重要事項説明書の『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』ってなんなの?

当記事は2015年1月21日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

シリーズ:『新築』と『瑕疵担保履行』
『新築住宅』ってどういう意味?定義は?
『新築』と判定される具体的ケースと詳細な取り扱い
業界の俗説『登記をすると新築でなくなる』の嘘
新築住宅の『住宅かし保険』の概要を分かりやすく解説します
中古住宅の『住宅かし保険』は新築住宅の場合とどのように違うのか
重要事項説明書の『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』ってなんなの?

この仕事をしていると…と言いますか、どんな仕事をしていても、
同業者と共同で仕事をする、というのはなかなかに難儀なものです。
 
税理士事務所に勤務していた頃は専ら税務署(国税庁)や自治体の税務課が相手で、
同業者と仕事をするのは、グループ企業の連結会計や法人同士の折衝など、
ごくごく限られたシチュエーションだけでしたが、
不動産業では複数の不動産業者が仲介をする『分かれ』=『共同仲介』という形態が、
(手数料の両受けを狙う『両手』に拘泥しなければ)ポピュラーな取引形態であり、
つまりは同業者と仕事をするのはごくごくありふれたシチュエーションなのです。
 
『共同仲介』といって、何をするかと言えば、
双方の条件の折衝や売買の段取りや銀行融資の調整など多岐に渡りますが、
取引において最も重要な業務として、書面の作成業務があります。
主には『売買契約書』『重要事項説明書』がそれにあたりますが、
その他にもそれに付随した書類のやりとりが必要になります。
 
『売買契約書』と『重要事項説明書』の作成…共同仲介といっても、
双方の担当者が何度も面談して綿密に打合せをして…というような作成方法は取りません。
 
売主側か買主側、いずれか一方の業者が素案を作成し、
双方でやりとりし、不明点があれば確認し、修正箇所があれば随時指摘する。
取引条件の交渉内容がきちんと書面に織り込まれているか、念入りに確認する。
…といった風に、何度かやりとりをして契約書面を完成させてゆきます。
(その際に、必要があれば共同で現地調査をしたり、面談で打合せをすることもあります。)
 
作成するのは、一般的には売主側の業者が作成する方が多いようです。
(売主側の方が当然その物件についてよく知っているから、という事情があります。)
 
さて、一連の不動産一括査定サイトに関する記事の時もそうでしたが、
当ブログの記事は私の気分次第で題材をチョイスしている傾向が強く、
特に不動産業界の気に食わない話題については私怨丸出しで取り上げてきました。
 
そして、今日のお話も私怨です。
 
重要事項説明書の『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』という項目のお話。
 
前提条件として『重要事項説明』というのは、不動産の買主・借主に対して契約に先立って、
その契約を結ぶかどうかに影響し得る『重要な事項』を書面を提示した上で説明する、という制度です。
この書面の作成買主・借主への説明については宅建主任者が行わねばならない事になっています。
 
『重要な事項』というのは、法令的な制限の他にもインフラの整備状況や、
取引条件…特に支払や融資や保証、解約に関して特に説明するべき事項が定められており、
国が定めた以外の事項であっても、契約に影響するような事項は告知すべきとされています。
 
そして、国土交通省が定める『重要な事項』のうちの一つが、
『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』なのです。
 
それでは、この項目で説明するべき内容というのは、どういったものなのでしょうか。
 
不動産流通近代化センターが運営する情報サイト不動産ジャパン』の説明を抜粋しましょう。
 http://www.fudousan.or.jp/kiso/buy/8_2_3.html
 
 瑕疵担保(かしたんぽ)責任の履行に関する措置
  売り主が講ずる瑕疵担保責任の履行に関する措置について説明されます。
  瑕疵担保責任の履行に関する措置とは、売り主が倒産などにより、
  瑕疵担保責任を負うことができない場合でも、
  保険への加入などにより瑕疵担保責任を履行するという制度です。
  平成21年10月1日より、新築住宅の売り主には、
  瑕疵担保責任の履行に関する措置を講ずることが義務化されました
 
  *瑕疵担保責任:宅地または建物に、
   契約の締結当時に隠れた瑕疵(欠陥など)があった場合に、
   売り主が買い主に対して負う責任のこと。
 
ざっくり言うと、
『万一、不動産に何か欠陥があった時、売主はその保証をするけど、
 保証するための準備として、具体的にどんな事をしているかを説明するよ』
…という項目なのです。
 
