『新築』と判定される具体的ケースと詳細な取り扱い

当記事は2015年1月5日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

シリーズ:『新築』と『瑕疵担保履行』
『新築住宅』ってどういう意味?定義は?
『新築』と判定される具体的ケースと詳細な取り扱い
業界の俗説『登記をすると新築でなくなる』の嘘
新築住宅の『住宅かし保険』の概要を分かりやすく解説します
中古住宅の『住宅かし保険』は新築住宅の場合とどのように違うのか
重要事項説明書の『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』ってなんなの?

前回の記事、『『新築住宅』ってどういう意味?定義は?』では
『新築住宅』とは『品確法』『公正競争規約』の2つの裏付けから、
『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない居住用建物』を指すと説明しました。

この2つのうち、特に重要な役割を担うのは『品確法』で、
その目的は『欠陥住宅からの消費者保護』にあります。
新築住宅の主要構造部…つまり、屋根・柱・梁などの部分についての
瑕疵担保責任(欠陥の保証義務)が10年とする義務
が定められています。

この法律には他にも『住宅性能の客観的定義付け』も目的としています。
最近聞くようになった『住宅性能表示制度』はこの法律に基づくもので、
住宅に関して断熱・防音・防災・防犯など一定の基準が定められています。
しかし、これはあくまで任意の規定であり、性能検査を受けない事も可能ですから、
法律の主眼が『欠陥住宅からの消費者保護』にあることは明白です。

さて、そんな前提条件を頭に入れた上で、
『新築住宅』の扱いを具体的に考えてゆきましょう。

◇具体的に『新築』と言える期間はいつからいつまで?
建物が完成した日からそのちょうど1年後までの1年間です。
例えば、令和3年1月2日に建築された建物であれば、
令和3年1月2日~令和4年1月1日までが『新築』の期限となります。

建物が完成した日、というのは建築工事が完了した日を指し、
実態を鑑み、建物本体の引渡しが可能な状態となった日が工事完了日となります。

ただ、その『建物が完成した日』というのが実務上ちょっと難儀で、
特に不動産業者が企画した建売住宅などの場合には、
建築業者から不動産業者に引き渡された日や建築確認手続きの日など、
建物の建築に関していろいろな日付が登場しますし、
かつ、営業マンがいまいちその辺を理解していなかったりします
が、

あくまでも工事の完了日が、『新築』の起算日となります。

◇『人が住んだことがない』ってどういう意味?
人が住んだ事がない、という意味です。
…えーと、何の説明にもなっていませんね。

実のところ、法律や手引きを見ていても具体的な定義付けが見当たらないのです。

他の法律などの扱いを鑑みるに『実際に寝泊まりする』と考えられますが、
それをどのように立証するのかについては、なかなか難しい処があります。

客観的に言えば、住民票を移していたりすれば、居住している傍証になりますが、
これも実態を伴わない(=住んでいない)場合には、無効になると思われます。

『品確法』においては、消費者保護が目的ですから、
このような取扱いについては消費者優位に運用されるはずです。
例えば、瑕疵担保責任を10年とする事を避ける為に、
業者の身内が一時的に居住したり住民票を移したりして、
『新築』扱いでなくすという事は、認められないでしょう。

まぁ、その場合には『新築』という宣伝文句を使えなくなって、
ただの『中古住宅』になってしまう訳ですから、
あまり実用的ではありませんし、通常は考えられない手法ですね。
(『新築』で売る事には、それほどに流通上の優位性があるのです。)

◇人が住まないまま転売された一年内の建物は『新築』になるの?
なります。

…と、言うのは例えばマンションや分譲住宅のデベロッパーが倒産した場合
そのデベロッパーから事業を引き継いだ業者から住宅を購入した消費者が、
売主が異なるからといって保護されなくなるのは合理的ではないという判断です。

消費者が購入した新築住宅を未入居のまま第三者へ転売した場合はどうでしょうか。

この場合でも『新築住宅』という扱いになり、
一般消費者である売主は、10年の瑕疵担保責任を負います。

詳細については、以下の記事を参照して下さい。

新築未入居の物件を売却する場合の品確法上の問題点|不動産流通近代化センター
http://www.kindaika.jp/archives/1622

品確法の定めにおいて『新築住宅』というのは純粋に、
『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない居住用建物』
…という以上の定義はないのです。

◇『新築』でなくなった建物はどうなるの?
『人が住んだ事のある居住用建物』は単なる中古住宅です。
では、『人が住んだ事がないまま一年を経過した建物』はどうでしょう?

これは不動産取引の慣例上、『築後未入居』『未入居』などと呼ばれています。

かつては『新築未入居』などと言うこともあったようですが、
現在、この言い回しは『公正競争規約』によって、禁止されています。

『未入居』の物件は何らかの事情で注文住宅が未入居のまま売却される場合もありますが、
その多くは建築業者や不動産業者の企画した建売住宅が1年以上売れ残ってしまったものです。

これを狙って強気の価格交渉をしようとする方も多いようですが、
まぁ、広告に掲出されている価格を大きく下回る、というのは、
不動産流通の構造上、ちょっと難しいかもしれません。

どちらにせよ、『新築』でなくなった建物については、
『品確法』上、10年の瑕疵担保責任が義務ではありません。

前回解説した通り、10年の瑕疵担保責任を任意で設定する事は可能ですが、
業者に対する義務として定められているものではありませんから、
『築後未入居』の物件を購入する場合には、この辺りを事前に確認しておく必要があります。