今回、被災した札幌の不動産を売りたいという話はぽつぽつ頂いているんですが、
①新築購買層がどのような動き方をするか、未知数である事
②被害の大きいエリアへのニーズが低くなる=価値が下落する事
の2点から、流れが読めない・・・というかある程度は覚悟しておいた方が良い、というアドバイスにならざるを得ません。
では、『今は売り時ではない』と言ってしまっていいのか、というとそうも言えません。
まず、『被害の大きなエリアは需要が落ちる』という事を安易に言ってしまっていいのか、という問題があります。
今回の災害で札幌市内で『広い』被害を生じたのは高層マンションにおける停電による受水槽ポンプとエレベータの停止でした。
『戸建はすぐに水が出た』というのはちょっと物を知っていれば当たり前の話で、直結直圧方式だからなのですが、エレベータについてはどうしようもありませんし、集合住宅では備蓄にも限界があります。
そういった意味で、戸建のニーズが高まる要因もあるとは言えます。
また、②の価値下落が仮に現実化したとしても『だから売らない』と言ってしまっていいのか、というと、これも難しい。
投資の世界で『損切り』という言葉があるように、価値下落が継続する場合には早期に売却をして損失を拡大させない方がよいという考え方があります。
そういう意味で、今回の災害はターニングポイントという事が出来るでしょう。
『売るべきか否か』は一概に断じられず、以下のような事情を分析して個別にアドバイスをさせて頂く事になります。
①それぞれのエリアの特性
②建物の被害状況
③近隣の流通状況
④住宅ローンの状況
⑤災害による保険金が下りるか否か
⑥お客様個々人のライフプラン
以前のブログから災害関係の記事のニーズは高いのですが、安易に『どこそこのエリアが危険/安全』という事に耳目が集まりがちですがそうではないんですよね。
今回、里塚・美しが丘のエリアは液状化により大きな被害を受けました。
これは過去の記事『札幌市と地震 過去と将来の液状化現象』でも紹介した通り、15年前の十勝沖地震でも液状化被害が発生しています。
また、ニュースなどで『液状化危険度図』で危険が高いエリアとなっていることも取り上げられています。
政府が積極的に広報している事もあり、最近、『ハザードマップ信仰』ともいえるようなハザードマップの持ち上げが目立つように思います。
では、同じく液状化エリアとされている震度5強の新川・新琴似エリアはどうなのかというと、今のところ液状化被害は耳に入っていません。
また、新しくなった液状化危険度図では危険エリアが広がっているような・・・気のせいでしょうか。
ハザードマップがどうなっていようが台風21号や停電の被害はあった訳で、あまりハザードマップを偏重するのもどうなのかな、という気がしないではありません。
話が逸れてしまいましたがここから年末にかけて、札幌市内で被災した不動産が売りに出てくる可能性は高いと思われます。
これが市場全体の価格の動きにどう跳ね返ってくるのか、非常に興味深い処です。
災害関係の記事については以前まとめていますが、また直近の状況についてまとめようかと考えています。
◇札幌の地盤について 地盤沈下と液状化の目安
◇札幌市と地震 過去と将来の液状化現象
※ 本稿は札幌市近郊の状況について記したもので道内全体の状況を鑑みたものではありません。
また、本稿における『被災』の定義は液状化や地震によって建物の構造または土地の地盤に瑕疵が生じた事を指します。
その為、分譲マンションにおける停電被害は念頭に置いておりません。
シリーズ『胆振東部地震』
◇胆振東部地震で被災した札幌市内の不動産の流通について
◇清田区里塚で生じた大きな液状化被害と『防災カルト』の蠱惑
◇『液状化、里塚』の現実を見よう、夢想は不要だ
◇デマで市域の5.3%を貶めた札幌市民の敵、池上彰氏をどうしてくれようか。