『保証するための準備』とは、法務局に供託金を収めたり、
住宅かし保険に加入するといった事で、特に新築住宅の売買の場合には、
この『保証をするための準備』をする事が瑕疵担保履行法で義務付けられています。
 
一方で、土地の売買の場合では、『保証すること』はあっても
『保証するための準備』をする事は実務上、まずありません。
 
中古住宅や中古マンションの場合も基本的には土地と同様で、
例外的に、任意で住宅かし保険に加入している場合には、
この項目に記載される事になりますが、
保険へ加入しての取引はまだまだ少数派のようです。
(ごめんなさい、具体的な加入率についてはデータが見つけられていません。)
 
話を戻して『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』とは、とどのつまり何なのか。
 
それは『保証するための準備をしているかどうか』という事です。
『保証自体をするか否か』では、ないのです。
 
この二つを混同している不動産業者が、大変多くて、うんざりします。
 
『保証自体はするけど、保証の為の準備(保険加入など)はしません』という取引条件なら、

瑕疵担保責任の履行に関する措置は、『講じない』とするのが正解なのです。

 
こちらが作成した『重要事項説明書』に対して、
『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要が”講じない”となっているんですけど、
 瑕疵担保責任は負って頂けないんですか?それでは困るのですが…
『瑕疵担保責任は”負わない”とするべきで、”講じない”というのは誤りではありませんか?』
などと言う確認・質問を受ける事が多々あり、
オドレはホンマに宅建主任者か?!と思いながら、以上のような説明をするのです。
 
もう数年前の話ですが、更地の取引で買主側の担当者とこういったやりとりがあって、
『事前に買主様にも説明しておいて下さいね』と言っていたにも関わらず、
重要事項説明の最中に瑕疵担保責任を負ってもらえないなんて聞いてない!』と、
買主様が機嫌を損ねてしまった、という経験もあります。
『期限内の瑕疵担保責任は負いますが、その保証を履行するための措置…
 …つまり、保険への加入などは行わないという意味です。』
と、すかさず口を挟んだものの、
買主さんが一度抱いた疑念というのはすぐには消えないもので、
『瑕疵担保責任の期間が過ぎてしまったらどうするのですか?』
などと、ミもフタもない事を言われるものですから、
『この期間を取引条件として価格などが決定されていますから、延長する事は出来ません。
 土地に関する法令的・実務的な調査は弊社でも既に実施していますが、
 ご不安であれば期間内に土壌汚染や地中埋設物に関する調査を行なって下さい。』
と、言って、まぁ不承不承ではありますが契約を締結したことがあります。
(その後、その更地には無事住宅が建築され、買主様が居住されています。
 もちろん、土壌汚染や地中埋設物のリスクが高い場合には事前に説明します。)

 
この項目、必要な取引の時以外には省略してしまいたいのですが、
『講じない場合には講じない事を説明する事を国に義務付けられているため、
省略する事は出来ず、苦々しい思いをしながら日々を過ごしている次第です。
 
記載ミスや誤字脱字程度の事はともかくとして、
法令に関する理解そのものの問題になると、ちょっと困ってしまいますね。

この項目は平成21年の『住宅瑕疵担保履行法』の施行に伴い追加されたものです。
ですから、経験が長く、勉強不足の宅建主任者は知らない項目かもしれません。
不動産会社の担当者がこの項目の内容について正確に答えられるかどうかが、
その担当者のスキルを図る一つの目安になるかもしれませんね。

ハウスメーカーや工務店の場合には日常的に出てくる項目ですから、
それらの住宅営業マンがこの項目を知らなければ、論外と言えるでしょう。

それ以外の不動産業者の場合は経験か知識のどちらかが不足していると言えます。
普段賃貸ばかりやっていて売買の経験が浅いであるとか、
土地の取引ばかりしていて建物の取引実績が少ないであるとか、
ほとんど現場以外の仕事をしていて実務を知らないであるとか、
まぁ、そういった事情が考えられますが、どのような事情にせよ、
この項目の詳細を知らない場合、ちょっと頼りないと言えるかと思います。

 

中古住宅の『住宅かし保険』は新築住宅の場合とどのように違うのか

当記事は2015年1月19日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

シリーズ:『新築』と『瑕疵担保履行』
『新築住宅』ってどういう意味?定義は?
『新築』と判定される具体的ケースと詳細な取り扱い
業界の俗説『登記をすると新築でなくなる』の嘘
新築住宅の『住宅かし保険』の概要を分かりやすく解説します
中古住宅の『住宅かし保険』は新築住宅の場合とどのように違うのか
重要事項説明書の『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』ってなんなの?

