市街化調整区域は『原則建物を建てる事が出来ない土地』だ。
・・・何度も繰り返しそのように書いてきました。
市街化調整区域では農業漁業用の施設や学校などの公共施設、特別な事情が認められた工場など、特別に認められた種類以外の建物は建築出来ませんから、農家以外の一般の方が住宅を建てる場合などは、もってのほかです。
しかし、例外措置として、一般の住宅を建築出来る市街化調整区域もあるのです。
それが『地区計画』によって建築可能と定められた地区です。
『地区計画』は都市計画法 第12条に詳しく定められたもので、自治体が都市計画において別途規定する事ができるものとされています。
ざっくり言えば自治体は都市計画とは別に『こんな町づくりをしろ』と決められる、という事です。
市街化調整区域の場合は『市街化調整区域だけど、もう住宅街化してるから、特別に建物建ててもいいよ』というものが大半です。
また、『これから市街化区域にする予定だから、先行して建物を建ててもいいよ』というパターンもあります。
もちろん、地区計画の定められた市街化調整区域であれば住宅を建てられるかというとそうではなく、
『決定番号:調19 札幌アートヴィレッジ地区』などは、芸術の森近辺の地区計画について定めたものですが、一般住宅を建築出来る訳ではありません。
地区計画の内容によっては一般住宅の建築も可能、ということです。
従来、市街化調整区域の建築に関しては『既存宅地確認制度』というものがありまして、これは昭和45年以前から宅地であった事を自治体が確認した土地については、市街化調整区域内であっても、例外的に建築物を新築することが出来る、というものです。
不動産業者としても役所としても、調査が面倒で、詐欺の温床ともなっていた制度です。
これが平成13年に廃止になったことに伴って、
市街化調整区域に建物が建築可能となる地区計画が定められた、という事情があります。
市街化区域内にも勿論地区計画はあり、建物の形状等に細かな制限が加わっている事があります。
さて、具体的には、札幌にはどのような地区計画があるのでしょうか。
平成29年11月現在、札幌市が決定している地区計画の件数を紹介しましょう。
通常の地区計画 122件
市街化調整区域の地区計画 18件
再開発等促進区を定める地区計画 14件
その他緩和型の地区計画 3件
防災街区整備地区計画 1件
合計150件もの地区計画が現在有効なものとして決定されているのです。
平成26年3月から3年半で通常の地区計画は8件も増えました。
(それ以外の地区計画に増減はありません。)
市街化調整区域の地区計画18件の内訳は下記の通り。
現役の不動産営業マンである私も有名ドコロしか覚えていませんが、地区計画の該当地区については『札幌市 都市計画情報提供サービス』で
調べることができますので、150件すべてを抑えていなくとも、簡単に調べられます。
有名どころとしては前述のアートヴィレッジのほか、厚別区のテクノパークや、
札幌ファクトリー周辺、札幌駅、桑園駅、苗穂駅や創成川の再開発関係の地区計画があります。
それにしても、『わざわざ地区計画で市街化調整区域に建物を建築できるようにするのではなく、その地区を市街化区域にしてしまえばいいんじゃないの?』という考えもあるかと思います。
これには複数の理由があるようですが、大きな理由は以下の2つです。
第一に、地区計画の場合は、非常に狭いエリアでの指定が可能で、かつ、市町村によって弾力的な運用を図る事が可能な分、都市計画よりも小回りが利くということ。
第二に、地区計画については、住民の申し出による計画策定が可能ですから、
札幌市としては積極的に市街化したくなくとも、住民(やそこに地盤を持つ議員)の働きかけによって、市街化調整区域でも建物が建築可能という内容の地区計画が策定できること。
…とはいえ、何もない原野にそういった地区計画を設定する事は出来ません。
地区計画の策定のためには『すでに良好な居住環境が形成されている区域』である必要があり、先ほども解説したように『既存宅地確認制度』の代替措置にという性格から、昭和40年代から引き続き古い住宅群が林立している区域が原則となります。
※ ただし、『穴抜き市街化調整区域』と呼ばれる例外もあります。
また、地区計画で建物が建築可能とされた場合でも、永遠にその地区計画が変わらないという保証はどこにもありません。
(とはいえ、既得権は保護されるものですから、あまり変な事にもならないとは思いますが。)
ですから、不動産流通の現場では、市街化調整区域の土地でも、地区計画で建築が可能なら、そこそこの評価額で査定されますが、市街化区域内の土地ほどの安心感はない、というのが正直なところです。
概ね郊外にある関係もありますが、だいたい相場の2割減・3割減という感覚です。
安価に買い求める事が出来ますから、割り切って購入されるのであればオススメです。
最後に、地区計画でどういった制限があるのか、具体的な内容の調べ方をご紹介しましょう。
前述の通り、地区計画のエリアに該当するかどうかは、『札幌市 都市計画情報提供サービス』で、簡単に検索できると書きましたが、それで分かるのは『どの地区に該当するか』まで。
『地区計画』でどのような内容なのかは、個々に調べる必要があります。
『地区計画』の名前と決定番号が分かったら、『札幌市 地区計画決定状況一覧』から、該当する地区名を探し、『計画書』と『計画図』を参照しましょう。
市街化調整区域の地区計画には『解説書』があるものもあります。
実際に建物を建てようという場合や、土地を買おうという場合には、宅建取引士や建築士の説明を受けるほか、市役所の窓口でも確認しておきましょう。
市役所の担当窓口は市役所本庁舎5階 都市計画課です。
窓口ではインターネットで配布している『計画書』『計画図』『解説書』を配布しています。
別件の不動産調査で市役所に行ったので、市街化調整区域の都市計画資料、全部もらってきちゃいました。
18件分ですが結構なボリュームですね、これ、全150件分は流石にもらえないなぁ…
旧ブログでは各地区計画の区域を実際18か所、現地を実際に回り、紹介してゆきました。
これがなかなかに好評を博し、定期的に追って紹介する地域もありました。
こちらでも記事を移転し、近いうちに公開をしてゆく予定です。
当記事は2014年03月25日および2014年03月27日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。