不動産投資は『盆栽のようなもの』と考えて下さい

こちらのブログでは大変ご無沙汰しております。
ここ2年ほど他の不動産業者さんのプロモーションの一環として、
札幌市以外の自治体の歴史についての記事をまとめており、
その件については機会があれば、何でヨソの不動産屋さんのプロモーションをしているのか、その辺りの事情を紹介したいと思いますが、今回は別のお話。

昨今はFIREなんて言葉がもてはやされて、世の中の投資熱は高まるばかりです。

既に不動産投資をしている大家さん、地主さんも、
相続対策や資産形成の為に、リーマンショックのような暴落があれば是非購入したい、
『いい物件があれば是非ご紹介下さい』という声掛けは沢山頂きます。
まー、投資用不動産はじわじわ上昇を続けているんで、数年前のような価格では到底購入出来ないんですけどね。

また、新たに不動産投資を始めたいという方も沢山いて、
不動産投資をどのように始めればよいか、というご相談もよく頂きます。
そんな時に私が言うのは『投資不動産は盆栽のようなものと考えて下さい』です。
その意味については後ほど説明します。

実は不動産会社を経営する私は、個人名義の不動産を持った事がありません。
多分、今後もしかしたら自宅を買う事もあるかもしれませんが、
将来においても不動産投資を個人で行なう事はまずないでしょう。

まー、不動産投資は個人名義でなく不動産屋として法人でやってしまいます。
それは以下で説明する不動産投資における特徴によるものとも言えます。

いわゆる『会社役員』という立場になって5年が経過しますが、
当初は雇われ社長で薄給で働いていたのでサラリーマン以下の労働環境で、
3年目から一応それなりの報酬を頂けるようになりましたが、
雇われ社長からオーナー社長になる為の自社株の購入に多額の費用が必要で、
昨年まで預金残高が300万円程度でした、マジで。

世の中、それよりも預金残高が少ない方が沢山いるのも承知していますし、
自由気ままに働いていてそれならまだいいんですが、
従業員の雇用を維持して、誰よりも長時間労働してそれですから、
事業承継対策の出来ていない法人を引き継ぐのは人生ハードモードです。

・・・で、今年になって一段落ついてようやく少しだけ経済的、時間的余裕が出て来ました。
まぁ、個人と法人の両方それぞれに数千万の借金がある訳ですが。
兎も角、少しだけ余裕が出て来たので、株式投資を始めてみました。
お客様から『最近景気はどうですか』と経済ニュースを尋ねられる事もありますし、
不動産投資と並行して株式投資をしている大家さん、地主さんも多いものですから、
一つの勉強として、株式投資を実践してみる必要を感じていたのもあります。

長期投資として流行りの外国株(米国・全世界)投資信託をしているのと、
短期投資でスマホゲーム感覚で上場株式のスイングトレードをしています。
(スイングトレード:短~中期で売買を繰り返し利幅を狙う投資方法。)
2月末に口座を開設してから8月末の6ヶ月間で、
信用取引を一切せずに確定利益と含み益、それぞれ100万円を超えて来たので、
まぁ、株式投資について自分なりにそれなりの知識と経験が得られたという事で、
株式投資と不動産投資をそれなりに比較出来るのかな、と思っています。
まぁ、含み益は所詮含み益で、原則は確定利益がすべてなワケですが、
今の相場が良いとはいえ、月に十万円以上は利益確定出来ているので、
まぁ、素人なりに自分の場所で考えす示す程度はしてもよいのかな、と。

よくあるヤツですが不動産投資と株式投資の特徴を単純化した比較表を作ってみました。

ここで言う『上場株式投資』は、上場株式の配当と売買の収益を目的としたものです。
不動産投資にせよ、株式投資にせよ、リスクや利回りは商品次第なので今回は比較に加えませんでした。

それでは、各項目の比較について記してゆきましょう。

①流動性
上場株式は市場があり、いつでも売ったり買ったり出来る流動性の高さがウリです。
流動性の低い上場株式もありますが、価格を問わなければ成約しない事は非常に稀です。
一方の不動産には市場はあるものの、買手とマッチングするまで時間はかかりますし、
売主と買主と買主がマッチングした後も条件の擦り合わせが必須となり、
また、融資を受けて購入するには金融機関の審査に時間を要します。