ところで、これまでの記事で『新築住宅でなくても任意で瑕疵保険に加入する事は可能』と紹介してきましたが、
『新築で義務の保険』と『新築以外で任意の保険』にはどのような違いがあるかも、紹介しておきましょう。

『新築で義務の保険』は1号保険『新築以外で任意の保険』は2号保険と言い、それぞれの特徴は下記の通りです。

義務化保険(1号保険)
 住宅瑕疵担保履行法第19条第1号に規定されている資力確保義務に対応した保険契約。

 被保険者が建設業者または宅地建物取引業者であって、
 未だ人の居住の用に供したことのない住宅で、
 建設工事の完了の日から起算して1年以内に

 発注者または買主(以下「住宅取得者」)に引き渡された住宅を対象とするものです。
 ただし住宅取得者が宅地建物取引業者である住宅は任意保険(2号保険)となります。

任意保険(2号保険)
 住宅瑕疵担保履行法第19条第2号に規定されている1号保険以外の保険契約。
 〈任意保険の例〉
 完成から一年を超えて引き渡された住宅
 建設業の許可の不要な事業者が建設した住宅
 住宅取得者が宅地建物取引業者である住宅

対象となる物件が新築か否かで1号保険、2号保険が分かれてくる訳ですが、
原則的には、保険による保証の内容は同一です。

1点だけ異なる点は1号保険のみ『指定住宅紛争処理機関』を活用できる、という点です。
『指定住宅紛争処理機関』とは業者と消費者の間に瑕疵にまつわるトラブルがあった時、
自身で弁護士へ依頼せずとも、
第三者である弁護士による「調停」または「仲裁」を受ける事が出来る機関です。

『紛争処理機関』に支払う手数料は1万円こっきりで他の費用はかからないとの事です。
通常、弁護士に依頼すれば裁判までゆかずとも
報酬や実費で少なくとも数十万円の費用が発生します。
裁判に至れば更に費用が発生する訳で、
『紛争処理機関』は非常にお手頃な相談先であると言えます。
原則的にはその「調停」に従う事とされていますが、
どうしても不服があるという場合には、
裁判などの手段に訴え出る事も可能です。

2号保険(新築住宅以外)の場合、直接話し合うか、弁護士に依頼する事になります。

『特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律』は、
真面目にやっている事業者にとっては負担となるだけという批判もありますが、
本当にその業者が信頼できるのかどうか分からない消費者にとっては、
ある程度は有意義な制度であるという事が出来るでしょう。

新築住宅の『住宅かし保険』の概要を分かりやすく解説します

当記事は2015年1月13日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

シリーズ:『新築』と『瑕疵担保履行』
『新築住宅』ってどういう意味?定義は?
『新築』と判定される具体的ケースと詳細な取り扱い
業界の俗説『登記をすると新築でなくなる』の嘘
新築住宅の『住宅かし保険』の概要を分かりやすく解説します
中古住宅の『住宅かし保険』は新築住宅の場合とどのように違うのか
重要事項説明書の『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』ってなんなの?

さて、ここまでは『品確法』に基づく『新築住宅』の定義を3回に渡り掘り下げてきました。
『品確法』では、『欠陥住宅からの消費者保護』を目的として、
売主に引渡し後10年間の瑕疵担保責任(欠陥の保証)を義務として課しています。

これは建築業者、不動産業者だけでなく一般消費者についても課されている義務です。

『品確法』は平成11年6月23日に公布された法律ですが、
実は、欠陥の保証をするにあたってはこの法律だけでは不十分だったという事情があります。

それがヒューザー・姉歯耐震偽装問題に端を発した欠陥マンション問題です。

ぶっちゃけ『10年間の保証をする義務は課したけど、具体的にどう保証するかは決めていなかった』のです。
建築会社や分譲会社が倒産した場合に、
消費者を保護する手立ては殆どなかった
という状況があります。

そこで満を持して登場したのが『特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律』です。
(平成19年5月30日公布、平成21年10月1日施行)

