当記事は2015年1月3日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。
新年あけましておめでとうございます。
ご挨拶はさておき、新年一発目の記事ですから、一般需要の高い記事を書いて行こうと思います。
不動産調査や新しい道路に関する記事で検索順位が高い当ブログですが、
札幌市が分譲する新興住宅地『ウェルピアひかりの』に関する検索でも
各検索エンジンの上位群に表示されるようになってきたようです。
ハウスメーカー・工務店といった売り手の商品情報ではなく、
ある程度距離を置いた人間が俯瞰的にまとめた記事の方が、需要もあるようですね。
(というか、ハウスメーカーの営業さんなどにも読んで頂いているようです。)
・・・と、いう訳で、住宅を新築しようとする方にも閲覧されているようですから、
今回は『新年』『新春』とかけまして『新築』について紹介してゆきましょう。
日常会話で『新築』と言えば新しく建築した建物を漠然と指しますが、
正式には建物の『新築住宅』ってどういう定義の言葉なのでしょうか?
結論から言いましょう不動産流通上、『新築住宅』とは、
『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない居住用建物』を指します。
根拠は二つあります。
『住宅の品質確保の促進等に関する法律 第2条2項』(以下、『品確法』)
この法律において「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、
まだ人の居住の用に供したことのないもの
(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)をいう。
『不動産の表示に関する公正競争規約 第18条1項』(以下、『公正競争規約』)
建築後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものをいう。
『品確法』は欠陥住宅に関する消費者保護を定めた法律で、
この法律に定める『新築住宅』については、建設業者・不動産業者が、
消費者に対して10年間の保証を行う義務があることを定めています。
従来騒がれてきた『欠陥住宅』『手抜き工事』から消費者を保護するための法律ですね。
ただし、定義の通り、建築後1年超の住宅については、保証義務の対象外となります。
(義務がなくとも、任意で保険に加入し保証をする事は可能です。)
『公正競争規約』は、不動産の広告に関する記載のルールを定めたものです。
法律ではなく、業界団体(不動産公正取引協議会)の定めたものですが、
『不当景品類及び不当表示防止法 第11条第1項』では、
業界団体の定めたルールが法律に準ずるものと出来るとされていますから、
限りなく法律に近い定めであり、罰則の規定も定められています。
これにより、広告等でも『新築』の定義は『品確法』で定めるものと同一となりました。
このように『品確法』と『公正競争規約』の両面から、『新築』の定義がされています。
その結果、不動産流通の世界で『新築』という言葉は、
『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない建物』を指すことになったのです。
余談ですが、ここまでの解説は不動産流通の世界での定義であって、
『新築』という言葉の定義がこれに限られている訳ではありません。
例えば一般の辞書では『新しく建物を建てること。また、その建物。』と定義されていますし、
同じ不動産に関する法律でも、『不動産登記法』では、
『平成27年1月3日新築』といった風に、建築日を示すための用語として使われます。
私はこのブログの記事を書く際に、出来るだけ法律原文を引っ張って来るようにしていますが、
これはインテリぶりたいだとか、文章を権威付けたいといった目的ではなく、
法律によって言葉の定義も様々ある訳で、
根拠を示さずに論を展開する事は非常に危険だからなのです。
『新築』に限らず『事業者』『業務』『土地』『建物』といった用語も、
法律によって定義が多岐に渡り、これを曖昧なまま使う事は非常に危うい事です。
次回、以下のような具体例を挙げ、更に詳しく『新築』について解説してゆきましょう。
・具体的に『新築』と言える期間はいつからいつまで?
・『人が住んだことがない』ってどういう意味?
・人が住まないまま転売された一年内の建物は『新築』になるの?
・『新築』でなくなった建物はどうなるの?
シリーズ:『新築』と『瑕疵担保履行』
◇『新築住宅』ってどういう意味?定義は?
◇『新築』と判定される具体的ケースと詳細な取り扱い
◇業界の俗説『登記をすると新築でなくなる』の嘘
◇新築住宅の『住宅かし保険』の概要を分かりやすく解説します
◇中古住宅の『住宅かし保険』は新築住宅の場合とどのように違うのか
◇重要事項説明書の『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』ってなんなの?