調19 札幌アートヴィレッジ地区 夏の様子と平成27年度の価格

当記事は2015年05月15日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

平成27年4月12日の札幌市長選挙を受け、平成27年5月2日には、新市長 秋元 克広氏が就任しました。
3期12年を務めた上田 文雄前市長の副市長でもあった新市長ですから、今後の札幌市の行政は上田市政を発展させたものになる、と言われています。

さて、今後の市政には除雪問題や地下鉄延伸の有無、市電の再延伸を始め、
都市計画上、不動産流通上にもさまざまな影響が出てくると思われますが、
今回はいくつもある懸案事項のうち、非常に注目度が低いもの…
『札幌アートヴィレッジ地区』を再び取り上げてゆきましょう。

過去の記事はこちら
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区

前篇では都市計画上の歴史、後篇では各区画の具体的経緯を紹介しましたが、一言で言ってしまえば、鳴かず飛ばずの産業団地ですね。

平成2年からずっと札幌市が分譲・賃貸を行なっていますが、
芸術の森にちなんで、利用は芸術関係の業種に限定されているため、
現在運営されているのは『芸森スタジオ』だけという体たらくなのです。

かつては地場のゲームメーカー、ハドソンの中央研究所がありましたが、
ハドソンの子会社化とブランド消滅に伴って閉鎖され、現在は転売先を探しているところです。

アートヴィレッジには未利用区画が2区画ありますが、この価格は年度ごとに改定されます。
  札幌市 札幌アートヴィレッジ:分譲・賃貸区画
   http://www.city.sapporo.jp/keizai/biz_info/danchi/art-kukaku.html

さて、もう25年も売れ残っている団地、どのような値動きをしているのでしょうか。
前年対比でみてゆきましょう。(具体的な価格は札幌市のホームページをご参照下さい)

 第1区画  分譲価格:前年比 3.3%↑    賃貸価格:16.9%↓
 第2区画  分譲価格:前年比11.6%↑    賃貸価格: 6.9%↓

Σ(゚Д゚,,)札幌市サンよ、ホントに売る気あんのか?

20年以上売れ残っている土地の分譲価格が今更値上がりするなんて馬鹿げているでしょう。

この値上がりの原因はどこにあるのでしょうか?
札幌市に限らず、自治体が不動産…特に土地の取引をする場合、
まずもって価格の根拠として重要視されるのが『公示地価』ですから、
もしかしたら公示地価が大幅に上昇した影響なのかもしれません。

札幌市の場合は、公示地価が区ごとに分かりやすくまとめられていますから、
その資料『土地価格地図』を見てみましょう。 
  札幌市 土地価格地図
   http://www.city.sapporo.jp/keikaku/chika/chika.html

・・・え?札幌市の地価って全体でも0.9%しか上昇してないし、
南区に至っては0.2%のマイナスなんですけど!(;´∀`)
ちなみに平成26年は全市で1.3%の上昇、南区は±0%(変動なし)。
更に、芸術の森に一番近い地点の地価も、横這いか下落で、上昇はしていません。

つまり、アートヴィレッジの分譲価格上昇の根拠は公示地価ではない、という事です。
賃料は値下がりしているものの、前回説明した通り、アートヴィレッジ地区は、芸術事業用の建物を建設することが念頭に置かれていますから、基本的に、賃貸での利用というのはあまり考えられていないのです。

・・・っていうか、あの山奥に建物も建てずに何をやるんだって話がありますからね。

ここまで来ると札幌市にアートヴィレッジを売りたくない事情があるのでは?と勘ぐってしまいます。
造成費と維持費がかかっている状態で売却してしまうと、赤字が計上されるので、会計上の資産として残しておいて『含み損』のままにしておこう、という腹積もりなのでしょうか。
もしそうだとしたら、官僚主義・民主主義両面の悪しき側面と言わざるを得ません。

今後も道路整備や未利用地の草刈などに市の予算が使われる事になりそうです。

・・・と、このように、札幌アートヴィレッジは山奥にあるものの、
税金を使って綺麗に造成され、今も分譲地として良好な状態を保っています。

繰り返しますが、ネックとなるのはあまりに厳しすぎる用途制限なのです。

ぶっちゃけ、もう失敗してしまった事は灯を見るより明らかなのですから、
失敗は失敗として受け止めた上で、塩漬けにするのではなく、
きちんと『損切り』出来るように、都市計画を改める事が必要なのではないでしょうか?

そうでなくては、これから20年後も、30年後も、
この山奥の産業団地に累積的な赤字が計上されていくことになってしまいます。

【関連記事】
私は毎年、この地区の推移を見守っています。関連記事はこちら。
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 (平成26年)
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 夏の様子と平成27年度の価格
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 夜のアートヴィレッジと平成28年度の価格

調19 札幌アートヴィレッジ地区

当記事は2014年04月16日および2014年04月17日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

市街化調整区域内の地区計画を現地の写真を交えて紹介するという、(自称)画期的なコンテンツ、これまでに4回を重ねてきましたから、全18地区のうち今回も含めると既に四分の一以上を取り上げた事になります。

今回は『既存宅地制度の代替としての地区計画』ではない地区計画です。
大変興味深い経緯を辿った地区ですから、みっちりと紹介してゆきます。
その名も決定番号:調19『札幌アートヴィレッジ地区』

『そんなもん聞いた事ない』という人もいるかと思いますが、住所としては『札幌市南区芸術の森3丁目』、地区計画の範囲はこんな感じです。

Googleマップではこんな風になっています。

『芸術の森○丁目』というのは割とスゴい住所ですが、厚別区にある『下野幌テクノパーク』に比べれば幾分常識的かもしれません。
芸術の森1丁目には札幌市立大学 宮の森キャンパス(本部)があります。
芸術の杜2丁目には市民にも馴染み深い、美術館やホールなどがあります。
いわゆる『芸術の森』としてイメージされるのはこの2丁目ですね。
更に南に行くと、芸術の森3丁目、今回紹介する『札幌アートヴィレッジ地区』です。
芸術の森を表すキーワードはズバリ『バブル景気』です。
というのも、この地区の大きな転換点は平成3年平成18~19年
ちょうど第一次平成不況の始まりとなったバブル崩壊と、
リーマンショックを契機としたファンドバブルの崩壊と重なります。

どんな経緯があったのかは、この地区計画の目標に詳しいです。
 当地区は、南区の大自然と芸術文化が調和した環境づくりとして芸術の森の南端に位置し、
 本市の芸術文化活動の領域を広め、新しい芸術文化を創造するとともに、
 札幌市の個性ある産業の育成を図るため、平成2年に札幌市が造成した団地である。
 さらに平成19年にはその分譲方針を見直し市立大学や芸術の森との連携のもと、
 従来の芸術文化産業の振興に加え、芸術文化活動の発信や集客交流、
 人材育成などの幅広い事業展開を対象とした企業や団体等を誘致していくこととしている。
 そこで本計画では、札幌アートヴィレッジ地区の開発理念、
 分譲・賃貸方針に基づく土地利用及び建築物の配置等の誘導と、
 併せて周辺環境との調和のとれた良好な市街地の形成を図ることを目標とする。

地区計画の目的というと、いつもはテンプレートのコピペ文書ですが、今回は大変参考になる内容ですね。

昭和56年から平成3年にかけて造成された芸術の森地区のうち、
平成2年5区画が造成された芸術の森3丁目は、
札幌市を主体として分譲を行い、企業などの誘致を行ってきましたが、
3区画については分譲出来ず、2区画にのみ建物が建っている状態が15年ほど続きます。
(うち数区画についてはどうやら、関東の大手企業による事業計画もあったようです。)
札幌市もこんな状態ではイカンと奮起し、ファンドバブル全盛平成19年10月3日、地区計画決定がなされます。
リーマンショックは平成20年9月の出来事ですから丁度その前年という事になります。

ちなみに、芸術の森1丁目にある札幌市立大学は平成18年4月開学です。
更に母体の学校法人『札幌市立高等専門学校』は平成3年設立ですから、
どちらも札幌市の事業とはいえ、ホントにアートヴィレッジと同じような経緯を辿っているんですね。

より細かい話をすると、平成18年の都市計画法の改正によって、
以前は許可不要だった公的機関が行う開発行為について、
平成19年11月30日以降、許可が必要になってしまったという事情があるのですが、地区計画の内容や当時の議事録を見るに、この地区計画の決定は、やはり起死回生の策であったような印象を受けます。
バブルに踊って造成した芸術の森ですが、再起を図る為のプロジェクトは、リーマンショック以前のファンドバブルの波に乗せられてしまっただけなのかもしれません。

私自身、ファンドバブルとリーマンショックのアオリを大きく受けた世代です。
ファンドバブルの就職活動超売り手市場と、その後の大不況を重ねると感慨深いものがあります。
商売もギャンブルも政策も、そして人生も、人間はいつだって同じような落とし穴に嵌ってしまうものなのかもしれませんね・・・

そんなアートヴィレッジ地区、現在どのような状況になっているかと言えば、
5区画中2件が分譲・賃貸中、1件が賃貸中の空き地、
1件が売却済の建物で空き地、稼働しているのは残りの1件のみ
です。
分譲情報については札幌市のホームページを確認して下さい。
 札幌市 札幌アートヴィレッジ:分譲・賃貸区画 【リンク切れ】
  http://www.city.sapporo.jp/keizai/biz_info/danchi/art-kukaku.html

 さっぽろ産業ポータル 札幌アートヴィレッジ
   http://www.sec.jp/iarea/view/id/19

価格は毎年変わるという事なので、写真では黒塗りにさせて頂きました。
いつも好き勝手言っている私ですが、これでも時計台の鐘が鳴る札幌の市民ですから、札幌市の事業を妨害する意図はありません。

価格も市街化調整地域らしいお値段で、道路も整備されています。
何故こんなにも利用が進んでいないのでしょうか?

