旧・調16 西岡公園西地区


当記事はこの度書き下ろしたものですが、写真は2014年の取材当時のものです。

今回紹介するのは決定番号:110『西岡公園西地区』です。
市街化区域に編入される前は決定番号:調16『西岡公園西地区』でした。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

西岡水源地のある西岡公園の西にあるので『西岡公園西地区』という訳です。
範囲としては西岡5条15丁目の一帯という事になりますね。

平成16年に開発許可を受け、翌年に造成を完了して分譲、
平成22年4月6日に札幌市第6回見直しで市街化区域に編入されました。

西岡パークヒルズ』として分譲されたようです。

分譲が終わるとハウスメーカーや工務店、デベロッパーは造成当時の広告を消去してしまいます。
分譲当時の広告は元々あまり残らないですが、これがインターネット媒体が中心に来る事で、より残らなくなっていくのでしょうねぇ。
(私もあまり大きな事業以外はキリがないのでアーカイブしていません。)

この造成地も、分譲主がミサワホームだったのか否かまでは分かりませんでした。

造成以前の情報を調べると元々は『西岡ゴルフ場株式会社』のゴルフ場だったようです。

真駒内南アートの丘地区』で説明した通り盛土切土の懸念もありますが、
ゴルフ場の跡地って土壌汚染とかどうだっけ?という話があり、
少し調べてみたのですが、農薬は半減期が短いのであまり心配はないそうです。

さて、現地の写真を見ていきましょうか。

真駒内→澄川→西岡と市街化調整区域の南端を通る坂道の端に、
パークヒルズ入口』というバス停があります。
どうも、分譲時にバス停の名前が変わったようで一部が貼り替えられています。
(上記の地図の通り、昭和60年当時、この位置にはバス停はありませんでした。)

入口には新興造成地では名物の雨水調整池があります。

まだ新しく小奇麗な建物が目立ちますが、新琴似や真駒内とも違った街並みになっていますね。
造成分譲に参加するハウスメーカーや工務店の違いで建物のデザインが変わってくるので、街並みにも影響を及ぼすことがあります。

この地区に関しては商業施設は全くなく、住宅地のみの地区ですから、特にこれからどうなるというお話もありません。
西岡の南端の住宅街の一部として、街に溶け込んでゆくのでしょう。

実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図

決定:平成18年8月7日  変更:平成22年4月6日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

旧・調12 真駒内南アートの丘地区


当記事はこの度書き下ろしたものですが、写真は2014年の取材当時のものです。

今回紹介するのは決定番号:95『真駒内南アートの丘地区』です。
市街化区域に編入される前は決定番号:調12『真駒内南アートの丘地区』だった地区です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

住所としては真駒内の番地地区でイメージとして常盤や芸術の森と言った方が市民の方には分かりやすいかもしれません。
ちなみに山を越えて北側には調5『真駒内駒岡団地』が所在しています。

北側からの入り口部分です。

北東側、北側の入口から見て左手側には雨水貯留池があります。

この地区は『真駒内アートパークタウン』という名前で分譲されていました。

ですが、雨水貯留池の名前は『真駒内エー・ビレッジ雨水貯留池』。
・・・なんか、混ざってませんか?(; ・`д・´)

調19『札幌アートヴィレッジ地区直線距離で2kmも離れています。

・・・排水の流路も違いますから、おそらくは単純ミスなのでしょう。

平成14年7月15日に都市計画法に基づく開発許可を得て造成され、
平成15年3月3日に地区計画決定がされました。
比較的新しい造成地で、建物もオシャレなものが多いように思います。
私も新興造成地を色々と見て歩いていますが、道が広いことも併せて個人的に結構好きな部類の街並みです。

さて、普段はここで終わるところですが、少し気になる事があったので航空写真を見てみましょう。
以下は2007年以降撮影の、国土地理院としては最新の航空写真です。
まだ住宅の建築はまばらですね。

同じ位置の昭和60前後の航空写真がこちら。Σ(゚Д゚;え・・・何これ・・・
採石場のような構造物が見えますが、年代的に見て明らかに団地の造成工事ではありません。

この辺りは駒岡清掃工場もある郊外地ですから、土木系の用途で使われていたのでしょうか。
ちょっと昔の住宅地図を調べてみましょう。

こちらが昭和60年=1985年のゼンリン地図です。
丸見産業火山灰採取場』という記載があります。
名古屋に丸“美”産業という会社が現存しますが、同一か否かは分かりません。
兎も角、航空写真の施設は火山灰の採取場だったという訳です。

火山灰の採取場であれば土壌汚染の心配は薄いかと思いますが、
一方で地盤を切り取ったり、上に土を乗せたりといった行為は、
盛土』『切土』・・・まとめて『盛切』と言い、
液状化現象不等沈下の原因になりがちです。

札幌市地図情報サービスのハザードマップを見てみましょう。

少なくとも札幌市のハザードマップでは、震度・建物倒壊・液状化等の評価は悪くないどころか、むしろかなり良好な評価のようです。
ハザードマップの評価がすべてとは限りませんし、心情的な部分もありますから、当社ではその土地の利用履歴については可能な限り調査して告知しています。

不動産の売買は一般の方にとっては非常に難解で、リスクの大きなものです。
我々不動産のプロフェッショナルであっても、完全にリスクを取り去ることは出来ません。
調べて、調べて、調べて、調べて、それでも足りないのが不動産なのです。

・・・さて、最後にお決まりの地区計画概要でも見てゆきましょうか。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図

決定: 平成15年3月3日 変更:平成16年4月6日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

旧・調9 北星置地区


当記事はこの度書き下ろしたものですが、写真は2014年の取材当時のものです。

今回紹介するのは決定番号:113『北星置地区』です。

実はこの地区、以前紹介した決定番号:調9『手稲山口地区の一部が分離して市街化区域となった地区なのです。

1つの地区計画が2つに分離される、という特殊な取扱いが執られるに至った経緯についても、紹介してゆきましょう。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。
前述の通り、元々は手稲山口地区の西側だったものが分離されて市街化区域に編入されたものです。

経緯については第55回の都市計画審議会の議事録から抜粋しましょう。
 第55回札幌市都市計画審議会議事録
 http://www.city.sapporo.jp/keikaku/info/tokeishin/documents/gijiroku55.pdf

平成12年大規模開発制度により開発許可を受ける。

平成12年12月8日、南側の商業施設群『パストラル星置』開業。

平成13年、開発業者である岩倉土地開発民事再生法の適用を受ける。
 これにより、手稲山口地区の造成がストップする。

平成16年、開発が再開される。

ホーム企画センターが北側の住宅地を『アンジェリアの街』として造成分譲。

平成22年4月6日市街化区域に編入され、同時に地区計画『北星置地区』が設定される。

・・・と、まぁ随分と波乱万丈な経緯を辿ってきた地区です。

商業施設『パストラル星置』は株式会社ラルズが土地を所有し、中核となって運営しているとの事です。

・スーパーアークス星置店(平成25年まではビッグハウス星置店)

・lala hair/海の風歯科/西松屋パストラル星置店

・カインズホームFC星置店(平成25年まではビバホーム)
・ファッションセンターしまむら星置店
・ゲオ札幌星置店 

・メガネのプリンス星置店/エンパイアークリーニング星置店

・アベイル星置店/シャンブル星置店

・ダイソー 手稲山口ショッピングタウン店/ツルハドラッグ手稲星置店
・ラーメンさんぱち星置店/auショップ星置店
北側の『アンジェリアの街』は小さな住宅街という風で、三角屋根の建物が多いように見受けられます。

この地域は穴抜き市街化調整区域としての『建物が建てられる市街化調整区域』だったものですね。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図
(この地区では解説書は公開されていません。)


決定:平成 22年4月6日の地区計画資料を基に記述しています。

今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

旧・調13 新琴似南地区

当記事は2014年6月24日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:96『新琴似南地区』です。
市街化区域に編入される前決定番号:調13『新琴似南地区』でした。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

こちらも先日紹介した『新川新琴似地区』と同様の経緯を辿っていますが、
動きには若干の相違がありますから、やはり時系列順に経緯を追ってゆきましょう。
何故かは分かりませんが、新川新琴似地区と比較すると、資料に詳細が記述されていません。

・昭和45年の都市計画法施行に伴う『線引き』で、市街化区域に指定される。

・昭和60年、土地所有者からの営農継続の意向により、市街化調整区域に編入された。
 この際残されていた用途地域は、『新川新琴似地区』と異なり、
 一旦『廃止』となるのではなく、現在の用途地域への『変更』を行うという手続きが取られています。

・何らかの事情で所有者から札幌市へ宅地開発の意向が示された。
 (新川新琴似地区では所有者が相続で変更になったと記述がありますが、こちらには一切説明はありません。)

平成15年5月15日、札幌市より開発行為の許可がされ、同年7月17日及び9月4日に一部完了した。

・平成15年9月3日、市街化調整区域内の地区計画として『新琴似南地区』が決定される。

・平成16年4月6日の第5回線引き見直しで市街化区域に編入された。

…と、随分アッサリとした書き味ですが、それだけスムーズに開発が進んでいったという事です。
開発許可から1年を待たずに市街化区域になったのですから、
(かなり複雑な事情があるとはいえ)開発許可が出て約15年経っても調整区域のままの『手稲山口地区』西側と比べると、
やはり、かなりのスピード感で開発行為が進んでいったというのが実際の所のようです。