不動産は売るときにも買うときにも時間がかかる=流動性が低いのは一つの問題点です。

②維持費
手数料が割高な投資信託などを除いて、通常の上場株式であれば、
ネット証券では口座維持手数料などもかかりませんから維持費はありません。
一方の不動産投資では固定資産税、火災保険料、維持修繕費、管理会社への管理料など、維持費はまずかかるものと考えておいて間違いないでしょう。
固定資産税のかからない土地もあるにはありますが、投資の対象となることはまずありません。

③売買費用
上場株式を売買しようとすると手数料がかかりますが、ネット証券ではある枠内であれば無料という事もあります。
手数料競争により大手ネット証券の売買手数料は0.1%以下の水準になっています。
不動産売買において、仮に仲介業者を挟まなかったとしても最低でも名義変更の為に登録免許税はどうしてもかかります。

通常は仲介業者に依頼しますし、購入時には司法書士費用、不動産取得税などがかかります。
売却時には仲介手数料、場合によって測量費や司法書士費用がかかります。
不動産業者の私が言うのもナンですが、3%程度の仲介手数料は株式と比べれば高額であると言えるでしょう。
ただ、不動産取引の調査・折衝・書類作成には細心の注意が必要であり、その為にプロを雇う為の手数料としては妥当と考えています。
ただし、知識も技術もなく取引に介在して手数料を取っていく仲介業者に払う手数料は無駄でしかありませんが。

④価格決定
『ぜんぜんわからない。俺たちは雰囲気で株をやっている』というネットミームがあり、
株価は理詰めで考えられるものではなく、理不尽に乱高下する事もありますが、
何だかんだ、上場株式は『市場参加者全体で決められた価格』で動いています。

しかし、不動産取引では、売主と買主のただ2者が合意した価格が取引価格となります。
(上場株式取引でも、ごくミクロ的に見ればそれは当てはまるのですが・・・)

公示価格や固定資産評価額といった公的価格はあくまでも目安であって、
売主や買主の個別の事情や交渉によって例え同じ不動産でも価格は変動します。
不動産の価格決定は極めて主観的、個別的、定性的に行われていると言えるでしょう。

⑤価格変動
不動産は上場株式と比較して、価格の変動がゆるやかで、変動幅も小さいと言えます。
リーマンショックやバブル崩壊などの経済的クラッシュがあった場合でも、
価格変動幅は株式よりも小さく、その影響の出方も遅い傾向があります。
一方で、好況期でもじりじりと上昇するので株式のようにドカンと上がる事はあまりありません。

⑥取引単価
最低取得価格が高額な株式を値嵩株といって、任天堂やファーストリテイリング(ユニクロ)が有名ですが、
それでもせいぜい500~900万円台で1000万円を超えることはあまりありません。
(まー、米国株などでは最低取得単価がもっと高額なものもありますが。)

1000万円で購入できる投資用不動産はごく限られていますので、
不動産投資は一つの取引単位が大きい投資であると言えるでしょう。

よって、不動産では分散投資も難しいという事になります。

⑦所得税
不動産投資で得られる賃料は、『総合課税』といって累進課税の対象となります。
その年の所得に応じて非課税から最大45%の税率で課税される方式です。

これに対し『分離課税』ではその年の所得に関係なく、固定された税率で課税されます。
株式の場合には配当を受け取った場合でも売却益が出た場合でも、所得税は15%(復興所得税がプラス0.315%)で済みます。
不動産の賃料ではなく、売却益の場合には、『分離課税』で15%(復興所得税も同様)ですが、
前述の通り不動産の売買には多額のコストがかかるので頻繁に売買する事は出来ません。
また、商売として頻繁に売買をするには宅建業免許が必要になります。

株式の収入について『分離課税』ではなく『総合課税』を選択する事も出来ますが、
これは所得税率が概ね15%相当より低い方には有利になります。

原則的に、不動産所得は『総合課税』、株式に関する所得は『分離課税』と覚えてよいでしょう。
借金返済の為にある程度の役員報酬を受け取らなければならない私の立場では、
総合課税では税率面で非常に厳しいものになってしまう為、私には不動産投資は出来ません。

一部では株式に関する所得の増税も叫ばれていますから、これもいつどうなるか分かりませんが・・・

⑧住民税
住民税は固定税率ですが不動産所得は10%、株式に関する所得は5%になっています。
これも色々と計算方法の問題などがありますが、倍違うというと、かなりの違いですよね。

⑨インカムゲイン
不動産を賃貸して賃料を得る場合、ほとんどの場合は毎月払です。
一方で株式の場合のインカムゲインは年に1度か2度の配当月に発生します。
配当月は3月と9月に集中していますが、無配当の株もあります。