それは、この地区に建築できる建物に厳しい制限が課せられているからです。
以下は売買の場合、賃貸の場合ともに、この地区に設置してはいけない建造物です。
 ① 建築基準法別表第二(と)項第1号、2号、4号に掲げるもの
    =準住居地域内に建築してはならない建築物
       →一定規模以上の工場や商業施設
 ② 住宅
 ③ 学校(大学、高等専門学校、専修学校その他これに類するものを除く。)
 ④ 神社、寺院、教会その他これらに類するもの
 ⑤ 老人ホーム、保育所、身体障害者福祉ホームその他これらに類するもの
   (就業者のための付帯設備として建築物内に設けるものを除く。)
 ⑥ 老人福祉センター、児童厚生施設その他これに類するもの
 ⑦ 病院、診療所(就業者のための付帯施設として建築物内に設けるものを除く。)
 ⑧ 店舗、飲食店その他これらに類するものでその用途に供する部分の床面積の合計が500㎡を超えるもの
 ⑨ ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場又はバッティング練習場
 ⑩ 遊技場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これらに類するもの
 ⑪ 自動車教習所
 ⑫ 畜舎
 ⑬ カラオケボックスその他これに類するもの
 ⑭ 自動車修理工場
 ⑮ 工場(美術品又は工芸品の制作を行うもの及び建築基準法施行令第130条の6に掲げるものを除く。)
    建基法施工令130条6→50㎡以内の食品工場。例)パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋。

・・・一体何をやれと言うのか!( ゚Д゚)
(芸術関係の施設を運営して下さいという話です。)
これ、かなり厳しい制限でして、事業を行う予定で売買しても、実際に事業を開始しない場合には、札幌市に土地を返さなければならなくなります。
(10年間の『買戻特約』が登記されます。)
一度買ったものを他人に転売する場合でもこの特約は有効ですから、もうアートなヴィレッジになるしかない訳です。
しかも、最低でも一区画5000㎡はある土地で、規模の制限があるというのはどういう了見なんでしょう。
5000㎡の土地500㎡の芸術的飲食店50㎡の芸術的パン屋さんでもやれというつもりなのでしょうか。

『これだけ広いんだからメガソーラーでもやれば?』という訳には行かないんでしょうねぇ…

<現在分譲中の空き地にホテル建設の予定があった>
 平成20年3月1日の北海道新聞の記事を引用します。
 建設不動産コンサルティングの都市デザインシステム(東京)は、
 未利用の分譲地約一万平方メートルにホテル建設を決め、六月に正式契約する。
 二~三階の低層で延べ床面積約三千五百平方メートル。
 三十室の客室ほか、芸術作品のギャラリーも複数設ける。
 この夏着工、来年夏開業の予定だ。
 同社は「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)などに
 訪れるアーティストも多く、収益も十分見込める」と話す。

なんとも明るいニュースですが、その土地は現在も更地です。
(面積から類推するに、一番西側の区画・・・市の分譲資料の番号②の土地と思われます。)
株式会社 都市デザインシステムはコーポラティブハウスの企画やホテル経営で躍進した企業ですが、
平成20年8月に経営破綻し、民事再生法の適用を申請しています。
(民事再生を経てコクヨの子会社となり、現在はUDS株式会社として建築企画を行っています。)
当時の報道では、沖縄の大規模リゾート開発に頓挫したという事ですが・・・
同年の9月にはリーマンショックがありましたから、まぁ遅かれ早かれ・・・という事なのでしょうね。

<地場産業の栄枯盛衰>
札幌アートヴィレッジで特に有名なのは『株式会社ハドソン中央研究所』です。
私としては色々と守秘義務の問題が出てくるので正直あまり取り上げたくありません。

ただ、地区計画を紹介するにあたってその地区を代表する建物を紹介しないというのは、資料的価値に劣ります。
守秘義務の対象は『業務上知りえた秘密』ですから、その点には触れずに、『芸術の森 ハドソン 中央研究所』で出てきた検索結果を元に記述したいと思います。

この建物は桃太郎電鉄ボンバーマンで有名な、株式会社ハドソンの中央研究所でした。
ハドソンは札幌を代表するIT企業でしたが、拓銀破たんを機に資金繰りが悪化、平成17年にコナミグループの子会社となり、平成24年に吸収合併され消滅しました。

『中央研究所』は、創業者・工藤裕司氏の趣味ハドソンの自由な社風がよく現れた施設だったそうです。
建物内外をミニSLが走り回り、古銭の展示室などもあったという事がインターネット上に書かれています。

向かって右側にある柵が、ミニSLのレールだったという事です。
しかし、コナミの子会社となった直後、平成17年3月末でこの建物から撤退。
子会社化→吸収合併→そして平成26年のハドソンブランド完全消滅まで、わずか9年
高橋名人桃太郎電鉄など、一世を風靡した企業の歴史は40年足らずで幕を閉じたのです。

建物前にある回収時刻が白紙の私設ポストと建物の窓からのぞくミニSLの駅『ニセコ』が切ないですね。

<アートヴィレッジ 最後の砦>
そして、現在も残っているのは株式会社SAVEが運営する『芸森スタジオ』のみです。

この施設は、各種音響機材とスタジオを貸し出し、音楽のレコーディングを泊まり掛けで行う事が出来る施設で、運営会社の株式会社SAVEは、歌手の松山千春氏の事務所、オフィス・ゲンキ株式会社ボーカロイド『初音ミク』クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、地場の音楽会社、株式会社ウエスなどが株主となっているようです。(芸森スタジオHPより)

前述のホテル開発計画と同日の北海道新聞の記事を引用します。
 イベント企画のウエス(札幌、小島紳次郎社長)と
 歌手の松山千春さんが社長を務めるオフィス・ゲンキ(東京)は
 二月中旬、九三年にファンハウス(現BMGジャパン、東京)が開設したスタジオを約一億円で購入。
 二階建て約千九百平方メートル。客室七室も備え、小田和正さんやビーズが録音を 行ったこともある。
 両社はスタジオを国内外のアーティストらに利用してもらうほか、
 道内の若手歌手やクリエーターらを発掘、育成する拠点とする計画。

・・・と、まぁ、それから6年が経過した現在も運営は継続されているようで、何よりです。
わたくし細丼善太郎はアートヴィレッジ最後の砦 『芸森スタジオ』 を心から応援しています。
   ◆ 芸森スタジオの公式ホームページはこちら

<アートヴィレッジの未来>
前述の北海道新聞の〆の部分を引用しましょう。
 札幌市は新年度、有識者会議を発展させる形で同地区の活性化や市民の利活用促進を検討する協議会を関係者らと設立
 三カ年の事業計画などを策定し、世界に札幌の芸術制作環境をPRしていく考えだ。

これが平成20年の記事ですが、平成26年の現在に至るまで、
平成19年に決定された地区計画が見直されたという話は耳にしていません。

昨今、アベノミクスや東京オリンピックに浮足立ちつつある不動産業界・建設業界ですが、札幌市にはバブル崩壊やリーマンショックの教訓を重く受け止め、浮足立たず、堅実な自治体運営を行って頂きたいものです。

具体的には、どう考えても制限が厳しすぎる地区計画と分譲条件を見直した方がよろしいんじゃーありませんかねぇ?
造成費用と整備費用っつったって市民の税金と地方債(借金)から出ているんでございましょ?

