プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻③

さて、前回、前々回、に続き『重要事項に係る調査報告書』の誤記載に騙されてしまったお話。
  ◇中古マンション売買における『重要事項に係る調査報告書』とその実務上の問題点
 ◇プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻①
 ◇プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻②

事例の二つ目は、『建物の不具合』についての問題。

 
売却を受託したマンションの一室を内覧させて頂いた際に、
室内を注意深く観察していると『ある不具合』があるのでは?と感じたので、
売主様に『こんな不具合ありませんでしたか?』と確認すると、
『よく分からない』『特に気付かなかった』という回答。
…判定が難しい不具合のため、住んでいるだけでは分からない事も多いのです。
 
私自身も、確たる証拠がある訳ではないので、まずは不具合の可能性を認識して、
その日の段階ではまだ荷物も搬出出来ていなかったので、そこまでとしました。
 
後日、管理会社に『重要事項に係る調査報告書』を請求するにあたって、
私は、『事件事故の履歴』『近隣トラブル』『暴力団の入居』などと併せて、
その部屋を含め、同一のマンションの共用部や他の部屋で過去に『ある不具合』の記録がないかと確認しました。
 
すると、先方から返って来た『重要事項に係る調査報告書』への記載は、こんな塩梅。
その部屋の不具合については所有者(売主)から報告を受けていないため、不明です』
うーん、怪しい。
と、言うのは私が確認したのはその部屋の事だけではなく、
マンションの共用部や他の部屋についても確認しているのに、
その点についての言及が一切ない、というのは他の箇所に不具合があるのでは?と考えたのです。
 
他にも不明点や不備箇所があったため先方の管理業務主任者に、
『その部屋の事は分かりました。他の部屋では不具合はないんですね?と確認すると、
向こうは『管理会社として、他のお部屋でそういう事があったとは聞いていません』との事。
とっても胡散臭いのですが、相手がそう言い張っていて、証拠がない以上、どうしようもありません。
 
そして後日、売主様が荷物を搬出した後、鍵を預かって数日かけてじっくり確認してみると…
やはり『ある不具合』が発生していることが判明しました。
 
その不具合の解消のために色々と管理会社へ働きかけたり、
今後の対応について検討するために様々な調査を重ねてゆくうち、
他の部屋にも『ある不具合』についての苦情が出ている事が判明しました。
しかも、その苦情について、先方の管理業務主任者が対応していたとの事。
 
つまり、『他のお部屋でそういう事があったとは聞いていません』というのは真っ赤なウソだったのです。
 
こちらは私も薄々感じていたので、『騙された』という訳ではないかもしれませんが、非常に悪質な不具合隠しの虚偽記載ではあると言えます。
 
今回のケースの場合、原因は以下の3点。
 ①管理会社へ口頭での確認もしつこく行ったが、管理会社が虚偽を答えた。
 ②売主も『ある不具合』を認識していなかった。
 ③『ある不具合』は即座・明瞭に判明する種類の不具合ではなかった。
 
ここまで来ると、もう現地を検査する以外に見破る術はありません。
 
このマンションとこの管理会社についてはこの問題以外にも、
色々と手を焼かされて大変苦労しましたが、無事に成約して数年が経ちますがトラブルにもなっていません。
後日、管理会社にはオトシマエを取って貰うべく、行政官庁に報告をしてお灸を据えてもらいました。
ただ、故意ではない事という主張が認められてしまい、また、我々不動産仲介業者は当事者ではないという理由から行政処分には至りませんでした。
このように、マンションの管理業というものは行政的な縛りが非常に緩く、大手業者もいい加減な事をやって開き直っている、非常に危険な業界です。

元記事を書いた2015年3月の翌月4月には、大手管理会社『北海道ベニ-エステート』の社員による1.8億円もの着服が発覚しましたが、これは氷山の一角にすぎません。
(ちなみに同社は2年後の2017年4月に『三菱地所コミュニティ株式会社』に合併されています。)

実質的な法規制がない『重要事項に係る調査報告書』については、かなりいい加減な処理がされており、仮に誤りがあったとしても管理会社は開き直り、責任を負わない事が大半です。

消費者としては、これを回避することは、非常に困難です。
宅地建物取引士はこのような実情を強く認識した上で、消費者保護のために、
きちんとした裏付け調査を行ってゆく必要がありますが、
今回取り上げた事例のように宅建士が努力をしてもどうにもならない部分が多すぎますから、まず第一に、国による法規制が最も重要であると考えます。

当記事は2015年3月30日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。