実は私道の管理者を知る、というのはとても難しい事です。
宅建業者などに管理を依頼している土地であれば、看板や柵などが設置してあってそもそも『私道』となりません。
よって、私道の管理者≒私道の所有者と言えなくもないのですが、
私有地の管理責任については、原則的に所有者にあるものの、一口には言えない部分があります。
土地上の工作物・樹木の管理責任は土地の所有者・占有者にあります(民法第717条)が、一方で、樹木の枝を切るなどしてその工作物・樹木の所有権を侵す事は法律上許されていません。(民法第233条)
一方で、豪雪地帯の札幌では、遠方にいる地主さんの預かり知らぬところで、近所の方が除雪を行っている、ということもよくありますよね。
だからといって除雪をしている近所の方が管理責任を負うという事にも当然なりません。
◆『私道』の所有者を調べる
仕方がないので、法務局に行って登記簿でも見るしかありません。
(具体的な手続き方法と窓口の場所は『A-3 道の所有者を知りたいとき』を確認して下さい。)『私有地』が一見『道』のように見えるという事は、他の用途がない土地と思われますから所有者の方としても、その土地に関心を失っている可能性が濃厚です。
私道でも固定資産税が課される場合、課されない場合があり、無税の場合には土地を所有している認識がない事さえあります。
一般の宅地と比較して、私道では大昔にされた登記がそのままになっていることが大変多く、登記上の所有者が既に亡くなっていたり、高齢だったり、遠隔地にいたり…特定出来ない事も多くあります。
もしも所在不明で、連絡を取る必要がある場合には、とりあえず登記簿の住所宛名にお手紙を出しましょう。
運が良ければ連絡が取れますが宛先不明で戻って来てしまった時には、ほぼ手詰まりです。
費用と時間をかけて専門家に依頼するほどの問題なのか、再考する必要があります。
一つのヒントとしては、直近で土地の所有権がいつ動いたのか?というものがあります。
全部事項証明書には、通常、『売買』や『相続』、『贈与』という風に所有権を取得した理由が記載されていますが、それがいつなのかを参照しましょう。
特に道路の場合には、明治・大正の頃から所有権が動いていない事がままあります。
(私が見た一番古い記録では、明治40年から110年も動いていない私道があります。)
平成になってから所有権が変動しているものであれば望みはありますが、昭和の頃のものでも、最低でも約30年以上前ということですから、調査はかなり難しくなります。
専門家に依頼した場合には所有者の『戸籍』をさかのぼって、その近親者等を調査していきます。
近親者(相続人)も遠方に転居していたり、戸籍の取得だけならまだしも、実際に連絡が付くようにするには、それなりの費用を覚悟しなければなりません。
相続登記がされていない土地は、その相続人全員に権利がある場合が大半ですから、子の代、孫の代、ひ孫の代と代替わりを経るうちに、ネズミ算式に数十人~百数十人の権利者が発生してくる事があります。
こうなってくると、下調べ段階や調査途中で『調査に膨大な費用と時間がかかるので、やめませんか?』というような話も出てきます。
また、専門家も『これ以上は調べきれません』と調査を断念する場合もあるでしょう。
具体的に他人の戸籍を取得出来るのは、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、行政書士とされています。
ただ、戸籍を取得できる、と言っても、業務上正当な事由がある場合に限られますから、依頼先は弁護士か土地家屋調査士になります。
懇意にしている宅建業者がいる場合には、よい先生を紹介してもらえるかもしれません。
繰り返しになりますが、専門家に依頼したとしても必ず所有者が見つかるとは限りませんので、ご注意下さい。
また、所有者が見つかったからといって、その後の交渉がうまく行くとは限りませんので、ご留意ください。
◆位置指定道路の管理責任
『位置指定道路』は性質上、誰でも通れる必要があり、維持管理についても所有者に義務があるのですが、車止めや造作によって通行が出来なくなっている場合も、稀に見られます。
長年貸していた土地に隣接する位置指定道路の上に塀が建てられていた、なんていう事例もあります。
市役所の建築確認課の窓口に指導をお願いするのもよいのですが、所有者が近くにいない場合など、位置指定道路に関する問題を解決するのは、ちょっと難しいようです。
というか、行政も位置指定道路については及び腰で、法律上通行確保の義務を課しているにも関わらず、通行出来ないような扱いにしている箇所について指導を求めても、応じてもらえないということが多々ありました。
まー、彼らは問題解決したところで給料が増えるでもありませんから、出来るだけ仕事をしないのが賢い処世術というものなのでしょう。
何でもかんでも民事不介入と言って断る警官と同じですね。
◆総括
札幌市も国も、私道や土地の所有者を完全に把握している訳ではありません。
実際のところ、どの窓口に行っても、簡単に教えてはもらえないでしょう。
宅建業者が当事者となる場合には、戸籍の調査を専門家に依頼するほか、過去の履歴や道路内配管の敷設状況、周囲への聞き込みなどで糸口を見つけてゆきますが、商売上、費用対効果を考慮した上で、調査を断念することもあります。
道の所有者が分からなくても、現に道として利用されている場合に、売買のための手段やテクニックはありますから、所有者が分からないなりに業務を遂行していく方向にシフトする、という訳です。
当記事は2013年09月02日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。