都市計画の『線引き』見直しは数年に一度ですから、タイミングの問題はあるとしても、平成15年のワンシーズンで開発行為が許可からほぼ完了までいくというのは、もちろん周辺事情や造成面積、予算などの兼ね合いもありますが、凄まじい事ではあります。

さて、現地については写真を見ながら紹介してゆきましょう。

市道『新琴似2条通』に面し、新琴似地区センターとコープさっぽろ新琴似店に挟まれた範囲です。
沿道には以下の中規模の店舗が立ち並び、その北側・裏手が住宅街となっています。

 ・サッポロドラッグストアー


 ・回転寿司まつりや


 ・新琴似温泉壱乃湯


 ・シュープラザ新琴似一番通店


 ・名古屋名物赤から

サッポロドラッグストアーの他は飲食店・銭湯・靴屋と、かなり異色の構成です。
これまで紹介してきたように市街化調整区域の地区計画による開発の場合の商業用地の構成は、
アークスグループ等のスーパーや西松屋、ドラッグストア、衣料品店というのがパターンですが、
元々コープさっぽろ(市民生協)があるためか、スーパーの新規出店はありません。
それにしても小売店舗よりも銭湯と飲食店というのはちょっと毛色が違うように見えてしまいます。

裏手の住宅街については、ここ10年の造成という事もあり、やはり新しい住居が立ち並んでいます。
住民の年齢層もまだまだ若いですから、中古物件として売りに出される事も少ない地区です。
JR駅『新川』『新琴似』ともに徒歩30分程度かかってしまいますが、自動車で移動する分にはそこそこ便利ですし、地下駅方面へのバスも複数系統出ています。
周辺は市街地に囲まれていますから、周辺の動向によって地価も変動してゆく可能性があります。
まぁ、これはどんな土地についても言える事ですが、そこだけが良くてもダメ、という事ですね。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、本市の都心部より北西へ約6kmに位置し、北東側は都市計画公園「新琴似二番通公園」、
 南西側は都市計画道路「新琴似2条通」に接する地区であり、現在、民間の宅地開発事業が進められている。
 そこで、本計画では、当該宅地開発事業の事業効果の維持・増進を図り、
 事業後に予想される建築物の用途の混在や敷地の細分化などによる居住環境の悪化を未然に防止し、
 緑豊かでうるおいのある良好な住宅市街地の形成を図ることを目標とする。

実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

(市街化区域内の地区計画に『解説書』は添付されません。)

決定:平成15年9月3日 変更:平成16年8月19日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

旧・調10 新川新琴似地区


当記事は2014年06月17日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:94『新川新琴似地区』です。
ちなみに、市街化区域に編入される前決定番号:調10『新川新琴似地区』だった地区です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

『札幌市都市計画審議会』の議事録で取り上げられている経緯をまとめました。

・昭和45年、都市計画法の施行に係る『線引き』市街化区域に指定されました。

・昭和60年、第2回『線引き』見直しの際、土地所有者から札幌市へ、営農を継続する旨の強い申し出があり、そのため、市街化調整区域への編入=『逆線引き』が行われました。
 通常、『逆線引き』の際には用途地域の指定も同時に解除されるのですが、畜舎など、市街化調整区域に建築出来る建物が、市街化区域の住宅などへ悪影響を及ぼさないよう、用途地域の指定が残されたままの市街化調整区域という特例的な取り扱いになっていました。
 (昭和57年建設省の通達によって、この『用途地域が指定された市街化調整区域』が実現したようです。)

・その後、この土地で農家を営んでいた方がお亡くなりになった後、
 相続をした方から札幌市へ、農家を辞めて開発行為を行う旨の意思表示があったようです。
 それを受けて札幌市では平成13年7月12日の第7回札幌市都市計画審議会で、まずは残っていた用途地域の指定を外し、純粋な市街化調整区域としました。

 第6回・第7回の都市計画審議会では、この用途地域の解除について、北区選出、社会党の伊与部 敏雄市議会議員(選挙通称・伊与部年男氏)かなり食ってかかっています。
 地主さんの個人情報に関する事情まで挙げて批判をしたようで、
 個人情報に関する部分については議事録から削除されています。
 どんな内容の発言をしているか、興味がある方は、議事録を参照してみて下さい。
  → 第6回議事録 ・ 第7回議事録

 北区の案件という事で、何か個人的禍根でもあったのか、勘ぐってしまうレベルです。
 ちなみに伊与部 敏雄氏はこの記事の初出当時、民主党の市議会議員として平成23年から9期目を務めていました。
 ※ 2016年2月2日付で伊与部 敏雄氏の訃報が出ています。

 あんまりウダウダ五月蠅いものですから、審議会の座長・辻井 達一氏(当時・北星大学教授)から
 『できるだけ簡潔にお願いしたいのです。この場は都市計画審議会で,市議会ではございません。』
 などと言われてしまっていて、失笑してしまいました。
 議会や審議会などの議事録に目を通す機会も多いのですが、文字に起こすとある種異常な議事は多いものです。
 (とはいえ、当の辻井氏も故人ではありますが、色々と評価の分かれる人物のようです。)

・その後、平成13年10月25日に開発行為の許可を受け、
 平成14年7月24日に開発行為が完了しています。
 (こういった大規模開発制度の活用は手稲山口地区に次ぎ、二番目の事例だったとのことです。)

・平成14年3月19日に市街化調整区域内の地区計画が定められました。
 これは、現在の地区計画とほぼ同じ内容での決定です。

・平成16年4月6日の第5回線引き見直し市街化区域に編入されました。

現地は札幌市立新川高等学校の北側、市道『西野屯田通』『新琴似2条通』の交差部分です。

『西野屯田通』に面してビッグハウス新川店ガストガソリンスタンドチロリン村などがあります。

『新琴似2条通』側は西松屋新川店のほか、中・小規模な外科、皮膚科、美容院、学習塾などが立ち並んでいます。

住宅部分は、流石にこの10年ちょっとで分譲された造成地ですから、新しい家が並んでいますね。
売れ残りが目立っているという事もなく、密度のある住宅街が形成されています。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、本市の都心部より北西へ約6kmに位置し、北東側は都市計画公園「新琴似二番通公園」、
 南西側は都市計画道路「新琴似2条通」に接する地区であり、現在、民間の宅地開発事業が進められている。
 そこで、本計画では、当該宅地開発事業の事業効果の維持・増進を図り、
 事業後に予想される建築物の用途の混在や敷地の細分化などによる居住環境の悪化を未然に防止し、
 緑豊かでうるおいのある良好な住宅市街地の形成を図ることを目標とする。

実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

(市街化区域内の地区計画に『解説書』は添付されません。)

決定:平成14年3月19日 変更:平成16年4月6日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調24 東米里厚生地区

当記事は2014年04月14日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調24『東米里厚生地区』です。

この地区計画は平成22年8月5日に決定を受けたもので、
今のところ市街化調整区域内の地区計画としては最後に指定されたものです。
そして、東米里に3つ指定されている地区計画の最後の一つです。
(他の2つは『調3 東米里花園地区』と『調4 東米里東栄地区』です。)

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

認定幅員8mの市道『東米里15号線』両脇1.1ヘクタールが範囲です。
市街化調整区域内の都市計画としては、最新にして最も狭い地区となります。

面積が狭い事もありますが、私の経験の範疇では、流通事例を目にした事はありません。
『東米里厚生地区』という名称も、検索サイトでは札幌市国交省しかヒットしません。
更に、過去に位置指定道路だったからか、Googleストリートビューも入っていません。
まさに札幌市内で最も謎に包まれた地区と言えるでしょう (悪ノリ)

この文章も、民間のサイトとしては初となる筈です。(最初で最後かもしれませんが)

写真のように古い住宅が林立しており、老朽化が進んでいます。
この地区計画の決定によって、古い建物の立替が合法になりますので、
現状の土地所有者の保護という側面はありますが、
わざわざ新規にこの地区の土地を購入するメリットは、正直見出せません。

幹線道路の道道626号線東へゆくと江別市大麻の街中に到達しますから、
この地区に住むよりは、札幌の別の地区か江別市の大麻にお住まいになった方がよろしいかと思います。
まぁ、私の個人的な考えにすぎませんが・・・

ちなみに『第二種災害危険区域』に指定されています。
東米里花園地区、東米里東栄地区は第一種ですから、若干安全という判断のようですね。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より東方約9㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和40年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持・増進を図ることを目標とする。

毎度同じ文面です。絶対コピペしてますよね、市の職員も。
既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

今回のように、殆ど流通していない土地、というものも一定数存在していて、
そういった土地は今後どうなっていくのか、未知数な部分が大きい
と言わざるを得ません。
この地区が10年後、小奇麗な住宅街になっている可能性もあり得ますが、
その場合には、この文章が先見の明のない不動産屋の戯言として残っていく事になります。