まかり間違っても、札幌オリンピックの招致に成功したなどと言って、
アートヴィレッジに追加投資をするような真似はしてほしくないものです。

決定:平成19年10月3日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

【関連記事】
私は毎年、この地区の推移を見守っています。関連記事はこちら。
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 夏の様子と平成27年度の価格
 ◇ 調19 札幌アートヴィレッジ地区 夜のアートヴィレッジと平成28年度の価格

調15 石山六区西地区

当記事は2014年05月02日および2014年07月08日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調15『石山六区西地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

札幌市民であれば『石山』という地名は、一応知っているというも多いでしょう。
国道230号線『石山通』は、中心部と札幌の温泉地『定山渓』を結ぶ幹線道路で、札幌市の道路の中では有数の知名度がある『道』だからです。

中心部から定山渓までの地名は下記のようになっています。
南○条西○丁目→|→川沿→石山→藤野→簾舞→|→豊滝→小金湯→定山渓

札幌市南区の郊外は、傾斜地ではあるものの古くから安価な住宅街として造成され、多くの人が住んでいますし、その中では『石山』は比較的中心部に近いエリアです。

公共交通機関はバス以外にはありません。
かつては『定山渓鉄道(じょうてつ)』現在の石山通に沿って敷設されており、
これらの地区も、当初の段階では定山渓鉄道があって発展してきたのですが、昭和44年に廃線となり、以後、札幌に私鉄は存在していません。
(より正確に言うと、定山渓鉄道の廃線と、この地区の『宅地化』は順番として若干前後するようです)

現在の『石山』旧・定山渓鉄道『石切山』駅を中心とした一画です。
(お察しの通り石山という地名は採石場があることから付けられた地名です。)

石山通にほど近い部分には住居表示が実施されており、石山1条~4条に区分されていますが、石山通から離れた南側の部分は住居表示も実施されていない市街化調整区域の広大な範囲となります。

『南区石山』の範囲はこんな具合に相当広いのですが、南北に走る市道『石山穴の沢線』以外の部分は、殆どが山である、というのが実態です。

そんな中『石山六区とは何かというと、住居表示が実施される前、この地区の地名は『石山○区』という風に区分されたものが、取り残されているものです。
現在の石山一条~石山四条、また石山東に改編された市街化区域の部分と、市街化調整区域として住居表示が実施されず、単なる『石山』のままとなっている部分に分かれます。

石山は一区から八区まであったのですが、このうち人が住み続けている石山六区地区だけがバスの路線名や地区計画などで地名に残っています。
勿論、地元の方はいまだに『〇区』と呼ぶこともあるようですが、バス停からも『〇区』という呼称は絶滅しており、公式に使われているのは石山六区だけであるようです。
詳細については末尾で項目を設けて紹介しています。

中央バス『石山六区』停留所『石山六区会館』は、今回の地区計画『石山六区西地区』の区域より、
もっと南側にありますから『石山六区』という地区を考えた場合には、これもかなり広い範囲であるという事が出来るでしょう。

さて、現地は『石山穴の沢線』の西側と東側に分かれ、東側には河川『穴の川』が流れています。

西側はかなり急な坂道となっており、二本ある道路(どちらも『石山77号線』)のうち、
北側に関しては、冬の間の通行は禁止されているようです。北側には建物も殆どありません。

東側に関してはゆるやかな傾斜になっており、そこそこの密度で住宅が建築されています。
新しい建物や、売地もちらほらとあるのは、この地区計画が決定された結果の事でしょう。

穴の川は『砂防指定地』となっています。
これは山の崖崩れや川の氾濫の恐れがあるため、土を掘ったり盛ったりしてはいけませんよ、という地域です。
既存の敷地をそのまま使う分には影響がありませんが、土地の形を大きく変更する場合には制限がかかります。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より南方約12㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和42年及び45年に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。

『既存宅地制度の代替としての建物建築可能な地区計画』です。
これは再三取り上げてきましたが、既存の土地所有者に対する救済措置という意味合いが強いものです。
そもそも、当時建築可能だった土地が、昭和43年の都市計画法の制定によって、市街化調整区域という区割りとなり、建替や新築も出来なくなってしまった、という事情があり、かつ、これをそのままにしておくと高齢化によって限界集落のようになりかねない、という配慮から、建物の再建築が可能なように地区計画を設定しているのです。

しかし、これって市街地を密集させて効率的な都市運用を行うという、
『都市計画法』や札幌市の『コンパクトシティ構想』『都市計画マスタープラン』とは真逆の発想です。

この地区計画を決定する前段の『都市計画審議会』の議事録を見てみると、
この点について、市の職員に強く問題提起をしている市民委員の方がいます。

氏名を検索すると有限会社 市村都市環境研究所の代表者 市村一志氏のようです。
 第26回 自然エネルギー普及 市村一志さん|札幌人図鑑

また、その際の議事録は第22回(事前説明)第24回(本決定)から見る事が出来ます。

まー、このような問題提起をしても、審議会の議題に上る頃には、
住民説明会も済ませてしまっていて、根回しは万全な訳で、賛成多数で採決され、現在に至ります。
デュープロセス(適正手続)というのも、なかなか難しいものだなぁ、と実感します。

あ、今日は思いのほか長くなってしまい、いつものを忘れていました。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

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決定:平成16年10月8日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

【石山一区~八区の区割りについて】
石山六区というのは、旧来の住所区画による呼称であるというのは前述したとおりですが、それでは、石山一区って具体的にどこなの?何区まであるの?

当然の疑問なのですが、実はこれを容易に調べる事は出来ません。
『石山○区』というのは旧地名ですが、あくまで俗称であって、正式な行政区分ではありません。

では、どうやって調べるのかといえば、名前の残っている町内会から調べてゆくのです。
石山二区町内会、石山三区町内会など、区制の名残は今は町内会にだけ残っています。
とはいえ、町内会も統廃合や名称変更がありますから、そこはちまちまと家系図を追うように、データを抽出した上でマッピングをしたのが、この地図です。

具体的な施設や道路を挙げるとこのような区分になります。
 石山一区…藻南公園、啓北商業高校
 石山二区…石山郵便局、旧定山渓鉄道石切山駅
 石山三区…石山小学校、石山消防局
 石山四区…国道453号線『真駒内通』の東側、現在の『石山東』
 石山五区…石山南小学校、石山中学校
 石山六区…市道『石山穴の沢線』の東西に渡る広大な地域
 石山七区…現在の石山3条5丁目、石山3条6丁目
 石山八区…石山開拓神社、介護施設『静山荘』『和幸園』

こうしてみると、現在の石山の住宅街は石山五区が中心となっていて、旧定山渓鉄道の頃の中心地、石山一区と石山二区は若干なりを潜めています。
・・・こうなったのは国道230号線『石山通』のルートによる処が大きいのでしょう。

恐らく大きな誤りはありませんが、他で分かりやすい地図などがあったら教えて下さい。

市内中心部であればまだ資料が出てくるのですが、郊外の古い地名や俗称については、なかなか洗い出しが難しく、石山の区制について取り上げている資料など、簡単には見つけられません。

今後もインターネットに上がらないマイナーな郷土史を編纂してゆければと思います。

調14 十軒静和地区

当記事は2014年05月28日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等 は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調14『十軒静和地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

『伏籠川』『赤坊川』に挟まれた地区で、周囲は畑になっています。

一般住宅もありますが、そのほかには内装業などの倉庫、小規模な作業所が多いようですね。
一帯は趣味に走ったアウトドア風の個人住宅や、古い平屋、倉庫などが立ち並んでいます。
道路の舗装はひびが入ったり、路肩は未舗装で側溝があったりと、最低限です。
中には砂利道になっている道も多く、道路の状況は決して良くありません。

何故だろう、と道路の状況を調べてみると、不思議な事が分かりました。

・・・市道(認定道路)になっている部分、少なすぎません?
(青色の線が認定道路、黄色の線が位置指定道路です。)

『建物が建てられる市街化調整区域』として組み込む為の条件は、
札幌市『市街化調整区域の保全と活用の方針』によると、下記の5つ。
 ① 指定道路によって構成される住宅市街地で、区域区分設定以前より存在していること。
 ② 住宅戸数がおおむね20戸以上であり、住民が生活していること。
 ③ 住宅市街地の面積が、おおむね1ヘクタール以上であること。
 ④ 公共下水道が整備されていること。
 ⑤ 道路が適正に配置され、おおむね100%が市道であること。

この地区の道路配置では、どうみても100%が市道という訳ではありません。
うーんオカシイですよね。
この地区計画が決定された際の『札幌市都市計画審議会』でもその点には一切触れられていません。
これ以上深入りする事も可能ではあるのですが、何らかの差支えがあるかもしれないので、詳細については書かないでおきますが、かなり特殊な事例である、という事だけは書いておきます。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より北方約8㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和40年前後に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。
既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。

実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

決定:平成16年3月9日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

【2017年12月12日追記分】
さて、『調4 東米里東栄地区』や『調11 丘珠藤木川西団地』では、道路が市道ではなく位置指定道路であることで一部分が地区計画のエリアから除外されているにも関わらず、前述の通りこの『十軒静和地区』では、市道の割合が低いにも関わらず地区計画のエリアが設定されているということが特色であります。
この理由については、都市計画審議会などを参照していますが、詳細は分かりません。
理屈としては、南北・東西のいずれかが市道になっているから、という理屈付けなのかもしれませんが、『おおむね100%が市道』という明文規定とは齟齬があります。

さて、平成26年当時の記事では地区計画の範囲内の市道の割合は70~80%といったところですが、3年以上が経過した平成29年時点では市道の整備が成されているのでしょうか?
札幌市都市計画情報提供サービス』から、該当地域を見てみましょう。

Σ(゚Д゚;市道、増えてない! 私道(位置指定道路)増えてる!

