C-9 市道への意外な伏兵!『門前土地使用承諾書』


アントニオ猪木が『この道を行けばどうなるものか』と引用したように、『道』というのは本来的にどこかに行けてナンボのものなのです。

進んだ先が行き止まりになる道は、不動産の世界でも、少し格が落ちる訳です。

行き止まりになる道路を、法律上・税務上は『通り抜け出来ない道路』などと言います。
不動産業では俗に『ドン突き』と言ったりするようです。
元々は古い関西弁で突き当たりの事を『ドン突き』と言う事から、
関西資本の業者が使い始めた言葉でしょうか。

さて、『通り抜け出来ない道路』については、
それに面する土地についても、若干評価が落ちるというのが定説です。
(勿論、奥まった土地で静かなのが良い、というニーズも一定数ありますが。)

位置指定道路の場合には、『通り抜け出来ない』状況にする為には、
 ①幅が4~6mの場合、道の総延長が35mを超える場合には『自動車転回広場』の設置が義務付けられています。
 ②幅が6m以上の場合には、総延長がどこまで長くとも、『自動車転回広場』の設置は不要です。

さて、そうして指定された位置指定道路ですが、これを札幌市に寄付して市道としたい場合に、一つ、意外な伏兵が登場します。
それが『門前土地使用承諾書』です。

具体的に言うと、①の例の4~6mの幅で『自動車転回広場』がない場合には、
『道』の所有者が札幌市に寄付する意向があったとしても、
周辺の土地所有者から『門前土地使用承諾書』に署名押印をもらう必要があります。
これ、C-5 位置指定道路を市道にしてほしいときで紹介したパンフレット、
市道認定のガイドブック 私道から市道へ』では、よく読まないと分かりません。

特に重要な部分を引用してみましょう。
行止り道路の場合、用地幅員は6m以上確保されることが条件です。(中略)関係者(道路に隣接する土地の所有者及びその使用者のこと。)全員から門前空間地(土地のうち道路用地に面している玄関前空間や前庭などの一部のこと。)使用承諾が得られている場合は、最低用地幅員が4mまで緩和されます。

この承諾書、具体的にはこんな内容の承諾になります。

『この道は狭い道だから、自動車が迷い込んだ場合に、切り返しするために、
 自分の所有する土地の一部(門前土地)を通過することを予め了承するよ。

・・・う~ん、位置指定道路になっている時点で既にそのような自動車の侵入は多々あるでしょうから、市道にするにあたってわざわざそのような承諾書が必要になるというのは、市の事なかれ主義というか、お役所の自己防衛本能の強さというか・・・

札幌市が申請を受けた位置指定道路については、
あくまで私有地なのでそこまでは関知しないけれど、
公有地になったら市の責任になるので事前にハッキリさせておけ
、と。
そのあたりをハッキリさせるにあたっての承諾書の取得も、
『道』の所有者が責任を持って行え、という事のようです。

とはいえ、分譲当時と現在では土地の所有者も移り変わっている可能性もありますから、改めてそういった書面を取り付けておく方が、トラブルを回避できるのは間違いないでしょう。

この『門前土地使用承諾書』すべて揃わないと、原則寄付は受け入れられません。

道路に面する土地の所有者も、『位置指定道路に面する土地』から『公道に面する土地』に変わる訳で、不動産の処分価値としては、グンと上がる訳ですが、世の中には数字上の価値がどうだというより、兎に角、そういったことに協力をしたくない人というのも一定数いるもので、位置指定道路に面する土地の所有者のなかに、そういう人がいれば、計画は頓挫してしまいます。

それに、土地の所有者が皆さんそこに住んでいればよいのですが、
別の人に賃貸していたり、相続によって名義人の所在が不明となっていたりすれば、かなりの手間がかかる事が予想されます。
(要件では、『所有者』と『使用者』の承諾が必要とされています。)

札幌市の側としても、条件の良い位置指定道路については市道に組み込みたいようですが、あまり条件の芳しくない『ドン付き』のようなものについては、さほど積極的協力は望めません。

『門前土地使用承諾書』位置指定道路を市道にする大きな障壁のうちの一つと言えるでしょう。

当記事は2014年03月18日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-8 『位置指定道路』と『隅切』の奇妙なお話


『隅切』という言葉をご存じでしょうか?
こんなんです。

道路と道路の接続部をナナメに切っているものです。
これがある事で、見晴しがよくなり、車両の通行の安全性が高まります。
公道と公道の交差点には多くの場合、隅切がありますが、
広い道路と狭い道路の交差点などでは、一部隅切がない場合もあります。

位置指定道路』の場合でも公共の通行に利用される前提がありますから、
道路の指定を受ける為には、2mの隅切を設ける必要があります。
制度の初期に申請された位置指定道路には、隅切がないものもあります。
その場合であっても、市道として寄附をするためには、新たに隅切を設ける必要があります。