或いは、この地区についてのインターネット上唯一の民間文書が、
あまりよい評価をしていないので、この地区の地価が下落して、市街化が抑制されてしまうのでしょうか。

卵が先か鶏が先か、或いはまったく関係ないのか、今後の動向に注目しています。

決定:平成22年8月5日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調23 曙11条2丁目地区

当記事は2014年05月31日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調23『曙11条2丁目地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

都市計画道路『曙通』に面し、医療法人福和会『札幌立花病院』を中心とする一画です。

この地区の西側、南側、北(西)側の三方は決定番号111:『手稲曙西地区』に囲まれています。

決定番号111:『手稲曙西地区』はかつて市街化調整区域だった『穴抜き市街化調整区域』で、いわゆるニュータウン『明日風のまち』です。

参考図:『手稲曙西地区』 地区計画図

星置駅徒歩33分、手稲駅までバス乗車で10分って正直どうなのか、私には分かりませんが、まー造成されてそこそこ売れているのだから住む人はいるのでしょう。

『明日風のまち』についてはそのうち取り上げるとして、『曙11条2丁目地区』はその付随的・補完的立場の地域とでも言いましょうか。
いつもより早いですが地区計画の目標を見てみましょう。
 当地区は、都心部より北西へ約13kmに位置する周辺が市街化区域で囲まれた市街化調整区域で、
 隣接する都市計画道路「曙通」や上・下水道等の都市基盤は既に整備が完了している。
 「札幌圏都市計画都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」では、
 都市の効率的な維持・整備を行うため、
 周辺が市街化区域で囲まれた市街化調整区域において地区計画制度を活用し、
 周辺市街地と調和のとれた土地利用の誘導を図っていくこととしている。
 そこで、本計画は、当地区での計画的な土地利用の誘導にあたって、
 用途地域等の指定に代わる基本的制限を定めることにより、
 緑豊かで良好な市街地の形成を図ることを目標とする。

平成22年、『手稲曙西地区』が市街化調整区域から市街化区域になったのに伴って、新たに『穴抜き市街化調整区域』になったという妙な経緯があります。

次回の都市計画決定の際に市街化区域に編入される予定ですが、オセロのようにして連鎖的に市街化区域が増えていくというのは、ちょっとどうなの、と思わないではありません。

地区計画は『一般住宅地区』『医療・福祉地区』『沿道地区』の3つに区分されています。
『一般住宅地区』と『医療・福祉地区』は『第一種低層住居専用地域』に準じた、『沿道地区』は『近隣商業地域』に準じた建築制限となっていますが、いずれの地区においても病院や介護施設、老人ホームなどの建築が可能になっています。

『医療・福祉地区』にはすでに『札幌立花病院』がありますが、現在更地となっている土地には同病院がサービス付き高齢者向け住宅・施設などの医療関係施設を建設するようです。
『札幌市都市計画審議会』の議事録でも触れられていますが、この地区計画自体が、この建設計画との兼ね合いによるものですから、それ以上、今後の展開などについても話しようがない、というのが本当の処なのです。

『一般住宅地区』に定められている土地には、製造業の事務所や一般住宅が立ち並んでいます。

地区の南端(地図下端の鋭角的な部分)には多数の広告看板があります。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。


(この地域については解説書の公開はありません。)

決定:平成22年6月9日 変更:平成25年2月28日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調22 前田公園南地区

当記事は2014年05月10日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調22『前田公園南地区』です。

この地区は道道44号線『石狩手稲通』に面し、手稲郵便局前田公園が近くにあります。

手稲郵便局は郵便業務24時間受付の『ゆうゆう窓口』がある旧・本局です。
(郵政民営化により、『本局』という名称は使用されなくなりました。)
前回の『調20 新川北地区』同様、かなり注目度の高いエリアですね。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップではこんな感じ。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より北西へ約11kmに位置する周辺が市街化区域で囲まれた市街化調整区域で、
 隣接する都市計画道路「石狩手稲通」および「稲山通」や上・下水道等の都市基盤は既に整備が完了している。
 「札幌圏都市計画都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」では、都市の効率的な維持、整備を行うため、
 周辺が市街化区域で囲まれた市街化調整区域において地区計画制度を活用し、
 周辺市街地と調和のとれた土地利用の誘導を図っていくこととしている。
 そこで、本計画は、用途地域等の指定に代わる土地利用制限を定めることにより、
 当地区で計画されている開発事業の事業効果の維持増進や計画的な土地利用の誘導を行い、
 緑豊かで良好な市街地の形成を図ることを目標とする。

市街地の中にポツンと調整区域がある『穴抜き市街化調整区域』ですね。
次回の都市計画の見直しの際、市街化区域に編入される予定です。

上の用途地域図を見ると、かなりポツンとしている事がわかるはずです。

こういった『穴抜き市街化調整区域』は他にも
新川北地区』、『清田・新栄地区』、『曙11条2丁目地区』があります。

『穴抜き市街化調整区域』の詳細については『新川北地区』の記事を参照して下さい。

実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

(この地区計画には解説書の公開はありません。)

さて、この『前田公園南地区』の一番の特徴は、地区計画に3つの色分けがされている点です。
(市街化区域内の地区計画ではよくあるパターンなのですが、市街化調整区域では珍しいです。)
『低層住宅地区』『機能複合地区』『沿道地区』の三種類があり、
それぞれに建築出来る建物の種類は異なります。

特に『沿道地区』は、『近隣商業地域』に準じた取扱いとなっており、比較的大きな店舗が建築可能です。
この一画はすでにオリックスが『クロスガーデン手稲前田』の名称で、5店舗を建設し、
平成23年9月23日にグランドオープン、現在も各店舗が営業しています。

この土地は、個人所有で、オリックスが定期借地契約を結んだとの事です。

過去の航空写真を見ると何もない野原で、それが急に開発された為、インターネット地図で航空写真を見ると野原に店舗があるような表示になるのがシュールですね。

このほか、北側については現在更地ですが、『低層住宅地区』として、住宅街として分譲されていく見込みです。

また、
『低層住宅地区』の中に一本、『区画道路』として公道が出来る予定になっています。

手前の道路の延長線上に真っ直ぐ道路が走る予定になっています。

同様の新興住宅街である『明日風』『星置』と比較すると、手稲駅から徒歩15分と比較的中心部にあり、周囲の小中学校や商業施設も充実しているため、かなり暮らしやすいのではないでしょうか。
(まぁ、現在分譲されていませんから、結局のところ価格次第と言わざるを得ませんが…)

北側には、札幌市営の前田公園団地があります。
そこまで古い団地ではありませんが『団地』という単語に抵抗がある方(たまにいます)は、避けた方がよいかもしれません。

決定:平成22年4月6日 変更:平成25年2月28日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますの で、ご注意下さい。

調21 清田・真栄地区

当記事は2014年05月15日および2016年03月09日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調21『清田・真栄地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

主要市道9903号『羊ケ丘通』の両脇が指定されており、東側の境目は『厚別川』です。

ちなみに、札幌市内の『羊ケ丘通』は(北海)道道ではありません。
北広島市内に入ってから、道道1147号、そして道道790号と接ぎ木のように伸びてゆきます。

この地区計画は『沿道A地区』『沿道B地区』という二つの地区に分けられていますが、どちらも『近隣商業地域』に準じた建築制限となっており、さらに敷地面積の最低限度がそれぞれ500㎡300㎡と定められているため、大規模なロードサイド施設が建築されることを念頭に置いて都市計画が定められています。

羊ケ丘通の東側は今日現在、Googleマップでは病院以外に何もない原野の状態になっていますが、近年、著しく開発が進んでおり、昨年末にはホームセンターと家電量販店がオープンしました。

「医療法人北武会 美しが丘病院」平成23年11月1日 移転

「100満ボルト札幌清田店」平成25年11月29日 オープン
「スーパービバホーム清田羊ヶ丘通店」平成25年12月7日 グランドオープン

羊ケ丘通の西側については、中・小規模な店舗・事務所が所在しています。
「富士レンタル株式会社 札幌清田営業所」「中央鉄建株式会社」
「リトルレンタ・リース株式会社」「株式会社YSS札幌」「ジャックオート株式会社」

どうも、中央鉄建さん以外は、この地区計画が決定されるより以前からあるように見えますが・・・
どういった許認可体制になっているのかは、あえて調査していません。
この地区の南西側については、札幌市の堆雪場として利用されています。
いわゆる雪捨て場ですが、札幌市内の堆積場は不足が叫ばれており、こちらも貴重な場所ということになります。

北東側については、バス会社
「有限会社クローバー観光」の露天駐車場となっています。
(おそらく借地かと思いますが、登記を確認した訳ではありません。ちょっとそこまでの費用と時間はないのです。)

北側のクローバー観光のバス置場と南側の美しが丘病院の間の土地についても、現在造成工事を行っているような形跡があり、こちらも大規模店舗の出店が予想されています。

地方紙を読み込んでいれば、この辺に何が出来る予定、というのも掴みやすいのですが、まぁ『札幌アートヴィレッジ』のような例もありますし、あまりその辺には拘泥していません。
大規模開発の案件に関与する機会は少なく、相続対策・賃貸建物管理・不動産売買が業務の要でして。