都市計画情報提供サービスによると昭和39年8月24日に指定された指定番号『2958-17』の位置指定道路であるとのことです。
『2958-17』というのは、札幌市位置指定道路 第2958号として申請されたもののうち、札幌市が枝番を付けて区分したものです。
枝番が17という事ですから、広大な範囲が位置指定道路として指定されている、という事です。
現存する札幌市位置指定道路 第2958号の範囲を見てみましょう。

赤線でなぞってあるのが、位置指定道路 第2598号です。
推測するに、既に市道(青線)となっている部分についても大半は位置指定道路であったのでしょう。
つまり、位置指定道路 第2598号こそが十軒静和地区の骨格であると言えます。

昭和39年に分譲業者によって指定されたと思わしきこの道路のうち、北東側の一部分・・・つまり『枝番17』は、何故、平成26年にはインターネットに掲載されていないのに、平成29年時点では掲載されているのでしょうか。

位置指定道路にはこういったものが多く、年々整備・追加されていったり、区域についても見直しがかかる場合があります。
平成30年3月から位置指定道路のダウンロードが可能となる予定ですから、私のブログもやりやすくなりますね。
機会があればこの地区についても再度調査し、紹介してゆきたいと思います。

調11 丘珠藤木川西団地

当記事は2014年06月04日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調11『丘珠藤木川西団地』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

北側には農業体験テーマパーク『サッポロさとらんど』があります。
西側には札幌市内唯一の空港、『丘珠空港』があります。
そして、すぐ東側には平成25年3月21日から稼働したメガソーラー『土屋ソーラーファクトリー札幌』が隣接しています。

それにしても気になるのは、『区域外』と書かれ、白抜きにされた部分ではないでしょうか。

同様の白抜き部分が『調4 東米里東栄地区』にもありましたが、
これは、主に位置指定道路が市道になっていないことを原因とする除外です。
将来的に市に寄付されるなどして認定道路(市道)となった場合には、
白抜きの『区域外』の部分も地区計画の範囲として含まれてゆく予定
となっています。
実際の現地は、重機の作業場になっているようです。

白抜き部分の取り扱いについては、『第9回札幌市都市計画審議会 議事録』から引用します。

 この区域の敷地の面する道路が指定道路であるため,
 札幌市道として認定道路に面している敷地を対象区域にするという
 地区整備計画の区域設定の条件を満足しないことが挙げられまして,
 今後,この道路が認定道路になった段階で地区整備計画の区域に
 取り込んでいきたい
と考えております。

 また,区域外となっております部分につきましては,
 地区計画の方針の区域にも含めておりません。
 この部分につきましては,計画図をごらんいただくと,
 道路的な形状,宅地的な形状になっておりまして,
 また地番もそのように分筆されておりますが,
 道路的な形状の部分が指定道路にもなっていないことから,
 指定道路に面している敷地を対象区域にするという
 地区計画の方針の区域設定の条件を満足していないことから,区域外にしております。

・・・と、いう事なのだそうです。

バス停までは結構遠く、南端の『三角街道西支線3号線』以外の道路については、道路幅もかなり狭く、路肩が土や砂利になっている状態が大半です。


ただ、新しくて大きめな家もちらほら建っていて、広々とした環境が好きな人にとってはよいのかもしれません。

ちなみに、札幌市の東側と言えば地盤が悪いというのが定番ですが、液状化危険度図によると『液状化発生の可能性が低い』、地震防災マップによると『震度6弱』と札幌駅と同水準の評価になっています。
地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より北東約7㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和30年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。

毎度の既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

決定:平成14年3月19日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調9 手稲山口地区

当記事は2014年06月08日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調9『手稲山口地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

今回が現在、市内18か所指定されている市街化調整区域の地区計画の最終回となります。
なぜ最後に紹介する事になったかというのには明確な理由があり、それは単純に私があまり書きたくなかったから、という一点に尽きます。

というのも、この地区は現在開発・分譲の最中でして、札幌市が主導している東雁来の『ウェルピアひかりの』と違い、民間の営利企業が行っている開発なので、状況が確定しておらず、大変書きづらいのです。

別に何だという事はないのですが、褒めても貶しても色々面倒くさそうなので、ここまで書かずに来ました。

とはいえ、『褒める』『貶す』というのも適切な表現ではありません。
どの土地についても、地盤や駅からの距離や治安や通学利便や住宅の密集度など、色々と特徴があるもので、それらの特徴を無視して不動産とその財産価値を語る事などは不可能なのですから。

ただまぁ、色々としがらみもあるのが世の中というヤツでして、そういうしがらみの外側で自分の信じる通りに生きていたいというのが私のささやかな願いなのです。

さて、事実関係を列挙しつつ現地の写真を見てゆきましょう。
この地区は北海道開拓から平成に至るまで、畑や果樹園とされていたようです。
比較的最近の航空写真でも、開発がされている様子は見られません。
平成12年に「市街化調整区域における大規模開発制度」により開発許可を受け、開発事業が始まりました。
札幌市としては初となる大規模開発制度の利用だったようです。
ちなみに、この制度のうち市街化調整区域に関する部分は平成18年の法改正により廃止となっています。

翌年の平成13年5月17日にはこの地区計画が決定されました。
地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より北西約14kmに位置し、
 都市計画道路「下手稲通」をはさんで既成市街地に接する市街化調整区域内にあり、
 現在、民間の宅地開発事業が進められている。
 そこで、本計画では、当該事業の事業効果の維持及び増進を図り、
 敷地の細分化などによる居住環境の悪化を未然に防止し、
 緑豊かでうるおいのある良好な市街地の形成を図ることを目標とする。

当初は現在の決定区域の倍に近い面積がありましたが、濁川より東の部分については平成22年4月6日に市街化区域に編入され、同時に決定番号:113『北星置地区』として新たに市街化区域内の地区計画が決定されました。

何故その時に全体が一度に市街化区域に編入されなかったかというと、これは実に単純な話で、西側が市街化されていなかったから、なんですね。
既に宅地造成が完了し、市街化されている東側の部分のみが市街化区域となった訳です。

その後平成25年10月に地区内の南・西側の『第一工区』の造成が完了し、分譲が開始されています。
そして平成26年、西端の欠けた部分が区域に含まれました。

欠けていた部分については所有者が農家の方で、宅地開発に合意しなかった為、
このような状態が続いていましたが、昨年に入ってから、ようやく了承が取れたという経緯です。
当初地区計画決定時の第4回 札幌市都市計画審議会 議事録(平成12年10月31日)にはこのように書いてあります。
 この穴抜きの部分につきましては,今,委員もお話のように,
 一体的な土地利用を図るということでここまで調整をしてきました。
 ただ,ここの土地所有者が,調整区域の開発行為を許可する時点
 ―先ほどことしの8月というお話をしましたが,
 この時点で実は営農をしておりまして,
 今すぐに結論は出せない
というようなお話をされました。
 営農しているというのは,いわゆる作付をして秋に収穫をしたい
 その収穫が終わってから協議をさせていただきたい
 実はこういうお話をされた経緯がございまして,
 このたびの地区計画の事前説明の段階では除外をさせていただいたということでございます。
 そういうことで,この収穫も既に終えまして,
 先日から協議を再開をしているというお話を開発者の方からお伺いしております。

 当然,今後さらに協議を重ねていただきながら,協議が調った時点では,
 できるだけ早い時期に,整形といいますか,
 そこも取り込んだ形で地区計画の区域変更をするよう進めてまいりたい,
 現在このように考えております。

平成12年の収穫が終わってから…というお話から足掛け15年も粘った訳です。
土地に関してはよくある話ですが、やっぱりスゴイ話です。

下手稲通沿いの部分については、商業施設が建設される予定のようですが、現在は更地です。
平成23年9月30日付の北海道建設新聞の記事を引用しましょう。
 http://e-kensin.net/news/article/6837.html
 岩倉土地開発(本社・苫小牧)と、中山組(本社・札幌)の子会社で不動産業の三共産業(同)が、
 札幌市内の手稲山口地区で進めている大規模開発で、
 約3万4000㎡の商業用地を確保している。
 2012年春までに出店する店舗を固め、その後着工する考えだ。
 開発区域は、札幌市手稲区手稲山口465の1ほかの下手稲通沿いで、
 JR星置駅から1㌔程度離れた所。岩倉土地開発は10年ほど前、
 一帯の約28万㎡の開発許可を得て、濁川を挟んで西側のエリアを開発した。
 ホームセンターや食品スーパー、衣料品店などが立ち並んでいる。
 今回は東側エリアのうち、下手稲通に面した9万6403㎡を手稲山口東第1工区として、
 三共産業との共同事業で実施。中山組の設計施工で土地造成に着工した。
 敷地内には、宅地用地3万2668㎡のほか、商業店舗用地3万3882m²、
 業務施設用地3029㎡などを確保。
 商業用地には、スーパーマーケットや家電量販店、飲食など
 5―10店舗程度の誘致を見込む。
 業務施設用地では、社会福祉施設の設置を計画している。
 関係者によると、「商業スペースは、来春までに固めて着工したい」としている。
北・東の部分は現在農地となっており、平成27年度以降に『第2工区』として宅地造成が行われる予定とのことですが、民間の事業ですから、実際の施工開始は現在分譲中の『第1工区』の売れ行き次第、というところでしょうか。