位置指定道路だからといって、寄附をすればそのまま市道になる訳ではない。
…というのは注意が必要な部分ですね。
現に『道』になっている部分と新たに『隅切』になる部分の所有者が違う場合には、
容易に『隅切』の部分の土地を寄付してもらうことは難しいかもしれません。

さて、それでは私が経験した、案件のうち『隅切』に関する奇妙な事例をご紹介しましょう。
地主のAさんが所有する土地は、市道①と私道②に挟まれた角地にあり、隅切はありません。

さて、Aさんはこの土地を分譲するにあたって、道路の位置指定を受けたい。
赤い部分がAさんが位置指定道路にしたい部分です。
前半でお話した通り、位置指定道路の指定を受ける為には、隅切が必要です。
…と、いう訳で、
…と、こんな風になると思うでしょう?
しかし、位置指定を受けるにあたって、札幌市からはこのような条件が出されたようです。
市道①と市道②の間の隅切がない部分に新しい隅切を指定するように求められたのです。
結果、赤い部分が一体の位置指定道路として指定されたのです。
位置指定を受けた部分については『道』ですから建物を建てられません。
更に、この飛び地の部分、登記上は緑色の土地と同一の土地という事になっているのです。

例えば将来、緑色の土地を売買しようとする場合に、角の隅切部分が位置指定道路になっていることが分かっていなければ、
建物を建てられない『道』の部分について、差額分の損害賠償請求を受ける可能性があります。

このように、由来の古い不動産ほど、訳のわからない取扱いがされている事があります。

古い物件に限らず、不動産を処分する際は、綿密に調査をし、慎重に書面を作成できる専門家に依頼する事が、最良のリスクヘッジと言えるかと思います。

当記事は2013年12月16日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-7 位置指定道路と『札幌市建築基準法施行条例に基づく接道義務』


建築基準法に従って合法に建物を建築するためには、
建築基準法上の道路に2mに接している必要があります。
これを俗に『接道義務』といい、土地の価値の重要なファクターの一つです。

前回:C-6 位置指定道路と『筆界』『分筆』『地型』で扱った道路で、
実際に、建物を建てようとした場合、どんな問題があるのか考えてみましょう。

土地Aに建物を建てるためには?
こういった接道形態を『路地状地』といったりします。
路地状地では例え道路との接面が2m以上でも、
路地部分の長さによって建築出来る建物の大きさが制限されます。

逆に考えると、道路との接面が2m未満なら建築不可能
接面が6m以上であれば、路地状敷地でも通常と同規模の建物が建築可能という事です。
接道状況がナナメになっていたり、間で細くくびれている場合、長さは狭い部分で認識します。

とはいえ、路地部分は通路用のスペースになってしまう訳ですから、
除雪も自己負担、建物までの配管埋設費用も自己負担、税金関係も自己負担です。
余分な費用がかかってしまうので、路地状地の市場価格は、
一般的な『整形地』より、何割か安く設定されている事が殆どです。(明確な決まりはありません)

土地Eに建物を建てるためには?
この例では、道路との接面が2m以上か未満かが重要です。

接面が2m以上であれば、若干特殊な接道形態でも、通常と同様に取り扱われます。
(接道義務以外の項目での制限も通常通りありますから、何でもOKという訳ではありません。)

土地Dに建物を建てるためには?
さて、問題となってくるのは土地Dへの建築です。
土地Dは、1つの土地の一部分が位置指定道路の範囲に認定されています。
公道の場合でも、位置指定道路の場合でもこのようなケースが多々あります。

道路となっている部分は、建物の建築が出来ないほか、
道路以外の部分に建物を建築する場合の建物規模の計算の根拠になる面積には加えられません。
いわゆる『建蔽率』・『容積率』がメジャーな言葉ですが、
ざっくり言うと建築できる建物の面積は、敷地の面積を基に計算されるのですが、
道になっている部分は、私有地であっても、建物の敷地として扱われないのです。

私有地ですから、道になっている部分の維持管理は原則自己負担となりますし、
使い道がない訳ですから、持っているだけ損な気分かもしれません。

新規に土地を購入する場合には、一部が道になっている土地について、
どのような価格設定になっているか、注意が必要です。

一見割安に見えても、実際は割高かもしれませんよ。

まぁ、位置指定道路になっている部分は一般的に固定資産税も安くなるので、
そのような取扱いがされていない場合には、各市税事務所に確認してみましょう。
もしかしたら毎年の固定資産税が安くなるかもしれません。

土地Bに建物を建てるためには?
さて、最後に土地Bですが、建築基準法上の道路と面していません。
接道義務を満たさない訳ですから、土地B単体では、原則、建築許可は下りません。

