『道』に関する12の用語


『道』に関する用語の解説をまとめました。
旧ブログでは1ワード1記事でしたが、思い切ってまとめ、単語ごとにリンクを貼る形式としました。

索引
公道】 【私道】 【位置指定道路】 【登記】 【全部事項証明書】 【地図・公図・地図に準ずる図面】 【地積測量図】 【道路台帳図】 【位置指定図】 【通行地役権】 【囲繞地通行権】 【幅員

 

【公道】(こうどう)
道路法』で国や自治体によって指定された道路を指します。
札幌市にある公道は『高速道路』『国道』『北海道道』『札幌市道』の4種類です。

基本的には誰もが通行出来る道路ですが、一部には自動車が通行出来ない道路や舗装がされていない道路も残っています。
また、公道だからといって全てに除雪が入っている訳ではありません。

 

【私道】(しどう・わたくしどう)
公道』ではない『道』のうち、国や自治体以外の、民間の個人や法人が所有する『道』です。

 不動産流通上は『通路』と呼んだりもします。
『市道』と区別する為に『わたくしどう』と言う事もあります。
(『市道』は『いちどう』と言う方もいますが、私は『札幌市道』と言っています。)
具体的に『こういう条件を満たせば私道』という決まりはなく、定義は慣習的なものです。
通路として長年使われていて、砂利やアスファルトなどが敷設されており、車両が通行している『私道』もありますが、あくまで私有地ですから、『位置指定道路』の指定や『通行地役権』の設定がない場合には、原則的に他人が通行してはいけません。
建物が建っていない土地の通行について、具体的な罰則を受けたという話はあまり聞きませんが…
何か構造物を設置したり、いつも無断駐車などをしていると大きなトラブルになります。

 

【位置指定道路】(位置指定道路)
『公道』に接していない(=建物が建てられない)価値の低い土地を、建物が建てられる価値のある土地にする、魔法の道路です。
 札幌市(特定行政庁)に建築基準法に基づく届出を行い指定を受けると、建築基準法では同じ幅の公道とほぼ同じ扱いとなり、建物を建築する事が出来るようになりますが、あくまでも『私道』ですから、管理責任は札幌市ではなく、土地の所有者にあります。
(除雪、アスファルト舗装、上下水道やガスの配管、不法投棄など…)指定を受けた道 路は、通行の制限をしてはならない事になっていますが、自動車の通行について制限してもよいという判決も過去に出ており、一部には実際に車止めなどが設置されている位置指定道路もあります。
他の頁でも触れていますが、最終的な判断はケースバイケースです。万全を期すためには、位置指定道路の土地の持ち分を取得していれば、自動車の通行や維持管理についてもある程度融通が利くようになります。
持ち分を取得している場合でも、上下水道やガスなどの配管工事で、道路の掘削が必要となる場合には、他の共有者の掘削許可を取らなければならない場合があり、その際に他の共有者から礼金を要求される事もあるようです。
『お互い様』で済ませられればいいのですが・・・また、札幌市の除雪もありませんので、札幌では位置指定道路に係る除雪のトラブルは大変多くなっています。
札幌市の指定の手引きでは『将来にわたり適切に維持管理をしていかなくてはなりません。』とありますが、一度指定してしまったものに対する行政からの指導はまったくと言っていいほど行われていません。
そのような事情も鑑みて、一般に流通している物件も、公道に接しているものより位置指定道路に接しているものの方が割安な価格設定になっています。ほとんどの場合、通行料は発生しませんが、使用料や維持管理費用を求められる可能性もゼロではありません。
位置指定道路が悪という訳ではありませんが、公道と等価値ではない、という点は留意して下さい。

 