さて、この地区計画は三方を市街化区域に囲まれた市街化調整区域ですが、市の文書の中ではいわゆる『穴抜き市街化調整区域』とは呼ばれていません。
民間の宅地開発事業によるものという事情もありますが、市街化区域に編入されるのは、『次の見直しの際』ではなく『実際に市街化が完了してから』の予定となっています。

実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。


(この地区計画について、解説書は公開されていません。)

【2014年06月20日追記部分】
このブログではこれまでに様々な都市計画、道路計画を紹介してきましたが、進行中の計画である場合には、当然その記事を書いた後も状況が変わっていく訳です。
そのような地域については業務に直接関係のない地域については、限界がありますが、出来る範囲で追記を加えられればと思っています。

今日は『調9 手稲山口地区』について少し追記します。
散々『面倒くさそうだから書きたくない』とボヤいた挙句、最後に回した地区計画です。

市道『下手稲通』沿いに店舗が出来る事は紹介しましたが、具体的な店名は挙げませんでした。
ブログの記事を書いている段階で、出店店舗は既に決まっていましたが、色々と気を使って経緯や背景事情を書いているうちに、店名を記載するのを忘れていました。

出店するのは『スーパーセンタートライアル星置店』で、5月頭から着工しました。
平成26年2月4日付で、札幌市からも大規模小売店舗の公告が出ています。
それによるとオープンは平成26年9月24日を予定しているようです。
また、トライアル予定地の西側についても、5月下旬から工事が始まっています。
建築主は『日本マクドナルドホールディングス株式会社』
それにしても建築現場の近くでは堆肥というか、飼料の臭いがプーンと漂ってきて、その土地の歴史は『土』に色濃く残るものだなぁと実感しました。

タイミングはずれるかもしれませんが、休日に予定が合えば、今後も寄ってみます。

【‎2014‎年‎04‎月0‎7‎日追記部分】
二店舗とも、無事に開業したようです。この辺も10年で随分便利になりましたね。

決定:平成13年5月17日 変更:平成26年2月18日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調8 新川光風園地区

当記事は2014年06月05日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調8『新川光風園地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

目印は精神科『石金病院』と、道立高校の『札幌国際情報高校』

国際情報高校は、平成7年新設の比較的新しい高校です。
郊外にある高校は偏差値が低いと言われがち
ですが、かなり偏差値の高い学校のようです。
色々なサイトで偏差値ランキングを調べてみましたが東区にある市立『札幌開成高校』とほぼ同レベルのようです。

余談ですがサイトごとに偏差値の違いがありすぎて、他の高校とは比べられませんでした。
『旭ヶ丘高校』や『立命館慶祥高校』と比較すると上だったり下だったりと、よく分かりません。
…というか、北海道の高校入試は異常な制度の上に成り立っているので、偏差値自体が極めていい加減でアテにならないのですが、不動産とは全く関係ないお話になってしまいますから、今回はこの場に書くのは差し控えたいと思います。
『光風園』は恐らく団地分譲時の名称だと思われますが、例によって詳細は謎です。

液状化危険度図によると『液状化発生の可能性がある』または『液状化発生の可能性が高い』。
地震防災マップによると『震度7』と、最も揺れやすい地域と評価されています。
通常『震度7』は『震度6強』の地域の中に散発的に表れるのですが、ここまでまとまった地域が『震度7』評価となっているのは、この新川~屯田にかけたエリアのみです。
つまり、札幌では最も大きな揺れが想定されるエリアであるという事が出来るでしょう。

ちなみに、これより狭い範囲ですが、西28丁目駅の北側東苗穂6条1丁目付近にもまとまった『震度7』エリアがあります。

実際に家を建てる時には、杭を多く打つなどの対策が必要になります。
東日本大震災で、液状化現象の甚大な被害を受けた浦和地区ですが、基礎杭を大量に使用していた東京ディズニーランドは液状化の被害を免れたのは有名な話ですよね。

基礎杭の使用にはそれなりの費用が必要になります。
建築業者はその辺の事を認識しつつも、予算の兼ね合いがありますから、総工費を抑えるために地盤改良を薦めない担当者もいるようです。
地盤調査等の客観的な資料を含め、納得が出来る施工となるようにしましょう。

とはいえ、万全を期すために予算をオーバーして住宅ローン負担が重くなってもつらいものです。
建物の表面的な豪華さより地盤改良を優先すべきだという人もいますが、
それならば立地そのものを見直すという考え方もある訳で、絶対的な正解はありません。
結局のところ、最終的なリスクコントロールは自分でする以外にないのです。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より北西約8㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和30年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。

既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

 

決定:平成11年12月7日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調7 北ノ沢静涼苑地区

当記事は2014年05月22日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調7『北ノ沢静涼苑地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

バス停はじょうてつバス『静涼苑団地前』
『静涼苑』というのが何の事なのか、ハッキリとした根拠資料は見つかっていないのですが、
どうやらマンションやアパートの建物名のような、分譲時のネーミングのようですね。

『五輪通』がほど近く、地図上の配置としてはそんなに不便な印象はありませんが、
何せ山の中ですから、自動車がないとニッチもサッチも行きません。

『北の沢小学校』へは徒歩15分程度、『藻岩中学校』40~50分かかってしまうようです。

中学からはバス通学でしょうか。子供たちは友達と遊ぶのも一苦労ですね。

本当に静かな住宅街という風で、立地以外にはあまり特徴という特徴がありません。
南区、西区、清田区といった札幌の西方面では珍しくありませんが、若干の傾斜地になっています。
傾斜地としては『調5 真駒内駒岡団地』や『調15 石山六区地区』ほどのインパクトはありません。

建物を合法的に建築出来る土地としては、メチャクチャ安いです。

これまで、不動産の価格については抽象的な事ばかりで具体的には書いてきませんでした。
経済情勢によって毎年毎年変わるものですし、『相場』としてウェブ上に載せるのは、土地所有者にとって色々な不利益が発生する可能性が高いため、あえてそうしてきました。
しかし、公的に発表されているものについてはインターネット上でいくらでも見れる訳ですから、『土地総合情報システム – 国土交通省』の鑑定評価を引用してみましょう。
http://www.land.mlit.go.jp/landPrice_/pdf/2013/01/2013011060036.pdf

同一需給圏は南区の市街化調整区域のうち、第三者による住宅の再建築が可能な戸建住宅地域である。
需要者は札幌市の居住者が大半を占めており、同一需給圏外からの転入者はほとんど見られない。
札幌市の住宅地は居住の都心回帰傾向が鮮明であり、交通接近条件が劣る当該地域の宅地需要は脆弱である。
土地取引は少なく、需要の中心となる価格帯は見いだせない状況である。

う~ん、手厳しい。平成25年は坪3万円台での鑑定となっています。
坪3万円というと、平地かつ地区計画のない普通の市街化調整区域と同等のイメージですね。
とにかく安く土地が欲しい!とか、西区・南区・中央区を頻繁に行き来する、という方ならば、良いかもしれませんね。
西区へは、盤渓を経由して福井・平和方面へ出て、西野へ抜ける事が出来ます。

地区計画の目標は以下の通り。

 当地区は、都心部より南西約7㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和40年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。

既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

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決定:平成11年6月23日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調6 中沼地区

当記事は2014年04月22日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調6『中沼地区』です。
市街化調整区域としては珍しく、平成17年9月5日に『住居表示』が実施されています。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

中沼1~3条は今回の地区計画の区域内ですが、4~6条は地区計画の範囲ではありません
しかし、『旧事業法団地』と呼ばれる特殊な取扱いとなっており、建物の建築が可能です。
『旧事業法団地』については『調5 真駒内駒岡団地』で解説しています。

北側は中沼産業廃棄物処理センター(エコパーク)に隣接します、

南側には中沼ながしかく公園という絶妙のネーミングセンスの公園があります。

市街化調整区域だからという訳ではありませんが、中沼地区~丘珠地区は、 モエレ沼公園がある都合、自動車で通行する場合も、市内中心部へ行くためには大きく迂回したルートを取る必要があります。

また、小学校の学校区は中沼小学校で15分~20分ですが、中学校の学校区は丘珠中学校で、なんと徒歩1時間程度かかります。
モエレ沼公園の向こう側なのでバスを使うにしても、かなりの距離です。
 