土地Bの上に建築物を建てようとする場合には、
その建築物の敷地を土地C&土地Bとするか、土地A&土地Bとする必要があります。
(もちろん、隣接する他の土地も加えても構いません。)
その場合には、隣地と合算され、通常通り建物の建築が可能となります。

しかしたとえば、これらの土地の所有者がそれぞれ別々だった場合、
土地Bの所有者が土地Bの処分を考えるとき、やはり単体では売却不能です。

そういったケースでは、土地Aか土地Cの所有者に話を持ち込むのが王道ですね。
大抵、近隣の市場価格より大幅に買い叩かれますが、
まぁ、そもそも市場に出した場合に価格が付かないので、やむを得ないと言わざるを得ません。

稀に、近隣市場価格並で売れるようなウラワザ的ケースもありますが、
殆どがそういったケースには該当しません。

⑤おわりに
このように、敷地と道路の関係と建築の可否は、ケースにより様々な対処が必要ですので、
自分で対処する場合には市役所などでじっくりと話を聞き、
業者に依頼する場合には、きちんとした知識を持った業者へ依頼しましょう。

当記事は2014年03月11日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-6 位置指定道路と『筆界』『分筆』『地型』


『道の範囲を調べるのに法務局行ってどうするんすか!』 
・・・と、当社の建物管理担当のスタッフに何度か注意しているのですが、
どーも法務局に登録されている内容がすべてと考えているようで、困っています。

今日は実務上の実例(当然、そのままではありません)を挙げて、
位置指定道路の奇妙な取扱いについてご紹介しましょう。
札幌市内に実際にある位置指定道路の実例です。

ここまで何度も書いている通り、法務局はその土地がどのように使われているか調べるための役所ではありません。
法務局はその『申請された』権利関係『申請された』不動産の内容を調べるための役所です。
それが『真実の』権利関係や『真実の』不動産の内容なのかを保証するものではありません。
まして、その土地のどこからどこまでが道路なのか、という話は完全に管轄外です。

例えばこんな『公図(地図に準ずる図面)』があります。
 ◇A-3 道の所有者を知りたいとき
 ◇B-3 地図・地図に準ずる図面の見方
さて、どこからどこまでが『道』の範囲でしょうか?
黒線が土地と土地との境界線、細い土地の脇にいくつもの土地が隣接しています。
ちなみにC’別の土地です。

普通、第一印象としてこのようなイメージを抱くのではないでしょうか。
細長い土地Gを『道』と考えるのが、まぁ健康的な考え方です。
しかし、例に挙げるという事は、実際の道の範囲は違う訳です。

札幌市役所の道路確認担当課でその周辺の道路状況を確認しましょう。
 ◇A-2 公道(と特殊な私道)の詳細が知りたいとき

市役所の調査の結果、実際の位置指定道路の範囲は下記の通りと判明しました。
法務局に登記されてる境界線と全然違うじゃん!!Σ(゚Д゚,,)

ええと、C’に関しては道の部分だけ、分離していた訳ですが、
については、『一体の土地の一部だけが位置指定されている』という、
世にも奇妙な取扱いがなされているのです。

つまり、土地の境界線と道路の境界線はまったく関係がない!
という事なんです。ホントですよ?(´・ω・)

しかし、これってあまりにも分かりづらいですよね。

・・・と、言うわけで、新しく位置指定道路を作ろうとする場合には、
きちんとその道路の境界線に合わせて土地の境界線を作らなければならなくなりました。
土地を2つかそれ以上に分けて境界線を作る事を『分筆』と言います。

という訳で、例えば今回の例のような土地に、
今回の例のような位置指定道路を新しく作ろうとした場合には、
このように分筆をして、道の境界線と土地の境界線を一致させて申請しなければなりません。
しかし、既に指定を受けて存在している位置指定道路については、その所有者に分筆をする義務が出来る訳でもなく、そのままの状態になっています。
その為にこのような入り組んだ状態になっているのです。

位置指定道路の実態をつかむのに、法務局をアテにしてはなりません。

位置指定道路だけではなく公道でも『公道供用』『セットバック』といって、
民有地の一部分が公道になっている事だってあるので、
道路の範囲と、その土地の権利の所有者は必ずしも符号しないという事ですね。

結論としては、道の範囲は法務局ではなく市役所で聞け!という事なのです。

当記事は2014年03月06日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-5 位置指定道路を市道にしてほしいとき


位置指定道路』は『公道』と『私道』の中間的な取扱いで、
『最もトラブルが多い種類の道路』と言っても過言ではありません。

札幌市には古くからの位置指定道路が数多くあり、
除雪関係の問題を始めとした各種トラブルも後を絶ちません。

勿論、位置指定道路は現在も新しいものが認定され続けていますが、
最近の位置指定道路は、きちんと測量・分筆してあったり、ある特定の人間しか通行しないものだったり、利害関係者に持ち分を配分していたりと、それなりに気配りされていますから、初期の位置指定道路よりは、ずっと扱いやすいものになっています。