…さて、地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より南東へ約10㎞に位置する周辺が市街化区域で囲まれた市街化調整区域で、
 隣接する都市計画道路「羊ヶ丘通」や上・下水道等の都市基盤は既に整備が完了している。
 「札幌圏都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」では、都市の効率的な維持、
 整備を行うため、周辺が市街化区域で囲まれた市街化調整区域において地区計画制度を活用し、
 周辺市街地と調和のとれた土地利用の誘導を図っていくこととしている。
 そこで、本計画は、用途地域等の指定に代わる土地利用制限を定めることにより、
 当地区で計画されている開発事業の事業効果の維持増進や計画的な土地利用の誘導を行い、
 緑豊かで良好な市街地の形成を図ることを目標とする。

最近連続で紹介している『穴抜き市街化調整区域』ですね。
次回の都市計画の見直しの際、市街化区域に編入される予定です。

こういった『穴抜き市街化調整区域』は他にも
新川北地区』『前田公園南地区』『曙11条2丁目地区』があります。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

(この地区計画の解説書は作成されていません。)

『穴抜き』全般そうなのですが、今後の動向が注目される地区ですね。

決定:平成22年4月6日  変更:平成23年6月15日 の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

【2016年03月09日追記分】
『調21 清田・真栄地区』は『穴抜き市街化調整区域』は、羊ケ丘通沿いに位置し、
現在、『100満ボルト札幌清田店』『スーパービバホーム清田羊ヶ丘通店』『医療法人北武会 美しが丘病院』など、俄かに活気付いている地区ですが、
平成28年9月30日に、『ユニクロ』と『GU』、『スシロー』が出店する予定というお話です。

実は前回の記事の後、平成26年9月には海外自動車のディーラー、
『インポート・プラス札幌清田店』が『美しが丘病院』の北側に建っています。
 参考:株式会社インポート・プラス http://www.import-plus.com/

『ユニクロ』等の予定地は清田区清田237番地、『インポート・プラス札幌清田店』の更に北側なのです。

当時の様子を見ると大変荒涼とした立地ですね。

 ユニクロ・GUのメガ路面店 札幌・清田に今秋登場(2016/03/04)
  http://hre-net.com/keizai/ryutu/17978/

ユニクロ(本社・東京都港区)とジーユー(同・同)が関東以北最大規模の路面店
札幌市清田区に出店することに伴う住民説明会が3日、
午後6時半から同区の清田区民センターで開かれた。
オープンは9月30日が予定されている。
説明会は、大規模小売店舗立地法の規定に基づくもので、
店舗概要や交通量調査、騒音調査の結果が報告された。
建物設置者はオリックス(本社・東京都港区)で、
地権者から約4530坪の土地を賃借して店舗を建設する。
平屋の店舗面積は、約908坪で真ん中に壁を設けて向かって
右がユニクロ店舗、左がジーユー店舗になる。
また、別棟に約115坪の建屋も建設、
ここには回転寿司のスシローが入ることになっている。
 
駐車場は店舗前に117台の収容スペースを作る。
営業時間は午前10時から午後8時でスシローは午前10時半から午後11時。
(中略) 
関東以北最大の路面店になることについて、
説明会に出席したファーストリテイリング(ユニクロ、ジーユーの持株会社)
楢木野貴亨出店開発部出店開発チームマネジャーは、
「2社はロードサイドの路面店で成長してきたので、このモデルに今後も注力していくため出店を決めた。
ショッピングセンター(SC)内の店舗との棲み分けも図っていきたい」と話した。
近隣のイオンモール札幌平岡SC(清田区平岡3条5丁目)内にあるユニクロ店舗については、
「今度の店舗の営業状況をみながら判断していきたい」(楢木野氏)とした。
 
新店舗の立地場所は、清田区清田237番地の羊ヶ丘通沿い。
このあたりの羊ヶ丘通には、食品スーパーのダイイチ清田店やツルハドラッグ清田店、
家電量販店の100満ボルト札幌清田店、大型ホームセンターのスーパービバホーム清田羊ヶ丘店があって、
今度のユニクロ・ジーユーの出店により買い物回廊としてさらに魅力度がさらにアップする。

なお、住民説明会は6日(日)も午後2時半から清田区民センターで開催される。
(上記URL記事より引用。着色・強調は筆者による。)

・・・と、まぁこんな話な訳ですが、どんどんと市街化が進んで行っていますね。
記事ではこの地区が市街化調整区域である事について触れられていません。

また『調22 前田公園南地区』なども、オリックスの賃借権で開発がされており、同じような類型で市街形成が行なわれているような感もあります。

どこにでもイオン、どこにでもサツドラ、どこにでも西松屋、というような商業地形成は、資本主義の性質上やむを得ない部分もありますが、正直な処、もう少し特色のある『まちづくり』が成されてもよいのでは、と思わないではありません。

ただ、それを実現する為には誰かがリスクを取らなければならない訳で、
このような広大な土地に店舗を立地するのは大企業か国、自治体にしか出来ません。

例えば、商店街の復興となるような個性的な街並みを目指す、というのは理想ではありますが、大企業は営利を目指すものですし、国や自治体がこのような開発を行なう事は、いわゆる『ハコモノ行政』であって、理想論を幾ら言っても、役人の利権にしかならない訳です。

実は、前回は紹介しなかったのですが、『清田・真栄地区』の地区計画は、
平成22年4月に決定された後、翌平成23年6月に変更が加えられているのです。

当初の計画では、羊ケ丘通に面する部分(道路中心線から60m)のみが商業地で、
それより奥の部分は住宅地としての利用が想定されていましたが、
立地や土地の形状を総合的に考えて、それでは人が住みつかないと考えたのでしょう。
変更後の計画ではすべてが商業用地となり、今回のようなマンモス施設の建設が可能となった訳です。

『清田・真栄地区』もまだ広い区画が何区画か残っていますから、
残りの区画に動きがありましたら、またご紹介させて頂きます。
特に気になるのは、100満ボルト・ビバホームの正面の大規模地、
あそこが何になるかで、地域の毛色も随分と変わってくるように思います。


・・・今回の件も話自体は昨年の段階で出ていたのですが、
アートヴィレッジのように記事が出ても大ゴケする事もある訳で、
本格的に着手されるまで、様子を見ていたのです。
まぁ、大資本連合で手掛ける訳ですから、頓挫する可能性は薄いと思いますが。

 札幌・清田に「ユニクロ」、「ジーユー」が1000坪級路面店 (2016/02/23)
  http://hre-net.com/keizai/ryutu/17906/

 「ユニクロ」と「ジーユー」と「スシロー」 札幌・清田に来年10月出店(2015/05/19)
  http://hre-net.com/keizai/ryutu/14957/

調20 新川北地区

当記事は2014年05月08日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調20『新川北地区』です。

都市計画道路『富丘通』の両側にある区域です。新川に架かる新しい橋『新川さくら並木橋』は平成27年にかけて開通した為、当時リアルタイムで開通までの状況を追っていました。
現在、旧ブログに残していますが、将来的にはこのブログに記事を移す予定でいます。

地区計画の範囲はこんな感じ。
Googleマップはこんな感じ。


富丘通の南西側の約3分の1は公有地で、以前は札幌市のパークゴルフ場があったようですね。
北東側の約3分の2は過去に農地であった民有地ですが、
地主さんの状況等は、当然ですが、個人情報の兼ね合いから公開しません。

まぁ、市街化調整区域であったものが道路が通って建物が建築可能となる訳ですから、ウハウハですね。
計画決定前後はデベロッパーやハウスメーカーの営業からの電話が鳴りやまない日々だったのではないでしょうか。
或いは、市の側や業者との『仕掛け』も既に済んでいるのかもしれません。
どちらにしてもただの市街化調整区域の頃よりも、価格は数倍に跳ね上がった訳で、言うなれば『市街化調整区域ドリーム』です。

昭和の頃、多くの人が夢見てきたような話が、平成の現在に蘇ったのです。
・・・本当に、夢のような話と言うほかありません。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より北西へ約10㎞に位置する周辺が市街化区域で囲まれた市街化調整区域で、
 隣接する都市計画道路「新川通」や上・下水道等の都市基盤は既に整備が完了している。
 「札幌圏都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」では、
 都市の効率的な維持・整備を行うため、
 周辺が市街化区域で囲まれた市街化調整区域において地区計画制度を活用し、
 周辺市街地と調和のとれた土地利用の誘導を図っていくこととしている。
 そこで、本計画は、当地区での計画的な土地利用の誘導にあたって、
 用途地域等の指定に代わる基本的制限を定めることにより、
 緑豊かで良好な市街地の形成を図ることを目標とする。

いつもの『既存宅地制度の代替としての地区計画』ではありません。

これは『穴抜き市街化調整区域』と呼ばれるもので、
市街化区域の中にポツンと調整区域が残されているという意味で、
市街化調整区域の中にポツンと住宅群がある既存宅地とは、真逆の存在ですね。