商業施設はセイコーマートがあるのみで、スーパーはかなり遠いです。
東米里や南区郊外と同様に、市内の建物が建てられる土地としては最安値ランクですね。
市場での流通量はかなりのものですから、購入するのは比較的容易でしょう。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より北東約10㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和40年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。

『既存宅地制度の代替としての地区計画』です。
はい、もう何度目にもなりますので解説は省略。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

泥炭地なので地盤はお察しの通りですが、札幌市液状化危険度図によると、『液状化の危険性がある』と、最高ランクの『液状化の危険性が高い』ではありません。

また、『出水のおそれのある区域』に指定されています。
まぁ、周辺と比較するに地盤については東区郊外では平均的な水準と言えるでしょう。

それにしても、昔は燃料として使われていたとはいえ、『泥炭地のため火気厳禁』って看板があるのはちょっとスゴいですよね。

さて、『東区中沼○条○丁目○番○号』という住所について書きましょう。
この形式の住所は『町名整備』『住居表示』の両方が実施されている地域です。
『町名整備』とは、『中沼』や『新川』などのとても広い範囲になっている『字』(あざ・住所の括り)を小さな範囲ごとに区分して、範囲を特定しやすくする行政的手続きです。
札幌の場合は特殊で『○条○丁目』という『条丁目』形式が一般的で、北海道の他の町でも多く採用されている形式ですが、本州の方などは見慣れない住所の方式に驚くようですね。

札幌市内で『町名整備』が済んでいる地域であっても、地域の形状によっては、
例えば『旭ヶ丘○丁目』『伏見○丁目』『月寒中央通○丁目』などの『条』がないパターンも多くあります。

あるいは、『丘珠町』『雁来町』『東米里』のように、『丁目』すらないものであっても、『町名整備』は済んでいる事になっており、面積比の実施率は98.7%に上ります。
正直なところ、『町名整備』については不動産従事者以外はあまり気にする必要はありません。

一方『住居表示』が実施されているか否かは、面積比の実施率も93.3%に留まりますし、
登記情報の取得や郵便の際の住所の記入、さらにはインターネット地図の使い方にまで影響しますから、一般の方にとっても大変重要性の高い情報であるという事が出来ます。

簡単に言うと、『住居表示』が未実施の地区には、こんな不便があります。
 ①同じ住所に2つ以上の建物が存在する。
  私の経験では10軒以上の建物がすべて同じ住所だったこともあります。
 ②住所に法則性が全くない。48番の隣の家が104番だったりと不規則な配列となる。

市街化調整区域の場合、原則的には住居表示は実施されていませんが、この中沼地区や、後日紹介する星置3条1丁目、前田7条11丁目、曙11条2丁目(いずれも手稲区)など、住居表示が実施されている地域も例外的に存在しています。

また、中央区の中心部は当然市街化区域ですが、住居表示が実施されていない部分が多くあります。
他にも白石区菊水上町1条~4条の区間も『町名整備』は住んでいますが『住居表示』は未実施です。
これらの場合には『建物一つ一つが大きいので分かりやすくする必要性が高くない』とか、『あまりにも入り組んだ区画で、今後区画整理が必要な為、住居表示を保留している』などの
理由がありますが、一般の住宅街の場合には、住民は結構な不便を強いられることになります。

一方で、『住居表示』が実施されている場合には、住所が登記上の地番と異なってしまう事になるので、登記情報を取得しようという時に、ブルーマップなどで別途調べる必要があり、その点については不便です。

『住居表示』『地番』については、専門家も色々な見解を持っていますが、
統一的な回答は得られていない、というのが現状で、
この不便を解消する現実的手法も、今のところ見出されていません。

決定:平成11年3月1日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調5 真駒内駒岡団地

当記事は2014年04月27日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調5『真駒内駒岡団地』です。
地区計画の名称は、通常『○○地区』ですが、ごく稀に『○○団地の場合もあるのです。
市街化調整区域の地区計画では他に決定番号:『調11 丘珠藤木川西団地があります。

ちなみに通常の地区計画では、全114件中8件が『○○団地』です。

…まぁ、だから何だという話なのですが。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップではこんな感じです。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より南方約11㎞の市街化調整区域に位置し、
 昭和40年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
 現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
 そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
 現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。

既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

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・・・ええと、地図を照らし合わせてみると、結構特殊な指定区域になっているのが分かりますか?
一見、指定区域の西側南東側にも住宅街が広がっているように見えますが、それらの部分は指定区域に含まれていません。
西側・南西側については更地や倉庫となっている部分も多いので、指定されていないのも分かるのですが、南東側については一般住宅が多く所在しており、市街化調整区域であるのが不思議なほどです。

これは以前紹介した『調6 中沼地区』でも同様でしたが、地区計画の設定のない市街化調整区域です。
地区計画が設定されていないのに、何故建物が立ち並んでいるのか?
実は西側・南東側は『旧事業法団地』と呼ばれる、非常に難しい扱いのエリアなのです。
昭和39年施行の『(旧)住宅地造成事業に関する法律』第4条によって、都道府県知事の許可を得た区域については、市街化区域と同様に建物を建築出来る市街化調整区域という取扱いになります。

『旧事業法』は、昭和43年『都市計画法』が施行されることで廃止された法律であって、現在の都市計画法の前身の一つである、と言えます。
わずか4年ばかりの間で、市の職員によると100ヶ所程度の指定があるそうで、その指定内容はインターネット等へは公開されておらず、札幌市役所本庁舎の宅地課へ直接確認しなければなりません。

ちなみに、地区計画エリア外である西側には入所式障碍者支援施設『南陽荘入所部』が所在しています。

さて、『真駒内駒岡団地』の地区計画エリア内に話を戻しましょう。

名前の由来は真『駒』内の『岡』にある事からで、住所は『駒岡』ではなく、あくまで『真駒内』の番地地区です。

『駒岡清掃工場』を通過した森の中にポツンと所在しています。

 写真中央の遠くに見える紅白の煙突が、清掃工場のものです。

駒岡団地は山の中にある関係もあり、かなり急な坂道が多くなっており、冬場は通行止め一方通行となる道路が多くあります。
この事からも、除排雪状況は万全とは言い難い状況ということは分かるかと思います。
無理に除雪をしようとすれば重機が頓挫して通行不能になったり、交通規制をしなければ出合い頭事故なども増えますから、やむを得ない処理であると言えるでしょう。

小学校の学校区は『駒岡小学校』
『駒岡』の名前が付いているので、ほぼこの地域の子供かと思いきや、どの学区からも入学が出来る『特認入学指定校』となっている為、児童の88%はこの地域以外の子供だそうです。
平成26年4月1日現在の児童数は83名、6学級で1学年1学級という事になりますから、クラス替えはありません。

中学校の学校区は地下鉄真駒内駅のそばにある『真駒内中学校』
最寄りの中学校は『常盤中学校』ですが、中学生でも山道を歩いて登校してクマにでも会ったら一大事ですから、
真駒内までバス通学をしてもらうのが賢明という事でしょう。
バスは1時間に1本かそれ以下、冬季でなければ12分程度で真駒内駅に着くようです。

ハッキリ言ってしまえば、色々な意味でかなり厳しい立地です。
わずかに流通の事例もありますが、南区郊外には市街化区域内であっても、石山や簾舞、藤野、常盤といった安価な土地があるので、苦戦してしまうようです。

色々な意味で取扱いが難しい土地となりますから、売却をご検討の際は、不動産業者の中でも、知識の豊富なプロに依頼した方が良いでしょう。
四角い住宅地や中古マンションしか扱った事のない素人に任せるのは、大変危険です。

決定:平成10年11月20日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調4 東米里東栄地区


当記事は2014年04月08日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調4『東米里東栄地区』です。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

東米里の下水処理場(水再生プラザとスラッジセンター)の南側にある、
道央自動車道を挟んだ一帯が地区計画区域です。
道央道自体は国道のため地区計画区域には含まれていません。

東米里の中では、もっとも市街化区域に近いエリアで、以前紹介した『東米里花園地区』に比べて、小中学校には近付きましたが、それでも20分以上はかかります。

コンビニは一応ありますが、スーパーとなると少し足を延ばす必要があります。

立地という面では、正直便利とは言い難い土地柄ですが、その分お安く流通していますから、職場に近い方などはよいのではないでしょうか。
正直、住宅を建築出来る土地としては、南区の奥地と並んで、かなり安価な水準です。

道道626号線がすぐ近くですから、自動車のアクセスはそう悪くもありません。

流通量も土地・戸建ともにそこそこ出回っているように見受けられます。
地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より東方約7㎞の市街化調整区域に位置し、
昭和30年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
現在の良好な住環境の維持・増進を図ることを目標とする。

う~ん、安定のテンプレ感ですね。
既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

・・・という私の注意書きもテンプレ化してきましたね(^^;)