まぁ、デイトレードやスイングトレードをしていれば、配当月以外でも利益(キャピタルゲイン)をコンスタントに生むことは可能ですが、それは不確実な利益であって、損失を生じさせる可能性もあります。

また、毎月分配金が出る投資信託は大抵、手数料が高額なので要注意です。
不動産投資の利点として毎月定収入があるというのはありがたいですよね。
(まぁ、不動産投資には維持費がかかると言って投信手数料を否定するのも矛盾しているかもしれませんが)

⑩経費算入
株式はほぼタダで保有できるのに不動産には保有にも売買にもお金がかかる、という指摘を先にしましたが、
そういった費用は税金計算上、経費として差し引く事が出来ます。

固定資産税等の税金、業者に支払うお金、火災保険料、修繕費など、
建物の維持管理に要する費用もそうですが、
税理士の顧問料、弁護士への相談料、不動産に関する打合せ費用、
情報収集の為のセミナー参加費やら書籍代なども経費になり得るでしょう。
ただ、プライベートに関する支出とされてしまう事もあり、
厳密にやって行こうとすると不動産所得の経費ってそう多くないんですよね。

まー、セミナーとかオンラインサロンとかで、人間関係を作るのが好きな人もいますが、それが楽しければそれにお金を使うというのもアリなのかもしれません。
色々ある『大家会』とかはそういったニーズを拾った商売であると言えます。

『大家会』などのトンチキな集団にお金を払うのは惜しい、という方でも、
例えばどこかの飲食店に不動産のプロを読んでレク(レクチャー)を受けたい、という事であれば、
私もよくお呼ばれして資料を準備の上、食事兼レクをする事はあります。

⑪レバレッジ
『不動産投資は融資を受けやすい』とよく言われています。
不動産には銀行の担保評価がありますから、不動産を担保にする事で借入が可能です。

スルガ銀行の不正融資の問題もあり、最近は新たに不動産投資を始めようとしても融資はまず受けられません。
北海道では、ずさんな不動産融資で北海道拓殖銀行が破綻したという過去も影響しています。

そういった意味で、株式はどうかと考えると、信用取引がまさにレバレッジであり、
空売りは証券会社から株を借りて貸株料を、信用買いは金利を支払う訳で、概ね一桁%の費用がかかります。
信用取引では保証金さえあれば、不動産融資のような面倒な審査はありません。
そういった意味では、上場株式の方がレバレッジを掛けやすいと言えるでしょう。

ただ、そのレバレッジの掛けやすさと株式の価格変動リスク故に、
想定外の価格変動が生じた場合には、保証金が不足して『強制決済』されてしまうのが、信用取引の一番恐ろしいところですね。
信用取引は所詮借金という事です。

不動産融資の場合にも、月々の返済が出来なければ不動産が競売に掛けられる事はあるかもしれませんが、仮に不動産が半値になったとしても、返済さえ出来ていれば競売に係ることはまず考えられません。
(同様に株が半値になっても保証金を増額し続ければ強制決済はされない、と言えなくもないかもしれませんが。)

私の場合、個人・法人それぞれに数千万円ずつ借入金がありますが、
事業運営の為の借入金で、不動産を購入する為の借入金はありません。
株式投資においても、信用取引は将来的にもする予定はありません。

お金は払うより貰う方が好きですから。
 
【不動産投資にしかないメリット】
こうして項目を並べて比較してみると、不動産投資なんてやりたくなくなりますね。
まー、私は正直、昨今の不動産価格の上昇による利回りの低下や出回っている物件の品質低下により、
シロート投資家さんは現在の相場で不動産投資なんてしない方がいいと思っています。
そうでなくとも、10年位前の相場でも、かなり勉強していないと厳しいと思います。
リーマンショック直後位の相場で、なんとかシロートさんでもやっていけるのかな、と。

ただ、不動産投資特有のメリットというのも2つだけあって、これについて着目してゆきましょう。

①相続税はダンゼン安い
株式を始めとした有価証券と不動産を比較した場合、不動産の相続税はダンゼン安いんです。
前項①流動性の通り、上場有価証券は流動性が高い分、現金化が容易という事で、現金とほぼ同様の時価課税がされます。
一方で、不動産はどんなに価値があってもすぐに現金化が出来ない事もありますし、
政策的に国民の不動産の購入を促進してゆくという考え方もあり、
不動産の相続税評価額は流通価格の概ね20~60%程度となります。
まー、前項②③④のような価格体系で、維持費もかかりますから、
そこのバランス感覚なのですが、兎に角、相続税は安いのです。