しかし、既存の道路はなくなりはしない訳で、位置指定道路はどんどん増えてゆきます。

『位置指定道路』はあくまで私道ですから、舗装・配管・除雪その維持管理については土地所有者の責任となります。
ただ、具体的にどのような管理をするべきか、定められている訳ではありませんから、アスファルト舗装が剥がれて砂利道になっていたり、除雪がなく冬の間通行出来なかったり、位置指定道路の管理状況は、お世辞にも行き届いているとは言えないというのが現実です。

そうであれば、いっその事、市道として管理してほしいという周辺住民の意見をよく耳にします。
札幌市への相談件数もかなりの数に上るようで、わざわざQ&Aにそのための専用のページが用意されています。

 私道を市道として認定してほしい
  http://www.4894.city.sapporo.jp/cgi-bin/isDetail2.asp?sURL=file://FAQ/Daily/1199.xml

この方法では、幅や状況について各区の『土木センター』に相談したうえで、
主に3つの基準を満たすものを市道に認定すると提示しています。
8m以上の道路幅(既に家屋が建ち並んでおり拡幅が難しい場合は4m以上)があること
建築基準法上の道路となっており、沿線に住宅が建てられ、生活道路として利用されていること
道路用地は市に寄附すること

以上のように位置指定道路を市道にする簡単な基準が書かれていますが、
より詳細なガイドラインとして市道認定のガイドブック 私道から市道へが存在します。

こちらのパンフレットは、認定のための基準のほか具体的な数値基準、認定の流れが解説されています。
無論、事例はケースバイケースなので最終的には『市の窓口に相談して下さい』という形式ですが、
図解付きでよくまとまっており、概ね分かりやすい資料と言えるのではないでしょうか。

特に、私道が札幌市道として認定されるまでの手順を示すチャートについては、よくできています。

詳細はパンフレットを見てもらうとして、いくつか重要な点を抜粋して紹介しましょう。

◇『位置指定道路』の無償での『寄付』が必須
市道認定は現在『位置指定道路』である土地を、札幌市に寄付することが必要となります。
つまり、大前提として所有者が寄付してもよい『位置指定道路』でなければ『公道』にしてもらう事は出来ないという事です。
他人の位置指定道路を所有者の承諾なしに市道にすることは出来ませんし、
位置指定道路ではない単なる通路の寄付は受け付けられない
という事ですね。

市道認定の為の申請をするのは、所有者本人でなくとも可能ですが、
所有者が分からない場合には、寄付が成り立ちませんから、どうにもなりません。

つまり、既に亡くなった方が所有者である場合には、その相続人全員から印鑑証明書の提出を受けて寄付を受け付けるか、遺産分割協議書(印鑑証明書付き)によって相続登記をする必要がなります。

また、倒産・解散などで存在しなくなった法人が所有者であった場合は最悪です。
理論上は清算人破産管財人を見つけて来たり、選任したりして法人財産の処分をすることになりますが、裁判所に申し立てたところで受け付けられるという話を聞いたことはありません。

この他、個人が単に転居をしているようなケースであっても、所在が分からないことも多くあり、それが原因で認定手続が進まないこともあるようです。

自治体とはいえ、土地の所有者を完全に把握できる訳ではないのです。
(特に、納税の対象とならない私道の場合には、それが顕著です。)

◇市道認定されても維持管理は最低限
おそらく、市道として認定してほしいという方の一番の要望は、
『市の費用で除雪をしてほしい』というところがあると思うのですが、
現在市道でないような幅員の狭い土地については、幹線道路並の水準の除雪を期待することは難しいかと思います。
除雪が入るのは幅員8m以上の通り抜け道路です。
私は、幅員が8mを超える位置指定道路というのは、あまり見た記憶がありません。
詳しくは『A-14 除排雪の取り扱いを知りたいとき』を確認して下さい。

では、市道になって何の意味もないかと言えばそうではなく、上下水道やガスの配管工事の為の『掘削許可』を個人ではなく市からもらう事が出来るようになります。
除草、砂利の整備、アスファルト舗装などの維持管理についても、ある程度は期待出来るでしょう。

特に使い道がなく、特に固定資産税が課税されているような位置指定道路をお持ちの方は、
いっその事、札幌市に寄付をして認定道路にしてもらうのも一つの方法かと思います。
プラスにはならなくとも、マイナスではないのですから。

◇市道認定の為には、大変な時間がかかる
共有となっている位置指定道路に関しては所有者探しだけでも一苦労なのですが、
仮に所有者が全員判明していたとしても、所有者全員の承諾を得た上で、
測量による境界の確定や分筆をした後、札幌市に対して土地を寄付します。