ちなみに東米里花園地区と同様『第一種災害危険区域』に指定されています。

最後に、水再生プラザという名前の下水処理場が近くにありますので、今回は、『市街化調整区域工事分担金』について紹介しましょう。
市街化調整区域で下水道を利用した排水施設を設置する時は、原則1戸70,000円の分担金が賦課されます。
トイレなどの排水施設の数によっては、増額となりますが、設備基準を見ていると、よっぽどの豪邸か集合住宅でなければ、定額ですね。

これは地区計画が定められている市街化調整区域でも例外ではありませんから、住宅を建築しようという時には、注意しておきましょう。

市街化区域で既に下水道が完備されている地区では、このような負担は発生しませんが、市街化区域であってもまだ下水道が完備されていない区域で、札幌市が新たに配管埋設工事を行って下水道を設置するような場合には、『市街化区域受益者負担金』というものが、3年12回分割で賦課されていきます。
こちらの金額は実費をもとに札幌市が算出します。

市街地で育った方や、集合住宅に住んでいる人にはピンと来ませんが、下水道も重要なインフラであって、整備するための費用が必要だということですね。

決定:平成10年7月31日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調3 東米里花園地区


当記事は2014年04月05日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

市街化調整区域の地区計画について、現地の写真や地図を交えて、あれこれ書いていこうという趣旨で、一つ一つ現地を実際に確認した上で、記事を書いて行こうと思います。

さて、一番最初はやはり札幌市白石区『東米里』です。
と、言うのもわが社のお客様は旧上白石村地区(菊水~東米里)に特に多く、このエリア無くして現状の規模の商売はないと言っても過言ではない、繋がりの深い土地なのです。

都合、東米里にある物件の取引も何度か経験しているため、個人的に市街化調整区域と聞いて一番最初に思い浮かぶのが、東米里地区なのです。

東米里には、市街化調整区域の地区計画としては最多の3エリアが指定されていますから、
個人的な思い入れを除いても、重要なエリアという事が出来ます。

最初にご紹介するのは決定番号:調3『東米里花園地区』です。
地区計画の範囲はこんな感じです。

で、Googleマップはこんな感じ。

どちらにも中央に大きな建物がありますが、これが『東米里小中学校』の跡地。
平成23年に閉校し、翌24年には解体されましたから、現在は存在しません。
現在は平成18年に学校敷地内に設置された『米こめ公園』だけが残っています。
(米米CLUBを連想させるネーミングセンスですね)

東米里にはほかに白陵高校、下水処理場、ごみ焼却場などもありますが、東米里小中学校(跡)を中心にコンビニ、お寺、簡易郵便局のある
『東米里花園地区』は東米里の中心と言ってもいいかもしれませんね。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より東方約8㎞の市街化調整区域に位置し、
昭和40年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。

 

…という訳で、いわゆる既存宅地の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

地区計画に従えば住宅が建築出来る地域にはなりますが、東米里は札幌市内でも北区・手稲区の一部に並んで地盤が弱く、雨などで増水しやすい地区です。
そのため、床の高さを一定以上にしなければならない『第一種災害危険区域』に指定されています。
法令上の制限ではありませんが、地盤が弱いので、杭を多く打たないと、建物がもろくなります。
自動車で走ると、地盤沈下によりアスファルトの凹凸がかなり大きい事が分かると思います。

コンビニは近くにありますが、スーパーは遠く、校区の小中学校も徒歩30分程度かかりますから、子育て世代や車のない世帯にとっては、ちょっと敬遠したい土地柄かと思います。
また、新規建築の場合には、原則、住宅に類するものしか建築出来ませんから、
工場などの事業用地としても難しい土地でしょう。
低予算で広い庭が欲しい、車が複数台あって大きなガレージが欲しい、などという方には、よいかもしれませんね。

決定:平成10年11月20日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調2 川下地区


当記事は2014年04月28日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調2『川下地区』です。

東米里以外では唯一の白石区内の市街化調整区域内の地区計画ですが、実は東米里地区自体が、古くは『川下地区』という地名だったりします。
(今まで紹介してきた地区計画は『東米里花園地区』/『東米里東栄地区』/『東米里厚生地区』です。)

ちなみに現在の川下の西側にある『川北』も昔の『川下地区』の一部。
川下の『川』とは、『厚別川』の事で、『下』はその下流であるという事を意味しています。

そもそも札幌市の南西側、つまり現在の白石区・厚別区は『大谷地原野』という広い地名で括られていて、その中に『川下』『北郷』『厚別』などの地区を含んでいたのです。(ざっくりとした説明ですが…)
文献によっては『大谷地原野』≒『川下』のように書いてあり、
『川下』というのは、現在の厚別区を含む大きな括りであったようです。

現在の川下の南側にある東川下地区については、昭和55年に住居表示が実施され、川下1条~5条に区分されましたが、川下の北側については市街化調整区域で住居表示は実施されていません。
川下の『南』にあるのに『東』川下地区というのは、昔はもっと『川下地区』が西に広かったからなんですね。
市街化調整区域部分の住所は白石区川下○○○○番地○○といった具合になっています。

そんな、川下地区の北側、市街化調整区域の一部に指定されているのが、今回紹介する『川下地区』です。
川下地区というと、広義にこのような意味がありますから、本来的には『川下地区』などと名付けるべきだったのかもしれません。

地区計画の範囲はこんな感じ。

Googleマップはこんな感じ。

現地は南北に走る2本の大き目な道路(西側:川下線・東側:川下3号線)に挟まれています。
その間にアミダくじのような東西の道路があり、そこが地区計画の区域となります。

現地には古い建物もありますが、新しい建物が結構多いですね。
元々の地主さんが積極的に分譲を進めているのでしょう、小奇麗な新興住宅街という印象です。

北側の道路や南北の通路には歩道がなく、各所に亀裂が入っており、舗装の状態は良くありません。

一方で真ん中の道路は、最近舗装を直したようで、歩道もあり、道路状況は良好です。
南側の半分だけ通った道も、ほぼ北の道路と同様ですね。

『出水のおそれのある区域』に指定されており、やはり例によって地盤はよくありません。
写真は4月頭に撮影したもので、雪も少なくなっていますが、
排水溝がオーバーフローしていることからも、水はけが良くない事がわかるはずです。

小学校は『川北小学校』徒歩15分程度、中学校は『北都中学校』徒歩20分程度。
生活利便としては、少し離れると北郷や川下の条丁目地区などがあり、そこまで不便とも言えません。
価格もお安いですから、まぁ、アリなのかな、という立地ですね。

ただ、JR函館本線の線路が白石~森林公園の経路でこの一帯を迂回している事からも、やっぱり地盤の問題というのがあって、数十年安心して住める建物を建てるには、基礎杭を多く打つなど、ある程度の費用を掛けた施工が必要となりますからご注意下さい。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より東方約8㎞の市街化調整区域に位置し、
昭和40年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする

例によって既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書


決定:平成10年7月31日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

調1 上篠路小鳩地区


当記事は2014年04月06日の記事を再編したものです。当時の記録を残す為、表現等は原則的に当時のものを優先しています。

今回紹介するのは決定番号:調1『上篠路小鳩地区』です。
何と市街化調整区域の地区計画の第一号のエリアなんですね。

地区計画の範囲はこんな感じ、新川伏籠川の合流地点にある区域です。


ほいで、Googleマップはこんな感じ。


川の合流地点にあり、『篠路光真(こうしん)幼稚園』が目印です。

日々目にする販売資料でもそれなりに活発に流通しているイメージでしたが、実際に現地に行ってみると、かなり新しくオシャレな家が多くあり、市街化調整区域とは思えない、という印象があります。
川に近い開けた立地で開放感があり、こういった風致が好きな人も多いでしょう。

このエリアの土地の詳細な調査を行なった事がない為、詳細は不明ですが、
近くの『小鳩団地入口』というバス停がありますから、過去に団地として分譲された地区が都市計画法の施行によって市街化調整区域に編入された経緯があるのかと思います。
『上篠路小鳩地区』の由来は団地の名称からでしょうね。

この地区だけでなく、地区計画が定められた市街化調整区域は、過去に位置指定道路であったものも、殆どが札幌市道になっていますが、舗装状態が若干悪かったり、道路幅が狭かったり、歩道がなかったりします。
まぁ、これは市街化調整区域に限ったことではありませんが…

 

小学校は徒歩10分程度、中学校は20分程度、JR篠路駅まで20分以内
篠路駅の反対側、西口側は新興のショッピング施設が多くあります。
土地の価格は一般の住宅街に比べて低く設定されていますから、
この立地が気に入って、諸々の説明に納得出来れば、よい物件と言えるでしょう。

地区計画の目標は以下の通り。
 当地区は、都心部より北方約9㎞の市街化調整区域に位置し、
昭和40年代に道の位置の指定を受けた道路によって構成される一団の地区であり、
現在、比較的良好な住宅市街地を形成している。
そこで、本計画では、地区の特性に応じた土地利用と建築物等に関するルールを定め、
現在の良好な住環境の維持増進を図ることを目標とする。

ほぼテンプレートですね。
既存宅地制度の代替としての『建物が建てられる市街化調整区域』です。
実際の制限の内容については札幌市HPのPDFファイルを参照して下さい。

計画書 ・ 計画図 ・ 解説書

ところで、このエリアは床の高さを一定以上としなければならない、『出水のおそれのある区域』に指定されています。
札幌の北側郊外はだいたい指定されているイメージですね。
伏籠川といえば、過去には国交省(建設省)『特定都市河川』に指定されていた河川。
氾濫することで有名だったようですが、現在は河川改良がおこなわれ、指定も解除されました。
とはいえ、大雨が降ったら多少は氾濫するかもしれないぜよ、という事でしょう。

この土地は川に挟まれていますし、北区と言えば地盤が弱いというイメージだったので、液状化現象や耐震問題で、かなり気を使わなければならないと思っていたのですが、札幌市 地震防災マップによると、液状化現象発生の可能性は極めて低いのだそうです。
正直、とっても意外な結果で、驚いています。

決定:平成10年7月31日 変更:平成18年3月31日の地区計画資料を基に記述しています。
今後、地区計画について内容やエリアの変更がある場合がありますので、ご注意下さい。

E-9 『よく分からない土地』の所在を知りたい!