ですから、高齢の資産家の方は株式よりも不動産で運用した方が有利に働きます。
税理士さんなどが『相続対策』として不動産の購入や建物の新築を薦める事もあります。
そうして、投資用不動産市況が支えられている側面もありますね。

また、平成29年にはタワマン税制改正があったように、タワマン節税という手法もありました。
これは、タワマンの相続評価額が流通価格よりも非常に安くなる評価方法である為、
上記の20%すら下回って時価1憶のタワマンが1千万で評価されて節税される、というような現象から改正されたものです。

②個別性によって介在・調整出来る事項が圧倒的に多い
前項②維持費、④価格決定、⑩経費算入など、不動産投資には何かと不確実性が伴います。
不動産はどんなに条件が近くとも、同じものは一つとしてありません。
上場株式は市場の状況に合わせた価格と手数料で売買するほかありません。
一方で不動産は、売買価格も維持費も自分で決めることが可能です。

管理は管理会社に委託しようが、自主管理をしようが、自由です。
古い建物をボロボロのまま使おうが、フルリノベーションしようが、自由です。
借主の需要は大きく異なりますが安く貸すのも高く貸すのも、自由です。
経費をどの程度使うか、セミナーに行こうが本を買おうが、自由です。

売主さんに嫌われるようなムチャな価格交渉をしてみるのも、自由です。

不動産投資は、とにかく自由なのです。
その自由が誰にとっても良い結果をもたらすとは限りませんが、
少なくとも私は不動産投資の自由さによって、それなりの収益を上げさせて頂いています。

【不動産投資は盆栽のようなもの】
相続税を考えなければ、『不動産投資のメリットとはその個別性・主観性以外にない』と言って過言ではありません。

まったく同じ不動産でも、その背景で取引価格は半値にも倍にもなります。
まったく同じ不動産でも、賃料はその時の巡り合わせで大きく変わります。
まったく同じ不動産でも、管理も修繕も募集も自分でやれば、維持費は抑えられます。
(まー、私の立場ではよっぽど暇でなければ自主管理はお薦めしませんが。)

株式投資などをされている方から『良い不動産とは?』と聞かれる事があります。
私は、不動産投資に必勝法はないと考えています。

じゃー、株式投資に必勝法はあるのかよ、という話ですが、
必勝法に限りなく近い理論は存在すると考えています。
だからこそ、(実践できるかは置いておいて)FIREとか持て囃されている訳で。

盆栽って、何百万も何億もする事がありますが、私には価値は分かりません。
それでも盆栽の売買でとんでもなく利益が生まれる事がありますし、
盆栽を貸し出すことで多額の賃料収入が発生することもあるようです。

枝木を切ったり、肥料を与えたり、鉢を変えたり、色々な努力があるでしょう。
借り手や買い手と交渉することで、賃料や売価は色々と工夫出来るでしょう。

盆栽と不動産投資は『努力』と『工夫』がすべてなんです。

『努力』と『工夫』なんて、定量的な理論を求める人にとっては、
バカバカしい感情論・理想論にしか聞こえないでしょう。
好きだと感じた不動産は買えば良いし、嫌いな不動産は買わなければ良い。

そんなもんなんです。
確実性も客観性もないという不動産特有の事情を好ましく感じるか否か、という事です。
それを好ましく感じられない方は、上場株式か外国投信でも買って下さい。

それで不動産投資以上に稼げると思いますし、不動産投資でも株式投資でも稼げないなら、それはただの無能であって、投資に向いていません。
大人しく、今流行っているドルコスト平均法での積立投資をしておいた方が良いでしょう。

もっと極論すれば、どんな投資も『安く買って、高く売る』以外の原理はありません。
どのように(維持費も含め)安く仕入れて、(経費も含め)高額で売却するか、
そこに努力と工夫をどれほど出来るのかという事なんですわ。

そういう意味で、現在のような高額で不動産投資を始めることは薦めません。
よっぽど好きで、どうしても買いたい物件があれば『盆栽』と同じでそれは止めません。
どれだけ知識を付けて、努力して、工夫をしていけるか、不動産投資はそれだけです。

不動産投資は盆栽みたいなモンだと捉えて、時に気楽に、時に深刻に向き合って下さい。

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