なんと、寄付したからといって自動的に市道になる訳ではありません。
札幌市議会で市道認定の決議が必要となり、その後、市道となったことが告示されます。

申請してから市道認定まで、平均的には2~3年を要するとのことですから、大変なものです。

勿論、各段階で止まってしまってそれ以上先に進めない、という事例もたくさん目にしています。

◇位置指定道路と市道認定では、役所の部署が違う
位置指定道路に関する手続きは『札幌市都市局建築指導部』の扱い、
位置指定道路を市道にする手続きは『札幌市建設局道路認定課』の取り扱いで、
『局』から管轄が違うので、全然一元化されていないのです。

札幌市のHPには『道路関係の担当部局一覧』というコンテンツがありますが、
管轄が『課』からしか書かれていないので、パッと見、その辺の事情はハッキリと分かりません。

位置指定道路は位置指定道路として、市道は市道として、同じ市役所でも部署によって判断が異なる事があります。

縦割り行政と言われない為には、きちんと部局間での連携をして、
道路に関する包括的なガイドラインを作っていく必要があるのではないでしょうか。

当記事は2013年09月23日および2013年12月11日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-4 位置指定道路を変更・廃止したいとき


今回は既に存在している『位置指定道路』を取りやめたい・変更したいというお話。
そんな時は、位置指定道路の廃止・変更の手続きを取っていかなければなりません。

しかし、位置指定道路は建物を建築出来るようにするために指定を受けるものですから、簡単にやめたり・変えたり出来るのであれば、建築基準法の意味がなくなってしまいます。
例えば、位置指定道路の所有者の意思だけで取りやめが出来るとしたら、分譲された土地の所有者達は、現在の建物を解体した後、新しい建物を建てることが出来なくなってしまいます。
ですから、位置指定道路の廃止・変更には厳しい制限が課されているのです。
位置指定道路になった時点で、その土地は準公的なものであって、自由に処分が出来るものではなくなった、という事ですね。

位置指定道路の廃止・変更のためにはその土地の所有者だけでなく、その道に接する土地の所有者などの承諾書が必要となります。
(隣接する土地の所有者すべて、という訳ではありませんが、かなり広い範囲での承諾書が必要になります。)
さらに、その承諾書を貰うべき人が亡くなっている場合には、法定相続人(多くの場合、配偶者と子・孫・曾孫)全員の承諾が必要になります。

その位置指定道路だけに面する建物がある場合には、事実上、位置指定道路の廃止はかなり難しいと言えるでしょう。

位置指定道路の周辺すべてが更地で単独所有となっている場合には廃止も可能でしょうが、
そもそも『住宅を分譲する為の道路』である位置指定道路の周辺が、更地であるというのはあまり考えられない、というのが現実です。

また、単なる廃止ではなく、変更の場合には、土地の測量・分筆が再度必要になってきますから、やはり土地家屋調査士に一任するのが通常です。

札幌市道路位置指定申請審査基準 第15条3項では位置指定道路を変更または廃止する場合に必要な承諾書について定めていますので、引用してみます。

(札幌市道路位置指定申請審査基準第15条3項)
(3)承諾書
ア 承諾書を要する者は以下に掲げるものとする。
①変更により、新たに道路敷地になる土地又はその土地にある建築物若しくは工作物の全部事項証明書「甲区」「乙区」欄の全権利者
②既存道路への腹付けによる幅員変更にあっては、腹付け部分の敷地の土地の全部事項証明書「甲区」「乙区」欄の全権利者
③変更又は廃止により、道路敷地外になる土地(一部廃止又は全廃止を含む)
 又はその土地にある建築物若しくは工作物の全部事項証明書「甲区」欄の全権利者
④廃止にあって、すみ切のみ(路線の廃止を伴わない)の場合は、その土地の全部事項証明書「甲区」欄の全権利者
⑤廃止により接道義務違反は生じないが、既存建築物の主たる玄関(正面玄関)
 及び車庫が指定道路に面している等、現に使用されている場合(図-6、例示2~4の建築物)には、 建築物の全部事項証明書「甲区」欄の全権利者
⑥ ①~④の権利者が死亡している場合は法定相続人全員
⑦ ①~④の権利者である会社が倒産・閉鎖している場合は、代表清算人等

イ 承諾書の内容は以下に掲げるものとする。
 ① 承諾書は(様式-1)とする。
 ② 承諾書の押印は実印を使用し印鑑登録証明書を添付する。

とにかく沢山の関係者に実印を押して貰わければならない、という事です。

「甲区」の権利者とは通常、不動産の所有者ですが、「乙区」の権利者というのは、抵当権者・・・つまり住宅ローンの借入先である金融機関などが多いのです。
と、言うことはもしローンの残債が残っていた場合には、金融機関からも実印と印鑑証明書を貰わなければならない訳で、これはもう実務上ほぼ不可能であると言えるでしょう。

位置指定道路の所有者にとっては不利な取扱いですが、位置指定道路に面した土地が、
その廃止によって建築基準法違反の状態にならないよう保護されているという意味もあります。