この法律では、建築業者や不動産業者に対して、
『10年間の保証義務をきちんと果たせるようにする』事を目的
としています。

具体的に、どのように保証するかと言えば、
①法務局に供託金を預ける
②瑕疵保険に加入するのいずれかの方法が定められています。
『品確法』の瑕疵担保責任は一般消費者が新築住宅を転売する際にも課されますが、
『瑕疵担保履行法』の義務は、一般消費者が売主の場合には該当しません。

の方法では住宅の引き渡しから10年間、法務局に所定の供託金を預託する事が必要になります。

1戸の場合は計2000万円、10戸の場合は計3800万円(1戸380万円)、100戸の場合は計1億円(1戸100万円)…
まぁ、大変多額の現金を10年間寝かせておかなければならない事になります。

の方法では、国土交通大臣が指定する5つの『住宅瑕疵担保責任保険法人』
『住宅瑕疵担保責任保険』のいずれかに加入し、保険料を納入します。
これがいわゆる『住宅かし保険』で、
法人によって『すまいまもり保険』『住宅あんしん保証』などの商品名があります。

 ◇株式会社住宅あんしん保証
 
 ◇住宅保証機構株式会社
 
 ◇株式会社日本住宅保証検査機構
 
 ◇株式会社ハウスジーメン
 
 ◇ハウスプラス住宅保証株式会社

 ※ 過去に『たてもの株式会社』も瑕疵保険の引受を行っていましたが、
   平成23年9月14日付で国交省へ廃業届が出され、
   平成23年11月16日に破産決定されました。
   既に引き受け済みの保険契約については、
   『株式会社住宅あんしん保証』が引き継いでいます。

①供託②保険かを選択するのは、義務を負う業者ですが、

2000万円もの現金を10年間寝かしておくよりは、
幾許かの保険料を支払う、というケースの方が多いようです。
(マンションなど比較的まとまった戸数の場合には、
 供託方式が選択される場合もあります。)

これにより、住宅の購入者が取得した新築住宅の欠陥について
10年間の保証を受けられる制度的担保が確立した
と言えます。
(まぁ、この保険制度については色々と批判もあるようですが、
 この場では割愛します。)

さて、この『かし保険』は新築の場合には事業者に加入義務があり、
新築以外の場合には、任意保険として加入する事が出来ます。
次回は、新築の場合と中古の場合の『住宅かし保険』の違いを紹介します。

業界の俗説『登記をすると新築でなくなる』の嘘

当記事は2015年1月7日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

シリーズ:『新築』と『瑕疵担保履行』
『新築住宅』ってどういう意味?定義は?
『新築』と判定される具体的ケースと詳細な取り扱い
業界の俗説『登記をすると新築でなくなる』の嘘
新築住宅の『住宅かし保険』の概要を分かりやすく解説します
中古住宅の『住宅かし保険』は新築住宅の場合とどのように違うのか
重要事項説明書の『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』ってなんなの?

ええと、もうちょっと『新築』の定義についてもうちょっと掘り下げてみる事にしました。
いい加減しつこいのですが、品確法と公正競争規約での『新築住宅』の定義は『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない居住用建物』です。

 
で、その『人が住んだことがない』という状況を
客観的に立証するのは非常に難しい
というお話をしました。

例えばその建物に住民票を移していたとしても、
実際に居住していない場合『人が住んだことがない』と判断される、とも解説しています。
 
しかし、私のこの見解には詳細な客観的根拠がありません。
そこで、国土交通省の担当部署:住宅局住宅生産課へ問い合わせてみる事にしました。
問い合わせをするにあたって、こちらも十分な理解がなければなりませんから、
法律や手引きを読むほか、インターネット検索でも色々と文章を読んでみることにしました。
 
すると、不動産業界に勤務するという色々な方のブログがヒットします。
また、Yahoo!知恵袋のような質問サイトにも多く行き当たりました。
それらをじっくりと読んでみましたが…
ホントにこの業界の俗説と都市伝説の多さには、溜め息が出るばかりですね。
 
前回紹介したように、『工事完了日』とは実態として建物が引渡し可能となった日を指します。
建築確認検査済証の交付を受けた日や建築確認検査を実施した日、
建築確認検査済証に記載された工事完了日など、色々な見解がありますが、
まぁこれらは100%正解とは言えませんが、100%誤りでもありません。
 
しかし、まったくもってヒドいのは登記と新築に関する理解。
『表題(表示)登記がされた時点で新築ではなくなる』
『保存登記をした時点で新築ではなくなる』などなど、
俗説をまことしやかに書いている人間が、殊の外多いのに驚いてしまいました。
 
