プロを気取った小僧、マンション管理会社にまんまと騙されるの巻②


さて、前回に続き『重要事項に係る調査報告書』の誤記載に騙されてしまったお話。

まず一例目は、購入したマンションの修繕積立金が、購入後数ヶ月と経たずに値上げされてしまった、というケース。

しかも、その値上げの案内には『平成○○年の理事会で決議の通り値上げします』と、購入前から値上げが確定していたことが記載されています。
 
買主様は以前から値上げが決まっていたのにそれを知らずに買ってしまった訳で、これが調査不足によるものであれば、宅建業法に定める重要事項調査義務に違反します。
 
それでは、経緯を追ってゆきましょう。
 
このマンションは宅建業者が以前の居住者から買い取り、転売していたものです。
 
修繕積立金は、だいたい5年刻みで上昇してゆくため、
 お客様と一緒に内覧をした際、売主業者に『修繕積立金の値上げ予定はありますか?』と確認しました。
 売主業者の社員は『私は担当者ではないのでわからないが、手元の資料には値上げの予定は書かれていない』との回答。
 
買主様が物件を気に入ったので、買付申込書を売主業者へ送付しました。
 
売主業者の担当者と話し、値上げの予定がない旨の記載がある重要事項説明書を送ってもらいました。
 また、売主業者が管理会社から取得していた重要事項に係る調査報告書』も併せて受け取りました。
 
管理会社に電話し、『重要事項に係る調査報告書』を作成した管理業務主任者に、
 『修繕積立金や管理費の値上げ予定はありませんか?』と確認したところ、
 先方からは『将来どうなるかは分かりませんが、現在確定している値上げ予定はありませんと回答。
 
⑥取引条件の折衝、重要事項説明書のチェックが済んだので、契約を結ぶ事としました。
 後日、無事売買代金の全額を支払い、マンションは買主様の名義へ変更されました。
 
⑦購入後しばらくして、買主さんの元へ冒頭の修繕積立金の値上げ案内が届きました。
 
 
さて、どうしたものでしょう。
私としては、まずは買主様から値上げの案内を頂いた上で、事実関係を確認する事にします。
売主業者にも調査義務と告知義務がありますが、売主業者は管理会社へ問合せをした結果、重要事項説明書に『値上げの予定はありません』と記載したはずです。
私も管理会社の管理業務主任者からそのように聞いていましたから、まずは管理会社へ連絡をすることにしました。
 
『マンションについて売買前(⑤)に問い合わせた者ですが、
  値上げの予定について確認させて頂いたのを覚えていらっしゃいますか?』
 先方は、覚えているとの事。向こうの声の調子は変わりません。
 『将来はどうなるか分からないが、あの時点で確定した値上げ予定はないとお聞きしましたが、間違いありませんか?』
 間違いないという。向こうの声の調子は変わりません。
 『買主様のところに値上げをするという案内が来ているのですが。しかも平成○○年の段階で決議されている事だとか』
 少しの沈黙の後、管理業務主任者はこのようにまくしたてます。
 『あっ!…あーあー、はい。うちが管理を受託する前に決まっていた値上げですね。
  受託する時に聞いてなくて、今回急に理事会から値上げするという連絡を受けて驚いているんですよ。
  うちが管理を受託する前の事ですし、うちは知らなかったことなので、非はありませんよ。』
 …それならそうと、なんで最初の段階でしらばっくれたんでしょ。
 
 
・・・こういうケース、非常に困ります。
売主業者も『値上げの予定はない』と重説に書いてきているし、
管理会社も『値上げの予定はない』と言ってきている以上、
私としてその情報の裏付けを取るためには、
住民を捕まえて『値上げの予定がありますか?』と聞くしかない訳ですが、
あいにくそのマンションはオートロック式で、それをするには玄関で待っているしかありません。
当然それはかなり迷惑な行為ですし、下手をすれば買主様に迷惑をお掛けする事になりかねません。
 
マンションの管理組合が管理会社に窓口を任せている以上、理事長などに直接コンタクトを取るのも、本来禁じ手なのです。
 
今回のトラブルの原因は大きく以下の3点。
 ①管理会社が管理を受託する際、それまでに決まっていたことをきちんと確認していなかった。
  また、値上げの予定やスケジュールについては、担当者として常に確認・協議しておくべき内容。
 ②売主がずっとそこに住んでいた人ではなく、不動産業者の転売だった。
 ③オートロック式のマンションで、他の住民と直接コミュニケーションを取る事が困難だった。
 
せめて売主がずっとそこに住んでいた方であれば、売主から値上げの情報が入って来たかもしれません。
とはいえ、売主業者に対して『管理会社だけでなく元々の所有者に対し調査をするべきだろう』と言うのも、ちょっと酷な話です。
 
今回のケースでは管理組合にも多少の非があるのかもしれませんが
基本的に問題の大部分は管理会社のいい加減な情報管理によるものです

しかもこれ、札幌では最大手クラスの管理会社のミスですからね。

管理会社として、修繕積立金の計画については受託時に確認する義務がありますし、直近数ヶ月において値上げの予定があるものをミスしていたというのは、もう話になりません。
 
当方として責任を追及しましたが、『重要事項調査報告書の作成は管理組合からの管理委託契約に含まれていない内容だから、誤った記載をしても責任は負わない』などと開き直られてしまいました。

 ⑧の段階で非を認めて平謝りするならともかく、『ウチには責任はない』などと開き直るのが、大手管理会社のやる事なのです。

この件については、監督官庁である国土交通省も含めて徹底的に責任を追及したかったのですが、買主様とご相談の結果、事情が許さずに最終的には泣き寝入りとなってしまいました。

当方からは買主様にわずかばかりのお詫びを致しましたが、十分な対応であったとは言えず、未だに後悔しています。

 

当記事は2015年3月29日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。