そもそも論として、位置指定道路の所有者は宅地の造成・分譲で十分な利益を得ている訳ですから、そのメリットと引き換えの不自由さと考えれば、やむを得ないでしょう。

このブログでは位置指定道路について、除雪の問題など書いていますが、その存続についてはとりあえず楽観視してもよいかと思います。

当記事は2013年09月18日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-3 道路の位置指定を受けたいとき


位置指定道路』は、通常では建物が建てられない土地に建物を建てられるようにする目的で指定されるものです。

つまり、こういう土地をこういう風にすることが目的である訳です。

実はこういう事をして良いのは、原則的には不動産業者だけ、と決まっています。
業務としての不動産取引を規制する法律に『宅地建物取引業法』があります。
その中で、不動産業・・・正しくは宅地建物取引業の定義について記載されています。

(宅地建物取引業法第2条2項)
宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。

そして、宅地建物取引業法第3条によって『宅地建物取引業を営もうとする者は(中略)免許を受けなければならない。と定められています。

ですから、まとまった土地を商売として造成・分譲してよいのは宅地建物取引業者だけなのです。
『商売として』と強調したのは、どっからどこまでが商売なのよ、という話があって、先祖伝来の土地を何区画かに区分して売却したからといって、それがイコール『業』なのか、という問題があるからです。

とはいえ、位置指定道路の制度はやはり通常は免許を持った宅地建物取引業者が利用するものです。
また、実務的には位置指定道路の測量と分筆(区画割り)が必要になりますので、宅建業者も『土地家屋調査士』に依頼しなければ、指定を受ける事は出来ません。

基本的に、個人の方が独力で道路の位置指定を受ける事はありませんので、細かい取扱いを一つ一つ紹介するのではなく、位置指定道路の指定を受ける際の留意点を簡単に3つ箇条書きにします。

実務作業は土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。

位置指定道路は、幅や奥行、舗装の状況など、一定の基準を満たしている必要があります。

指定を受けるためには、道路となる土地の所有者全員の承諾書と印鑑証明書などを提出する必要があります。

 道路の位置の指定(指定道路)について/札幌市
  http://www.city.sapporo.jp/toshi/k-shido/douro/shitei/douro-shitei.html

パンフレット付きで、詳細な取扱いが記載されています。
ここでは参考として、位置指定道路の形状に関する基準を見てゆきましょう。

・・・と、まぁ、昔の位置指定道路は他の部分と区分されていなかったり、例外的な取扱いが多かったものですが、現在においては、基準に従って正確に分筆され、形状等も制限に沿ったものしか認められません。

そして、一度位置指定道路の指定を受け、周辺に建物が建ってしまうと、その指定を廃止することはかなり難しくなります。
また、道になってしまった部分は、売却するにあたっても、価格はほぼゼロとなります。
(場合によっては、実態的な価値がマイナスとなる場合もあります。)
土地家屋調査士などへ相談した場合にも同様の注意を受けるかとは思いますが、
特にその後も位置指定道路を所有し続けようとする場合には、くれぐれも慎重に検討して下さい。

C-2 位置指定道路の始まりと必要性 ~戦後の事情と現代の事情~


昭和20年の敗戦に伴い、日本ではありとあらゆる制度が変わりました。

それは、GHQが戦前の制度が前大戦の引き金になったと考えた為です。
財閥制度、戸長・長子相続といった『家』制度、小作制度・・・
またそれ以外にも、アメリカが共産主義に対抗する為の防波堤として、より統治しやすく、資本主義的な制度を取り入れました。

昭和21年『自作農創設特別措置法』を始めとしたGHQの農地改革
昭和22年『過度経済力集中排除法』によるGHQの財閥解体ののち、
昭和25年『市街地建築物法』は『建築基準法』に変わります。

これが、日本の街並みが現在のようになった契機であるとも言えますし、
一方で国家の弱体化を招いたという人もいます。

戦後の札幌では、かつて開拓者や小作人だった人々が、
『自作農創設特別措置法』『過度経済力集中排除法』などによって、
国策企業や不在地主・大地主が所有する土地を譲り受けました。

昭和30年ごろになって、札幌の宅地化がより進んでいくと、
大きな土地を持った方々は、住宅地としての分譲を考えます。
例えば、このような大きな土地…農地や原野があった場合、どのように建物が建てられるでしょうか。
前回紹介したように『建築基準法では、建物を建てる土地は、道路に面している必要があると定められました。
これを建築基準法上の『接道義務といい、『市街地建築物法』における『建築線』制度から現代まで、100年生きている大原則です。
つまり、『接道義務』を守ろうとすると、このように道に面している部分にしか建物が建てられないという状況になります。
元々が農地や原野だった大きな一面の土地は分譲に向かないのです。