【接道義務】(せつどうぎむ)
土地が『建築基準法上の道路』(≠公道)と接している長さや、その道路の幅によって建築できる建物の大きさや形に違いが出てきます。
『建築基準法上の道路』に接していない土地では原則、建物を建築する事が出来ません。
(幅員4m以上の道路に2m以上接することが要件になっています。)建物の建てられない土地は、市場価値が著しく低いので、不動産業界では『土地の価値は道の価値』とも言われています。
税務や土地評価で利用する『路線価』も同様の考え方を取っており、より幅の広い・利便性が高い道路と接している土地ほど、高く評価されます。
場合によっては、『建築基準法上の道路』に面しない場合でも特例として建物を建築できる場合が、これは例外中の例外と言えるでしょう。

 

【登記】(とうき)
『不動産登記』とは、その土地の面積や所在、所有者などを記録した書面を法務局が保管し、誰でも見られるようにする制度で、土地の権利関係の整理や安全で円滑な不動産取引を目的として定められた制度です。
このブログでは土地の『不動産登記』を単に登記と呼びます。(ほかには商業登記などがあります) 具体的に法務局に保管されている書類の写しとして交付を受けられるのは『全部事項証明書』『地図に準ずる図面』『地積測量図』などです。よく誤解があるのですが、『登記簿に書かれている内容のすべてが真実ということを国が保証している訳ではない』事に注意して下さい。登記簿に書いてある事は『だいたいそうらしいけど、本当の所はわからない』というのがぶっちゃけた所です。
特に、権利関係の登記は義務ではなく、『他の人にこの土地が自分のものだと分かってもらう為にする』ものです。
しつこいですが、役所が保管しているものですが公に認められたものではない(公信力がない)という事は、くれぐれも肝に銘じて下さい。面積や所有者など、間違った記載内容も往々にしてありますし、間違っていたとしても、法務局は責任を負ってくれません。 自分で書いていて、本当にこれで安全で円滑な不動産取引が出来るのか分からなくなってくる文面ですが、だからこそ、不動産のプロである宅建士が必要なのです。
取引の際には不動産の権利証や本人確認書類、実地調査などを組み合わせて、慎重に確認をしてゆく必要があります。
 

【全部事項証明書】(ぜんぶじこうしょうめいしょ)
登記簿に記録されている内容の全部を写した証明書ですよ、というものです。
(現実の所有者、面積、権利関係などの内容の証明書ではありません。

いわゆる『登記簿謄本』(トウキボトウホン)です。平成16年に不動産登記法が改正され、この呼び名に改められました。
ただ、全部事項証明書というと長くて言いづらいので、業界では単に『トーホン』と呼ぶ方が多いようです。

書かれている内容全部ですから、過去に誰が所有していたなどの、過去の出来事も記載されています。
ほかに現在事項証明書や所有者事項証明書などありますが、これらは一部を抜粋した証明書(登記簿抄本)ですよ、ということです。
ちなみに『謄本』が全部の写し、『抄本』が一部の写し、という意味です。
窓口申請の場合は、1通600円の手数料がかかります。
申請料は時代によって変遷しており、私が大学生~新社会人の頃は一番高く、1通1000円でした。(登記のコンピュータ化・オンライン化に費用がかかった為だと言われています。)

 

【地図・公図・地図に準ずる図面】(ちず・こうず・ちずにじゅんずるずめん)
一般用語としては馴染み深く、よく目にしている『地図』ですが、不動産登記法上の『地図』を見たことがある人は、あまりいないはずです。

 登記法上の『地図』は正確な測量に基づいて、土地の所有者の確認を得た図面を言います。
平成16年改正の不動産登記法で定められたもので、札幌市では現在順次作成中です。

まだ作成している最中ですから、法務局に行っても『地図』が作成されていない場合の方が多いのです。
その代わりとして存在するのが『地図に準ずる図面』です。(これを『公図』と呼ぶこともあります。)
法務局で窓口申請の場合は、450円の手数料がかかります。

