で、①~④が新たに加わりました。

①アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと
 まぁ、論外ですが飛行可能なエリアまで行くのに、自動車を使うでしょうから、航空法以前の問題ですね。

②飛行前確認を行うこと
 まぁ、そりゃそうだよね、というお話。
 あとは中上位機種のドローンの場合には、自己診断機能も付いているので、より安全性が高いと言えるでしょう。

③航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること
 空港周辺以外でもヘリコプターや他のドローンなどが飛行している可能性があります。
 飛行音が聞こえた場合には、自分のドローンの高度を落とし、近くに戻すなどするべきです。

④他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと
 法規制というものがここまでファジーな記載でいいのか、という話です。
 リーフレットなどでは『危険な飛行禁止』と記載されており、人を追い回すような絵が併記されています。
 ただ、規制する側として柔軟に(悪く言えば恣意的に)運用出来るようこのような記載になっているのでしょう。
 ドローンはかなりの騒音を発生させますから、騒音問題なども念頭に置かれているのではないでしょうか。

 また、他人のプライバシーに対する配慮についても求められているものと思われます。

⑤日中(日出から日没まで)に飛行させること
 北海道では、冬期間かなり日照時間が短くなってしまいますから、注意が必要です。
 客観的な根拠を求めるのであれば『日の出日の入り』という検索ワードで、地域ごとの日昇・日没時間を調べることが出来ます。

⑥目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること
 これはかなり注意が必要です。
 中上位ランクのドローンの飛行性能は非常に優れており、あっという間に上昇し、見た目上は豆粒よりも小さくなってしまいます。
 また、コントローラ(送信機)の液晶画面でカメラの画像が常時見られますので、注意がそちらに行きがちとなります。
 しかし、『直接肉眼による目視』と限定されているので、カメラ越しでの確認はNGです。
 人口密集地区外の山林の場合でも、目視外の山の向こう側に飛ばすのは許されません。
 時たまメディアで取り上げられているVRゴーグルの使用も航空法に照らせば200g以上のドローンであれば国土交通大臣の許可が必要という事になります。

⑦人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること
 これも非常に厳しい規制です。
 水平・垂直ともに30mという規制ですから縦横斜め30mの距離を保持しなければなりません。
 不動産業で考えた場合、一辺30mの正方形の土地は約270坪で、かなり広い土地ですが、これは片側で30mと考えると前後左右の余裕を見れば1090坪と、とんでもなく広い土地が必要になります。
 (札幌市の標準的な価格帯の住宅は50~80坪程度)
 そう考えると人口密集地区以外の郊外の住宅地であっても、30mの距離は保持出来ない事も多いでしょう。
 ただ、『人または物件』と規定されている為、他人の土地が近くにあっても更地であればOKという事になります。

⑧祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと
 これは当たり前とも言えますが、学校行事やライブ会場、民間スポーツクラブのイベントなど、公的でない集まりにも適用されるという点には注意が必要です。
 不動産業での活用という意味では、あまり気にする必要はありませんね。

⑨爆発物など危険物を輸送しないこと
⑩無人航空機から物を投下しないこと

 論外です。ドローンテロが流行っていますから、誤解されるようなことも避けるべきでしょう。

このように、ドローン規制では当たり前・常識的といえる規制と非常に厳しい規制とが混在しています。
 特に、目視外飛行と30m規制については、注意が必要ですから覚えておきましょう。

 
規制の対象となるドローン
以上のようにドローンの飛行に関しては、航空法上、『無人航空機』という扱いで、非常に厳しい規制が課されています。
特に市街地の飛行に関しては、国土交通大臣の許可を得ない限りほぼ不可能と言っていいでしょう。
前回紹介した不動産業で想定されるドローンの使途として、現状では原野・山林の調査にしか使えないといったのはこういった事情だったのです。

一方で、ドローンのうち重量が200gに満たないものは、『模型航空機』という扱いになり、航空法の規制の大半を受けないことになります。

200gに満たないドローンが航空法で受ける規制は航空法第99条の2のみで、空港周辺や一定の高度以上の飛行についてのみ国土交通省の許可が必要とされています。
ただし、公園や河川などの管理者のいる施設の飛行には管理者の許可が必要となりますし、公道上での離発着も出来ませんので、それだけは注意が必要です。
この規制を念頭に置いた上で、ドローンをどのように利活用していくのか、というのが重要な課題です。
次回は実際に運用しているドローンの機種について、紹介してゆきます。

札幌の不動産屋、ドローン活用を語る① ドローンの必要性

さて、今回から何度かに渡ってシリーズ記事『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』と題して、不動産業におけるドローン活用について、語ってみましょう。
ドローンというと、数年前から急激に安価・高性能になったこともあり、テレビなどでもよく取り上げられるようになったように感じます。

ただ、ドローンの運用や規制についてあれこれと書かれた記事はあるものの、それを具体的に特定の業界でどのように活用するのか、というノウハウを示した記事は、さほど見当たりません。

まぁ、そういう記事はアクセス目当てで検索にヒットする普遍的で当たり障りのない内容が多いというのが一つの要因。
また、ドローンに関する法規制はまだまだ明確化されておらず、グレーゾーンが多いという事情があります。
誤った法解釈で『こうするべき』と迂闊に示してしまうと、それが誤っている事が分かった場合に、ネット上での炎上のみならず、場合によっては刑事事件となる恐れもあるからでしょう。
 
ですから、今回のシリーズでは一応このような前置きを置いた上で、可能な限り突っ込んだ具体的な内容を記事としてまとめられればと思います。
 
【注意】
ドローンの利用については航空法を始め地域により様々な法規制があります。
本稿の内容はそれを網羅していることを保証しません。
などを参照の上、自己責任にてドローンを運用下さい。