このように、この地区だけがある意味不自然に市街化に取り残されている状態ですね。

『平成21年度第2回 第48回札幌市都市計画審議会  議事録』より抜粋
穴抜き市街化調整区域につきまして、市街地を一体的、効率的に整備する観点から、
 都市的土地利用を行うことが望ましいと考えており、周辺市街地と調和のとれた開発を誘導するため、
 地区計画制度を活用したいと考えております。
 このため、穴抜き市街化調整区域につきまして、地区計画制度を活用することを区域マスに位置づけ、
 都市的土地利用を誘導していきたいと考えております。
 また、穴抜き市街化調整区域全体が開発された場合は、
 次回以降の区域区分の定時見直しの中で市街化区域に編入していきたいと考えております。』

…という訳で、将来的には市街化区域になる予定の区域です。
こういった市街化調整区域は他にも
手稲山口地区』『清田・新栄地区』『前田公園南地区』『曙11条2丁目地区』があります。
他に、過去にこのようにして指定されていた地域で、既に市街化区域に編入されたものもあります。

実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。(この地区に解説書はありません。)

地区計画の内容を見ると、周辺の『第一種低層住宅専用地域』ほぼ同様の制限になっています。
つまり、二階建て程度の一般住宅や共同住宅、ごく小規模な事務所や店舗しか建築出来ない地域です。
新しく開発される区域とはいえ、タワーマンションが建つような事は予定されていません。

決定:平成22年4月6日 変更:平成25年2月28日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調19 札幌アートヴィレッジ地区 夜のアートヴィレッジと平成28年度の価格

当記事は2016年04月26日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

さて、このブログももう3年半を迎え、毎年恒例記事というのも増えて来ました。

特に役所関係の記事については、年度が替わると状況も変わりますから、
定期的にウォッチしてゆく必要があるのです。

今回の恒例記事は売れ残り26年目の産業団地『札幌アートヴィレッジ地区』です。

過去の記事はこちら
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 (平成26年)
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 夏の様子と平成27年度の価格

さて、夏と冬の様子は既に紹介しましたから、今回は趣向を変えて、夜の様子を紹介しつつ、平成28年度の価格を紹介してゆきましょう。
写真はいずれも平成28年4月上旬の夜7時30分ごろ撮影したものです。

さて、アートヴィレッジに行くには常盤・芸術の森側からのルートと、
石山六区側からのルートの2通りがありますが、
いずれも郊外で、山の中ですから夜は街灯もなく真っ暗です。

しかし、アートヴィレッジでは、5区画中1区画しか運営していないにも関わらず、区画内は街灯が煌々と照っています。

運営中の『芸森スタジオ』が不便しないようにという配慮かもしれませんが、
アートヴィレッジまでの山道は真っ暗なのですから、
街灯がなかったとしてもさほど不便ではないと思うのですが…

確認していませんが、明け方まで点灯している『常夜灯』でしょうしね。

札幌IT立国の夢の跡、『ハドソン中央研究所』跡地も相変わらずそのままです。
購入したい、という方は所有者を探して連絡しますからお問い合わせ下さい。

有名な『廃墟』になりつつありますが、現地は立入禁止です。

『廃墟』とされているものであっても、あくまで私有財産ですから、無断での侵入については刑事罰の対象となります。
勝手に立ち入るような真似は絶対にしてはなりません。

空き家となってから11年が経過しますが、
ハドソンの創業者、工藤裕司氏が設置したと言われるミニSLの駅『ニセコ』が窓からのぞきます。
資金が有り余っていれば、私もこの旧社屋を購入して、芸術的不動産会社を設立するのですが…

まぁ、アートヴィレッジ地区は非常に厳しい地区計画によって、
その運営事業が芸術目的に限定されていますから、営業が許可されない可能性の方が高そう
です。

さて、そんな非常に厳しい地区計画で誰も買えない・買っても事業を運営出来ない事で有名な・・・
というか、私が有名にしようとしている『札幌アートヴィレッジ地区』ですが、
平成28年4月1日の年度替わりに価格が更新されましたので、それも見てゆきましょう。

昨年はこのような公示価格も無視した不自然な値動きで、
札幌市ってホントはこの土地売りたくない事情があるんじゃないの?というお話をしました。
 第1区画  分譲価格:前年比 3.3%↑    賃貸価格:16.9%↓
 第2区画  分譲価格:前年比11.6%↑    賃貸価格: 6.9%↓

いや、だって南区の公示価格は前年比で0.2%下がっているにも関わらず、
分譲価格がこの水準に設定する札幌市役所の担当者ってどんなバブル脳だ、って話ですからね。
そりゃあ私もウラの事情を勘ぐってしまいます。

そしてこの一年、私は色々な場で市政関係者に会う度に、
アートヴィレッジについてチクチクとイヤミを言い続けてみたり、
一般の市民の方に前回のブログ記事をことあるごとに薦めてみたりと、
イヤガ…もとい、適正な市政運営への働きかけを行なってきました。

今年の南区の公示価格は前年比0.1%の下落と、下げ幅は昨年より小さくなっていますが、
やはり南区の凋落は収まらず、と言った処でしょうか。

焦らしましたが、今年の価格を見てゆきましょう。

 第1区画  分譲価格:前年比 6.6%↓    賃貸価格:14.0%↓
 第2区画  分譲価格:前年比 6.4%↓    賃貸価格:13.9%↓

おお、分譲価格も賃貸価格も軒並み下がりました。
私のイヤガラ…もとい、適正な市政運営への働きかけの成果でしょうか。

…ただ、それでもまだまだ高い。
今年の価格と一昨年の価格とを比較してみましょう。

 第1区画  分譲価格:前年比 0.3%↓    賃貸価格:16.9%↓
 第2区画  分譲価格:前年比 4.4%↑    賃貸価格: 6.9%↓


分譲価格については、実は一昨年並みか若干高い程度の価格設定なのです。
一昨年…平成26年4月といえば、消費税増税前後で土地が高騰した年です。
26年間売れ残っている産業団地がその地価高騰期と同水準の価格のままである、というのは、
如何に異常な価格設定であるか、という事を担当者はきちんと考えて頂きたい。

賃貸価格については二年連続で大きく下落している訳ですが、
地区計画の内容からして、短期利用をするような使い方が想定されていませんから、賃貸価格が下がった処で大した意味はないのです。

そして、今年も夏になれば雑草は刈り取られ、綺麗な分譲団地の姿が保たれます。
芸森スタジオ以外に訪れる人のない団地は、毎夜、街灯によって煌々と照らされます。

その為の維持費は、どこから出てくるのでしょうか。

高い、高い、と言っていますが、これは単に値下げをしろと言っているのではありません。
市内の建物が建築可能な土地が坪1万円前後というのは破格です。
しかし、実際には地区計画によって、建物が建たない・転売価値の薄い土地な訳です。

銀行だって、こんな土地が担保ならロクに融資してくれませんよ。
(転売価値≒担保価値が低い為)

3年間繰り返しの主張になりますが、すべての原因は厳しすぎる地区計画なのです。
(まー、そもそもこんな辺鄙な場所を造成したのが誤り、とも言えますが、
 26年間売れ残り続けている事の原因は、地区計画にあると考えます。)

芸術や文化活動といったものを大切にする事は大事ですが、
あまりに現実的でない制限を続ける事は、役人の保身と自己満足に他なりません。

最後に、この地区に設置してはいけない建造物を例示しましょう。(分譲・賃貸共通)
 ① 建築基準法別表第二(と)項第1号、2号、4号に掲げるもの
    =準住居地域内に建築してはならない建築物→一定規模以上の工場や商業施設
 ② 住宅
 ③ 学校(大学、高等専門学校、専修学校その他これに類するものを除く。)
 ④ 神社、寺院、教会その他これらに類するもの
 ⑤ 老人ホーム、保育所、身体障害者福祉ホームその他これらに類するもの
   (就業者のための付帯設備として建築物内に設けるものを除く。)
 ⑥ 老人福祉センター、児童厚生施設その他これに類するもの
 ⑦ 病院、診療所(就業者のための付帯施設として建築物内に設けるものを除く。)
 ⑧ 店舗、飲食店その他これらに類するものでその用途に供する部分の床面積の合計が500㎡を超えるもの
 ⑨ ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場又はバッティング練習場
 ⑩ 遊技場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これらに類するもの
 ⑪ 自動車教習所
 ⑫ 畜舎
 ⑬ カラオケボックスその他これに類するもの
 ⑭ 自動車修理工場
 ⑮ 工場(美術品又は工芸品の制作を行うもの及び建築基準法施行令第130条の6に掲げるものを除く。)
    建基法施工令130条6→50㎡以内の食品工場。例)パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋。

こういった数々の制限に該当せず、かつ、文化的・芸術的な商売採算を取れる方で、銀行の融資に頼らずに不動産を購入出来る場合には、アートヴィレッジ地区をお薦めします。

その際には是非仲介をさせて頂きたいと思います(笑)

調19 札幌アートヴィレッジ地区 夏の様子と平成27年度の価格

当記事は2015年05月15日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

平成27年4月12日の札幌市長選挙を受け、平成27年5月2日には、新市長 秋元 克広氏が就任しました。
3期12年を務めた上田 文雄前市長の副市長でもあった新市長ですから、今後の札幌市の行政は上田市政を発展させたものになる、と言われています。

さて、今後の市政には除雪問題や地下鉄延伸の有無、市電の再延伸を始め、
都市計画上、不動産流通上にもさまざまな影響が出てくると思われますが、
今回はいくつもある懸案事項のうち、非常に注目度が低いもの…
『札幌アートヴィレッジ地区』を再び取り上げてゆきましょう。