よくわからない土地を相続してしまう事は、一般家庭でも割とよくある事のようです。
バブルの時期に買ってしまったものや、お爺さんの代以前から何故か持っている山、などがありがちでしょうか。
山というほどではなくても、ちょっとした土地の所在が不明という事はよくあります。

よくわからない土地を相続してしまうと、ある程度のリスクが発生しますが、よくわからない賃貸住宅(アパート等)を相続してしまった時よりは、ずっと低リスクです。
(賃貸住宅の場合、敷金の金額や契約書の内容について確認しなければなりませんし、入居者がありもしない約束をしていたと言い張って来る場合もあります。)
分譲マンションを相続してしまった場合も、毎月の管理費・修繕積立金がかかりますから割と面倒です。

固定資産税がかかるような土地であれば、毎年の負担も馬鹿にならないでしょうが、
『よくわからない土地』というのは、大抵、山奥か地の果てにあるものです。(偏見)
山奥や地の果てにある土地には、多くの場合、固定資産税がかかりませんから、比較的気楽です。

それでも、不法投棄や不法占有、土壌汚染があった場合には、土地所有者に負担がかかってきますし、
将来的に永遠に税金がかからないままでいるという保証もありません。

本格的に寝かせておいて放置を決め込む!というのも一つの方法ですが、
所有者が2代、3代変わっていくと、相続によってネズミ算式に共有者が増えていって、最終的には対応が不可能になります。
せめて土地の所在くらいは分かっておこうかな、という方の為に、一般の方でも可能な範囲で調べ方を紹介します。

そもそも固定資産税が課されていない場合には恐らく『地番』すら分かりませんので、
その自治体の税務課や市税事務所に名寄せしてもらう必要があります。
(自治体すら分からないのであれば、もうお手上げです。)

固定資産税の課税台帳や古い権利証があれば、『地番』が分かります。
地番さえ分かれば、いきなり法務局に行って調べる事も可能です。
さて、全く手がかりがなく、『そういう土地があるらしい』という情報だけがある場合・・・
例えば『札幌市南区のどこかの山奥に、土地を持っているらしい』
そして『出来る限り費用をかけずに、その土地の概要を知りたい』
・・・そんな時はこれから紹介する方法のように調べていきましょう。

①税務課・市税事務所に聞いてみる。
固定資産の課税台帳が届かない場合(=非課税の場合)には、管轄の窓口に行きます。
市税の管轄は『A-16 私道の課税について知りたい① 固定資産税・都市計画税』で紹介しています。

納税者の住所氏名を伝えます。転居があった場合には転居前の住所も、相続があった場合には、亡くなった方の住所氏名も伝えましょう。
多少時間はかかるかもしれませんが、その自治体での課税があれば名寄せが可能です。
亡くなった方の課税記録を知るには、本人の身分証明書と亡くなった方の『戸籍』等で、本人との関係性が証明されていることが必要になります。
例えば、父親の名義になっている土地の場合には、父親の戸籍に、自分の名前が子として記載されていて、自分自身が間違いなくその本人であることを示すために、身分証明書などを提示します。
『戸籍』は亡くなった方の本籍地で取得する事が出来ますが、直接の親子関係ではない場合などは、複数人分取得する必要がある場合があります。
専門家に依頼したい場合には司法書士あたりが通常でしょうか。
また、課税の内容や正確な金額を知るには、手数料を払って証明書を取得する必要があります。
 固定資産の課税台帳がある場合には、それを持参して管轄の窓口に行けばおおまかな地形図が出てくる場合があります。
納税者本人であっても、通常、地形図をもらう事は出来ません。
また、郊外の土地の場合は法務局の登記記録をもとに課税している場合が殆どで、法務局の情報以上のものではありません。
航空写真をもとにした地形図などを見せてもらえるようなら、手書きで写しを取らせてもらいましょう。

こうして、よくわからない土地の『地番』を知る事が出来ます。

②法務局から洗い出してみる。
その土地が所在している管轄の法務局に行きましょう。
(法務局の管轄は『A-3 道の所有者を知りたいとき』で紹介しています。)
まずは出番となるのが毎度おなじみ『ブルーマップ』です。
山林や原野であってもブルーマップには律儀に地番が載っています。
B-3 地図・地図に準ずる図面の見方
(ブルーマップの具体的な見方は
B-1 ブルーマップの見方で紹介しています。)

山の中でもビッチリと『地番』が記載されています。流石ゼンリンさん!
(ただし、記載されている地番はあくまで目安であり、誤っている可能性があります。)
ちまちまと青い文字を探して、そこからおおよその位置を割り出しましょう。
ブルーマップでは小さい土地や、道となっている部分は、地番が省略されている場合もあります。
どうしてもお探しの地番が見つからない時は、次のステップに進みましょう。

次に『地図に準ずる図面』『地積測量図』を取得し、土地の形を確認します。
(それぞれ『B-3 地図・地図に準ずる図面の見方』『B-4 地積測量図の見方』参照して下さい)

③航空写真を見てみる。
最後に、Googleなどの航空写真サービスを使って、現地の状況を確認しましょう。
あほか!と思うかもしれませんが、実際、市役所は航空写真で土地の現況を確認しているんです。

Googleマップの航空写真


意外かもしれませんが、たとえ山の中であっても、過去に人が使っていたり、車の出入りがあった土地というのは数十年以上経ってもその痕跡が残っている事が多いのです。
また、登記上の境界(筆界)も、自然の地形に従っている事が多くあります。
ですから、航空写真から川や獣道を見つけ、地図に準ずる図面と照らし合わせてゆくと、驚くほど地形と筆界が一致することがあります。

ただし、土地同士の正確な境界については『分かりません』どころか『ありません』というのが妥当なくらいで、多くの場合では取得した当初から境界の設定や測量などしていないはずです。
境界を特定するには膨大な測量費用が発生しますし、隣の土地も同じような状況になっているでしょうから、隣の土地との境界を決めるために、別の家の相続人を把握しなければならないという地獄のような状況が待っています。

④所在を知ってどうするの?
活用の予定がなければ出来れば手放してしまいたい、低価値の不動産ですが、
自治体にとって寄附を受け付ける事は税収は減る、管理コストはかかるで良い事なしですから、
なかなか寄附を受け付けてもらえません。
これを手放すには、地元の物好きな不動産屋や隣地を所有している人ににタダ同然で売るなどの方法があります。
詳しくは『E-5 市街化調整区域にある土地を売却したいとき』や『E-6 市街化調整区域の土地を捨てたい!』で解説しています。
それ以外は・・・まぁ、裏ワザ的な方法になってしまうのでしょうね。
まぁ、差し当たって不都合がなければ、無理に手放さなくてもよいかもしれません。

・・・こんな記事では『結局はっきりとしたことは分からんし、対策も取れないのじゃないか!』と言われてしまいそうですね。
はっきりとした事を調べるためには、土地家屋調査士など測量の専門家へ測量を依頼する必要が出てきます。
正直、都心の価格の高い不動産を測量してもらうより、ずっと費用がかかる割に、得るものは少ないです。
今回は『出来る限り費用をかけずに、その土地の概要を知りたい』をコンセプトに、最低限の情報収集方法を紹介しました。

しかし、知ると知らないとでは大違い。
放っておいて駐車場資材置き場にされる程度ならまだよいのですが、ガラ捨て場になっていたり、廃車置場になっていたり、不法投棄されていたり、といったこともよくあります。
どんなに使わない土地でも年に1度くらいは見に行っておくのがよいと思いますよ。

他にも、色々な調査方法やテクニックがあるのですが、その辺は企業秘密にさせておいて下さい。

当記事は2013年10月10日の記事を最新の状況を反映し改稿したものです。