…ひどい話では新築後1年を経過すると表題登記をしなければならない』という、
どこから聞いたの、その話?!というような論もあり、辟易してしまいます。
不動産登記法に定める表題登記の期限は新築後または取得後1ヶ月以内です。
(所有権移転に使う『住宅用家屋証明書』
の期限の1年以内と混同しているのでしょうか?
 原則は一ヶ月で罰則も定められているのですが、
 実務上は諸事情あって、表題登記されないまま何年も経っている建物も多いのです。)

表題登記も保存登記も、その建物に関する権利関係を明白にするためのものです。
(表題登記は土地や建物の性質を記録するものですが、それは権利関係を明白にするための記録です)
 
ざっくり『所有権がある』=『住んでいる』という事にならないなんて事は、
賃貸用戸建や賃貸アパートの登記名義が住んでいる人とは別である事を示すまでもなく、自明です。
 
Yahoo!知恵袋などで一般消費者の方がそのような勘違いをするのは仕方がありませんが、
仮にも不動産業界にいる人間が宅建主任者を名乗って書く文章が、
そのような耳学問の俗説で語られているというのは、同業者としてちょっと恥ずかしいですね。
 
…なーんて言ってますが、当の私もこのブログに書いている内容が、全て正しいとは思っていません。
用語に誤りがあったり必ずしも正しくない言い回しを使っていたりしても、
あえてそのままにしている箇所もあります。
(それは表現上・ニュアンスの分かりやすさを優先した都合であったり、
 文章の一部だけ
直すと収拾がつかなくなったり、事情はいろいろです。)
また、私自身が気付いていない誤りも、おそらく多々あるはずです。
 
だからこそ、一つ一つの案件に沿って法令条文を引っ張ったり、
役所へ問い合わせる事が大事なのであって、
インターネットで気軽に調べたものを回答とするのは、プロの仕事ではありません。
このブログは私がプロとして有償で活動しているものではありませんから、
当ブログの免責事項でも触れていますが、当ブログの内容について、
誤りがあったとしても、私は何の保証も致しませんので悪しからずご了承下さい。

ただし、プロとして有償で業務を委託された場合において、
その調査によってお客様に損害を与えた場合には、当然にその責任を負うものです。
 
当ブログは一般消費者の方だけではなく多くの同業の方にご愛顧頂き、
それ自体は大変うれしく思っていますが、
意図せざるところで都市伝説や風説を流布しかねないと思うと、
少し空恐ろしい思いにもなり、このような駄文を書き連ねてしまいました。
 
 
…と、いう訳で、国土交通省住宅局住宅生産課へ問い合わせた回答は以下の通り。
①新築住宅は『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない居住用建物』のこと。
②『新たに建築された日』は、実態としての工事が完了した日。
③『人が住んだことがない』かどうかは、実際に人が生活したかどうかで判定する。
建物の表題登記や保存登記は、『新築』の判定とは何ら関係ない
余談ですが、この考え方を適用してゆくと、
モデルルームなどで仮設事務所などのように扱っていた場合でも、
通常はそれを『居住』とは見なさず、『新築住宅』の扱いとなる、という事ですね。
<個人的備忘>
新築住宅とはどういう物件を言うの?その定義とは?│新築住宅購入のポイント・注意点とは?!
 
【新築物件と呼べるのは建物が完成したあといつまで?】│失敗しない中古マンションの見極め方


新築未入居、登記済=中古扱いの物件購入
 http://www.e-mansion.co.jp/bbs/thread/239154/

おしえてください。建築物件(築1年)購入時に「建物表題登記」費用を請求されました。 – 教えて! 住まいの先生 – Yahoo!不動産
 http://knowledge.realestate.yahoo.co.jp/chiebukuro/detail/1079759060/

『新築』と判定される具体的ケースと詳細な取り扱い

当記事は2015年1月5日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

シリーズ:『新築』と『瑕疵担保履行』
『新築住宅』ってどういう意味?定義は?
『新築』と判定される具体的ケースと詳細な取り扱い
業界の俗説『登記をすると新築でなくなる』の嘘
新築住宅の『住宅かし保険』の概要を分かりやすく解説します
中古住宅の『住宅かし保険』は新築住宅の場合とどのように違うのか
重要事項説明書の『瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要』ってなんなの?