過去の記事はこちら
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区

前篇では都市計画上の歴史、後篇では各区画の具体的経緯を紹介しましたが、一言で言ってしまえば、鳴かず飛ばずの産業団地ですね。

平成2年からずっと札幌市が分譲・賃貸を行なっていますが、
芸術の森にちなんで、利用は芸術関係の業種に限定されているため、
現在運営されているのは『芸森スタジオ』だけという体たらくなのです。

かつては地場のゲームメーカー、ハドソンの中央研究所がありましたが、
ハドソンの子会社化とブランド消滅に伴って閉鎖され、現在は転売先を探しているところです。

アートヴィレッジには未利用区画が2区画ありますが、この価格は年度ごとに改定されます。
  札幌市 札幌アートヴィレッジ:分譲・賃貸区画
   http://www.city.sapporo.jp/keizai/biz_info/danchi/art-kukaku.html

さて、もう25年も売れ残っている団地、どのような値動きをしているのでしょうか。
前年対比でみてゆきましょう。(具体的な価格は札幌市のホームページをご参照下さい)

 第1区画  分譲価格:前年比 3.3%↑    賃貸価格:16.9%↓
 第2区画  分譲価格:前年比11.6%↑    賃貸価格: 6.9%↓

Σ(゚Д゚,,)札幌市サンよ、ホントに売る気あんのか?

20年以上売れ残っている土地の分譲価格が今更値上がりするなんて馬鹿げているでしょう。

この値上がりの原因はどこにあるのでしょうか?
札幌市に限らず、自治体が不動産…特に土地の取引をする場合、
まずもって価格の根拠として重要視されるのが『公示地価』ですから、
もしかしたら公示地価が大幅に上昇した影響なのかもしれません。

札幌市の場合は、公示地価が区ごとに分かりやすくまとめられていますから、
その資料『土地価格地図』を見てみましょう。 
  札幌市 土地価格地図
   http://www.city.sapporo.jp/keikaku/chika/chika.html

・・・え?札幌市の地価って全体でも0.9%しか上昇してないし、
南区に至っては0.2%のマイナスなんですけど!(;´∀`)
ちなみに平成26年は全市で1.3%の上昇、南区は±0%(変動なし)。
更に、芸術の森に一番近い地点の地価も、横這いか下落で、上昇はしていません。

つまり、アートヴィレッジの分譲価格上昇の根拠は公示地価ではない、という事です。
賃料は値下がりしているものの、前回説明した通り、アートヴィレッジ地区は、芸術事業用の建物を建設することが念頭に置かれていますから、基本的に、賃貸での利用というのはあまり考えられていないのです。

・・・っていうか、あの山奥に建物も建てずに何をやるんだって話がありますからね。

ここまで来ると札幌市にアートヴィレッジを売りたくない事情があるのでは?と勘ぐってしまいます。
造成費と維持費がかかっている状態で売却してしまうと、赤字が計上されるので、会計上の資産として残しておいて『含み損』のままにしておこう、という腹積もりなのでしょうか。
もしそうだとしたら、官僚主義・民主主義両面の悪しき側面と言わざるを得ません。

今後も道路整備や未利用地の草刈などに市の予算が使われる事になりそうです。

・・・と、このように、札幌アートヴィレッジは山奥にあるものの、
税金を使って綺麗に造成され、今も分譲地として良好な状態を保っています。

繰り返しますが、ネックとなるのはあまりに厳しすぎる用途制限なのです。

ぶっちゃけ、もう失敗してしまった事は灯を見るより明らかなのですから、
失敗は失敗として受け止めた上で、塩漬けにするのではなく、
きちんと『損切り』出来るように、都市計画を改める事が必要なのではないでしょうか?

そうでなくては、これから20年後も、30年後も、
この山奥の産業団地に累積的な赤字が計上されていくことになってしまいます。

【関連記事】
私は毎年、この地区の推移を見守っています。関連記事はこちら。
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 (平成26年)
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 夏の様子と平成27年度の価格
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 夜のアートヴィレッジと平成28年度の価格

調19 札幌アートヴィレッジ地区

当記事は2014年04月16日および2014年04月17日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

市街化調整区域内の地区計画を現地の写真を交えて紹介するという、(自称)画期的なコンテンツ、これまでに4回を重ねてきましたから、全18地区のうち今回も含めると既に四分の一以上を取り上げた事になります。

今回は『既存宅地制度の代替としての地区計画』ではない地区計画です。
大変興味深い経緯を辿った地区ですから、みっちりと紹介してゆきます。
その名も決定番号:調19『札幌アートヴィレッジ地区』

『そんなもん聞いた事ない』という人もいるかと思いますが、住所としては『札幌市南区芸術の森3丁目』、地区計画の範囲はこんな感じです。

Googleマップではこんな風になっています。

『芸術の森○丁目』というのは割とスゴい住所ですが、厚別区にある『下野幌テクノパーク』に比べれば幾分常識的かもしれません。
芸術の森1丁目には札幌市立大学 宮の森キャンパス(本部)があります。
芸術の杜2丁目には市民にも馴染み深い、美術館やホールなどがあります。
いわゆる『芸術の森』としてイメージされるのはこの2丁目ですね。
更に南に行くと、芸術の森3丁目、今回紹介する『札幌アートヴィレッジ地区』です。
芸術の森を表すキーワードはズバリ『バブル景気』です。
というのも、この地区の大きな転換点は平成3年平成18~19年
ちょうど第一次平成不況の始まりとなったバブル崩壊と、
リーマンショックを契機としたファンドバブルの崩壊と重なります。

どんな経緯があったのかは、この地区計画の目標に詳しいです。
 当地区は、南区の大自然と芸術文化が調和した環境づくりとして芸術の森の南端に位置し、
 本市の芸術文化活動の領域を広め、新しい芸術文化を創造するとともに、
 札幌市の個性ある産業の育成を図るため、平成2年に札幌市が造成した団地である。
 さらに平成19年にはその分譲方針を見直し市立大学や芸術の森との連携のもと、
 従来の芸術文化産業の振興に加え、芸術文化活動の発信や集客交流、
 人材育成などの幅広い事業展開を対象とした企業や団体等を誘致していくこととしている。
 そこで本計画では、札幌アートヴィレッジ地区の開発理念、
 分譲・賃貸方針に基づく土地利用及び建築物の配置等の誘導と、
 併せて周辺環境との調和のとれた良好な市街地の形成を図ることを目標とする。

地区計画の目的というと、いつもはテンプレートのコピペ文書ですが、今回は大変参考になる内容ですね。

昭和56年から平成3年にかけて造成された芸術の森地区のうち、
平成2年5区画が造成された芸術の森3丁目は、
札幌市を主体として分譲を行い、企業などの誘致を行ってきましたが、
3区画については分譲出来ず、2区画にのみ建物が建っている状態が15年ほど続きます。
(うち数区画についてはどうやら、関東の大手企業による事業計画もあったようです。)
札幌市もこんな状態ではイカンと奮起し、ファンドバブル全盛平成19年10月3日、地区計画決定がなされます。
リーマンショックは平成20年9月の出来事ですから丁度その前年という事になります。

ちなみに、芸術の森1丁目にある札幌市立大学は平成18年4月開学です。
更に母体の学校法人『札幌市立高等専門学校』は平成3年設立ですから、
どちらも札幌市の事業とはいえ、ホントにアートヴィレッジと同じような経緯を辿っているんですね。

より細かい話をすると、平成18年の都市計画法の改正によって、
以前は許可不要だった公的機関が行う開発行為について、
平成19年11月30日以降、許可が必要になってしまったという事情があるのですが、地区計画の内容や当時の議事録を見るに、この地区計画の決定は、やはり起死回生の策であったような印象を受けます。
バブルに踊って造成した芸術の森ですが、再起を図る為のプロジェクトは、リーマンショック以前のファンドバブルの波に乗せられてしまっただけなのかもしれません。

私自身、ファンドバブルとリーマンショックのアオリを大きく受けた世代です。
ファンドバブルの就職活動超売り手市場と、その後の大不況を重ねると感慨深いものがあります。
商売もギャンブルも政策も、そして人生も、人間はいつだって同じような落とし穴に嵌ってしまうものなのかもしれませんね・・・

そんなアートヴィレッジ地区、現在どのような状況になっているかと言えば、
5区画中2件が分譲・賃貸中、1件が賃貸中の空き地、
1件が売却済の建物で空き地、稼働しているのは残りの1件のみ
です。
分譲情報については札幌市のホームページを確認して下さい。
 札幌市 札幌アートヴィレッジ:分譲・賃貸区画 【リンク切れ】
  http://www.city.sapporo.jp/keizai/biz_info/danchi/art-kukaku.html

 さっぽろ産業ポータル 札幌アートヴィレッジ
   http://www.sec.jp/iarea/view/id/19

価格は毎年変わるという事なので、写真では黒塗りにさせて頂きました。
いつも好き勝手言っている私ですが、これでも時計台の鐘が鳴る札幌の市民ですから、札幌市の事業を妨害する意図はありません。

価格も市街化調整地域らしいお値段で、道路も整備されています。
何故こんなにも利用が進んでいないのでしょうか?