ドローンの必要性

第1回の今回は、不動産業界におけるドローンの必要性についてお話します。
私が不動産業に携わる中で考える、特に札幌近郊の不動産環境におけるドローンの必要性・有用性について述べてゆきましょう。

①高所作業の高コスト化

不動産業において、『建物の管理』というのは一つの課題です。
業界外の方にはあまりピンとこなかもしれませんが、不動産業界には『管理会社』という、分譲マンションや賃貸マンションを管理する会社が存在します。
分譲の場合と賃貸の場合でかなり性質の異なる管理会社ですが、どちらにせよ建物の不備や不具合を監視する必要があります。

昨今、不動産管理会社の大きな課題として高所作業の高コスト化が挙げられます。

管理会社、工事業者問わず、最近、高所作業に関する費用が非常に大きくなっています。

・・・と、言うのも『屋根に昇れない』という人、かなり多いんですよね。
建物の維持管理に関するトラブルで、大きなウェイトを占めるのが屋根・外壁の問題で、こまめに点検をしなければ、雨漏りが発生する事になります。
正直に言ってしまえば、私が経営する管理会社でも、屋上点検の際に誤って滑落して労災事故が発生したこともあります。
(もちろん、労災を使って治療をしてもらい、治療中の配置換え等のケアも行ないましたが、とはいえ、本人の痛みや不便を考えるとそれでOKという話ではありません。)
私自身、不動産業に就いた当時は体力がないながら屋根の上へも昇っていましたが、現在は経営者として怪我をしては社の運営に関わりますので、高所作業は控えています。

就業人口の高齢化や若い方で高所恐怖症の方が多くなっている事、また、昇れる昇れないという以前に『わざわざ昇りたくない』という仕事に対するモチベーションの問題もあるでしょう。
今後、職人の高齢化や働き方改革だのが進んでゆくにつれ、高所作業にかかるコストは年々増加してゆくことが見込まれます。
 
そういう意味では『高所作業が出来る人になる』というのも一つの『稼ぐ方法』な訳ですが、今の教育体制の基ではなかなか、そういう職業の人口というのは増えてゆかないのでしょうね。
 
②建物の老朽化・樹木の伸長などの調査

前述しましたが、建物の維持管理に関するトラブルでは屋根と外壁に関するものが大きなウェイトを占めています。
札幌ではオリンピックから50年を経過する事もあり、古い建物が増加しており、Googleマップの航空写真を見ているだけでも、屋根が赤サビで真っ赤になった家が多く見受けられます。

屋根の錆は雨漏りの原因となりますし、それが躯体を弱らせ、シロアリの発生などにもつながりかねません。
剪定が行き届かず、枝木が張り出している築古戸建も多くなっています。

本来は屋根に昇るなどして点検するべきですが高所作業が高コストする中では、そう何度も高所作業をする訳にもいきません。
本格的な修繕は当然、屋根に昇るにしても初動点検、定期点検は可能な限りドローンで代替することが望ましいと言えるでしょう。
 
③建物からの眺望のシミュレーション
これは私の業態ではまったく出番がないのですが新築マンションの眺望を示すにあたって、ドローンで同高度から撮影した動画・静止画を使うという手法は、既に各デベロッパーが実施しています。
広告上、『ドローンで同高度から撮影したものです』等の注釈は必要ですが、眺望をウリにする場合には、イメージが付きやすい資料となるでしょう。

戸建の場合には、10~15m程度ですからあまり使い道はないかもしれませんが、ハウスメーカーなどが分譲する新築分譲団地では利用されるかもしれません。

④積雪時の調査
これは北国特有の問題ですが、ドローンの活躍による積雪時の調査にも期待しています。
人が利用していない土地・建物は当然除雪されていません。
札幌近郊では1~3月は1mを超える雪が積もりますから、立ち入っていく事も難しいような状況になってしまいます。

建物を取引するのであれば玄関までは除雪して、建物内を確認しますが、その場合でも建物の裏手の庭などにはなかなか手が回りません。
それ以上に、土地のみの取引や解体予定の建物など、わざわざ除雪をするコストを掛けられる案件ではない、という場合もあります。
勿論、雪のない状態を知っていることがベストではありますが、急ぎの取引などでそうはいかない場合に、ドローンでの調査は有用であると考えます。

 
⑤原野・山林の調査

これは不動産業者全体が、という事情ではなく、あくまでも私の業態での話ですが、原野・山林の調査においてもドローンは有用性を発揮します。

広大な、 或いは道路と接続していない山林や原野について、業務の依頼を受けた際に、数千~数万坪の山林の中を分け入っていくことは多大な危険を伴います。
積雪時は勿論危険ですが、冬でなくともヒグマが出ることもあれば、に滑落する危険性もあります。
また、航空写真だけでは全体の起伏や樹木の状況などを把握しきれませんから、
そういった土地の調査手段としてドローンは有用です。
 
とにかくドローンは有用だ!・・・けど・・・

このように、不動産業界においてドローンの必要性は非常に高いのですが、その一方で法律を順守してドローンを活用するのは非常に困難なのです。

前述の通り、ドローンの運用には航空法をはじめ様々な法規制があります。
これまでドローンの必要性を①~⑤の項目で紹介しましたが、合法的な運用では、原則的に建物の点検や市街地の撮影には利用することは出来ず、原野・山林の調査しか出来ないのです。

次回はドローンの活用を困難にしている各種の規制について、紹介してゆきましょう。

 
シリーズ『札幌の不動産屋、ドローン活用を語る』