前回の記事、『『新築住宅』ってどういう意味?定義は?』では
『新築住宅』とは『品確法』『公正競争規約』の2つの裏付けから、
『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない居住用建物』を指すと説明しました。

この2つのうち、特に重要な役割を担うのは『品確法』で、
その目的は『欠陥住宅からの消費者保護』にあります。
新築住宅の主要構造部…つまり、屋根・柱・梁などの部分についての
瑕疵担保責任(欠陥の保証義務)が10年とする義務
が定められています。

この法律には他にも『住宅性能の客観的定義付け』も目的としています。
最近聞くようになった『住宅性能表示制度』はこの法律に基づくもので、
住宅に関して断熱・防音・防災・防犯など一定の基準が定められています。
しかし、これはあくまで任意の規定であり、性能検査を受けない事も可能ですから、
法律の主眼が『欠陥住宅からの消費者保護』にあることは明白です。

さて、そんな前提条件を頭に入れた上で、
『新築住宅』の扱いを具体的に考えてゆきましょう。

◇具体的に『新築』と言える期間はいつからいつまで?
建物が完成した日からそのちょうど1年後までの1年間です。
例えば、令和3年1月2日に建築された建物であれば、
令和3年1月2日~令和4年1月1日までが『新築』の期限となります。

建物が完成した日、というのは建築工事が完了した日を指し、
実態を鑑み、建物本体の引渡しが可能な状態となった日が工事完了日となります。

ただ、その『建物が完成した日』というのが実務上ちょっと難儀で、
特に不動産業者が企画した建売住宅などの場合には、
建築業者から不動産業者に引き渡された日や建築確認手続きの日など、
建物の建築に関していろいろな日付が登場しますし、
かつ、営業マンがいまいちその辺を理解していなかったりします
が、

あくまでも工事の完了日が、『新築』の起算日となります。

◇『人が住んだことがない』ってどういう意味?
人が住んだ事がない、という意味です。
…えーと、何の説明にもなっていませんね。

実のところ、法律や手引きを見ていても具体的な定義付けが見当たらないのです。

他の法律などの扱いを鑑みるに『実際に寝泊まりする』と考えられますが、
それをどのように立証するのかについては、なかなか難しい処があります。

客観的に言えば、住民票を移していたりすれば、居住している傍証になりますが、
これも実態を伴わない(=住んでいない)場合には、無効になると思われます。

『品確法』においては、消費者保護が目的ですから、
このような取扱いについては消費者優位に運用されるはずです。
例えば、瑕疵担保責任を10年とする事を避ける為に、
業者の身内が一時的に居住したり住民票を移したりして、
『新築』扱いでなくすという事は、認められないでしょう。

まぁ、その場合には『新築』という宣伝文句を使えなくなって、
ただの『中古住宅』になってしまう訳ですから、
あまり実用的ではありませんし、通常は考えられない手法ですね。
(『新築』で売る事には、それほどに流通上の優位性があるのです。)

◇人が住まないまま転売された一年内の建物は『新築』になるの?
なります。

…と、言うのは例えばマンションや分譲住宅のデベロッパーが倒産した場合
そのデベロッパーから事業を引き継いだ業者から住宅を購入した消費者が、
売主が異なるからといって保護されなくなるのは合理的ではないという判断です。

消費者が購入した新築住宅を未入居のまま第三者へ転売した場合はどうでしょうか。

この場合でも『新築住宅』という扱いになり、
一般消費者である売主は、10年の瑕疵担保責任を負います。

詳細については、以下の記事を参照して下さい。

新築未入居の物件を売却する場合の品確法上の問題点|不動産流通近代化センター
http://www.kindaika.jp/archives/1622

品確法の定めにおいて『新築住宅』というのは純粋に、
『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない居住用建物』
…という以上の定義はないのです。

◇『新築』でなくなった建物はどうなるの?
『人が住んだ事のある居住用建物』は単なる中古住宅です。
では、『人が住んだ事がないまま一年を経過した建物』はどうでしょう?