それは、この地区に建築できる建物に厳しい制限が課せられているからです。
以下は売買の場合、賃貸の場合ともに、この地区に設置してはいけない建造物です。
 ① 建築基準法別表第二(と)項第1号、2号、4号に掲げるもの
    =準住居地域内に建築してはならない建築物
       →一定規模以上の工場や商業施設
 ② 住宅
 ③ 学校(大学、高等専門学校、専修学校その他これに類するものを除く。)
 ④ 神社、寺院、教会その他これらに類するもの
 ⑤ 老人ホーム、保育所、身体障害者福祉ホームその他これらに類するもの
   (就業者のための付帯設備として建築物内に設けるものを除く。)
 ⑥ 老人福祉センター、児童厚生施設その他これに類するもの
 ⑦ 病院、診療所(就業者のための付帯施設として建築物内に設けるものを除く。)
 ⑧ 店舗、飲食店その他これらに類するものでその用途に供する部分の床面積の合計が500㎡を超えるもの
 ⑨ ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場又はバッティング練習場
 ⑩ 遊技場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これらに類するもの
 ⑪ 自動車教習所
 ⑫ 畜舎
 ⑬ カラオケボックスその他これに類するもの
 ⑭ 自動車修理工場
 ⑮ 工場(美術品又は工芸品の制作を行うもの及び建築基準法施行令第130条の6に掲げるものを除く。)
    建基法施工令130条6→50㎡以内の食品工場。例)パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋。

・・・一体何をやれと言うのか!( ゚Д゚)
(芸術関係の施設を運営して下さいという話です。)
これ、かなり厳しい制限でして、事業を行う予定で売買しても、実際に事業を開始しない場合には、札幌市に土地を返さなければならなくなります。
(10年間の『買戻特約』が登記されます。)
一度買ったものを他人に転売する場合でもこの特約は有効ですから、もうアートなヴィレッジになるしかない訳です。
しかも、最低でも一区画5000㎡はある土地で、規模の制限があるというのはどういう了見なんでしょう。
5000㎡の土地500㎡の芸術的飲食店50㎡の芸術的パン屋さんでもやれというつもりなのでしょうか。

『これだけ広いんだからメガソーラーでもやれば?』という訳には行かないんでしょうねぇ…

<現在分譲中の空き地にホテル建設の予定があった>
 平成20年3月1日の北海道新聞の記事を引用します。
 建設不動産コンサルティングの都市デザインシステム(東京)は、
 未利用の分譲地約一万平方メートルにホテル建設を決め、六月に正式契約する。
 二~三階の低層で延べ床面積約三千五百平方メートル。
 三十室の客室ほか、芸術作品のギャラリーも複数設ける。
 この夏着工、来年夏開業の予定だ。
 同社は「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)などに
 訪れるアーティストも多く、収益も十分見込める」と話す。

なんとも明るいニュースですが、その土地は現在も更地です。
(面積から類推するに、一番西側の区画・・・市の分譲資料の番号②の土地と思われます。)
株式会社 都市デザインシステムはコーポラティブハウスの企画やホテル経営で躍進した企業ですが、
平成20年8月に経営破綻し、民事再生法の適用を申請しています。
(民事再生を経てコクヨの子会社となり、現在はUDS株式会社として建築企画を行っています。)
当時の報道では、沖縄の大規模リゾート開発に頓挫したという事ですが・・・
同年の9月にはリーマンショックがありましたから、まぁ遅かれ早かれ・・・という事なのでしょうね。

<地場産業の栄枯盛衰>
札幌アートヴィレッジで特に有名なのは『株式会社ハドソン中央研究所』です。
私としては色々と守秘義務の問題が出てくるので正直あまり取り上げたくありません。

ただ、地区計画を紹介するにあたってその地区を代表する建物を紹介しないというのは、資料的価値に劣ります。
守秘義務の対象は『業務上知りえた秘密』ですから、その点には触れずに、『芸術の森 ハドソン 中央研究所』で出てきた検索結果を元に記述したいと思います。

この建物は桃太郎電鉄ボンバーマンで有名な、株式会社ハドソンの中央研究所でした。
ハドソンは札幌を代表するIT企業でしたが、拓銀破たんを機に資金繰りが悪化、平成17年にコナミグループの子会社となり、平成24年に吸収合併され消滅しました。

『中央研究所』は、創業者・工藤裕司氏の趣味ハドソンの自由な社風がよく現れた施設だったそうです。
建物内外をミニSLが走り回り、古銭の展示室などもあったという事がインターネット上に書かれています。

向かって右側にある柵が、ミニSLのレールだったという事です。
しかし、コナミの子会社となった直後、平成17年3月末でこの建物から撤退。
子会社化→吸収合併→そして平成26年のハドソンブランド完全消滅まで、わずか9年
高橋名人桃太郎電鉄など、一世を風靡した企業の歴史は40年足らずで幕を閉じたのです。

建物前にある回収時刻が白紙の私設ポストと建物の窓からのぞくミニSLの駅『ニセコ』が切ないですね。

<アートヴィレッジ 最後の砦>
そして、現在も残っているのは株式会社SAVEが運営する『芸森スタジオ』のみです。

この施設は、各種音響機材とスタジオを貸し出し、音楽のレコーディングを泊まり掛けで行う事が出来る施設で、運営会社の株式会社SAVEは、歌手の松山千春氏の事務所、オフィス・ゲンキ株式会社ボーカロイド『初音ミク』クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、地場の音楽会社、株式会社ウエスなどが株主となっているようです。(芸森スタジオHPより)

前述のホテル開発計画と同日の北海道新聞の記事を引用します。
 イベント企画のウエス(札幌、小島紳次郎社長)と
 歌手の松山千春さんが社長を務めるオフィス・ゲンキ(東京)は
 二月中旬、九三年にファンハウス(現BMGジャパン、東京)が開設したスタジオを約一億円で購入。
 二階建て約千九百平方メートル。客室七室も備え、小田和正さんやビーズが録音を 行ったこともある。
 両社はスタジオを国内外のアーティストらに利用してもらうほか、
 道内の若手歌手やクリエーターらを発掘、育成する拠点とする計画。

・・・と、まぁ、それから6年が経過した現在も運営は継続されているようで、何よりです。
わたくし細丼善太郎はアートヴィレッジ最後の砦 『芸森スタジオ』 を心から応援しています。
   ◆ 芸森スタジオの公式ホームページはこちら

<アートヴィレッジの未来>
前述の北海道新聞の〆の部分を引用しましょう。
 札幌市は新年度、有識者会議を発展させる形で同地区の活性化や市民の利活用促進を検討する協議会を関係者らと設立
 三カ年の事業計画などを策定し、世界に札幌の芸術制作環境をPRしていく考えだ。

これが平成20年の記事ですが、平成26年の現在に至るまで、
平成19年に決定された地区計画が見直されたという話は耳にしていません。

昨今、アベノミクスや東京オリンピックに浮足立ちつつある不動産業界・建設業界ですが、札幌市にはバブル崩壊やリーマンショックの教訓を重く受け止め、浮足立たず、堅実な自治体運営を行って頂きたいものです。

具体的には、どう考えても制限が厳しすぎる地区計画と分譲条件を見直した方がよろしいんじゃーありませんかねぇ?
造成費用と整備費用っつったって市民の税金と地方債(借金)から出ているんでございましょ?

まかり間違っても、札幌オリンピックの招致に成功したなどと言って、
アートヴィレッジに追加投資をするような真似はしてほしくないものです。

決定:平成19年10月3日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

【関連記事】
私は毎年、この地区の推移を見守っています。関連記事はこちら。
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 夏の様子と平成27年度の価格
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 夜のアートヴィレッジと平成28年度の価格

調15 石山六区西地区

当記事は2014年05月02日および2014年07月08日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調15『石山六区西地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

札幌市民であれば『石山』という地名は、一応知っているというも多いでしょう。
国道230号線『石山通』は、中心部と札幌の温泉地『定山渓』を結ぶ幹線道路で、札幌市の道路の中では有数の知名度がある『道』だからです。

中心部から定山渓までの地名は下記のようになっています。
南○条西○丁目→|→川沿→石山→藤野→簾舞→|→豊滝→小金湯→定山渓

札幌市南区の郊外は、傾斜地ではあるものの古くから安価な住宅街として造成され、多くの人が住んでいますし、その中では『石山』は比較的中心部に近いエリアです。

公共交通機関はバス以外にはありません。
かつては『定山渓鉄道(じょうてつ)』現在の石山通に沿って敷設されており、
これらの地区も、当初の段階では定山渓鉄道があって発展してきたのですが、昭和44年に廃線となり、以後、札幌に私鉄は存在していません。
(より正確に言うと、定山渓鉄道の廃線と、この地区の『宅地化』は順番として若干前後するようです)

現在の『石山』旧・定山渓鉄道『石切山』駅を中心とした一画です。
(お察しの通り石山という地名は採石場があることから付けられた地名です。)

石山通にほど近い部分には住居表示が実施されており、石山1条~4条に区分されていますが、石山通から離れた南側の部分は住居表示も実施されていない市街化調整区域の広大な範囲となります。