『地図に準ずる図面』は、全国的には明治6年~14年に行われた地租改正事業の際に作成された地図を元に作成されたアバウトな図です。
その頃、北海道は開拓真っ只中ですから、大半はもう少し時代が下ってから作成されていますが、アバウトである事に変わりはありません。
『地図に準ずる図面』は、おおまかな位置関係と地型を表示するもので、必ずしも正しい記載内容ではありません。

アテにするのはだいたいの位置関係と地型だけにしてください。
『地図に準ずる図面』に記載されている内容を全面的に信じると、トラブルの元になります。

また、地型だけを見ると『道のような形の土地』がある場合もありますが、
その『道のような形の土地』が本当に『道』なのかは、『道路の内容を知りたいとき』で確認しましょう。

地図に準ずる図面の具体的な見方については『0402 地番図・地図に準ずる図面の見方』で紹介しています。

 

【地積測量図】(ちせきそくりょうず)
地積測量図』とは、その土地の形や面積とその計算根拠が記載された図面で、
法務局で取得することができます。
窓口申請の場合は、450円の手数料がかかります。

地積測量図は作成された年代によって記載内容がかなり違います。
古い測量図になると、測量については素人の私が見ても『おいおいアバウト過ぎるだろ』と言いたくなるような測量図がたくさんありますが、
こちらも法改正と測量技術の進歩によって近年の物になるにつれ、GPS等を利用した、高度な図面になっていきます。
(一般に、昭和52年9月3日以前の地積測量図は信憑性が低いと言われています。)

法務局に保管されていますが、殆どの場合、元になったのはあくまで民間の土地家屋調査士が作成し、提出した書類です。
ですから、登記全般に言えることですが『間違いがないと公に認められたものではない』という事を肝に銘じて下さい。

過去に土地家屋調査士が計算した面積でも、改めて測量すると、誤差があることもままあります。
近年の測量であれば、電子機器を利用して一定の測量方法に従って測量しますので、どの土地家屋調査士さんが行っても、ほぼ同じ面積になります。

その土地の精密な境界線の位置などを知りたいときは、土地家屋調査士などに測量を依頼する必要があります。

地積測量図の具体的な見方については『0403 地積測量図の見方』で紹介しています。

 

【道路台帳図】(どうろだいちょうず)
『道路台帳図』は公道の所在、範囲を記載した図面です。
道路法第28条によって道路管理者が作成することを義務付けられています。
つまり、公道であれば必ず道路台帳があるということです。

札幌市の場合は、国道以外の公道(道道と市道)について6階『道路認定課』で交付を受けられます。
台帳のコピーは1枚20円。具体的な取得方法は『0302 道路の内容を知りたい時』を参照して下さい。
札幌市以外の自治体の場合は、市道のみ各自治体の道路窓口、道道は北海道開発局での交付になります。
台帳のコピー手数料も、その自治体によってまちまちになっています。
道道の台帳コピー費用は、私は支払った事がありませんが、窓口によっては請求されるかもしれません。

札幌市の道路台帳はどれも比較的新しく、近隣の建物も記載されていて分かりやすいものが多いのですが、
自治体によってはかなり精度にばらつきがあり、高い手数料を払ってとてもアバウトな図面を渡された時は、本当にイラッとします。
自治体経営が厳しい世の中ですから、測量のための予算が付かないのもやむを得ない事として寛容な精神を持ちましょう。

札幌市の道路台帳図の取得方法については『0302 道が公道なのか知りたいとき<窓口編>』、具体的な道路台帳図の見方については『0404 道路台帳の見方』で、それぞれ紹介しています。

 

【位置指定図】(いちしていず)
位置指定図』は『位置指定道路』の範囲を図面にした、『道路台帳図』と似た性質を持つ書類です。
位置指定道路は特定行政庁に申請し、指定される特別な私道ですが、その申請の際に提出される、位置指定道路の範囲や周辺の状況などを記載した書類が、元々の『位置指定図』でした。
古い図面ほどアバウトな出来で、新しい図面については、大半が土地家屋調査士の作成したものですから、信憑性があります。
・・・と、いうのが従来の話ですが、札幌市では、平成25年5月頃から、旧来の位置指定図を再調査して、新たに『指定道路調書』の公開を開始しました。