これは不動産取引の慣例上、『築後未入居』『未入居』などと呼ばれています。

かつては『新築未入居』などと言うこともあったようですが、
現在、この言い回しは『公正競争規約』によって、禁止されています。

『未入居』の物件は何らかの事情で注文住宅が未入居のまま売却される場合もありますが、
その多くは建築業者や不動産業者の企画した建売住宅が1年以上売れ残ってしまったものです。

これを狙って強気の価格交渉をしようとする方も多いようですが、
まぁ、広告に掲出されている価格を大きく下回る、というのは、
不動産流通の構造上、ちょっと難しいかもしれません。

どちらにせよ、『新築』でなくなった建物については、
『品確法』上、10年の瑕疵担保責任が義務ではありません。

前回解説した通り、10年の瑕疵担保責任を任意で設定する事は可能ですが、
業者に対する義務として定められているものではありませんから、
『築後未入居』の物件を購入する場合には、この辺りを事前に確認しておく必要があります。

『新築住宅』ってどういう意味?定義は?

当記事は2015年1月3日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。

新年あけましておめでとうございます。

ご挨拶はさておき、新年一発目の記事ですから、一般需要の高い記事を書いて行こうと思います。

不動産調査や新しい道路に関する記事で検索順位が高い当ブログですが、
札幌市が分譲する新興住宅地『ウェルピアひかりの』に関する検索でも
各検索エンジンの上位群に表示されるようになってきたようです。

ハウスメーカー・工務店といった売り手の商品情報ではなく、
ある程度距離を置いた人間が俯瞰的にまとめた記事の方が、需要もあるようですね。
(というか、ハウスメーカーの営業さんなどにも読んで頂いているようです。)

・・・と、いう訳で、住宅を新築しようとする方にも閲覧されているようですから、
今回は『新年』『新春』とかけまして『新築』について紹介してゆきましょう。

日常会話で『新築』と言えば新しく建築した建物を漠然と指しますが、
正式には建物の『新築住宅』ってどういう定義の言葉なのでしょうか?

結論から言いましょう不動産流通上、『新築住宅』とは、
『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない居住用建物』を指します。

根拠は二つあります。

『住宅の品質確保の促進等に関する法律 第2条2項』(以下、『品確法』)
 この法律において「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、
 まだ人の居住の用に供したことのないもの
 (建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)をいう。

『不動産の表示に関する公正競争規約 第18条1項』(以下、『公正競争規約』)
 建築後1年未満であって、居住の用に供されたことがないものをいう。

『品確法』欠陥住宅に関する消費者保護を定めた法律で、
この法律に定める『新築住宅』については、建設業者・不動産業者が、
消費者に対して10年間の保証を行う義務がある
ことを定めています。

従来騒がれてきた『欠陥住宅』『手抜き工事』から消費者を保護するための法律ですね。
ただし、定義の通り、建築後1年超の住宅については、保証義務の対象外となります。
(義務がなくとも、任意で保険に加入し保証をする事は可能です。)

『公正競争規約』は、不動産の広告に関する記載のルールを定めたものです。
法律ではなく、業界団体(不動産公正取引協議会)の定めたものですが、
『不当景品類及び不当表示防止法 第11条第1項』では、
業界団体の定めたルールが法律に準ずるものと出来るとされていますから、
限りなく法律に近い定めであり、罰則の規定も定められています。

これにより、広告等でも『新築』の定義は『品確法』で定めるものと同一となりました。

このように『品確法』と『公正競争規約』の両面から、『新築』の定義がされています。
その結果、不動産流通の世界で『新築』という言葉は、
『新たに建築されて一年以内の、人が住んだことのない建物』を指すことになったのです。

余談ですが、ここまでの解説は不動産流通の世界での定義であって、
『新築』という言葉の定義がこれに限られている訳ではありません。

例えば一般の辞書では『新しく建物を建てること。また、その建物。』と定義されていますし、
同じ不動産に関する法律でも、『不動産登記法』では、
『平成27年1月3日新築』といった風に、建築日を示すための用語として使われます。

私はこのブログの記事を書く際に、出来るだけ法律原文を引っ張って来るようにしていますが、
これはインテリぶりたいだとか、文章を権威付けたいといった目的ではなく、
法律によって言葉の定義も様々ある訳で、
根拠を示さずに論を展開する事は非常に危険だからなのです。

『新築』に限らず『事業者』『業務』『土地』『建物』といった用語も、
法律によって定義が多岐に渡り、これを曖昧なまま使う事は非常に危うい
事です。

次回、以下のような具体例を挙げ、更に詳しく『新築』について解説してゆきましょう。
 ・具体的に『新築』と言える期間はいつからいつまで?
 ・『人が住んだことがない』ってどういう意味?
 ・人が住まないまま転売された一年内の建物は『新築』になるの?
 ・『新築』でなくなった建物はどうなるの?

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