大きな土地にドン!と大きな建物を建てるという方法もなくはありませんが、
昭和30年~40年ごろでは、やはり一般的ではなく、木造戸建での分譲が主な処分方法でした。

このままでは大きな土地の奥の部分は建物が建てられず、利用価値がないという状況に陥ります。
つまり、GHQが望むところの土地の分散所有が達成されないという事です。
そこで活躍するのが、建築基準法第42条1項5号に定められた『位置指定道路』です。

(建築基準法第42条1項5号)
 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの

前回『告示建築線』は位置指定道路の前身である、と紹介しましたが、
『告示建築線』は行政官庁が指定するものであり、
『位置指定道路』は特定行政庁から指定を受けるものです。
しかし、建築基準法では、市街地建造物法と異なり、その主体はあくまでも『道を築造しようとする者』です。

これは、建築基準法によって、民間の主導で道路を築造し、分譲することが出来るようになったという事です。

つまり、農地改革、財閥解体、建築基準法の合わせ技によって、土地の分散所有を実現したです。

こうして、位置指定道路に面する部分には、建物を建てる事が出来るようになります。
このように、位置指定道路があることによって土地の有効利用が出来るようになりました。

そして宅地造成・分譲のブームが起こり、低所得者であっても住宅ローンで家を買えるようになりました。
『持ち家』『マイホーム』に対する信仰が生まれたのもこの頃だと言われています。

『建築基準法』の他、『(旧)宅地造成法』や長期低金利融資の住宅ローンを扱った『住宅金融公庫』などの各制度で、国は全面的にマイホームの取得を支援してゆきます。
『持ち家』があれば、家具家電も必要になりますし、様々なサービスも循環しますから、『家』が日本国の内需を支える原動力であった、とも言えます。

昭和30年~40年ごろまではそれでよかったのです。

しかし、これが、後々厄介なことになってきています。
何度も書いていますが、位置指定道路はあくまで私有地

位置指定道路の土地を持っている場合は・・・
 ・通り抜け出来ない位置指定道路には固定資産税がかかる。
 ・一度、位置指定道路にしてしまうと、なかなか処分出来ない。
 ・位置指定道路を所有していることに、メリットが殆どない。

一方、位置指定道路に面する建物の敷地を持っている場合は・・・
 ・配管を掘る場合、『私道掘削許可』を所有者に貰わなければならない。
 ・原則、除雪が入らない上、舗装費用も札幌市の負担はない。
 ・そのような不便があるので、財産価値が低い

・・・他にも諸々の細かい点はありますが、概ねこんなところでしょうか。
そして、位置指定道路を設定した、過去の地主さんがいなくなり、
その子供や孫の代になると所有者が分散し、その位置指定道路は完全に手が付けられなくなるのです。

戦後のマイホームブーム、続々と分譲された造成宅地の問題は位置指定道路だけではありません。
市街のスプロール(虫食い)化によって『都市計画法』が施行されたのは『E-1 市街化調整区域とは何か』で解説した通りですし、それだけでは問題が解決せず、既存の住宅地に『地区計画』を設定したのは『E-4 市街化調整区域と『地区計画』』で紹介しました。

他にも郊外に造成された新興住宅地の問題や分譲マンションの問題など『不動産神話』の爪痕は深いものがあるのです。

私は『不動産神話』の爪痕を解決してゆくことが、これからの不動産従事者の役割であると考えており、シリーズ『位置指定道路』がその為の一助になることを、願っています。

当記事は2013年12月09日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

C-1 位置指定道路の前身『告示建築線』とは?


さて、シリーズ『位置指定道路』の記事を初めてゆくにあたって、
過去記事の再録をしてゆく前に一つ、新規記事を書きたいと思います。

そも、『位置指定道路』というものを認識するにあたっては、
建築基準法における2つの大前提を抑えておかなければなりません。

『接道義務』
 建物の敷地は『建築基準法上の道路』に接している必要がある。

『建築基準法上の道路』
 『接道義務』を満たすための道路は、国道、都道府県道、市町村道といった、公道は勿論のこと、それ以外の一定の『私道』も認められる。

『建築基準法上の道路』については、建築基準法第42条に定めがあり、いくつかの種類はありますが、公道以外で最もメジャーなものが、建築基準法第42条1項5号に定める『位置指定道路』です。

建築基準法における『位置指定道路』の定めについては、
次回以降、その必要性や経緯についても解説してゆきますが、
今回はその前身ともいえる制度である『建築線』について紹介してゆきます。

建築基準法は建物の建築に関する法律でありますが、
戦後、昭和25年に定められた法律です。

それでは、それ以前には、建物の建築に関する法律はなかったのでしょうか?