従来は、一度指定された位置指定道路の状況は、図面上更新されず、古いままでしたが、国土交通省の働きかけによって、全国的に整備が行われて来た経緯があるようです。
国土交通省 建築基準法上の道路情報の整備について
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk5_000001.html

位置指定道路情報のインターネット公開も全国的に進んでいるようで、札幌市では平成30年3月からインターネットでダウンロードが可能となる予定です。
それまでは市役所2階の『道路確認担当課』で位置指定図のコピーの交付を受けられます。
手数料は1件(何枚でも)300円。具体的な取得方法は『0302 道路の内容を知りたい時』を参照して下さい。

いやぁ、平成24年の旧ブログ開始当初から、5年足らずで位置指定道路についての状況が大きく変わって来ました。(古いまま更新されない書類→市役所による再作成→インターネット公開)
紹介し甲斐があるというものですね。

ところで、とある自治体では市内に2ヶ所しか位置指定道路がないそうです。1ヶ所も指定されていない自治体も沢山あるのでしょうね。

 

【通行地役権】(つうこうちえきけん)
その土地の一部または全部を通行する権利。
主に通行地役権という言葉を使う場合には、権利の登記をしている場合が多いですね。
土地の一部について通行地役権を認める場合には、『地役権図面』で、通行可能な部分を登記してあります。(こちらも法務局で取得可能。)

通行される土地『承役地』と通行して行く先の土地『用役地』の所有者が変更した場合であっても、登記がしてあれば、地役権の効力は原則的に継続します。
(登記していない場合には、効力が継続しない場合があります。また、『所有者が変更した場合には効力が切れる』というルールで登記することも可能です。)
期間や使用料を設定して契約する事が出来ますが、登記の内容には反映されません。

自動車による通行が認められるかどうか、という事については明文化されていません。
裁判例によっては、自動車の通行権が認められたり、通行妨害の排除が認められたケースもあります。
(トラブルとなった場合、最終的には訴訟で決着するしかない問題になってきます。)

 

【囲繞地通行権】(いにょうちつうこうけん)
道路に接していない土地『袋地』の所有者が、自分の土地に行くために、『公道』と接している土地『囲繞地』を通過することができる権利です。
不動産業者でも逆に覚えている方が多いのですが、囲んでいる方の土地が『囲繞地』で、道路に接していない土地は『袋地』と言います。

登記がなかろうが、契約関係がなかろうが認められる権利ですが、無償ではなく、原則では使用料を支払うのが前提となっています。

また、一部の判例では、自動車の通行が認められた例もありますが、通行出来るのは原則人間だけで、自動車の通行は出来ません。

どうしても困った場合には、弁護士への相談により解決が必要ですが、使用料などの件もありますので、正直、あまりアテにし過ぎない方がよい権利です。

 

【幅員】(ふくいん)
道路の幅のことです。道路法に定める道路区域には、車道部分だけでなく、歩道や街路樹の部分を含みます。
たとえば大通は大通公園の部分も含めた全体が道路区域ですし、高速道路や橋などの高架がある場合には、高架も側道(脇道)も合わせて一体の道路区域とされている場合が多いです。

 『認定幅員』は公道の管理者(札幌市または北海道開発局)が指定する道路の幅で、 道路台帳図に記載されていますが、いろいろな事情によって実際の幅と異なる場合があります。

その、実際の幅を現況幅員』と言い、建物を建てる際に行う建築確認の手続きでは現況幅員が優先されます。
実際の道路幅と認定幅員が異なる場合や、公道に塀や建物が張り出している際は、建築確認の許可が下りない場合がありますので、ご注意下さい。