約1年前のゴールデンウィークに、私は『夕張石炭博物館』に赴き、その記事を書きました。
◇シリーズ『夕張市炭鉱博物館』【前段】
◇2018年4月末にリニューアルした『夕張市石炭博物館』に行ってみた
◇『夕張市石炭博物館』の問題点と改善に関する提言
平成30年4月28日にリニューアルオープンした『夕張市石炭博物館』は、平成31年4月27日、冬季休業を終え、ゴールデンウィークを目前にオープンする予定でした。
しかし、皮肉なことに4月18日の23時40分頃に『博物館から煙が出ている』との通報がありました。
札幌ではすでにほとんど雪がありませんが、夕張は内陸の渓谷のため気温が低く、まだ雪が溶けきっていないようですね。
深夜から消防が出動していたものの、火災は一向に収まらず、周囲に異臭を放ちながら煙を広げます。
翌朝以降、マスコミ各社が報道を開始します。
石炭に引火されている可能性が指摘され、北海道開発局⊃国土交通量や札幌市からも応援が駆けつけます。
夕張川から水を汲み上げて坑道を水没させ、『窒息鎮火』と『冷却鎮火』を目指すとの発表がされました。
関連事項として、今回のリニューアルに7億7000万円の巨費が投じられていたことも報道されます。
原因として前日に補修のための鋼材の溶接作業がされていたことに関係があるかもしれないという報道がされます。
施設は冬季休業中で、27日の今季のオープンに向けた作業が行われていた。石炭の崩落を防ぐため、作業員5人が18日午後3時ごろまでの約1時間、鋼材を溶接するなどし壁を補強。午後4時半ごろに施錠し撤収したという。
(朝日新聞 平成31年4月18日より引用)
3日目の20日、市消防本部などが注水で坑道を冠水させ、坑道内からの煙は収まった。火災は収束に向かっているものの、燃焼が依然として続いている可能性もあることから、消火作業は同日も夜を徹して行われ、鎮火は見通せない状況が続く。
(北海道新聞 平成31年4月21日より引用)
水没によって煙は止まったものの、奥深い石炭層で燃焼が続いている可能性や蓄熱した石炭が再発火する可能性から、『鎮火』を認定出来ない状況が続いでいます。
消防の注水で煙は収まったが、21日正午現在も鎮火は確認できず、修理や営業再開の見通しは立たない。
(毎日新聞 平成31年4月21日より引用)
・・・と、いうように、本館は無事であるものの見どころの一つである模擬坑道が水没している状態です。
市は2007年に財政破綻し、全国唯一の財政再生団体のため、多額の修復費を工面するのが困難と判断。ふるさと納税を使い、返礼品なしで寄付の募集を開始した。「火災で模擬坑道が再び皆様にご利用いただけるまでに多くの時間と資金が必要。夕張市にとって象徴的な場所であり、温かい支援を」と呼びかけている。
(毎日新聞 平成31年4月21日より引用)
ふるさと納税は、ふるさとチョイスの該当ページから行なうことが出来ます。
鎮火が確認された後、水没した模擬坑道は、ポンプで汲み出して水を取り除くのでしょうが、まずはそれを公費で賄えるのか否か、という問題があります。
入り組んだ坑道から安全を確保した上で水を取り除くという作業は、ある程度の援助はあるにせよ消防には出来ないでしょうし、まずはこれが大きな障壁となってくるでしょう。
ふるさと納税がどの程度集まるのか、未知数です。
当初4月27日に予定されていた今年のオープンは未定という形で発表があり、延期になる見込みです。
とりあえず火災さえ鎮火してしまえば、当面の間は模擬坑道を除いた本館部分のみ公開するという方法が採られるとは思いますが、煙は止まったとはいえ、鎮火が確認されるまでの間、万全を期すために開業は見合わされるでしょう。
非常に見応えのあった模擬坑道が見られなくなるというのは残念ではありますが、模擬坑道内には各種の炭鉱設備や機械も設置されており、火災により焼失したこれらを復元するのは並大抵のことではありません。
財政再建団体の夕張市としては、ふるさと納税に期待をするしかない状況と言わざるを得ないでしょう。
市長職務代理者の斎藤幹夫理事は「オープン時期は申しあげられない。鎮火と原因解明が先だ。本館に被害はない。再生に向けて進んでいきたい」と話した。
「素人目で見ても、ここまで燃えていたら復旧は無理だと思う」。19日午前、沼ノ沢地区に住む小川昭雄さん(72)は現場に駆けつけ、高く立ち上る煙を見て嘆いた。「3月でJR(石勝線夕張支線)が廃線になった。この博物館がなくなったら、夕張には何もなくなってしまうのでは」
住民の女性(65)は、多くの死者を出した81年の北炭夕張新鉱事故を思い出す。「模擬坑道は世界的にも希少な遺産。早く鎮火してほしい。市民みんなが心配している」と話した。
(朝日新聞 平成31年4月20日より引用)
夕張支線の廃線もあり、暗い話ばかりではなく何とかなってくれるといいのですが・・・
平成31年4月20日には、先日の選挙で圧勝し、北海道知事に就任する夕張市の前市長、鈴木直道氏がインタビューに応じます。
「きのう続いてた煙だとか臭いも収まっていることみると(消火活動は)計画通り進んでいるのかなと」
(平成31年4月20日 FNNより引用)
夕張といえば鈴木直道氏を連想する方も多いでしょうし、災害対応の迷惑にならない範囲で現地に急行し、『大丈夫だ』と落ち着いた様子で話が出来る、というのは大きいなと思います。
全国区の知名度がある方が北海道の知名度を上げ、注目を集めるということを着実に進めてゆき、少しでも北海道が良くなっていってくれれば・・・と願ってやみません。