勿論そんな訳はなく、それ以前には『市街地建築物法』(大正8年4月法律第37号)が施行されていました。

そこでは建物の建築について、このように定められています。

第七條 道路敷地ノ境界線ヲ以テ建築線トス 但シ特別ノ事由アルトキハ行政官廳ハ別ニ建築線ヲ指定スルコトヲ得

第八條 建築物ノ敷地ハ建築線ニ接セシムルコトヲ要ス 但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス

第九條 建築物ハ建築線ヨリ突出セシムルコトヲ得ス
    但シ建築線カ道路幅ノ境界線ヨリ後退シテ指定セラレタルモノナルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ 建築物ノ前面突出部又ハ基礎ハ道路幅ノ境界線ヲ超エサル範囲内ニ於テ建築線ヨリ之ヲ突出セシムルコトヲ得

(口語訳)
第7条 道路敷地の境界線を建築線とする。ただし、特別の事情があるときは行政官庁は別に建築線を指定することができる。

第8条 建築物の敷地は建築線に接するようにする必要がある。ただし、特別の事情がある場合で行政官庁の許可を受けたときはこの限りではない。

第9条 建築物を建築線から突出させることはできない。
    ただし、建築線が道路の境界線から後退して指定されているときは、
    建築物の前面突出部または基礎を、道路の境界線を超えない範囲で建築線から突出させることができる。

 

つまり、第7条で原則的には道路となっている敷地の境界線が『建築線』である、と定めており、
また、第8条では建物の敷地は『建築線』に接するようにしなければならないとしています。
そして、第9条で建物は『建築線』≒道路敷地に原則はみ出してはならないとされています。

これが現在の建築基準法で言う所の『接道義務』の原点である訳ですね。
また、『建築基準法上の道路』≒『建築線』ということが出来ます。

第7条の特例として行政官庁が”道路ではない場所に”『建築線』を指定する事が出来る、とされています。
これが『告示建築線』と呼ばれるもので、行政官庁が告示して、指定する建築線です。

行政官庁が全く道路のないところに指定することも少なくなかったそうで、
特に東京や大阪では、現存する建築線が大きな問題になることも多いようです。

札幌市でも昭和2年5月に指定された現在の『位置指定道路第1号』を始め、
市内の中心部に複数の建築線が指定され、その一部が現存しています。
(現存しないものは、公道になったものや、廃止になったものがありますが、詳細は不明です。)

北10条西1丁目にある位置指定道路第1号の昭和2年における告示建築線図面です。

そして戦後、『市街地建築物法』が『建築基準法』に切り替わるにあたって、
建築基準法施行時の附則第5項では以下のように定められたのです。

(この法律施行前に指定された建築線)
5 市街地建築物法第7条但書の規定によつて指定された建築線で、その間の距離が4メートル以上のものは、
  その建築線の位置にこの法律第42条第1項第5号の規定による道路の位置の指定があつたものとみなす。

『第七条但書の規定』とは、建築線のうち道路敷地の境界ではないもの、つまり『告示建築線』です。
そして、『この法律第42条第1項第5号の規定』とは前述の通り、位置指定道路の規定です。

つまり、『告示建築線』のうち、幅が4m以上のものは位置指定道路の指定があったものとみなす、という事です。

では、4m未満の『告示建築線』はどうなのか、と言えば建築基準法第42条2項にこのような定めがあります。

2 この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離2メートル(前項の規定により指定された区域内においては、3メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、2メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。
  ただし、当該道がその中心線からの水平距離2メートル未満でがけ地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離4メートルの線をその道路の境界線とみなす。

条文番号から『2項道路』という呼び名が一般的ですね。
これは『告示建築線』に限らず、昭和25年当時に存在した4m以未満の道について、
新規に建物を建てようとする場合には(原則)幅4mを確保すれば、その建築を認める、という規定です。
道路幅を確保するために建物を後退させること『セットバック』と言います。

このようにして道路を広げてゆき、防災や通行の確保、採光の改善などを図ってゆく訳です。

これは北7条東13~14丁目にある『苗穂工場裏通線』幅3.64m。
『公道』であり、かつ『2項道路』という特殊なものです。
おそらく、元々は『告示建築線』であったのではなかろうかと思っています。

この規定では『この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる』との前提がありますが、更にそれでは、昭和25年当時に建築物が立ち並んでいなかった『告示建築線』はどうなのでしょうか?

答えは簡単、建築基準法上の道路としては認められないのです。

しかし、『現に建築物が立ち並んでいる』のかどうか、という判定は、自治体が行わなければなりません。
自治体と土地所有者の争いが発生したという事例も少なくないようです。
また、戦後間もない昭和25年時点の状況で『現に』ですから、空襲などで焼け落ちた市街は、対象外という事です。
物の資料によると、戦災の激しかった名古屋では、ほとんど告示建築線が残っていないそうです。

そういった種々の問題を孕みつつも、『告示建築線』は今も街並みの中に潜んでいるのです。

次回以降、『位置指定道路』の取扱いについて紹介していきましょう。