『南区石山』の範囲はこんな具合に相当広いのですが、南北に走る市道『石山穴の沢線』以外の部分は、殆どが山である、というのが実態です。

そんな中『石山六区とは何かというと、住居表示が実施される前、この地区の地名は『石山○区』という風に区分されたものが、取り残されているものです。
現在の石山一条~石山四条、また石山東に改編された市街化区域の部分と、市街化調整区域として住居表示が実施されず、単なる『石山』のままとなっている部分に分かれます。

石山は一区から八区まであったのですが、このうち人が住み続けている石山六区地区だけがバスの路線名や地区計画などで地名に残っています。
勿論、地元の方はいまだに『〇区』と呼ぶこともあるようですが、バス停からも『〇区』という呼称は絶滅しており、公式に使われているのは石山六区だけであるようです。
詳細については末尾で項目を設けて紹介しています。

中央バス『石山六区』停留所『石山六区会館』は、今回の地区計画『石山六区西地区』の区域より、
もっと南側にありますから『石山六区』という地区を考えた場合には、これもかなり広い範囲であるという事が出来るでしょう。

さて、現地は『石山穴の沢線』の西側と東側に分かれ、東側には河川『穴の川』が流れています。

西側はかなり急な坂道となっており、二本ある道路(どちらも『石山77号線』)のうち、
北側に関しては、冬の間の通行は禁止されているようです。北側には建物も殆どありません。

東側に関してはゆるやかな傾斜になっており、そこそこの密度で住宅が建築されています。
新しい建物や、売地もちらほらとあるのは、この地区計画が決定された結果の事でしょう。

穴の川は『砂防指定地』となっています。
これは山の崖崩れや川の氾濫の恐れがあるため、土を掘ったり盛ったりしてはいけませんよ、という地域です。
既存の敷地をそのまま使う分には影響がありませんが、土地の形を大きく変更する場合には制限がかかります。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より南方約12㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和42年及び45年に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。

『既存宅地制度の代替としての建物建築可能な地区計画』です。
これは再三取り上げてきましたが、既存の土地所有者に対する救済措置という意味合いが強いものです。
そもそも、当時建築可能だった土地が、昭和43年の都市計画法の制定によって、市街化調整区域という区割りとなり、建替や新築も出来なくなってしまった、という事情があり、かつ、これをそのままにしておくと高齢化によって限界集落のようになりかねない、という配慮から、建物の再建築が可能なように地区計画を設定しているのです。

しかし、これって市街地を密集させて効率的な都市運用を行うという、
『都市計画法』や札幌市の『コンパクトシティ構想』『都市計画マスタープラン』とは真逆の発想です。

この地区計画を決定する前段の『都市計画審議会』の議事録を見てみると、
この点について、市の職員に強く問題提起をしている市民委員の方がいます。

氏名を検索すると有限会社 市村都市環境研究所の代表者 市村一志氏のようです。
 第26回 自然エネルギー普及 市村一志さん|札幌人図鑑

また、その際の議事録は第22回(事前説明)第24回(本決定)から見る事が出来ます。

まー、このような問題提起をしても、審議会の議題に上る頃には、
住民説明会も済ませてしまっていて、根回しは万全な訳で、賛成多数で採決され、現在に至ります。
デュープロセス(適正手続)というのも、なかなか難しいものだなぁ、と実感します。

あ、今日は思いのほか長くなってしまい、いつものを忘れていました。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

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決定:平成16年10月8日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

【石山一区~八区の区割りについて】
石山六区というのは、旧来の住所区画による呼称であるというのは前述したとおりですが、それでは、石山一区って具体的にどこなの?何区まであるの?

当然の疑問なのですが、実はこれを容易に調べる事は出来ません。
『石山○区』というのは旧地名ですが、あくまで俗称であって、正式な行政区分ではありません。

では、どうやって調べるのかといえば、名前の残っている町内会から調べてゆくのです。
石山二区町内会、石山三区町内会など、区制の名残は今は町内会にだけ残っています。
とはいえ、町内会も統廃合や名称変更がありますから、そこはちまちまと家系図を追うように、データを抽出した上でマッピングをしたのが、この地図です。

具体的な施設や道路を挙げるとこのような区分になります。
 石山一区…藻南公園、啓北商業高校
 石山二区…石山郵便局、旧定山渓鉄道石切山駅
 石山三区…石山小学校、石山消防局
 石山四区…国道453号線『真駒内通』の東側、現在の『石山東』
 石山五区…石山南小学校、石山中学校
 石山六区…市道『石山穴の沢線』の東西に渡る広大な地域
 石山七区…現在の石山3条5丁目、石山3条6丁目
 石山八区…石山開拓神社、介護施設『静山荘』『和幸園』

こうしてみると、現在の石山の住宅街は石山五区が中心となっていて、旧定山渓鉄道の頃の中心地、石山一区と石山二区は若干なりを潜めています。
・・・こうなったのは国道230号線『石山通』のルートによる処が大きいのでしょう。

恐らく大きな誤りはありませんが、他で分かりやすい地図などがあったら教えて下さい。

市内中心部であればまだ資料が出てくるのですが、郊外の古い地名や俗称については、なかなか洗い出しが難しく、石山の区制について取り上げている資料など、簡単には見つけられません。

今後もインターネットに上がらないマイナーな郷土史を編纂してゆければと思います。

調14 十軒静和地区

当記事は2014年05月28日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等 は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調14『十軒静和地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

『伏籠川』『赤坊川』に挟まれた地区で、周囲は畑になっています。

一般住宅もありますが、そのほかには内装業などの倉庫、小規模な作業所が多いようですね。
一帯は趣味に走ったアウトドア風の個人住宅や、古い平屋、倉庫などが立ち並んでいます。
道路の舗装はひびが入ったり、路肩は未舗装で側溝があったりと、最低限です。
中には砂利道になっている道も多く、道路の状況は決して良くありません。

何故だろう、と道路の状況を調べてみると、不思議な事が分かりました。

・・・市道(認定道路)になっている部分、少なすぎません?
(青色の線が認定道路、黄色の線が位置指定道路です。)

『建物が建てられる市街化調整区域』として組み込む為の条件は、
札幌市『市街化調整区域の保全と活用の方針』によると、下記の5つ。
 ① 指定道路によって構成される住宅市街地で、区域区分設定以前より存在していること。
 ② 住宅戸数がおおむね20戸以上であり、住民が生活していること。
 ③ 住宅市街地の面積が、おおむね1ヘクタール以上であること。
 ④ 公共下水道が整備されていること。
 ⑤ 道路が適正に配置され、おおむね100%が市道であること。

この地区の道路配置では、どうみても100%が市道という訳ではありません。
うーんオカシイですよね。
この地区計画が決定された際の『札幌市都市計画審議会』でもその点には一切触れられていません。
これ以上深入りする事も可能ではあるのですが、何らかの差支えがあるかもしれないので、詳細については書かないでおきますが、かなり特殊な事例である、という事だけは書いておきます。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より北方約8㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和40年前後に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。
既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。

実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

決定:平成16年3月9日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

【2017年12月12日追記分】
さて、『調4 東米里東栄地区』や『調11 丘珠藤木川西団地』では、道路が市道ではなく位置指定道路であることで一部分が地区計画のエリアから除外されているにも関わらず、前述の通りこの『十軒静和地区』では、市道の割合が低いにも関わらず地区計画のエリアが設定されているということが特色であります。
この理由については、都市計画審議会などを参照していますが、詳細は分かりません。
理屈としては、南北・東西のいずれかが市道になっているから、という理屈付けなのかもしれませんが、『おおむね100%が市道』という明文規定とは齟齬があります。

さて、平成26年当時の記事では地区計画の範囲内の市道の割合は70~80%といったところですが、3年以上が経過した平成29年時点では市道の整備が成されているのでしょうか?
札幌市都市計画情報提供サービス』から、該当地域を見てみましょう。

Σ(゚Д゚;市道、増えてない! 私道(位置指定道路)増えてる!

都市計画情報提供サービスによると昭和39年8月24日に指定された指定番号『2958-17』の位置指定道路であるとのことです。
『2958-17』というのは、札幌市位置指定道路 第2958号として申請されたもののうち、札幌市が枝番を付けて区分したものです。
枝番が17という事ですから、広大な範囲が位置指定道路として指定されている、という事です。
現存する札幌市位置指定道路 第2958号の範囲を見てみましょう。

赤線でなぞってあるのが、位置指定道路 第2598号です。
推測するに、既に市道(青線)となっている部分についても大半は位置指定道路であったのでしょう。
つまり、位置指定道路 第2598号こそが十軒静和地区の骨格であると言えます。

昭和39年に分譲業者によって指定されたと思わしきこの道路のうち、北東側の一部分・・・つまり『枝番17』は、何故、平成26年にはインターネットに掲載されていないのに、平成29年時点では掲載されているのでしょうか。

位置指定道路にはこういったものが多く、年々整備・追加されていったり、区域についても見直しがかかる場合があります。
平成30年3月から位置指定道路のダウンロードが可能となる予定ですから、私のブログもやりやすくなりますね。
機会があればこの地区についても再度調査し、紹介してゆきたいと思います。